85 / 104
第二章 世直し聖女
2-28 求む、使える人材(魔物材含む)
しおりを挟む
そして、朝御飯は王宮にて憧れの天蓋付きお姫様ベッドの上でのお部屋飯初体験でしっかりといただき、さっそく公爵家と騎士団本部へ、応援を寄越させるためのメッセージを送っってもらった。
こういう時にダイレクトにメッセージなんかを届けてくれるお使い魔物とか欲しいのよね。
チュールにもやらせられない事はないのだけど、この子は私の大事な護衛騎士なので。
そもそも借り物の騎士だしな。
待っていても、彼の正規主人がちっとも帰ってこないんだけど。
本当に待っているんだけどなあ。
お使い魔物は、出来れば空を飛べる魔物がいいのよね。
伝書鳩なんかは持ち歩きアンド一方通行があまりにも面倒過ぎるからパス。
通信の魔道具ってどこかにないものかしら。
「おお、サヤ。起きたか」
既にピシっと支度を整えて、未だにベッドの中の温もりと離婚出来ていない、だらけた私を見ているリュールがいた。
「あのう、一応ここは乙女の部屋という事になっているのですが」
「まあ、その格好で着替えるわけでもあるまい。
それに」
彼の目線の先には、あの残念な奴らがいた。
「ふ、この一張羅のままうっかりと寝てしまいましたか。
しわくちゃもいいところですね。
なんか寝汗で汗臭くなっていますし。
それは当座、浄化の魔法で間に合わせるとして。
騎士団本部に頼んで、間に合えばベロニカさんに着替えを運んでもらいますか」
「そういうものはアメリに頼んだ方がいいのではないか?」
「生憎と神官服はこれ一丁しかないので、あそこでマリエールに出してもらわないとないのですよ。
あと、彼女にはこの現状を把握しておいていただきたいですね」
「ドレスでは駄目なのか?
王宮ならばいくらでも整うと思うのだが」
「あのう、副騎士団長閣下。
私をいきなり騎士団の宿舎にぶち込もうとしたあなたに、今更女性のファッションについて語ろうとは特に思いませんが、王様も出席なさる今晩の晩餐のためのドレスを今から整えようというのは非常に辛いです。
そういう物の女性の支度を整えるには最低でも数日かかるくらいに覚えていただいておくと幸せに存じます。
特に王宮仕様に関しましては」
その点において、学校の制服とか神官服は即戦力にして最適解なのであった。
特に異世界の小娘が、付け焼刃のファションで王侯貴族の女性相手に真っ向から勝負して着飾るのは愚策の中でも最低級の下策。
たぶん、中にはそういう事で私を中傷して敵方に回りこみたい意向の奴もいそうですから。
……やっぱりチャックも呼んだ方がいいかしらね。
あの新モフモフ野郎はあまり役に立ちそうにない。
むしろ、精霊獣とか神獣とか言う特権階級である事を除けば、一体どこに能があるのかというくらい残念な存在なので。
「そうか、覚えておこう」
どうせ生真面目なあなたって、そういう仕事に関係のない話は右から左に脳内を抜けていきますよね。
まあイケメンだし、悪い人では絶対にないから許しますけど。
少なくとも、そこで酔い潰れたまま床に転がっている駄目な男衆よりは遥かに使える人材ですので。
やがて、お部屋でランチの時間を待っている間に、ベロニカそしてアメリが次々とやってきてくれた。
そして、ありがたい事にアメリは、なんとか復旧出来たらしいチャックを連れてきてくれた。
もしかすると、まだ二日酔いが抜けていないかもしれないアメリが、サスペンションのよく効いた高性能オープンカーを乗り回したかっただけという可能性はありますが。
『本官はなんとか活動可能なまでに復旧しておりますが、性能的には通常の六十%程度の状態であると聖女サヤに報告いたします』
「いいの。
今日は念のためにいてくれるだけで。
あなたが一緒にいてくれるだけで、私に余計なちょっかいをかけようとかいう邪まな考えを持った馬鹿な奴が勝手に遠ざかってくれるから。
今夜はそこが一番重要なポイントなのよ」
『はっはっは。
それでは本官は、本日の宴におきましては少し悪そうな感じで警護に勤しもうかと聖女サヤに提言いたします』
「さすが、あなたはよくわかっているわね。
そこでまだ無様に転がったままの男達に、あなたの爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいわ」
『まことに残念ながら、本官には爪らしき物がないと聖女サヤに報告させていただきます』
「それはまことにもって残念な事ね」
その一幕を見て、ベロニカは溜息を吐いた。
「まったく、しっかり者のそいつに、うちの騎士団長を任せたいくらいの気分だわ。
今夜が宴会の本番らしいから、その無様な状態はどうせ明日も継続よね」
「それは間違いない事だと、聖女サヤからも断言させていただきます」
「サヤ様。宴会、楽しみですね」
「アメリ、御飯は食べていてもいいけど、今日はお酒を遠慮してね」
「もちろん心得ております、サヤ様。
いや夕べは久しぶりに痛飲いたしましたね。
ありがとうございます」
「うん。見ていて実に痛快でしたよ。
人間、たまには弾けなくっちゃ」
そして、アメリも実にいい笑顔を返してくれた。
こういう時にダイレクトにメッセージなんかを届けてくれるお使い魔物とか欲しいのよね。
チュールにもやらせられない事はないのだけど、この子は私の大事な護衛騎士なので。
そもそも借り物の騎士だしな。
待っていても、彼の正規主人がちっとも帰ってこないんだけど。
本当に待っているんだけどなあ。
お使い魔物は、出来れば空を飛べる魔物がいいのよね。
伝書鳩なんかは持ち歩きアンド一方通行があまりにも面倒過ぎるからパス。
通信の魔道具ってどこかにないものかしら。
「おお、サヤ。起きたか」
既にピシっと支度を整えて、未だにベッドの中の温もりと離婚出来ていない、だらけた私を見ているリュールがいた。
「あのう、一応ここは乙女の部屋という事になっているのですが」
「まあ、その格好で着替えるわけでもあるまい。
それに」
彼の目線の先には、あの残念な奴らがいた。
「ふ、この一張羅のままうっかりと寝てしまいましたか。
しわくちゃもいいところですね。
なんか寝汗で汗臭くなっていますし。
それは当座、浄化の魔法で間に合わせるとして。
騎士団本部に頼んで、間に合えばベロニカさんに着替えを運んでもらいますか」
「そういうものはアメリに頼んだ方がいいのではないか?」
「生憎と神官服はこれ一丁しかないので、あそこでマリエールに出してもらわないとないのですよ。
あと、彼女にはこの現状を把握しておいていただきたいですね」
「ドレスでは駄目なのか?
王宮ならばいくらでも整うと思うのだが」
「あのう、副騎士団長閣下。
私をいきなり騎士団の宿舎にぶち込もうとしたあなたに、今更女性のファッションについて語ろうとは特に思いませんが、王様も出席なさる今晩の晩餐のためのドレスを今から整えようというのは非常に辛いです。
そういう物の女性の支度を整えるには最低でも数日かかるくらいに覚えていただいておくと幸せに存じます。
特に王宮仕様に関しましては」
その点において、学校の制服とか神官服は即戦力にして最適解なのであった。
特に異世界の小娘が、付け焼刃のファションで王侯貴族の女性相手に真っ向から勝負して着飾るのは愚策の中でも最低級の下策。
たぶん、中にはそういう事で私を中傷して敵方に回りこみたい意向の奴もいそうですから。
……やっぱりチャックも呼んだ方がいいかしらね。
あの新モフモフ野郎はあまり役に立ちそうにない。
むしろ、精霊獣とか神獣とか言う特権階級である事を除けば、一体どこに能があるのかというくらい残念な存在なので。
「そうか、覚えておこう」
どうせ生真面目なあなたって、そういう仕事に関係のない話は右から左に脳内を抜けていきますよね。
まあイケメンだし、悪い人では絶対にないから許しますけど。
少なくとも、そこで酔い潰れたまま床に転がっている駄目な男衆よりは遥かに使える人材ですので。
やがて、お部屋でランチの時間を待っている間に、ベロニカそしてアメリが次々とやってきてくれた。
そして、ありがたい事にアメリは、なんとか復旧出来たらしいチャックを連れてきてくれた。
もしかすると、まだ二日酔いが抜けていないかもしれないアメリが、サスペンションのよく効いた高性能オープンカーを乗り回したかっただけという可能性はありますが。
『本官はなんとか活動可能なまでに復旧しておりますが、性能的には通常の六十%程度の状態であると聖女サヤに報告いたします』
「いいの。
今日は念のためにいてくれるだけで。
あなたが一緒にいてくれるだけで、私に余計なちょっかいをかけようとかいう邪まな考えを持った馬鹿な奴が勝手に遠ざかってくれるから。
今夜はそこが一番重要なポイントなのよ」
『はっはっは。
それでは本官は、本日の宴におきましては少し悪そうな感じで警護に勤しもうかと聖女サヤに提言いたします』
「さすが、あなたはよくわかっているわね。
そこでまだ無様に転がったままの男達に、あなたの爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいわ」
『まことに残念ながら、本官には爪らしき物がないと聖女サヤに報告させていただきます』
「それはまことにもって残念な事ね」
その一幕を見て、ベロニカは溜息を吐いた。
「まったく、しっかり者のそいつに、うちの騎士団長を任せたいくらいの気分だわ。
今夜が宴会の本番らしいから、その無様な状態はどうせ明日も継続よね」
「それは間違いない事だと、聖女サヤからも断言させていただきます」
「サヤ様。宴会、楽しみですね」
「アメリ、御飯は食べていてもいいけど、今日はお酒を遠慮してね」
「もちろん心得ております、サヤ様。
いや夕べは久しぶりに痛飲いたしましたね。
ありがとうございます」
「うん。見ていて実に痛快でしたよ。
人間、たまには弾けなくっちゃ」
そして、アメリも実にいい笑顔を返してくれた。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。


最後に報われるのは誰でしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。
「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。
限界なのはリリアの方だったからだ。
なので彼女は、ある提案をする。
「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。
リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。
「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」
リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。
だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。
そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる