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第一章 王太子様御乱心
1-13 お付きの者
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それから代官の彼にはたくさんの書類を書かせました。夜まで時間がないので、そいつを縛り上げて村まで引き摺って帰って。
ついでに食料もいただいてきました。そのあたりは、シナモンがちゃっかりと担当しています。昔はかっぱらいなどで生計を立てていた子ですから。
エロマンガ家から賄賂を貰っていた事、その事業についての全てのあらまし、関わった人物の名前などなど。
その他に、同じように悪事を働いていた人物の名前や、その根拠についても供述させました。
それらを絶対供述書という物に書かせたのです。立会人として私の名前も載せて。
これは嘘の供述をしたことが判明すると、その場で極刑にされてしまう代物ですので、大概の書類には凄い汗の跡があったりします。今回も例に漏れずに。
内容については保証付きです。何しろ、シナモンの自白魔法で書かせたものなのですから。
元は自白剤、スコポラミン(古い!)などの効果を説明してシナモンに作らせた魔法なのですから。
シナモンの作る魔法は難しくて、元ネタを提供した私にさえ再現不可能な難解魔法です。
本人に説明を求めても、難しい顔をして説明できないようで、完全な感覚魔法です。
ようするに天才にしかできないという奴ですね。王国からも関心が高く、時折レンタルで貸し出されております。
そういう時は、とびっきりの御馳走三昧ですので本人も満足そうです。そして帰ってくるなり、このような暴言を吐いたりするのですが。
「公爵家の食事は貧しいな~」
「あんたね~。あれは国賓並みの待遇の食事なんだから。王様だって毎日あんな物は食べていないわよ!」
捕まえたエロマンガ家に雇われていた者についても、取り調べは同様の待遇とさせていただきました。
こっちはもう下っ端なので太々しいものです。自白魔法はかけられなくても協力的でした。それが嘘でないのも、嘘発見器の魔法で確認済みです。
シナモンにこういう真似ができるため、私のサインがある絶対供述書は、SSL2の署名ばりに信頼性が非常に高いのです。
「おう、姉ちゃん。ちゃんと供述するから待遇の方は頼んだぜ。ああ、俺の名はコブン・ヘツラウだ」
またそんな名前を。まあいいのですが、こいつは全然へつらっていないのですがねえ。
「そんな事は王国が決める事だけど、あたしの配下になって働くつもりがあるなら考えておくわよ。
ただし、裏切りは絶対に許さないからね。超獣マリーの名にかけて、この世界のどこまでも追い回して止めを刺すわ」
「おーおー、おっかねえ姉ちゃんだ。まあ報酬さえたんまりいただければな」
これだから実利一本の奴は扱いやすいです。それに性格的にも気が合いそうですしね。
こうしてエロマンガ家への反撃の糸口と、奴らをよく知る人物を配下に加える事に成功しました。
むろん、あの代官は一生私に逆らう事など許しません。なにしろ、この私はこの国の未来の王妃になる……はずの人物なのですから。
ええい、あのアンポンタン・スフレと腐れホルスタインめ~。このもやもやとした思いの長けは、いずれ奴らを締める事で晴らしますわ。
そして私は、池の鯉を呼び寄せるように、両手をパンパンっと叩きました。
「ハトリ、ハトリはいますか」
すると、私のすぐ後ろで耳元に淫靡な感じに息を吹きかけながら返事をした馬鹿がいます。
「はーい、マリー姫、お呼びですかー」
「うわっ。だから、そういう登場の仕方はおよしなさいというのに!」
こいつは『私付きの諜報』の女です。
いえ、私が使える手駒というわけではなくて、私の『おいた』があまりにも激しかったため、国王陛下につけられてしまっただけという、『若き日の勲章』のようなものなのですが。
まあ、これがついているお蔭で今のように勝手に出歩いていてもそう気にされないという側面もあるわけなのですが、あまり外聞のいい物ではありません。
間諜を育て使役する費用だって税金から出ているのです。それを敵国ではなく、自国の公爵家の姫に使っているのですから。
そういう訳で、私は各国諜報の間でも、ちょっとした有名人です。あまり性質がよくない方面の話題で。
「ハトリ、『主』に気配を隠して登場するのはよくありませんよ。うっかり間違って殺してしまうかもしれないのですから」
「そんな事を言ってー。以前に普通に近付いていっても、何気にうっかり殺されかけたじゃないですかあ。
あれ以来、あなたに近寄る時には、必ず気配を殺しておいてから話すようにしているのです。
それに、いつから超獣マリーが私の主に。そんな物騒な主人に仕えたがる諜報なんて、この世界に一人もいやしませんよ」
なんという言い草か!
まあ、こういう遠慮のない物言いが出来る人なので私の担当が務まるのですが。どうやら諜報達からは、私という人間は機嫌を損ねるといきなり噛みつかれてしまうライオンか何かのような扱いになっているようです。
酷いわ、こんなに可愛い女の子なのに。でもまあ、確かに妥当な評価かなとは認めざるを得ないのですがね。
普通の女の子は笑顔で小遣い目当てにゴブリンキング討伐などに出かけたりはしないものですから。
とにもかくも、ハトリに数々の文書を委ねて送り出しました。送り先はもちろん、国王陛下その方であります。
新しい私の配下のコブンにも、さっそく働いてもらいますしね。さあ、頑張ってあれこれとエロマンガ家の悪事の証拠を集めて回るとしますか。
こうして実際にあの連中の悪事を目の当たりにしますと、『討伐』もやる気が出てまいりますわね!
ちょっとだけ魔物の討伐などをなさる冒険者の皆様方の気持ちがわかったような気がします。今度冒険者資格を取ってみようかしら。
今までは公爵令嬢として、さすがに外聞が悪そうなので遠慮してきたのですがね。今年は成人しましたので、ギルド入会にあたっての保護者のサインも不要ですから!
ついでに食料もいただいてきました。そのあたりは、シナモンがちゃっかりと担当しています。昔はかっぱらいなどで生計を立てていた子ですから。
エロマンガ家から賄賂を貰っていた事、その事業についての全てのあらまし、関わった人物の名前などなど。
その他に、同じように悪事を働いていた人物の名前や、その根拠についても供述させました。
それらを絶対供述書という物に書かせたのです。立会人として私の名前も載せて。
これは嘘の供述をしたことが判明すると、その場で極刑にされてしまう代物ですので、大概の書類には凄い汗の跡があったりします。今回も例に漏れずに。
内容については保証付きです。何しろ、シナモンの自白魔法で書かせたものなのですから。
元は自白剤、スコポラミン(古い!)などの効果を説明してシナモンに作らせた魔法なのですから。
シナモンの作る魔法は難しくて、元ネタを提供した私にさえ再現不可能な難解魔法です。
本人に説明を求めても、難しい顔をして説明できないようで、完全な感覚魔法です。
ようするに天才にしかできないという奴ですね。王国からも関心が高く、時折レンタルで貸し出されております。
そういう時は、とびっきりの御馳走三昧ですので本人も満足そうです。そして帰ってくるなり、このような暴言を吐いたりするのですが。
「公爵家の食事は貧しいな~」
「あんたね~。あれは国賓並みの待遇の食事なんだから。王様だって毎日あんな物は食べていないわよ!」
捕まえたエロマンガ家に雇われていた者についても、取り調べは同様の待遇とさせていただきました。
こっちはもう下っ端なので太々しいものです。自白魔法はかけられなくても協力的でした。それが嘘でないのも、嘘発見器の魔法で確認済みです。
シナモンにこういう真似ができるため、私のサインがある絶対供述書は、SSL2の署名ばりに信頼性が非常に高いのです。
「おう、姉ちゃん。ちゃんと供述するから待遇の方は頼んだぜ。ああ、俺の名はコブン・ヘツラウだ」
またそんな名前を。まあいいのですが、こいつは全然へつらっていないのですがねえ。
「そんな事は王国が決める事だけど、あたしの配下になって働くつもりがあるなら考えておくわよ。
ただし、裏切りは絶対に許さないからね。超獣マリーの名にかけて、この世界のどこまでも追い回して止めを刺すわ」
「おーおー、おっかねえ姉ちゃんだ。まあ報酬さえたんまりいただければな」
これだから実利一本の奴は扱いやすいです。それに性格的にも気が合いそうですしね。
こうしてエロマンガ家への反撃の糸口と、奴らをよく知る人物を配下に加える事に成功しました。
むろん、あの代官は一生私に逆らう事など許しません。なにしろ、この私はこの国の未来の王妃になる……はずの人物なのですから。
ええい、あのアンポンタン・スフレと腐れホルスタインめ~。このもやもやとした思いの長けは、いずれ奴らを締める事で晴らしますわ。
そして私は、池の鯉を呼び寄せるように、両手をパンパンっと叩きました。
「ハトリ、ハトリはいますか」
すると、私のすぐ後ろで耳元に淫靡な感じに息を吹きかけながら返事をした馬鹿がいます。
「はーい、マリー姫、お呼びですかー」
「うわっ。だから、そういう登場の仕方はおよしなさいというのに!」
こいつは『私付きの諜報』の女です。
いえ、私が使える手駒というわけではなくて、私の『おいた』があまりにも激しかったため、国王陛下につけられてしまっただけという、『若き日の勲章』のようなものなのですが。
まあ、これがついているお蔭で今のように勝手に出歩いていてもそう気にされないという側面もあるわけなのですが、あまり外聞のいい物ではありません。
間諜を育て使役する費用だって税金から出ているのです。それを敵国ではなく、自国の公爵家の姫に使っているのですから。
そういう訳で、私は各国諜報の間でも、ちょっとした有名人です。あまり性質がよくない方面の話題で。
「ハトリ、『主』に気配を隠して登場するのはよくありませんよ。うっかり間違って殺してしまうかもしれないのですから」
「そんな事を言ってー。以前に普通に近付いていっても、何気にうっかり殺されかけたじゃないですかあ。
あれ以来、あなたに近寄る時には、必ず気配を殺しておいてから話すようにしているのです。
それに、いつから超獣マリーが私の主に。そんな物騒な主人に仕えたがる諜報なんて、この世界に一人もいやしませんよ」
なんという言い草か!
まあ、こういう遠慮のない物言いが出来る人なので私の担当が務まるのですが。どうやら諜報達からは、私という人間は機嫌を損ねるといきなり噛みつかれてしまうライオンか何かのような扱いになっているようです。
酷いわ、こんなに可愛い女の子なのに。でもまあ、確かに妥当な評価かなとは認めざるを得ないのですがね。
普通の女の子は笑顔で小遣い目当てにゴブリンキング討伐などに出かけたりはしないものですから。
とにもかくも、ハトリに数々の文書を委ねて送り出しました。送り先はもちろん、国王陛下その方であります。
新しい私の配下のコブンにも、さっそく働いてもらいますしね。さあ、頑張ってあれこれとエロマンガ家の悪事の証拠を集めて回るとしますか。
こうして実際にあの連中の悪事を目の当たりにしますと、『討伐』もやる気が出てまいりますわね!
ちょっとだけ魔物の討伐などをなさる冒険者の皆様方の気持ちがわかったような気がします。今度冒険者資格を取ってみようかしら。
今までは公爵令嬢として、さすがに外聞が悪そうなので遠慮してきたのですがね。今年は成人しましたので、ギルド入会にあたっての保護者のサインも不要ですから!
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