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第二章 世直し聖女
2-11 異世界ビルダー
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「お次はこの店です」
アメリが案内してくれたのは、一応看板は食料品店という事になっているのだが、一言で言うとただの肉屋だな。
なんというか騎士団の食事そのものだ。
肉が高級になるだけで。
広めの入り口を抜けると、中はズラリっと肉のコーナーが各所に並んでいる。
不思議と生臭い匂いはそうしないのだが。
結構繁盛しているみたいで、多くの人が買い出しに来ている。
メイド姿の人も少なくない。
「確かに、騎士団でパーティを開くのに食材を買うなら、これしかないという店だね……」
「まあ、そうなのですが、ここの肉は騎士団ではまず食べられない種類ですから」
「へえ、高給和牛専門店みたいな感じなのかねえ」
「和牛……ですか?
鳥・豚・その他や、卵などもすべて高級な物ばかり置いてあります」
「へえ、何を買うか迷っちゃうな」
「順番に見ていきましょう」
アメリが店員さんを呼んでくれたのだが、はっきり言ってガテン系というか、逞しいお兄さんが来てくれた。
ええい、イケメンを寄越してよ。
暑苦しいわ!
「らっしゃい。
肉のご用命ですな!」
「あ、うん、そうだけど」
何故ボディビルのポーズ。
あんたのお肉をいただきに来たんじゃないの。
ポーズは変えていなくていいから、さっさと美味い肉を出せ。
「こいつなんか、どうだい?」
そう言って見せてくれたのは豚肉のようなのだが、なんというか身に張りがあって断面の脂身と赤身の具合も断層のように鮮やかだ。
黒毛和牛とか黒豚とかがそうだけど、いい肉って色合いからして違うよね。
「こいつの脂はとびっきりでね。
食っている餌が普通の奴とは違う高級な物で、広い場所で育てられているし、魔導で管理されているので健康そのものの肉でいい香りがする。
その辺で売っている肉に比べたら一桁値段は違うが、そいつばかりは仕方がないな」
「リュール、これは騎士団で使っている肉よりも美味しい?」
「聞くな。
騎士団の食堂でそのような良い肉を使えるはずもない」
あそこは、様々な部署の人を合わせると三百人はいる。
たくさん食べそうだし、その後も何かに使ってもいいし。
「これ、百五十キロください」
「あいよっ」
これで何を作ろうかな。
この世界には味噌醤油はあるので、肉じゃがに豚汁、角煮にトンカツってところか。
「こいつのラードありますか」
「あるよお。
お得缶で十キロ入りだが、十缶くらいどうだい?」
「いただくわ」
都度清算して収納に仕舞い込んでいく。
生鮮食品だしね。
ここ、ちゃんと冷蔵の魔道具を使っているので、そこから出したら外へ置いておきたくない。
トンカツはやっぱりラードがいいかな。
お米とキャベツがあるんだから、トンカツ御前を作らない手はない。
レモンもあるでよ。
「ほお、収納持ちか。
なるほど、その神官服。
あんたは聖女か何かってわけだな。
よし、それじゃあ懐も暖かいだろう。
どんどん買っていってくんな。
あとこの豚のベーコンはどうだ」
「じゃあ、そいつはあれば二百キロちょうだい。
そいつは宴会以外にも使えそうだし」
「へい、毎度う」
そして次に案内してくれたのは、比較的狭い一角に吊るされている鳥だった。
ああ、これはかなり上等の地鶏だな。
ブロイラーとは違って一目でわかるほど凄い感じ。
欲しい。
野菜中心の詰め物入りローストチキンにしてやろうか。
いやいや焼き鳥も。
「これ、もしかして凄く高いんじゃない?」
「ご名答。
一羽で金貨一枚の金貨鳥さ。
大事に育てられているからな。
その代わりにその美味さは保証付きって奴だ」
「そこにあるの全部いただける?
これ、あんまり数が揃わない奴でしょ」
「ひゅー、ご明察。
こいつは育てるのに手間がかかり過ぎてねえ。
さすがにうちでも、これくらいあればまだ揃っている方で、他の店じゃ滅多に入荷しないよ。
じゃあ全部で二十七羽ね」
その次は牛らしい。
どんっと置かれた肉の塊は各種の部位が並んでいた。
うん、野菜と一緒に焼き肉にでもしてやるといいか。
あと、付け合わせたっぷりのステーキなんかにしても悪くない。
揚げたての牛肉コロッケも悪くない。
自分用には是非牛丼にチャレンジしたい。
市販のスパイスは結構あるので、是非カレースパイスの調合に挑戦しよう。
カレー粉みたいなのは見かけないんだ。
これだけいい肉があってカレーライスが食べられないなんて。
「後は魔物肉コーナーだけど、どうするかね。
騎士団連中なら喜んで食べると思うが」
「魔物って美味しいの?」
「物にもよるな。
美味いから売られる物と、結構頻繁に入荷する安さで売られる物とがあるが、うちは当然美味いもんしか売らないポリシーだ」
「試食って出来ない?
当然、高い食材なんだからその分もお金は払うけど」
「あいよ、そういう嬢ちゃんみたいなグルメなお客のために、この店には食べ比べコーナーがあるんだ。
この店の大将自ら腕を振るうよ」
「ここまで味に拘るお店の店主が、自ら調理して味見させてくれるのか。
出来る」
「でやしょう?」
「みんな。今日のランチはここでね」
「よかろう」
「へえ、そんなコーナーがあったのですね。
私は知りませんでした」
そして、案内された先にはいくつかの竈を備えた小さな厨房と、カウンターのような席があった。
呼ばれてやってきた人はなんと女性だった。
しかし、これまた筋肉隆々という感じの方だ。
きっと、さっきの人が息子なんだな。
「おや、あんた確か騎士団の。
公爵家の人じゃなかったのかい。
確か元王子様の」
「ああ、そうだ。よく知っているな」
「王宮に頼まれて食材を卸す事もあるんでね。
あんたの事も見た事があるよ。
そういや、この間は大変だったんだって」
「耳が早いな」
「まあ、あれほど大騒ぎをしていちゃあね。
特に緘口令を敷いちゃいないんだろう。
というか、わざと敷いてないんだろう。
国が安泰になったのなら喧伝しない手はない」
リュールさんは、あっさりと頷いた。
「女将さん、早くー」
「ああ、何から行くかね」
「女将さんのお勧めで」
「そうさね。
じゃあ初顔なら、よく出る人気の魔物肉を集めた定番の五種セット魔物焼き肉で。
味付けは?
焼きで、味噌・醤油・塩コショウ・香味タレ・肉用ソースなんかがあるが」
「味付けはそれぞれの肉に一番合いそうな奴を二種類ずつに、野菜炒めか何かと、あと出来れば御飯を」
「はは、お嬢ちゃんは通だねえ。
出来るよ、みんな一緒でいいのかい」
「うん。
あと、何かお勧めの肉があったらお試しで」
「あいよ」
さっそく御飯が焚かれ、肉の支度が整えられていった。
御飯の炊き上がりを待つ間に、次々と肉が焼かれて出されてくる。
なんと魔法の換気扇まで動かしていた。
焼き肉屋ですか。
「おいしー」
「だろう。
魔物肉だから食えないなんて言っている奴は人生を損していやがるのさ」
「その通り。
ねえ、女将さん。
試食以外で御飯は作ってくれないの」
「まあ暇ならいいけどね。
あんた変わってるね。
飯屋じゃなくて肉屋で御飯を食べるのかい」
「ああ、女将さん。
私、実は他の世界から来た聖女なんだけど、その世界にあった焼き肉屋がここにないのよー。
これマジで焼き肉だし、もう最高だわ!」
「はっはっは、そうなのかい。
じゃあ、また来な。
いつでも出してやろう」
「私、サヤ。サヤ・アドだよ」
「あたいはベラ、ベラドール・マシューだ。
いい肉が欲しかったら、いつでもまた来な」
アメリが案内してくれたのは、一応看板は食料品店という事になっているのだが、一言で言うとただの肉屋だな。
なんというか騎士団の食事そのものだ。
肉が高級になるだけで。
広めの入り口を抜けると、中はズラリっと肉のコーナーが各所に並んでいる。
不思議と生臭い匂いはそうしないのだが。
結構繁盛しているみたいで、多くの人が買い出しに来ている。
メイド姿の人も少なくない。
「確かに、騎士団でパーティを開くのに食材を買うなら、これしかないという店だね……」
「まあ、そうなのですが、ここの肉は騎士団ではまず食べられない種類ですから」
「へえ、高給和牛専門店みたいな感じなのかねえ」
「和牛……ですか?
鳥・豚・その他や、卵などもすべて高級な物ばかり置いてあります」
「へえ、何を買うか迷っちゃうな」
「順番に見ていきましょう」
アメリが店員さんを呼んでくれたのだが、はっきり言ってガテン系というか、逞しいお兄さんが来てくれた。
ええい、イケメンを寄越してよ。
暑苦しいわ!
「らっしゃい。
肉のご用命ですな!」
「あ、うん、そうだけど」
何故ボディビルのポーズ。
あんたのお肉をいただきに来たんじゃないの。
ポーズは変えていなくていいから、さっさと美味い肉を出せ。
「こいつなんか、どうだい?」
そう言って見せてくれたのは豚肉のようなのだが、なんというか身に張りがあって断面の脂身と赤身の具合も断層のように鮮やかだ。
黒毛和牛とか黒豚とかがそうだけど、いい肉って色合いからして違うよね。
「こいつの脂はとびっきりでね。
食っている餌が普通の奴とは違う高級な物で、広い場所で育てられているし、魔導で管理されているので健康そのものの肉でいい香りがする。
その辺で売っている肉に比べたら一桁値段は違うが、そいつばかりは仕方がないな」
「リュール、これは騎士団で使っている肉よりも美味しい?」
「聞くな。
騎士団の食堂でそのような良い肉を使えるはずもない」
あそこは、様々な部署の人を合わせると三百人はいる。
たくさん食べそうだし、その後も何かに使ってもいいし。
「これ、百五十キロください」
「あいよっ」
これで何を作ろうかな。
この世界には味噌醤油はあるので、肉じゃがに豚汁、角煮にトンカツってところか。
「こいつのラードありますか」
「あるよお。
お得缶で十キロ入りだが、十缶くらいどうだい?」
「いただくわ」
都度清算して収納に仕舞い込んでいく。
生鮮食品だしね。
ここ、ちゃんと冷蔵の魔道具を使っているので、そこから出したら外へ置いておきたくない。
トンカツはやっぱりラードがいいかな。
お米とキャベツがあるんだから、トンカツ御前を作らない手はない。
レモンもあるでよ。
「ほお、収納持ちか。
なるほど、その神官服。
あんたは聖女か何かってわけだな。
よし、それじゃあ懐も暖かいだろう。
どんどん買っていってくんな。
あとこの豚のベーコンはどうだ」
「じゃあ、そいつはあれば二百キロちょうだい。
そいつは宴会以外にも使えそうだし」
「へい、毎度う」
そして次に案内してくれたのは、比較的狭い一角に吊るされている鳥だった。
ああ、これはかなり上等の地鶏だな。
ブロイラーとは違って一目でわかるほど凄い感じ。
欲しい。
野菜中心の詰め物入りローストチキンにしてやろうか。
いやいや焼き鳥も。
「これ、もしかして凄く高いんじゃない?」
「ご名答。
一羽で金貨一枚の金貨鳥さ。
大事に育てられているからな。
その代わりにその美味さは保証付きって奴だ」
「そこにあるの全部いただける?
これ、あんまり数が揃わない奴でしょ」
「ひゅー、ご明察。
こいつは育てるのに手間がかかり過ぎてねえ。
さすがにうちでも、これくらいあればまだ揃っている方で、他の店じゃ滅多に入荷しないよ。
じゃあ全部で二十七羽ね」
その次は牛らしい。
どんっと置かれた肉の塊は各種の部位が並んでいた。
うん、野菜と一緒に焼き肉にでもしてやるといいか。
あと、付け合わせたっぷりのステーキなんかにしても悪くない。
揚げたての牛肉コロッケも悪くない。
自分用には是非牛丼にチャレンジしたい。
市販のスパイスは結構あるので、是非カレースパイスの調合に挑戦しよう。
カレー粉みたいなのは見かけないんだ。
これだけいい肉があってカレーライスが食べられないなんて。
「後は魔物肉コーナーだけど、どうするかね。
騎士団連中なら喜んで食べると思うが」
「魔物って美味しいの?」
「物にもよるな。
美味いから売られる物と、結構頻繁に入荷する安さで売られる物とがあるが、うちは当然美味いもんしか売らないポリシーだ」
「試食って出来ない?
当然、高い食材なんだからその分もお金は払うけど」
「あいよ、そういう嬢ちゃんみたいなグルメなお客のために、この店には食べ比べコーナーがあるんだ。
この店の大将自ら腕を振るうよ」
「ここまで味に拘るお店の店主が、自ら調理して味見させてくれるのか。
出来る」
「でやしょう?」
「みんな。今日のランチはここでね」
「よかろう」
「へえ、そんなコーナーがあったのですね。
私は知りませんでした」
そして、案内された先にはいくつかの竈を備えた小さな厨房と、カウンターのような席があった。
呼ばれてやってきた人はなんと女性だった。
しかし、これまた筋肉隆々という感じの方だ。
きっと、さっきの人が息子なんだな。
「おや、あんた確か騎士団の。
公爵家の人じゃなかったのかい。
確か元王子様の」
「ああ、そうだ。よく知っているな」
「王宮に頼まれて食材を卸す事もあるんでね。
あんたの事も見た事があるよ。
そういや、この間は大変だったんだって」
「耳が早いな」
「まあ、あれほど大騒ぎをしていちゃあね。
特に緘口令を敷いちゃいないんだろう。
というか、わざと敷いてないんだろう。
国が安泰になったのなら喧伝しない手はない」
リュールさんは、あっさりと頷いた。
「女将さん、早くー」
「ああ、何から行くかね」
「女将さんのお勧めで」
「そうさね。
じゃあ初顔なら、よく出る人気の魔物肉を集めた定番の五種セット魔物焼き肉で。
味付けは?
焼きで、味噌・醤油・塩コショウ・香味タレ・肉用ソースなんかがあるが」
「味付けはそれぞれの肉に一番合いそうな奴を二種類ずつに、野菜炒めか何かと、あと出来れば御飯を」
「はは、お嬢ちゃんは通だねえ。
出来るよ、みんな一緒でいいのかい」
「うん。
あと、何かお勧めの肉があったらお試しで」
「あいよ」
さっそく御飯が焚かれ、肉の支度が整えられていった。
御飯の炊き上がりを待つ間に、次々と肉が焼かれて出されてくる。
なんと魔法の換気扇まで動かしていた。
焼き肉屋ですか。
「おいしー」
「だろう。
魔物肉だから食えないなんて言っている奴は人生を損していやがるのさ」
「その通り。
ねえ、女将さん。
試食以外で御飯は作ってくれないの」
「まあ暇ならいいけどね。
あんた変わってるね。
飯屋じゃなくて肉屋で御飯を食べるのかい」
「ああ、女将さん。
私、実は他の世界から来た聖女なんだけど、その世界にあった焼き肉屋がここにないのよー。
これマジで焼き肉だし、もう最高だわ!」
「はっはっは、そうなのかい。
じゃあ、また来な。
いつでも出してやろう」
「私、サヤ。サヤ・アドだよ」
「あたいはベラ、ベラドール・マシューだ。
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