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第二章 世直し聖女
2-31 福の神
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そして会場へ向かったのだが、なんというか上座というかステージっぽい感じというか、そういう感じに大きな椅子が置かれていて、草色用の席が出来上がっていた。
「おや、神獣様。
もう、おいででございますか。
皆の者、支度を早く」
なんと国王陛下が自ら接待をするらしくて張り切っている。
よかった。
私がホステスなんじゃなくて、王様自らホストとして頑張る所存なものらしい。
その他にマブダチの王太子もいるし。
ところで、王様ったらこいつをどうするつもりなのかな。
そこまで張り切っているところを見ると、この王宮で世話をするつもりなのだろうか。
そうなったら仕方がないので、お菓子を手土産にして存分にモフらせてもらうとしよう。
「御飯はまだでごわすか」
あいつめ。
やっぱり御飯の欲求に負けると、王様相手でもまったく人見知りしていない。
宴会が始まったら、私なんていなくたっていいよね。
まあ、今日はお菓子を作りに来たようなものだから別にいいんだけど。
「は、ははあ。ただいま」
王様、そんな奴に下手に出て、付け上がらせては絶対に駄目だと思うの。
一体、そいつにどんなご利益があるっていうのだ。
だが、笑ってリュールが私の頭をくしゃっとした。
そこのイケメン、そういう子ども扱い、今だけは止めるのです。
ここは王様、つまりあなたのお父上もおられる王宮の、しかも何やら訳のわからない行事のために、またしても貴族さん達が集められてしまっている場所なのですから。
気安く成人になった女の子の頭、しかもあんたらが言う所の聖女なる物の頭をそういう風にしてはならんと思うのは私だけ?
ああ、誰も気にしていませんね。
みんな、あの草色をした何かにもう夢中だ。
何なんだろう、あれは。
そんな私の顔を見て、リュールが解説してくれた。
「あれはな。
なんというか伝説の代物で、まあ縁起物みたいに考えておけ。
やはり、聖女のいる時に現れる事が多いものらしい。
建国神話に登場する存在で、一体どういう理屈なのかわからんのだが、国家の躍進・国防・災厄除けなどに貢献すると言われている」
「聖女があれを呼ぶのだと?」
「偶然かもしれんがな」
そんな訳がないでしょ。
それは絶対に『稀人聖女の作るおやつ』の匂いに惹かれてやってくるのだ。
しかし、どう見たってそのような福の神には見えないのですが。
強いて言うのであれば『残念神』あたり?
わからん。
どう見ても人畜無害なモフモフにしか見えない。
「とにかく、もう否定が出来ぬほどにはっきりと歴史上の統計からみて、そういった国益に圧倒的に貢献してくれている者なのでな。
今のようにあれこれと面倒な時代には大歓迎されるというわけだ。
見ろ、父のあの必死な姿を」
「お兄ちゃんの時代なら、何の苦労も要らないですね。
ただのマブダチなんだし。
サルの両側にマブダチ席でも作ってやったらいかがです?」
仕方がないな。
そのような福をもたらすような物ならば、後で聖女の新おやつでもやるしかあるまい。
そういう良い物だとわかった以上は、やっぱり家に持って帰ろう。
聖女が呼んだというのであれば、あれの管理権限は私にあるのだ。
もう完全にスイーツに対する期待感から私の後ろを追尾しているのだろう。
出会った時もそうだったし。
中身は殆どチュールみたいなものだからな。
もっと性質が悪いけど。
どうせ宴会が終わったら人見知りも始めて、私の背後をロックオンするのに違いあるまい。
「まあ、あいつらなら勝手に居座るさ」
「では、あの宴会が終わるまで、私らは女子会でも始めさせていただきますね」
「女子会?」
「女の子だけでやるお食事会とかスイーツパーティの事ですよ。
私の魔物騎士は参加資格ありです。
概ね、男に聞かれたくないような、えげつない生々しい話をしたりしますね」
「はっはっは、それはまた。
私は訊かなかった事にしよう」
「あ、あのマブダチども。
何の遠慮もなく、マブダチ・ポジションに収まりましたね。
モフモフともども、王様本人からサービスを受ける心積もりのようです。
なんという図々しい連中でしょう」
「まあ、一人は実の息子だし、もう一人は要人警護だと思えばいいさ。
うちの騎士団長のやる事には、誰もケチをつけんよ。
特に今みたいな時代にはな。
この前だって大活躍してくれただろう」
「ああ、納得しました。
それは王様だって少々労ったって罰は当たらないですよねえ」
まるでサーガの主人公のように、味方の絶体絶命大ピンチに登場して、強大な敵性魔物に躊躇いなく踊りかかっていき、あっさりと一撃で仕留める爆裂な勇者。
そして、あのような理不尽な『死の行軍』にも、痛みも苦しみもすべてを背負って先頭を切って臆することなく突っ込んでいき、体を張ったリーダーシップで部下を叱咤激励できる漢。
あの人が行くのなら、すべての部下が諦めて一緒に地獄まで行くしかないという、まさに騎士団長の鏡のような人物だ。
そりゃあ、周りの貴族達も文句を付けられないというか、あれを引きずり降ろした時点で自分がそれをやる破目になりかねないのだ。
団長ってそう野心があるようにも見えない、裏表のない豪傑だしなあ。
たぶん平民でしょ、あの人。
おまけに騎士団が大好きっぽい。
世の中、適材適所なんだなあ。
あの王太子も大概だけど。
まったく、いいコンビとしか言いようがない。
「おや、神獣様。
もう、おいででございますか。
皆の者、支度を早く」
なんと国王陛下が自ら接待をするらしくて張り切っている。
よかった。
私がホステスなんじゃなくて、王様自らホストとして頑張る所存なものらしい。
その他にマブダチの王太子もいるし。
ところで、王様ったらこいつをどうするつもりなのかな。
そこまで張り切っているところを見ると、この王宮で世話をするつもりなのだろうか。
そうなったら仕方がないので、お菓子を手土産にして存分にモフらせてもらうとしよう。
「御飯はまだでごわすか」
あいつめ。
やっぱり御飯の欲求に負けると、王様相手でもまったく人見知りしていない。
宴会が始まったら、私なんていなくたっていいよね。
まあ、今日はお菓子を作りに来たようなものだから別にいいんだけど。
「は、ははあ。ただいま」
王様、そんな奴に下手に出て、付け上がらせては絶対に駄目だと思うの。
一体、そいつにどんなご利益があるっていうのだ。
だが、笑ってリュールが私の頭をくしゃっとした。
そこのイケメン、そういう子ども扱い、今だけは止めるのです。
ここは王様、つまりあなたのお父上もおられる王宮の、しかも何やら訳のわからない行事のために、またしても貴族さん達が集められてしまっている場所なのですから。
気安く成人になった女の子の頭、しかもあんたらが言う所の聖女なる物の頭をそういう風にしてはならんと思うのは私だけ?
ああ、誰も気にしていませんね。
みんな、あの草色をした何かにもう夢中だ。
何なんだろう、あれは。
そんな私の顔を見て、リュールが解説してくれた。
「あれはな。
なんというか伝説の代物で、まあ縁起物みたいに考えておけ。
やはり、聖女のいる時に現れる事が多いものらしい。
建国神話に登場する存在で、一体どういう理屈なのかわからんのだが、国家の躍進・国防・災厄除けなどに貢献すると言われている」
「聖女があれを呼ぶのだと?」
「偶然かもしれんがな」
そんな訳がないでしょ。
それは絶対に『稀人聖女の作るおやつ』の匂いに惹かれてやってくるのだ。
しかし、どう見たってそのような福の神には見えないのですが。
強いて言うのであれば『残念神』あたり?
わからん。
どう見ても人畜無害なモフモフにしか見えない。
「とにかく、もう否定が出来ぬほどにはっきりと歴史上の統計からみて、そういった国益に圧倒的に貢献してくれている者なのでな。
今のようにあれこれと面倒な時代には大歓迎されるというわけだ。
見ろ、父のあの必死な姿を」
「お兄ちゃんの時代なら、何の苦労も要らないですね。
ただのマブダチなんだし。
サルの両側にマブダチ席でも作ってやったらいかがです?」
仕方がないな。
そのような福をもたらすような物ならば、後で聖女の新おやつでもやるしかあるまい。
そういう良い物だとわかった以上は、やっぱり家に持って帰ろう。
聖女が呼んだというのであれば、あれの管理権限は私にあるのだ。
もう完全にスイーツに対する期待感から私の後ろを追尾しているのだろう。
出会った時もそうだったし。
中身は殆どチュールみたいなものだからな。
もっと性質が悪いけど。
どうせ宴会が終わったら人見知りも始めて、私の背後をロックオンするのに違いあるまい。
「まあ、あいつらなら勝手に居座るさ」
「では、あの宴会が終わるまで、私らは女子会でも始めさせていただきますね」
「女子会?」
「女の子だけでやるお食事会とかスイーツパーティの事ですよ。
私の魔物騎士は参加資格ありです。
概ね、男に聞かれたくないような、えげつない生々しい話をしたりしますね」
「はっはっは、それはまた。
私は訊かなかった事にしよう」
「あ、あのマブダチども。
何の遠慮もなく、マブダチ・ポジションに収まりましたね。
モフモフともども、王様本人からサービスを受ける心積もりのようです。
なんという図々しい連中でしょう」
「まあ、一人は実の息子だし、もう一人は要人警護だと思えばいいさ。
うちの騎士団長のやる事には、誰もケチをつけんよ。
特に今みたいな時代にはな。
この前だって大活躍してくれただろう」
「ああ、納得しました。
それは王様だって少々労ったって罰は当たらないですよねえ」
まるでサーガの主人公のように、味方の絶体絶命大ピンチに登場して、強大な敵性魔物に躊躇いなく踊りかかっていき、あっさりと一撃で仕留める爆裂な勇者。
そして、あのような理不尽な『死の行軍』にも、痛みも苦しみもすべてを背負って先頭を切って臆することなく突っ込んでいき、体を張ったリーダーシップで部下を叱咤激励できる漢。
あの人が行くのなら、すべての部下が諦めて一緒に地獄まで行くしかないという、まさに騎士団長の鏡のような人物だ。
そりゃあ、周りの貴族達も文句を付けられないというか、あれを引きずり降ろした時点で自分がそれをやる破目になりかねないのだ。
団長ってそう野心があるようにも見えない、裏表のない豪傑だしなあ。
たぶん平民でしょ、あの人。
おまけに騎士団が大好きっぽい。
世の中、適材適所なんだなあ。
あの王太子も大概だけど。
まったく、いいコンビとしか言いようがない。
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