42 / 59
第一章 孤独の果てに
1-42 進撃の魔神団
しおりを挟む
それから俺達は速度を一・五倍にして、三日がかりで更に九百キロの距離を走破してみせた。
街道の先、南方面で待ち受けているだろう敵の罠を警戒して途中で方向を変えて山脈を離れ、逆L字の形になっているサンマルコス王国の中で隣国であるハリオス王国との国境沿いにある逆L字の内側の角部分にまで辿り着いた。
それにあのまま直進して山脈の南の果てを越えてしまうと、すぐに東の平原側でアルブーマ大山脈沿いに流れてきている大きな河の河口へと出てしまい、その対岸には帝国に占領されたアモスの港に出てしまう。
その近辺は警戒が非常に厳重なはずだ。
帝国に捕捉されたら最後、帝国の軍勢が河を挟んだ国境を越境してきて、そのままなし崩しに侵略戦争にすらなるであろう。
現在地よりもう百キロ西へ移動すると、そこはサンマルコス王国の中央港パルセン港の上に当たるのだが、そこは東の平原を越えたところにある大きめの国家群である西方諸国への船が出ていないので立ち寄らずに通過する予定だ。
アリエス達が山脈越えのために目晦ましとして、アーデルセン王国沿いにパルミシア王国を移動していた手を真似て、今から行くルートから見てすぐ上に位置するハリオス王国側から進む事も考えていた。
だが、今の俺達は帝国相手に派手にやり過ぎたし、同行者が人間サイズではないので、隠蔽していてもともすれば目立ちすぎる。
国境でうっかりと見つかる可能性を考慮して、このままサンマルコス王国内の国境沿いの街道を西へ行く事にした。
本来なら国境を離れた部分を行くのが安全なのだが、それだと行軍がかなり困難になる。
こう言っちゃなんだが、たとえ魔物であろうとも道なき道よりは街道の方が進みやすい。
それに実を言うと、なによりも街道の上を歩く方があまり痕跡を残さずに済むのだ。
そして慎重に進んで六日の後、俺達は帝国と直接対峙する形になっている、かつての王国同盟群の中では西の平原で最強のオルガノ王国との国境に近い位置まで歩を進めた。
その国を越えたところに、西の平原三か国を除く残りの西の平原を支配する覇者であるルーゲンシュタット帝国の広大な版図がある。
そう、ここは目的地であるブシュレの港の真上およそ二百キロの地点である。
「ようやく、ここまで着いたな。
罠に引っかからずに来れたなど奇跡のようだ」
「そうね、却って怪しいくらいだわ」
そう、へたをすると、これこそが敵の狡猾な罠だ。
こちらを安心させ油断させておいて、港へ到着した途端に港に潜ませた部隊と追撃部隊とで挟み撃ちにする。
開けた海沿いは山中と違って簡単には煙に巻けない場所なのだから。
それこそ、海にドボンしてフェンリルの犬かき動力のワンワン船で逃げないといけなくなる。
そうなった暁には敵の海軍総出で追いかけてくるだろう。
そのような事にでもなったら子供達が堪ったものではない。
俺とシルバーだけなら海水浴気分の遠泳みたいなもので、その辺の強力な海の大型魔物でも引き連れて敵の船に押し付けるモンスタートレインごっこをして遊ぶのだが。
それが出来たなら、さぞかし派手な見物になる事だろう。
「でも、港に近いんでしょ。
あの山の中で逃げ回っていた時に比べたらいいよ。
山の中って、すごく寒いんだもの」
「はは、確かにそうだな」
「メリーベル、寒い?
僕が温めてあげる」
「わあい、もふもふだあ」
天然毛皮のもふもふ狼は、嬉しそうに頭をすり寄せてから少女を柔らかい体をくねらせて包みこんだ。
まだ少々子供気分が抜けないシルバーにとっては、このメリーベルが初めての『年相応』のお友達なので、二人とも仲のいい事この上ない。
「では、用心しながら南にある港を目指すぞ」
「うん、了解」
ルーはここまでに、かなりの食糧を集めてくれてある。
ここから先は海に出る予定なので、食料調達が困難になるかもしれないから留意するように頼んでおいたのだ。
彼女も賢いので、その辺りは常に自主的に動いてくれてあるので助かる。
そして、その多くは二人の収納ポシェットに持たせてある。
俺達はいつ別れねばならなくなるか知れたものではないのだ。
幸いにして二人が持っていたのは、なりは小さいのだが高価な無限収納タイプなのでそうしても困らない。
さすが今は規模が小さくなってしまおうとも、平原の盟主と呼ばれた国の王族だけの事はある。
あるいは、彼女達の親も今日ある日を予測していたのかもしれないのだが。
それから、俺達は少し進行速度を落として、なるべく痕跡を残さないように努めた。
ここからは街道で敵が罠を張って待ち受けていてもおかしくはないので、少し大回りをするオルガノ王国との国境沿いに南下する主街道を行くのはやめにした。
シルバーが土魔法で上手に痕跡を消してくれている。
なんというか、尻尾の箒で綺麗にしていきますよという感じに、俺達が歩いた後ろの痕跡を上手に魔法で消していく。
まったく器用なもんだ。
山中などはなるべく開けた場所を通っていくので、大きくジグザグになり距離が長くなってしまったが仕方がない。
荒れ地部分もなるべく痕跡を残さないで済む場所を選んで進み、湖沼などに出会うとその上を俺の操る水系の魔法に乗って波乗りに乗るかのように滑るように進み、それはまるで水中翼船かホバークラフトにでも乗るかのような雰囲気だったので、まだ幼いメリーベルを大層喜ばせた。
まあフェンリルの尻尾も大いに喜んでいたのだが。水上の方が痕跡も残らないので、わざとそうしているのだが、ついでに子供向けのアトラクションになってしまった。
まあ子供には大層厳しい旅なのだから、少しくらいは旅のお楽しみがあってもいいか。
街道の先、南方面で待ち受けているだろう敵の罠を警戒して途中で方向を変えて山脈を離れ、逆L字の形になっているサンマルコス王国の中で隣国であるハリオス王国との国境沿いにある逆L字の内側の角部分にまで辿り着いた。
それにあのまま直進して山脈の南の果てを越えてしまうと、すぐに東の平原側でアルブーマ大山脈沿いに流れてきている大きな河の河口へと出てしまい、その対岸には帝国に占領されたアモスの港に出てしまう。
その近辺は警戒が非常に厳重なはずだ。
帝国に捕捉されたら最後、帝国の軍勢が河を挟んだ国境を越境してきて、そのままなし崩しに侵略戦争にすらなるであろう。
現在地よりもう百キロ西へ移動すると、そこはサンマルコス王国の中央港パルセン港の上に当たるのだが、そこは東の平原を越えたところにある大きめの国家群である西方諸国への船が出ていないので立ち寄らずに通過する予定だ。
アリエス達が山脈越えのために目晦ましとして、アーデルセン王国沿いにパルミシア王国を移動していた手を真似て、今から行くルートから見てすぐ上に位置するハリオス王国側から進む事も考えていた。
だが、今の俺達は帝国相手に派手にやり過ぎたし、同行者が人間サイズではないので、隠蔽していてもともすれば目立ちすぎる。
国境でうっかりと見つかる可能性を考慮して、このままサンマルコス王国内の国境沿いの街道を西へ行く事にした。
本来なら国境を離れた部分を行くのが安全なのだが、それだと行軍がかなり困難になる。
こう言っちゃなんだが、たとえ魔物であろうとも道なき道よりは街道の方が進みやすい。
それに実を言うと、なによりも街道の上を歩く方があまり痕跡を残さずに済むのだ。
そして慎重に進んで六日の後、俺達は帝国と直接対峙する形になっている、かつての王国同盟群の中では西の平原で最強のオルガノ王国との国境に近い位置まで歩を進めた。
その国を越えたところに、西の平原三か国を除く残りの西の平原を支配する覇者であるルーゲンシュタット帝国の広大な版図がある。
そう、ここは目的地であるブシュレの港の真上およそ二百キロの地点である。
「ようやく、ここまで着いたな。
罠に引っかからずに来れたなど奇跡のようだ」
「そうね、却って怪しいくらいだわ」
そう、へたをすると、これこそが敵の狡猾な罠だ。
こちらを安心させ油断させておいて、港へ到着した途端に港に潜ませた部隊と追撃部隊とで挟み撃ちにする。
開けた海沿いは山中と違って簡単には煙に巻けない場所なのだから。
それこそ、海にドボンしてフェンリルの犬かき動力のワンワン船で逃げないといけなくなる。
そうなった暁には敵の海軍総出で追いかけてくるだろう。
そのような事にでもなったら子供達が堪ったものではない。
俺とシルバーだけなら海水浴気分の遠泳みたいなもので、その辺の強力な海の大型魔物でも引き連れて敵の船に押し付けるモンスタートレインごっこをして遊ぶのだが。
それが出来たなら、さぞかし派手な見物になる事だろう。
「でも、港に近いんでしょ。
あの山の中で逃げ回っていた時に比べたらいいよ。
山の中って、すごく寒いんだもの」
「はは、確かにそうだな」
「メリーベル、寒い?
僕が温めてあげる」
「わあい、もふもふだあ」
天然毛皮のもふもふ狼は、嬉しそうに頭をすり寄せてから少女を柔らかい体をくねらせて包みこんだ。
まだ少々子供気分が抜けないシルバーにとっては、このメリーベルが初めての『年相応』のお友達なので、二人とも仲のいい事この上ない。
「では、用心しながら南にある港を目指すぞ」
「うん、了解」
ルーはここまでに、かなりの食糧を集めてくれてある。
ここから先は海に出る予定なので、食料調達が困難になるかもしれないから留意するように頼んでおいたのだ。
彼女も賢いので、その辺りは常に自主的に動いてくれてあるので助かる。
そして、その多くは二人の収納ポシェットに持たせてある。
俺達はいつ別れねばならなくなるか知れたものではないのだ。
幸いにして二人が持っていたのは、なりは小さいのだが高価な無限収納タイプなのでそうしても困らない。
さすが今は規模が小さくなってしまおうとも、平原の盟主と呼ばれた国の王族だけの事はある。
あるいは、彼女達の親も今日ある日を予測していたのかもしれないのだが。
それから、俺達は少し進行速度を落として、なるべく痕跡を残さないように努めた。
ここからは街道で敵が罠を張って待ち受けていてもおかしくはないので、少し大回りをするオルガノ王国との国境沿いに南下する主街道を行くのはやめにした。
シルバーが土魔法で上手に痕跡を消してくれている。
なんというか、尻尾の箒で綺麗にしていきますよという感じに、俺達が歩いた後ろの痕跡を上手に魔法で消していく。
まったく器用なもんだ。
山中などはなるべく開けた場所を通っていくので、大きくジグザグになり距離が長くなってしまったが仕方がない。
荒れ地部分もなるべく痕跡を残さないで済む場所を選んで進み、湖沼などに出会うとその上を俺の操る水系の魔法に乗って波乗りに乗るかのように滑るように進み、それはまるで水中翼船かホバークラフトにでも乗るかのような雰囲気だったので、まだ幼いメリーベルを大層喜ばせた。
まあフェンリルの尻尾も大いに喜んでいたのだが。水上の方が痕跡も残らないので、わざとそうしているのだが、ついでに子供向けのアトラクションになってしまった。
まあ子供には大層厳しい旅なのだから、少しくらいは旅のお楽しみがあってもいいか。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる
ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。
モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。
実は前世が剣聖の俺。
剣を持てば最強だ。
最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる