魔眼無双の最強賢者~チートな瞳力で世界最速の成り上がり~

月島秀一(ツキシマシュウイチ)

文字の大きさ
上 下
10 / 16

王立第三魔術学園と不正入学【二】

しおりを挟む

 入学式がつつがなく終わり、新入生は各自の教室へ移動していく。
 王立第三魔術学園に入学した生徒は、入学試験の成績によって、特進科のA組と普通科のB組に分けられる。
 首席合格を果たしたエレンは、もちろん特進クラスだ。

(えーっと……A組の教室は、本校舎一階の突き当たりだったよな? いやでもその前に、せっかくだからトイレに行っておこう)

 朝のホームルームにはまだ時間があったので、近くの男子トイレで軽く用を済ませた。
 綺麗な洗面所で手を洗ったエレンは、正面の大きな姿見すがたみで身だしなみを整える。

(えへへ。やっぱりここの制服、ちょっとかっこいいなぁ……)

 王立第三魔術学園の男子用の制服は、上は臙脂えんじ色を基調としたブレザー、下はシンプルな黒のズボン。
 これらは激しい戦闘にも耐えられるよう、特殊な繊維で織られており、耐久性は抜群。
 そのうえデザイン性にも富んでおり、男子生徒からの評判はかなり高かった。

(それにしても、全然違和感がない……。こんな簡単に魔眼を隠せるなんて、本当に凄い魔具だなぁ)

 現在、エレンの左眼には、超極薄の『レンズ』が装着されている。
 これはヘルメスが高位の隠匿術式を施した特別な魔具まぐで、ほとんど全ての探知魔術から、史上最悪の魔眼を隠してくれるという優れものだ。

(トイレも済ませたし、身だしなみも整えた。後は……そうだ。ちゃんと『約束』を守らないとな)

 エレンは登校前に、ヘルメスと交わした約束を反芻はんすうする。

 一、魔眼については秘密にすること。
 一、ヘルメスのせいを語らないこと。
 一、学園生活を全力で楽しむこと。

 三つの約束事をしっかりと頭に叩き込んだ彼は、まだ見ぬクラスメイトたちの待つ、一年A組の教室へ向かうのだった。

(俺の席は……あそこだな)

 教室に入った彼は、黒板に張られた座席表を確認し、部屋の最奥にある窓側の席に腰を下ろす。

(……やっぱり、見られてる、よな……)

 恐る恐る周囲を見回せば――露骨にジッと見つめる者、こっそりと横目で窺う者、睨み付けるような視線を送る者、クラス中の注目がエレンに集まっていた。

 当然ながらこれは、決して『いい注目』ではない。
 どちらかと言えば、敵対心や悪感情の入り混じった『悪い注目』だ。

 それもそのはず……ここにいる一年A組の生徒はみな、幼少期から『天才』と持てはやされてきた魔術師ばかり。
 エレンとは対照的にひたすら褒められて育った彼らは、人並み以上に自尊心プライドが高く、『我こそが王立の首席を取らん!』と息巻いていたのだが……。
 ふたを開けてみれば、どこの馬の骨とも知れぬ無名の輩に、栄光の『首席合格』の座をさらわれてしまった。
 当然、面白いわけがない。

(ヘルメスさんの言っていた、『友達との楽しい学園生活』……。中々、大変そうだなぁ……)

 エレンがこの先の未来に不安を感じていると、

「――久しぶりだね、エレン」

 背後から、鈴を転がしたような綺麗な声が響く。
 振り返るとそこには、純白の美少女が立っていた。

「え、えっと……?」

「あれ、覚えてない? 入学試験のとき、ダール先生のテストを一緒に受けていたんだけれど」

「……あっ、あのときの」

 脳裏をよぎったのは、素晴らしい剣術で一次試験を突破した、純白の女剣士。

「思い出してくれた? 私はアリア・フォルティア、よろしくね」

 アリア・フォルティア、十五歳。

 透き通るような純白の髪は、正面から見ればショートに見えるが、後ろで纏められているため、実際はロングヘアである。
 身長は百六十センチ・澄んだ紺碧の瞳・新雪のように白い肌・ツンと上を向いた胸・ほどよくくびれた腰・スラッと伸びた肢体、百人が百人とも振り返るような絶世の美少女だ。
 赤と白を基調としたブレザーに落ち着いたチェック柄のミニスカート、王立第三魔術学園の女子用制服に身を包んでいる。

「俺はエレンです。よろしくお願いします、アリアさん」

「同い年だし、アリアでいいよ。それと敬語もいらないかな」

「え、えっと……それじゃアリア……?」

「うん、よろしくね」

 簡単な挨拶を交わしたところで、アリアはエレンの一つ隣の席に腰を下ろした。

「同じ一次試験を受けて、同じクラスで隣の席……。ふふっ、なんだか凄い偶然だね」

「あはは。言われてみれば、確かにそうだな」

「でもまさか、エレンが首席合格だとは思わなかったよ」

「うん、それは俺もビックリした」

 ちょっとした冗談を交わし、和やかな空気が漂う中――アリアはエレンのもとへ近付き、その耳元で問い掛ける。

「ねねっ、あのときのアレ・・、いったい何をやったの?」

「え、えっと、何が……?」

 質問の意味がわからず、エレンは小首を傾げた。

「ほら、入学試験のとき、キミは『白道の一・閃』を使ったでしょ? あんな弱い魔術じゃ、鉄壁のダールの魔力障壁は絶対に突破できない。何かネタがあるはず」

「あぁ、あれのことか」

 特に隠す必要性も感じなかったので、あのときのことを全てそのまま語ることにした。

「ダールさんの魔力障壁は、確かにとても強力だったけど……。あれには、『規則的な波』があったんだ。強い波と弱い波が交互に打ち寄せた後、ほんの一瞬だけ無の時間が生まれる。その『なぎの刹那』にせんを差し込んだんだ」

 その回答を聞いたアリアは、スッと眼を細めた。

「へぇ……。魔力障壁が視えるなんて、とてもいい・・・・・眼を・・しているんだね・・・・・・・

「えっ、いや……ま、まぁね」

 魔眼については秘密にすること。
 ヘルメスとの約束があるため、エレンは咄嗟に誤魔化した。

 しかし、悲しいかな。
 彼は根っこが純粋なため、嘘や誤魔化しのたぐいが人並み以上に下手糞だった……。

 そうしてエレンが右へ左へと眼を泳がせていると、

「……ねぇ、ちょっとよく見せてよ」

 アリアは突然グッと体を寄せ、彼の瞳を真っ直ぐに覗き込んだ。

(い、いいにおい……いやそれよりも近い……っ)

 お互いの吐息が掛かる距離。
 エレンの鼓動は、かつてないほどに速くなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

おっさんは 勇者なんかにゃならねえよ‼

とめきち
ファンタジー
農業法人に出向していたカズマ(名前だけはカッコいい。)は、しょぼくれた定年間際のおっさんだった。 ある日、トラクターに乗っていると、橋から落ちてしまう。 気がつけば、変な森の中。 カズマの冒険が始まる。 「なろう」で、二年に渡って書いて来ましたが、ちょっとはしょりすぎな気がしましたので、さらに加筆修正してリメイクいたしました。 あらすじではない話にしたかったです。 もっと心の動きとか、書き込みたいと思っています。 気がついたら、なろうの小説が削除されてしまいました。 ただいま、さらなるリメイクを始めました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

処理中です...