邪神の恩返し

白南井 誰方

文字の大きさ
上 下
43 / 61
第2.5章 一方その頃、〇〇は

複製

しおりを挟む
神の器ウィリアムシリーズ・・・・のことを、邪神ビルドは最高傑作だと言っていた。

 ビルドと言うところの『神の器ウィリアム』は、実は2つあったのだ。

 一つはもちろん神の器『ウィリアム・セシス』。性別は男であるが中性的な姿をしている。マリアも、『セシス』の中に邪神も入っていると言うことくらいは分かっているはずだ。だが、その『器』に入っている『マシュー』は俺のレプリカであり、ビルドの傀儡でしかしかないことには、気づいていないだろう。

 ではオリジナルはどこに入っているのか。その答えはもう一つの神の器『マーシー・ウィリアムズ』。セシスよりも前に作られた俺の器である。性別は女、セシスに瓜二つの顔と肉感的な体を持つ。今はマリアが聖域内に入っているため、邪神も俺とともに行動を共にしている。

「ところでビルド、いつになったらマリアの場所を教えてくれるんだ?」

 俺はマリアのことが好きだ。女になってもその思いは変わらなかったし、スラムの娼婦としてどんなに過酷な目にあったところでマリアとの再会を励みに頑張れた。どんなこともーーときには悪逆非道なことだってーー、マリアの為だからとビルドに言われてなんとかこなしてきた。そして今回ようやく、「ハイゲンという孤児を育て終わったらマリアの居場所を教えてあげる」と言われていたのだ。

「ビルドって誰? ねぇ、僕の話聞いてる? ねぇ母さんったら!」

 ハイゲンはもう13歳だ。もうあの子だけで立派に生きていける。これ以上があれこれ世話を焼くのはただのお節介だろう。

(そうだね、確かに。今までありがとう、レプリカ君)
「レプリカってどういうことだ?」
(ほらその前に目の前に気をつけて!)

 その時、目の前から目を血走らせた男が走ってきた。しかも両手でナイフを構えて。

「ハイゲン! 私の後ろに!」
「分かった!」

 もう一人妊娠しているとはいえ、この程度のやつなら



 お腹の子が、人外の力で俺の腹を蹴り上げた。俺は息を止めてしまった。
 そのままナイフが、俺の腹に吸い込まれて、








 俺は、どれだけ気絶していたのだろう。辺りはすっかり暗くなっていた。俺は仰向けにされていた。お腹の中の子は、無くなって・・・・・いた。下腹に、銃声のような音が何回も響いて、その度に俺の体は細かく痙攣していた。

 の自慢だったハイゲンはどこにも居なかった。

 あぁ、俺こそが邪神の傀儡だったのだ。

「ハイ、ゲ、ン、どうし、て」

 それを最後に、俺の意識は、もう二度と帰れない深い闇へと沈んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

処理中です...