異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

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第二章 世直し聖女

2-12 懐かしの食材

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 結局は魔物肉も、あれこれとどっさり買い込み、卵もたくさん買い込んだ。

 ハムやソーセージも売っていたので、そいつらも仕入れてきた。
 これもきっと騎士団では使っていない高級品だ。

 ハンバーグにスキヤキにー。
 騎士団のパーティ以外にもいろいろ使って食べたいなあ。
 公爵夫人なんかきっと喜んでくれそうだ。

「ふう、食ったなあ」

「サヤは細身の割によく食べますね」

「へっへー。
 そういうアメリだって、結構お代わりしていたじゃない」

「私はそれなりに鍛えていますので」

 何気によく食べる、焼き肉食べ放題に向いたような三人組であった。

「次はどこへいきましょうか。
 もう肉は買ってしまいましたし」

「いやいや、野菜やその他の食品を買っていこうよ」

「そうですか。
 では野菜は、これも特別な店に行きましょうか。
 毎朝、契約農家から仕入れてくれる特別な店ですね」

「いいね、そこへ行こうよ」

 案内してくれた店は、さっきの肉屋並みに広い店だ。
 さすが王都で高級品を扱う店だけの事はある。

 なんというか、ちょっとした小さなスーパーくらいはあるのだ。

「おー、いろんな種類があるなあ」

 今まで調理場で見なかった野菜などもたくさんある。
 キノコに木の実、それに香草の類。

「うわあ、懐かしい食材が……あれはあまり美味しくなかったなあ。
 ここの物はどうだろう」

「ははは、ここの商品はどれもこれも一級品ですよ」

 少し恰幅のいい眼鏡のおじさんが声をかけてくれる。

 野菜のお店なのに太っているなあ。
 やはり食べ過ぎるほど美味しいのか⁉

「そうですか。
 キノコ汁に山菜うどん、ほうとうやキリタンポ鍋も悪くない。

 ああ、レバニラ炒めに餃子も悪くない。
 もしマツタケがあるなら土瓶蒸しなんかもいいかも。

 ああっ、土瓶がないや。
 なんとかあれを作れないものだろうか」

「どんな物がご入用ですか」

「ええ、肉しか食べないような騎士団に野菜でも食わせようかと。
 正式には騎士団長の方針でそうなっているだけで、騎士団員は野菜も食べたいんですけどね。
 さっきベラさんの店でお肉は買ったので、美味しい野菜をと思って」

「なるほど。
 それでは、こちらのサラダ向きの野菜セットはいかがです?
 瓶入りのドレッシングなんかも揃っていますよ」

 見たら、なんとマヨネーズが売っていた!

「うわ、マヨネーズだ。
 凄いな、これって作るのに凄く手間がかかりそうなのに」

「ああ、うちは魔道具を使っていますから」

「さすが人気店、稼いでいるだけあるなあ」

 それらの品を仕入れてから、お次は焼き肉用の野菜類だ。

「そうですな。
 こちらのタマネギは熱を加えると本当に甘いですよ。
 こいつはお勧めです」

「うわあ、串カツに使ったらタマネギの甘さが堪らないだろうなあ。
 あ、パン粉みたいなのありますか」

「ああ、ありますよ。
 うちのは凄く高いが元のパンからして違う高級品です」

 それから齧ると甘いピーマンやトマトに、焼くと甘みが素晴らしいカボチャも仕入れた。

「カボチャはバーベキューの御伴に、パイにスープにと」

 一通り野菜を仕入れてから、なんと充実のスパイスコーナーを見つけてしまった。

 それからお米のコーナーと。
 長粒種の米も見つけてしまったので、そいつも買い込んだ。

 そういやガーリックライスなんかも悪くない。

 後はフルーツ!
 こっちの世界にしかない物も多い。

「買い込みましたね、サヤ」

「うん、美味しそうな物ばっかりだったんだもの」

「こんなに食いしん坊な聖女は、たぶんこの世界にも初めてです」

「いいの! あ、そうだ。魚屋さんは?」

「魚……ですか」

「あれ、どうしたの。
 稀人の国では魚がないと駄目なんだよ。
 そういえば、どこに行っても食事に魚が出たの見た事ないな」

 すると、リュールは言いにくそうに言った。

「この国には海がなくてな。
 魚はまず入荷しない」

「ガーン、マジで⁉
 そうだ、私の収納で持ってくればいいんだ」

「言っておくが、海は遠いぞ。
 ここと海を往復しているだけで、ほぼ生活が終わるな」

「うーん、ちょっと厳しかったですか」

 なんてこった。
 魚が食べられないだなんて。

 もうこうなったらイワシの丸干しでもいいのですがね。

 後はあるとしたら塩漬けになるんだろうなあ。
 また何か考えようっと。

 腐りにくい鮫ならギリギリ行けるかもだが、あれの腐りにくい原因がアンモニアだからな。

 個人的に鮫ならフカヒレスープか何かで。
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