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第二章 世直し聖女
2-15 八岐大蛇一匹分
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今日はパーティ当日だ。とにかく人数が多いパーティなので一工夫をした。
それは卓上調理器だ。
やっぱり熱々で料理は食べたいものだし、量を捌かねばならない。
たとえば、ウインナー。
長細くて食べ応えのある奴を二千本は買ってきてある。
とにかく参加人数が多いパーティなので、量は一番大事だ。
味は材料の品質でカバー。
余ったらまた今度何かの時に食べればいいので。
それを卓上七輪みたいな魔導器具で自分達の好みで焼くのだ。
出来合いを焼いておくと冷めちゃうからね。
マスタードソースにケチャップなど数種類のソースも用意しておいた。
ハムステーキみたいに他の食材を焼いてもいいし。
エアコンのような設備はあるので、会場の温度が上がり過ぎる事はあるまい。
午前中も、おやつをしっかりと作り、本日も試食を兼ねた昼食後に騎士団へと向かった。
リュールはとっくに出勤しているので、私とアメリ、それにチュールだけだ。
あと公爵家の料理人さんを二人応援に借りてきている。
それとアメリの他にメイドさんを二人ほど。
「ついでに食材を買い足していこう。
それと不安なんで、もっとお酒を買っていきたいの」
「ああ、私もなんだか不安ですね。
冒険者・近衛兵も含む国軍・騎士団といえばウワバミ御三家と言われるほどですから。
よければ、あれを仕入れていきませんか。
エールです」
「ああ、それビールだよね。
日本と同じ物かどうかよくわからないけど。
あれも表面発酵とかいろいろあるんだよね。
よくわかんない。
美味しいのかな。
私はお酒を飲まないから、日本の物と味を比べられないな」
「それなら高い奴を買っていきましょう。
あれなら誰も文句は言いません。
あの店にも置いてありますよ」
「じゃあ、それもついでに」
「十樽ほどあればいいのではないでしょうか」
「壮観だなー」
そして、リカー・ロイヤルでまた白金貨二枚分の酒を仕入れ、その上エールも買ったのだが。
「ビヤ樽、でかっ」
日本のアルミ樽の八倍くらいの大きさだ。
「これで一樽二百五十リットルくらいじゃないですかね」
四分の一トン樽ねえ。
それはまた本格的な、醸造所に置かれているようなビヤ樽のサイズだなあ。
よく考えたら二百五十リットル樽で百万円するビールか。
リッター四千円、確かに高級ビールだ。
「さすがに多すぎない? 他のお酒もあるんだし」
に、二千五百リットルあるのよ?
「甘いですね。
今回はこれで丁度いいくらいじゃないでしょうか。
ただ酒の上、高級酒ばかりですから。
あそこは女性もたくさん飲まれる方も多いですし」
「マジっすか。
いや別にいいんですけどね。
しかし、酒代だけでほぼ白金貨五枚か。
一体どんな宴会なんだよ」
「いいじゃないですか。
きっと楽しいですよ」
「八岐大蛇一匹分だな~」
確かあれも八岐って事は首が九つある九頭竜なんだよね。
一樽しか余らないわ。
そして、なんとビールを冷たいままにしておける魔道具まであった。
もちろん十個お買い上げだ。
それから肉屋と野菜ショップへ回って、追加の食材を昨日並みに買い込んできた。
昨日見なかった食材も見かけたので買って来た。
あの金貨鳥も追加で二十五羽手に入ったのだ。
「これなら、さすがに大丈夫じゃない?」
「まあこんなもんでしょう。
それでは参りますか」
少々浮かれた感じに騎士団本部へ行くと、何か大騒ぎをしていた。
「あれ、どうしたのかな」
ベロニカが号令を発し、騎士達を動かしている。
団長の姿は見えない。
「あれえ、何かあったの」
「ああ、サヤ。
すみません、本日のパーティは中止になるようです」
「え、どうして」
「王宮に魔物が出ました」
「ぐはあ」
こ、これはひょっとして、この前の第二ラウンドって奴⁉
それは慰労会どころじゃないなあ。
「どんな奴が出たの?」
「隠密系の物でしょう。
国王一家の暗殺に現れた可能性があります。
現在騎士団も団長以下向かっていますし、冒険者ギルドにも指名依頼で応援を呼んでいます」
「うわあ」
どうしようか。
考えた末に、公爵家の料理人さん達にはお菓子作りを頼んでおいた。
冷蔵庫にしまっておける奴を。
あと、クッキーなんかの焼き菓子も頼んでおいた。
今回はプリンを大量に用意する予定だったのだ。
この世界、何故かプリン・シュークリーム・タルトなどの卵・カスタード系とホイップクリーム系のスイーツがない。
彼らにこっちで作ってもらう予定だったのだ。
メイドさん達も一緒にお手伝いだ。
これは次回の宴会用に収納に仕舞っておこうと。
ベロニカに冷蔵庫を借りられるように頼んでから、アメリに情報収集を頼んでおき、公爵家へと戻った。
「チャック、いるかなー」
この邸内にて大声で呼べば、感覚が鋭敏な彼にはたいてい聞こえる。
ほどなく、巨大な自動掃除機のような雰囲気の巨大な雄姿が参上した。
私は、さっさと例の『聖女の鎧』に着替えておいた。
何があるかわからないからな。
『どうしました、聖女サヤ。
と呼び出された本官は聖女サヤに尋ねてみます』
「ああ、王宮に魔物が出たって大騒ぎしてるの。
あれじゃ今日のパーティは中止かな。
そういうわけなので、聖女騎士団は急遽全員出動です」
『イエスマム』
『パーティが中止なんてー。残念だー』
「まあまあ、いっぱい試食出来たじゃない。
帰る頃にはプリンもいっぱい出来ているわよ」
『やったあ』
「それじゃ、あたし達はチャックに乗っていこう。
うちの馬車は料理人さん達のために騎士団本部へ行ってもらうわ」
そして、アメリを拾うために馬車よりも先に騎士団本部へと向かった。
彼女は入り口で待ってくれていた。
「ああ、サヤ様。
プリンの最初のロットが出来上がったそうです。
お持ちしますか」
「ああ、もらっていこうかな。
この間もすぐ食べられる物が役に立ったし。
甘いものはああいう時には有用だしね」
どうせアメリの事だから、ちゃっかりともう味見は済ませたのに違いない。
「プリンの出来はどう?」
「最高です」
「オーケー。
じゃあ何も問題ないね」
それは卓上調理器だ。
やっぱり熱々で料理は食べたいものだし、量を捌かねばならない。
たとえば、ウインナー。
長細くて食べ応えのある奴を二千本は買ってきてある。
とにかく参加人数が多いパーティなので、量は一番大事だ。
味は材料の品質でカバー。
余ったらまた今度何かの時に食べればいいので。
それを卓上七輪みたいな魔導器具で自分達の好みで焼くのだ。
出来合いを焼いておくと冷めちゃうからね。
マスタードソースにケチャップなど数種類のソースも用意しておいた。
ハムステーキみたいに他の食材を焼いてもいいし。
エアコンのような設備はあるので、会場の温度が上がり過ぎる事はあるまい。
午前中も、おやつをしっかりと作り、本日も試食を兼ねた昼食後に騎士団へと向かった。
リュールはとっくに出勤しているので、私とアメリ、それにチュールだけだ。
あと公爵家の料理人さんを二人応援に借りてきている。
それとアメリの他にメイドさんを二人ほど。
「ついでに食材を買い足していこう。
それと不安なんで、もっとお酒を買っていきたいの」
「ああ、私もなんだか不安ですね。
冒険者・近衛兵も含む国軍・騎士団といえばウワバミ御三家と言われるほどですから。
よければ、あれを仕入れていきませんか。
エールです」
「ああ、それビールだよね。
日本と同じ物かどうかよくわからないけど。
あれも表面発酵とかいろいろあるんだよね。
よくわかんない。
美味しいのかな。
私はお酒を飲まないから、日本の物と味を比べられないな」
「それなら高い奴を買っていきましょう。
あれなら誰も文句は言いません。
あの店にも置いてありますよ」
「じゃあ、それもついでに」
「十樽ほどあればいいのではないでしょうか」
「壮観だなー」
そして、リカー・ロイヤルでまた白金貨二枚分の酒を仕入れ、その上エールも買ったのだが。
「ビヤ樽、でかっ」
日本のアルミ樽の八倍くらいの大きさだ。
「これで一樽二百五十リットルくらいじゃないですかね」
四分の一トン樽ねえ。
それはまた本格的な、醸造所に置かれているようなビヤ樽のサイズだなあ。
よく考えたら二百五十リットル樽で百万円するビールか。
リッター四千円、確かに高級ビールだ。
「さすがに多すぎない? 他のお酒もあるんだし」
に、二千五百リットルあるのよ?
「甘いですね。
今回はこれで丁度いいくらいじゃないでしょうか。
ただ酒の上、高級酒ばかりですから。
あそこは女性もたくさん飲まれる方も多いですし」
「マジっすか。
いや別にいいんですけどね。
しかし、酒代だけでほぼ白金貨五枚か。
一体どんな宴会なんだよ」
「いいじゃないですか。
きっと楽しいですよ」
「八岐大蛇一匹分だな~」
確かあれも八岐って事は首が九つある九頭竜なんだよね。
一樽しか余らないわ。
そして、なんとビールを冷たいままにしておける魔道具まであった。
もちろん十個お買い上げだ。
それから肉屋と野菜ショップへ回って、追加の食材を昨日並みに買い込んできた。
昨日見なかった食材も見かけたので買って来た。
あの金貨鳥も追加で二十五羽手に入ったのだ。
「これなら、さすがに大丈夫じゃない?」
「まあこんなもんでしょう。
それでは参りますか」
少々浮かれた感じに騎士団本部へ行くと、何か大騒ぎをしていた。
「あれ、どうしたのかな」
ベロニカが号令を発し、騎士達を動かしている。
団長の姿は見えない。
「あれえ、何かあったの」
「ああ、サヤ。
すみません、本日のパーティは中止になるようです」
「え、どうして」
「王宮に魔物が出ました」
「ぐはあ」
こ、これはひょっとして、この前の第二ラウンドって奴⁉
それは慰労会どころじゃないなあ。
「どんな奴が出たの?」
「隠密系の物でしょう。
国王一家の暗殺に現れた可能性があります。
現在騎士団も団長以下向かっていますし、冒険者ギルドにも指名依頼で応援を呼んでいます」
「うわあ」
どうしようか。
考えた末に、公爵家の料理人さん達にはお菓子作りを頼んでおいた。
冷蔵庫にしまっておける奴を。
あと、クッキーなんかの焼き菓子も頼んでおいた。
今回はプリンを大量に用意する予定だったのだ。
この世界、何故かプリン・シュークリーム・タルトなどの卵・カスタード系とホイップクリーム系のスイーツがない。
彼らにこっちで作ってもらう予定だったのだ。
メイドさん達も一緒にお手伝いだ。
これは次回の宴会用に収納に仕舞っておこうと。
ベロニカに冷蔵庫を借りられるように頼んでから、アメリに情報収集を頼んでおき、公爵家へと戻った。
「チャック、いるかなー」
この邸内にて大声で呼べば、感覚が鋭敏な彼にはたいてい聞こえる。
ほどなく、巨大な自動掃除機のような雰囲気の巨大な雄姿が参上した。
私は、さっさと例の『聖女の鎧』に着替えておいた。
何があるかわからないからな。
『どうしました、聖女サヤ。
と呼び出された本官は聖女サヤに尋ねてみます』
「ああ、王宮に魔物が出たって大騒ぎしてるの。
あれじゃ今日のパーティは中止かな。
そういうわけなので、聖女騎士団は急遽全員出動です」
『イエスマム』
『パーティが中止なんてー。残念だー』
「まあまあ、いっぱい試食出来たじゃない。
帰る頃にはプリンもいっぱい出来ているわよ」
『やったあ』
「それじゃ、あたし達はチャックに乗っていこう。
うちの馬車は料理人さん達のために騎士団本部へ行ってもらうわ」
そして、アメリを拾うために馬車よりも先に騎士団本部へと向かった。
彼女は入り口で待ってくれていた。
「ああ、サヤ様。
プリンの最初のロットが出来上がったそうです。
お持ちしますか」
「ああ、もらっていこうかな。
この間もすぐ食べられる物が役に立ったし。
甘いものはああいう時には有用だしね」
どうせアメリの事だから、ちゃっかりともう味見は済ませたのに違いない。
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