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第二章 世直し聖女
2-29 新兵器登場
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そして、お昼は美味しい王宮ランチを食べ終えて、それからお菓子を焼く事にした。
草色の奴が煩いので。
あとチュールにも約束してたような気がするし。
それに本日はベロニカさんを応援に呼んでおいたので、ちょっとそっちからの圧力もね。
「よーし、本日は準備しておいたホイップクリームを使用しますよ」
『僕、一番』
「はいはい。約束ですからね」
「それが例の美味しい奴ですか」
ベロニカさんの目が妖しく光を帯びてきた。
この方がいらっしゃるので、今日も少し量を多く作る必要がありますね。
「そうです。
本日はシュークリームのカスタードクリームにホイップクリームを合わせたダブルシューを製作します。
あと、ホイップクリームをプリンに乗せたプリンアラモードもね。
あと、もう一つ試作してみようと思っています」
更にもう一つ考えて準備をしておいたのだが、そいつはまた夜のお楽しみという事で。
「ほお、ついにアレを世に出される事に。
おめでとうございます、サヤ様」
「ありがとう、アメリ。
今日はあなたもお酒禁止ですから、その代わり美味しいスイーツを用意しますよ」
「楽しみです」
気のせいかもしれませんが、そこの床で二人の酔っ払いのベッドになっている草色の奴が、スイーツと聞いてピクっと動いたような気がしますね。
まあ夕方までには気付け薬の代わりに、いろいろとお供えしておこうかと思っていたのでいいのですけれども。
「ではまず、待望のペアシューから。
これは中に詰めるクリームを二種類使用しますので少し大きめサイズなのが普通です。
大きい方が形的にはしっかりしますので、皮は割と柔らかめ設定ですかね。
でもやはり油断するとペシャンコになってしまうのは変わりません。
柔らかいので特に」
じっくりと焼きながら、その間に他の鉄板に細長く生地をセットしていく私。
「それは?」
「こいつはエクレア。
チョコが手に入りましたので、これを。
こいつはサイズが小さめなので、ホイップクリームは使いません。
その代わりにチョコがかかっておりますので、二つの味が楽しめる事に変わりないです」
そして、また草色の奴がピクピクっとしている。
何回ピクっとしたら起き上がるのか。
最低でも夕方直前には起こさないといけないのですけどね。
まだ蹴りを入れる時間じゃありませんね。
どうせ蹴りを入れるなら、そいつを敷布団や枕の代わりにしている奴らから。
でもさすがにイケメン王太子に蹴りを入れるのは少々躊躇われます。
そのあたりは弟の元王子様にやっていただきますか。
タイムリミットまで、あと三時間といったところですかね。
今夜の主賓であるはずの草色の奴も含めて、お前らいい加減に起きろよ。
一体いつまで飲んでたんだ、もう。
その間にプリンアラモード用のプリンやフルーツなどの仕込みをしておきますか。
チュールがそれらを食べたそうにしてるので、各部素材を少し齧らせておく事に。
チャックが何故かウエハースが気になるらしくて、ひょいっと触手でつまんで齧っていた。
「それ、美味しいですか?」
『微妙です。
本官には少々歯ごたえが足りないかもしれないと聖女サヤに報告しておきます。
しかし、微妙かつ気になる物ですとも考察結果を告白します』
これはチャックにしては珍しい反応が返ってきたな。
ウエハースが気に入ったのなら、もっと買っておくか。
確かにこの手のウエハースは多少硬めに出来ているような。
きっとすぐにふやけてしまいそうなアイスクリームに刺す物と共用にしているのではないかと思うのだが、そもそも、この世界にはアイスクリームは無さそうなんだけど。
この子の場合、普通に食べられる物を欲する事自体が珍しいのだし。
たぶん、食い物を欲しがるのはこれが初めてなんじゃないのだろうか。
だが、確かに微妙な物には違いない。
そして焼き上がって来た大きめのシューが冷めてから、エクレアを魔導オーブンに突っ込んでおいて、切り込みを入れてクリームを詰めていきます。
これが美味いんだな、また。
『一個食べる』
「はいどうぞ。
どうせなら、そこの草色の奴の前で食べてきて。
いい加減に起こさないとな。
うっかり取られないようにね。
もし起き上がってきたら、こっちへ誘導してちょうだい」
『はーい』
まあ、そいつが起き上がって王太子が布団から放り出されたのなら私のせいじゃないですからね。
万が一頭を打って死んでも、私が生き返らせておけば無かった事に出来ますし。
その辺は本人の係累である弟さんで人体実験済みですので何も問題ありませんね。
草色の奴が煩いので。
あとチュールにも約束してたような気がするし。
それに本日はベロニカさんを応援に呼んでおいたので、ちょっとそっちからの圧力もね。
「よーし、本日は準備しておいたホイップクリームを使用しますよ」
『僕、一番』
「はいはい。約束ですからね」
「それが例の美味しい奴ですか」
ベロニカさんの目が妖しく光を帯びてきた。
この方がいらっしゃるので、今日も少し量を多く作る必要がありますね。
「そうです。
本日はシュークリームのカスタードクリームにホイップクリームを合わせたダブルシューを製作します。
あと、ホイップクリームをプリンに乗せたプリンアラモードもね。
あと、もう一つ試作してみようと思っています」
更にもう一つ考えて準備をしておいたのだが、そいつはまた夜のお楽しみという事で。
「ほお、ついにアレを世に出される事に。
おめでとうございます、サヤ様」
「ありがとう、アメリ。
今日はあなたもお酒禁止ですから、その代わり美味しいスイーツを用意しますよ」
「楽しみです」
気のせいかもしれませんが、そこの床で二人の酔っ払いのベッドになっている草色の奴が、スイーツと聞いてピクっと動いたような気がしますね。
まあ夕方までには気付け薬の代わりに、いろいろとお供えしておこうかと思っていたのでいいのですけれども。
「ではまず、待望のペアシューから。
これは中に詰めるクリームを二種類使用しますので少し大きめサイズなのが普通です。
大きい方が形的にはしっかりしますので、皮は割と柔らかめ設定ですかね。
でもやはり油断するとペシャンコになってしまうのは変わりません。
柔らかいので特に」
じっくりと焼きながら、その間に他の鉄板に細長く生地をセットしていく私。
「それは?」
「こいつはエクレア。
チョコが手に入りましたので、これを。
こいつはサイズが小さめなので、ホイップクリームは使いません。
その代わりにチョコがかかっておりますので、二つの味が楽しめる事に変わりないです」
そして、また草色の奴がピクピクっとしている。
何回ピクっとしたら起き上がるのか。
最低でも夕方直前には起こさないといけないのですけどね。
まだ蹴りを入れる時間じゃありませんね。
どうせ蹴りを入れるなら、そいつを敷布団や枕の代わりにしている奴らから。
でもさすがにイケメン王太子に蹴りを入れるのは少々躊躇われます。
そのあたりは弟の元王子様にやっていただきますか。
タイムリミットまで、あと三時間といったところですかね。
今夜の主賓であるはずの草色の奴も含めて、お前らいい加減に起きろよ。
一体いつまで飲んでたんだ、もう。
その間にプリンアラモード用のプリンやフルーツなどの仕込みをしておきますか。
チュールがそれらを食べたそうにしてるので、各部素材を少し齧らせておく事に。
チャックが何故かウエハースが気になるらしくて、ひょいっと触手でつまんで齧っていた。
「それ、美味しいですか?」
『微妙です。
本官には少々歯ごたえが足りないかもしれないと聖女サヤに報告しておきます。
しかし、微妙かつ気になる物ですとも考察結果を告白します』
これはチャックにしては珍しい反応が返ってきたな。
ウエハースが気に入ったのなら、もっと買っておくか。
確かにこの手のウエハースは多少硬めに出来ているような。
きっとすぐにふやけてしまいそうなアイスクリームに刺す物と共用にしているのではないかと思うのだが、そもそも、この世界にはアイスクリームは無さそうなんだけど。
この子の場合、普通に食べられる物を欲する事自体が珍しいのだし。
たぶん、食い物を欲しがるのはこれが初めてなんじゃないのだろうか。
だが、確かに微妙な物には違いない。
そして焼き上がって来た大きめのシューが冷めてから、エクレアを魔導オーブンに突っ込んでおいて、切り込みを入れてクリームを詰めていきます。
これが美味いんだな、また。
『一個食べる』
「はいどうぞ。
どうせなら、そこの草色の奴の前で食べてきて。
いい加減に起こさないとな。
うっかり取られないようにね。
もし起き上がってきたら、こっちへ誘導してちょうだい」
『はーい』
まあ、そいつが起き上がって王太子が布団から放り出されたのなら私のせいじゃないですからね。
万が一頭を打って死んでも、私が生き返らせておけば無かった事に出来ますし。
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