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第一章 渡り人

1-53 お風呂

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 しかも、お風呂はとってもでかい奴だった。小型プールほどもあるじゃないか。子供なら泳げちゃう。

「すげえ、お風呂だあ~。大きなお風呂だあ」
「あら、お風呂が珍しかった?」

「うん。うちの村にはないよ」
 多分、サラムの町にも。

 そして、この宿だって高級だから、あるいはスイートだからついているだけなのだ。今、将来の目標の一つが決まった。風呂付の家に住む。これだな。

「その割には風呂の存在は知っているのね」
「本で読みましたから。ねえ、この風呂はどうやって沸かすのー」

「ああ、それは魔法式だから、こうよ」
 彼女は壁のパネルをいくつか操作してみせた。

「うお、ハイテク~」
「ハイテク?」

「ああ、いやいや。さっそく入ってみたいんですが」
「あ、待って待って。二歳の子一人じゃ入れられないわあ」

 お姉さん、それは正論なのですけれど、この図体をして風呂で溺れる事はないと思うのですが。そして、なんとお姉さんは服を脱ぎ始めた。いや、これから、お風呂に入るのなら当たり前なのですがね。

「あれ、お姉さんも一緒に?」
「うん、ロザンナもすぐに来るわよ。あの子、お風呂が大好きだから」
 マジですか。この異世界で初のお風呂が、こんな美人達と一緒に混浴?

「ミョンデちゃんも一緒にいらっしゃい」
「えー、あたしは別にー」

 そうそう、俺はゆっくり入りたいのよ。しかも美女二人と。どうせ、こいつは大はしゃぎするのに決まっているのだ。まあそう言いつつ、俺も泳いじゃいそうだけど。

 スカーレット嬢はドレスを脱ぎ、この世界の下着だけになってから、優雅にミョンデ姉を捕獲してきた。

 いいとこのお嬢さんオーラを纏った所作が、その姿でも下品さを感じさせない。娼館の女ではないのだから。

 凄い美少女なのでいい目の保養だ。そういや、こういうところでは娼館なんてものもあるんだろうな。そうしないと治安が保てないはずだ。いつか大人になったら見学に行こうっと。

 などと思ったら、あやうくスカーレット嬢のストリップを見逃してしまうところだった。もちろん、色っぽくやってくれているわけではないのだが。

 うお、迫力のボディだ。地球でも拝んだことは一度もないような。眩しいっ! いっぽう、ミョンデ姉は一瞬のうちに剥かれ、俺もその直後に同じ運命だった。

 あっという間に洗い場で洗剤塗れにされて、ザババっとシャワーで尻の穴まで丸洗いされてしまった。

 ミョンデ姉は、初めてのお風呂におっかなびっくりの様子だ。赤ちゃんみたいに、スカーレットさんにしがみついていて、ゆっくりと入れられていて笑える。

 ハッ、その手があったのか。しまった。二歳児なんだからさ、そういうのは許されるよね~。

「スカーレットさんって子供の扱いが上手いですよね」
「ああ、兄弟が多いし、商会の子の面倒みたりもするからね~」

「そうですか」
 そう言いながら、俺は湯船の腰かける部分に座り、肘で浴槽の縁にもたれて頭にはタオルを置いて寛いでいた。スカーレットさんは上から洗う派と。メモメモ。

「君は本当にお風呂が初めてなの? く、寛ぎ過ぎ」
「放っておいてくださいな。気持ちがいいんですから」

「あなた、本当に変わっている二歳児ねえ」
「お姉さん、アンソニーにそんな事言っても無駄よ。こいつ、赤ん坊の頃からずっと変なんだから」

「ふふ。それは、ミョンデ姉に赤ん坊の時に投げられちゃったからなんじゃないの」
「ぐはあ」

 湯船の中で、そんなやりとりをしていたら、戸が開いて誰かが入ってきた。ロザンナだった。痴漢だったら反撃してやろうと思ったが、一流の宿でそういうのは無いらしい。

 当然すっぽんぽんなのだが、スカーレット嬢と異なり趣のようなものがない。迫力のボディなのは認めるが、なんというかな、少年っぽい雰囲気というか。男まさり? だが巨乳だ!

 体の洗い方も、ザバザバザバという感じで。お風呂に入りに来たというか、闖入者という感じだ。ざっぶんと俺は頭から波をかぶり、タオルが流されていってしまった。おい!

 それを見て、ミョンデ姉はけたけた笑っているが。
「もう、ロザンナってばお風呂は静かに入りなさい」

「まあそう堅い事は言いなさんなって。はあ、気持ちがいいぜえ。今まで碌な宿がなかったからなあ」
 俺は漂流中のタオルを捕獲すると乱暴者の前に行き、おっぱいの頂点を指さして大いに文句をつけてやった。

「この野蛮人め。お風呂ではマナーを守れよ」
「なんだと、このチビめ。こうしてやる」

 そう言ってひょいっと抱きしめられ、胸に埋められてしまった。うお! なんというか自力で脱出できない。

 できないというか、こういうのが久しぶりなので、あえてそうしているというのか。いきなりこれをやられるとは思わなかった。や、柔らかい。思ったよりもよかった!

「もう、ロザンナ。何やっているのよ。アンソニー、こっちへおいで」
 残念な事に、巨乳から離されてしまったが、もう一つのお胸に抱かれる事になったので個人的には満足だった。

「アンソニー、うちにもお風呂を作ろうよ」
「ミョンデ姉、無茶言わないで。いくらかかると思っているのさ」

「何人盗賊狩ってくればいいのかな」
 いやだな。一瞬、俺も本気で計算を始めちまったぜ。王都に、何かいい稼ぎが転がっていないかなあ。いいけど、盗賊はミョンデ姉が自分で狩るわけじゃあないよね?
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