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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew
27 摂氏
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俺とマリアは、書店に来ていた。さすが学園都市、あらゆる分野の本が揃っている。
「お前の頭脳と魔法の才能なら、勉強する必要も無いと思うんだが?」
「デビルくんに買っておくと良いよって言われた本があるから見ておくつもりなんだよ。入学したあとの教材としても使えるからって」
まあ、そういうことならいいのか?
「そもそもワタシ達、転生してから一度もデビルくんに会ってないよね……」
「だよな。で、どの本がほしいんだ? 俺が買うぞ」
「あれ? そんなお金持ってたっけ?」
「なんかビルドから渡されてたんだ。多分それを買えってことだったんだろうな。てかマリア、金ないのに書店なんて来てどうするつもりだったんだよ」
「速読で暗記すれば良いかなって」
「なんて迷惑な客なんだ……。そもそもそんな一瞬で暗記なんてできるのかよ……」
「この体になってから、なんか頭が良くなったみたい」
「頭が良いってレベルか、それ?」
話しつつもマリアは数学、古典、神術学の教材、マナーの教本と積み上げていく。俺の金で足りればよいが……。今度は歴史書に手を伸ばし、
「「あ」」
マリアが本棚に伸ばした手が、別の手と重なった。その手の主は十歳くらいの美少年。こんなところに一人で来ていることからして貴族ではないだろう。そして見た目で言えばマリアと同年代ということだ。
……でマリア、なんでその男と見つめ合ったままなんだ? マリアが好きなのはビルドだろうが……まぁ、ビルドを好きでいてもいいことなんてないが。なぜならもうビルドは……。とりあえず。
「おいマリア、欲しい本は決まったか?」
「あ、マシューー」
マリアが口を滑らせる前に俺が口を開く。
「俺はこの娘の父親のマシューだ」
そうビルドに命令されていたので、保護者を名乗る。ちなみにウィリアムは俺だけの物になったので、髪の毛は短く切って両瞳も青にしたため男に近い見た目になっている。
「俺はセルシウスです」
違う。別に自己紹介してもらいたいわけではないのだ。この美少年無駄に礼儀正しい。
「マシューさん、貴方の神術の腕を見込んで依頼をしたいのですが」
見た目はマリアと同じくらいの割には、大人びた喋り方をする。まさかマリアと同じく記憶を持ち越して転生したわけでもあるまいし。感じた違和感はそれだけじゃない。
「セルシウスと言ったか、お前のその姿、神術で作り出した幻影だろ? 人に頼み事をするならば、それ相応の態度があると思うぜ」
「……やっぱり貴方達は本物のようですね」
とりあえず、俺の後ろで分からない顔をしてるマリアにも説明しないとな。
会計を済ませてから向かったのは、セルシウスの住む家だった。3部屋ほどで、一人暮らしにしては広いが、お世辞にも綺麗とは言えない。しかし壁は厚い。これなら万が一にでも外から話を聞かれることは無いだろう。
「じゃあマシューさんは冒険者じゃないんですか」
「元冒険者だな。でも依頼を受けてやってもいいぜ?」
誠意の程度にもよるがな。
「じゃあ《変身》を解きます」
変身を解いた彼は、人間ではなかった。尖った耳、黒い白目、縦に裂けたような赤い瞳。マリアは驚いていた。
「この子人間じゃない?!」
「そう、彼、セルシウスは真人族。俺たち普人族とは別の人種だ」
「真人族……そんな人が居たなんて聞いたことなかった……」
「別の大陸……別世界って言っても良いかもしれないな、そこに住んでいるんだ。ちなみに獣人族っていうのもいる。ビルドから聞いただけで、俺も初めてみたけどな」
「まさか俺達のことを知っているとは……それなら話が早い。依頼したいのは、この家に住む子供たちの世話です。おーい、出ておいで!」
セルシウスは、叫びながら床に向かってノックした。
「「「「「はーい!」」」」」
そしたら出るわ出るわ獣人族、真人族のちびっ子達が。マリアは、かわいい!と感動していた。
「はじめましておねえちゃん! 俺ボース」
「ヒッグスです」
6人中2人は真人族で、まだ幼いので二人とも男であるようだ。
「私はモモです……」
「イオ」
「俺はレイだ!」
「スミレは、スミレって言います」
獣人族は男女が丁度半分ずつだな。
「挨拶できて偉いな。はじめまして俺はマシュー、こっちがマリアだ」
「お邪魔してます!」
「君たち、お客さんに失礼の無いようにね! それにしても、マシューさんもマリアさんもあっさり受け入れてくれましたね」
「かわいいは正義だよ!」
「まあな。それにしてもやけにあっさり正体を教えてくれたな? 俺にはそっちのほうが驚きだぜ」
「前にも、あなた達のような人達に会ったことがあるので、何となくわかるんです。貴方達が悪い人じゃないって事も、あなた達が人ですらないかも知れないってことも」
俺とマリアは息を飲んだ。ちびっ子も静かにセルシウスを見上げていた。
「俺が頼みたい依頼は、俺が勉強をしている最中に、この子達の遊び相手になってもらうことです。期限は学園の合否発表まで、住み込みでこの子達のお世話を頼みたいんです」
確かに、セルシウスの出かけているときにちびっ子が家の外に出てしまったら、酷いことになるだろうな。保護者は必要だ。そうでなくても、このちびっ子達は親の存在に飢えているだろうな……。
「どうでしょうか? 依頼料は可能な限り出します」
「そうだな……。マリア」
「うん」
俺は依頼を受けることにした。
「お前の頭脳と魔法の才能なら、勉強する必要も無いと思うんだが?」
「デビルくんに買っておくと良いよって言われた本があるから見ておくつもりなんだよ。入学したあとの教材としても使えるからって」
まあ、そういうことならいいのか?
「そもそもワタシ達、転生してから一度もデビルくんに会ってないよね……」
「だよな。で、どの本がほしいんだ? 俺が買うぞ」
「あれ? そんなお金持ってたっけ?」
「なんかビルドから渡されてたんだ。多分それを買えってことだったんだろうな。てかマリア、金ないのに書店なんて来てどうするつもりだったんだよ」
「速読で暗記すれば良いかなって」
「なんて迷惑な客なんだ……。そもそもそんな一瞬で暗記なんてできるのかよ……」
「この体になってから、なんか頭が良くなったみたい」
「頭が良いってレベルか、それ?」
話しつつもマリアは数学、古典、神術学の教材、マナーの教本と積み上げていく。俺の金で足りればよいが……。今度は歴史書に手を伸ばし、
「「あ」」
マリアが本棚に伸ばした手が、別の手と重なった。その手の主は十歳くらいの美少年。こんなところに一人で来ていることからして貴族ではないだろう。そして見た目で言えばマリアと同年代ということだ。
……でマリア、なんでその男と見つめ合ったままなんだ? マリアが好きなのはビルドだろうが……まぁ、ビルドを好きでいてもいいことなんてないが。なぜならもうビルドは……。とりあえず。
「おいマリア、欲しい本は決まったか?」
「あ、マシューー」
マリアが口を滑らせる前に俺が口を開く。
「俺はこの娘の父親のマシューだ」
そうビルドに命令されていたので、保護者を名乗る。ちなみにウィリアムは俺だけの物になったので、髪の毛は短く切って両瞳も青にしたため男に近い見た目になっている。
「俺はセルシウスです」
違う。別に自己紹介してもらいたいわけではないのだ。この美少年無駄に礼儀正しい。
「マシューさん、貴方の神術の腕を見込んで依頼をしたいのですが」
見た目はマリアと同じくらいの割には、大人びた喋り方をする。まさかマリアと同じく記憶を持ち越して転生したわけでもあるまいし。感じた違和感はそれだけじゃない。
「セルシウスと言ったか、お前のその姿、神術で作り出した幻影だろ? 人に頼み事をするならば、それ相応の態度があると思うぜ」
「……やっぱり貴方達は本物のようですね」
とりあえず、俺の後ろで分からない顔をしてるマリアにも説明しないとな。
会計を済ませてから向かったのは、セルシウスの住む家だった。3部屋ほどで、一人暮らしにしては広いが、お世辞にも綺麗とは言えない。しかし壁は厚い。これなら万が一にでも外から話を聞かれることは無いだろう。
「じゃあマシューさんは冒険者じゃないんですか」
「元冒険者だな。でも依頼を受けてやってもいいぜ?」
誠意の程度にもよるがな。
「じゃあ《変身》を解きます」
変身を解いた彼は、人間ではなかった。尖った耳、黒い白目、縦に裂けたような赤い瞳。マリアは驚いていた。
「この子人間じゃない?!」
「そう、彼、セルシウスは真人族。俺たち普人族とは別の人種だ」
「真人族……そんな人が居たなんて聞いたことなかった……」
「別の大陸……別世界って言っても良いかもしれないな、そこに住んでいるんだ。ちなみに獣人族っていうのもいる。ビルドから聞いただけで、俺も初めてみたけどな」
「まさか俺達のことを知っているとは……それなら話が早い。依頼したいのは、この家に住む子供たちの世話です。おーい、出ておいで!」
セルシウスは、叫びながら床に向かってノックした。
「「「「「はーい!」」」」」
そしたら出るわ出るわ獣人族、真人族のちびっ子達が。マリアは、かわいい!と感動していた。
「はじめましておねえちゃん! 俺ボース」
「ヒッグスです」
6人中2人は真人族で、まだ幼いので二人とも男であるようだ。
「私はモモです……」
「イオ」
「俺はレイだ!」
「スミレは、スミレって言います」
獣人族は男女が丁度半分ずつだな。
「挨拶できて偉いな。はじめまして俺はマシュー、こっちがマリアだ」
「お邪魔してます!」
「君たち、お客さんに失礼の無いようにね! それにしても、マシューさんもマリアさんもあっさり受け入れてくれましたね」
「かわいいは正義だよ!」
「まあな。それにしてもやけにあっさり正体を教えてくれたな? 俺にはそっちのほうが驚きだぜ」
「前にも、あなた達のような人達に会ったことがあるので、何となくわかるんです。貴方達が悪い人じゃないって事も、あなた達が人ですらないかも知れないってことも」
俺とマリアは息を飲んだ。ちびっ子も静かにセルシウスを見上げていた。
「俺が頼みたい依頼は、俺が勉強をしている最中に、この子達の遊び相手になってもらうことです。期限は学園の合否発表まで、住み込みでこの子達のお世話を頼みたいんです」
確かに、セルシウスの出かけているときにちびっ子が家の外に出てしまったら、酷いことになるだろうな。保護者は必要だ。そうでなくても、このちびっ子達は親の存在に飢えているだろうな……。
「どうでしょうか? 依頼料は可能な限り出します」
「そうだな……。マリア」
「うん」
俺は依頼を受けることにした。
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