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第二章 世直し聖女

2-28 求む、使える人材(魔物材含む)

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 そして、朝御飯は王宮にて憧れの天蓋付きお姫様ベッドの上でのお部屋飯初体験でしっかりといただき、さっそく公爵家と騎士団本部へ、応援を寄越させるためのメッセージを送っってもらった。

 こういう時にダイレクトにメッセージなんかを届けてくれるお使い魔物とか欲しいのよね。

 チュールにもやらせられない事はないのだけど、この子は私の大事な護衛騎士なので。

 そもそも借り物の騎士だしな。
 待っていても、彼の正規主人がちっとも帰ってこないんだけど。

 本当に待っているんだけどなあ。

 お使い魔物は、出来れば空を飛べる魔物がいいのよね。
 伝書鳩なんかは持ち歩きアンド一方通行があまりにも面倒過ぎるからパス。

 通信の魔道具ってどこかにないものかしら。

「おお、サヤ。起きたか」

 既にピシっと支度を整えて、未だにベッドの中の温もりと離婚出来ていない、だらけた私を見ているリュールがいた。

「あのう、一応ここは乙女の部屋という事になっているのですが」

「まあ、その格好で着替えるわけでもあるまい。
 それに」

 彼の目線の先には、あの残念な奴らがいた。

「ふ、この一張羅のままうっかりと寝てしまいましたか。
 しわくちゃもいいところですね。
 なんか寝汗で汗臭くなっていますし。

 それは当座、浄化の魔法で間に合わせるとして。
 騎士団本部に頼んで、間に合えばベロニカさんに着替えを運んでもらいますか」

「そういうものはアメリに頼んだ方がいいのではないか?」

「生憎と神官服はこれ一丁しかないので、あそこでマリエールに出してもらわないとないのですよ。
 あと、彼女にはこの現状を把握しておいていただきたいですね」

「ドレスでは駄目なのか?
 王宮ならばいくらでも整うと思うのだが」

「あのう、副騎士団長閣下。

 私をいきなり騎士団の宿舎にぶち込もうとしたあなたに、今更女性のファッションについて語ろうとは特に思いませんが、王様も出席なさる今晩の晩餐のためのドレスを今から整えようというのは非常に辛いです。

 そういう物の女性の支度を整えるには最低でも数日かかるくらいに覚えていただいておくと幸せに存じます。
 特に王宮仕様に関しましては」

 その点において、学校の制服とか神官服は即戦力にして最適解なのであった。

 特に異世界の小娘が、付け焼刃のファションで王侯貴族の女性相手に真っ向から勝負して着飾るのは愚策の中でも最低級の下策。

 たぶん、中にはそういう事で私を中傷して敵方に回りこみたい意向の奴もいそうですから。

 ……やっぱりチャックも呼んだ方がいいかしらね。
 あの新モフモフ野郎はあまり役に立ちそうにない。

 むしろ、精霊獣とか神獣とか言う特権階級である事を除けば、一体どこに能があるのかというくらい残念な存在なので。

「そうか、覚えておこう」

 どうせ生真面目なあなたって、そういう仕事に関係のない話は右から左に脳内を抜けていきますよね。

 まあイケメンだし、悪い人では絶対にないから許しますけど。

 少なくとも、そこで酔い潰れたまま床に転がっている駄目な男衆よりは遥かに使える人材ですので。

 やがて、お部屋でランチの時間を待っている間に、ベロニカそしてアメリが次々とやってきてくれた。

 そして、ありがたい事にアメリは、なんとか復旧出来たらしいチャックを連れてきてくれた。

 もしかすると、まだ二日酔いが抜けていないかもしれないアメリが、サスペンションのよく効いた高性能オープンカーを乗り回したかっただけという可能性はありますが。

『本官はなんとか活動可能なまでに復旧しておりますが、性能的には通常の六十%程度の状態であると聖女サヤに報告いたします』

「いいの。
 今日は念のためにいてくれるだけで。

 あなたが一緒にいてくれるだけで、私に余計なちょっかいをかけようとかいう邪まな考えを持った馬鹿な奴が勝手に遠ざかってくれるから。
 今夜はそこが一番重要なポイントなのよ」

『はっはっは。
 それでは本官は、本日の宴におきましては少し悪そうな感じで警護に勤しもうかと聖女サヤに提言いたします』

「さすが、あなたはよくわかっているわね。
 そこでまだ無様に転がったままの男達に、あなたの爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいわ」

『まことに残念ながら、本官には爪らしき物がないと聖女サヤに報告させていただきます』

「それはまことにもって残念な事ね」

 その一幕を見て、ベロニカは溜息を吐いた。

「まったく、しっかり者のそいつに、うちの騎士団長を任せたいくらいの気分だわ。
 今夜が宴会の本番らしいから、その無様な状態はどうせ明日も継続よね」

「それは間違いない事だと、聖女サヤからも断言させていただきます」

「サヤ様。宴会、楽しみですね」

「アメリ、御飯は食べていてもいいけど、今日はお酒を遠慮してね」

「もちろん心得ております、サヤ様。
 いや夕べは久しぶりに痛飲いたしましたね。
 ありがとうございます」

「うん。見ていて実に痛快でしたよ。
 人間、たまには弾けなくっちゃ」

 そして、アメリも実にいい笑顔を返してくれた。
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