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第一章 幸せの青い鳥?
1-32 ドクター
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「じゃあ、サヤ。
ここで水を出してみてくれる?」
ここは騎士団の御風呂だ。
ここなら、どれだけ水を出そうが問題はない。
というわけでパーッと水を出してみた。
なんというか、差し出した両腕の少し先から消防車の放水のように勢いよく出てきた。
これはまた。
本日より人間消防車として消防隊に配属されてもやっていけそう。
「結構、勢いがいいわね」
「おかしいな。
最初の頃、こんなに水が出たっけ」
「ああ、それは多分魔力の流れがよくなっているのだろう。
お前が魔法を使うのに慣れたんだよ。
体の中に魔力の通り道のような物を確立できたんだ。
浄化とかを毎日使っていないか?」
「あ、使ってます」
「ではここで、ちょっと魔力量を測ってみましょうか」
そして測定器にかけてみたが、魔力はまったく減っていないようだった。
またメーターを振り切っていた。
「よし、じゃあ次は火魔法にしようか」
それから外にある、騎士団の魔法練習場へと向かった。
ここは魔法が飛び出したりしないように特別な構造になっているようだ。
アメリカの屋内射撃場で、壁が跳弾を防ぐようになっているのと同じようなものらしい。
詳しい仕組みはよくわからない。
「じゃあ、火起こしの魔法を使ってみて」
言われた通りに火を作ってみたが、まるでキャンプファイヤーのような炎が空中で燃え盛っていた。
「へえ、なかなかのものよ、これ。
普通のファイヤーボールよりも凄いかも。
これを動かせるかな?」
「やってみますね」
そして、空中にあったものを地面に降ろす事に成功した。
「あの、サヤ。
前方に動かしてほしいのだけれど」
「うーん、それ難しいです。
何しろ、肉を焼いたりするのに覚えた魔法なもんで。
どうやったら飛んでくれるものか。
こうやって火力の調整は上手くできるんですが」
そう、あのガスコンロのツマミを回すイメージで、細火から大火力まで火力の調節自体は自由自在であった。
だが、ガスコンロの火を飛ばすイメージがどうしても出来ない。
魔物を火で攻撃するなら、松明を投げたり、あるいは火炎瓶でも使ったりした方がまだマシだろう。
火力を上げたら、直径一メートルに高さ五メートルくらいまで炎が上がったが、上下や炎自体の高さは調節が利いても、前方に動かすのは無理があった。
まるで超強力ライターのような魔法だ。
「ま、まあいいわ。
ではこの時点での魔力の測定をしてみましょうか」
全員の予想通りに、また測定器のメーターを苦も無く振り切ってしまった。
この世界では、魔力の単位って何か決められていないのかな。
「これ、もしかすると魔力の補充能力も桁違いなんじゃないのか」
ベロニカさんの憶測にマリエールさんも自信なさそうに答える。
「どうかしら。
それでもある程度の魔力はないと、魔法を連続して使うと魔力が枯渇してしまうはずなのだけれど」
私は自主的に、例のエアバレットもどきを使用してみた。
ゴーっというような凄まじい風が起きて、辺り一面を激しく靡かせたが、攻撃魔法のような被害をもたらす事はなかった。
こいつはなんというのかな。
竜巻のような激しさではなくて、ヘリコプターの巻き起こす小型台風並みの風ダウンストームのような感じだろうか。
もぎ取られた看板が吹き飛ぶような激しさではないのだが、看板がバタバタして煩いような感じかな。
強引に威力を上げようとすると、効力範囲が広がるだけで、特に攻撃的な風にはならない。
「うーん。
強い魔法なんだけど、その威力はたいした事はないわね。
むしろ、ある意味で非常に希少な魔法士であると言えるのかもしれないわ。
簡単に魔力も尽きないしね」
「それに、なんか意味ってあります?」
「さ、さあ。
もう魔力の測定はやっても無駄っぽいし、まともに役に立ちそうなのは取得済みの回復魔法くらいだと思うので、戻ってそっちの練習でもしましょうか」
「そうですね」
まあ大体想像していた通りの結果になったな。
自分で思っていたよりも魔力量が多かったみたいだけど。
「その前に、ちょっと試してみたい事があるの」
「へえ、何でしょう」
そして連れていってくれたのは、研究室というか工房というか、そういう物が混ざったような場所だった。
「ドクター・ペラミス。いらっしゃいます?」
「ああ、いるよー」
何か少しくぐもったような声がして、奥から木箱を二つ重ねて持ち、ふらふらしながら白衣のような物を着ている人が出てきた。
「あ、ドクター、危ないですよ。
一つお持ちしますから」
そして無事に木箱は降ろされ、彼……と思っていたら彼女だった人が挨拶してくれた。
なんとなく体形が男性っぽいので間違えてしまった。
髪の毛も短くしているし。
「いや諸君、失礼したね。
私は騎士団の回復薬科の専任ポーション主任のドクターこと、エマ・ペラミスだ。
ほお、回復魔法士の新入りかい。
ここではポーションとして、主に聖水を用いているんだ。
回復魔法士には定期的に協力してもらっているからよろしくな」
「聖水?」
「ああ、回復魔法を水に溶かし込んで保存し、服用ないし生体の上からかける事により回復魔法を再現するものだ。
聖水の性能は製造に関わる回復魔法士の能力によるな。
未だ最高の聖水を創り上げた魔法士は存在しないよ。
それを作らせるのが私の生涯の夢だ」
そう言って彼女は、アンプルサイズのガラスの小瓶を見せてくれた。
なんか、こっちの文字で書いてあるが例によって読めない。
「サヤ、あなたにも聖水作りをチャレンジしてもらうわ」
「へえ」
出来るのかな、そんな事が。
私って魔法は結構不器用な感じなのですけど!?
ここで水を出してみてくれる?」
ここは騎士団の御風呂だ。
ここなら、どれだけ水を出そうが問題はない。
というわけでパーッと水を出してみた。
なんというか、差し出した両腕の少し先から消防車の放水のように勢いよく出てきた。
これはまた。
本日より人間消防車として消防隊に配属されてもやっていけそう。
「結構、勢いがいいわね」
「おかしいな。
最初の頃、こんなに水が出たっけ」
「ああ、それは多分魔力の流れがよくなっているのだろう。
お前が魔法を使うのに慣れたんだよ。
体の中に魔力の通り道のような物を確立できたんだ。
浄化とかを毎日使っていないか?」
「あ、使ってます」
「ではここで、ちょっと魔力量を測ってみましょうか」
そして測定器にかけてみたが、魔力はまったく減っていないようだった。
またメーターを振り切っていた。
「よし、じゃあ次は火魔法にしようか」
それから外にある、騎士団の魔法練習場へと向かった。
ここは魔法が飛び出したりしないように特別な構造になっているようだ。
アメリカの屋内射撃場で、壁が跳弾を防ぐようになっているのと同じようなものらしい。
詳しい仕組みはよくわからない。
「じゃあ、火起こしの魔法を使ってみて」
言われた通りに火を作ってみたが、まるでキャンプファイヤーのような炎が空中で燃え盛っていた。
「へえ、なかなかのものよ、これ。
普通のファイヤーボールよりも凄いかも。
これを動かせるかな?」
「やってみますね」
そして、空中にあったものを地面に降ろす事に成功した。
「あの、サヤ。
前方に動かしてほしいのだけれど」
「うーん、それ難しいです。
何しろ、肉を焼いたりするのに覚えた魔法なもんで。
どうやったら飛んでくれるものか。
こうやって火力の調整は上手くできるんですが」
そう、あのガスコンロのツマミを回すイメージで、細火から大火力まで火力の調節自体は自由自在であった。
だが、ガスコンロの火を飛ばすイメージがどうしても出来ない。
魔物を火で攻撃するなら、松明を投げたり、あるいは火炎瓶でも使ったりした方がまだマシだろう。
火力を上げたら、直径一メートルに高さ五メートルくらいまで炎が上がったが、上下や炎自体の高さは調節が利いても、前方に動かすのは無理があった。
まるで超強力ライターのような魔法だ。
「ま、まあいいわ。
ではこの時点での魔力の測定をしてみましょうか」
全員の予想通りに、また測定器のメーターを苦も無く振り切ってしまった。
この世界では、魔力の単位って何か決められていないのかな。
「これ、もしかすると魔力の補充能力も桁違いなんじゃないのか」
ベロニカさんの憶測にマリエールさんも自信なさそうに答える。
「どうかしら。
それでもある程度の魔力はないと、魔法を連続して使うと魔力が枯渇してしまうはずなのだけれど」
私は自主的に、例のエアバレットもどきを使用してみた。
ゴーっというような凄まじい風が起きて、辺り一面を激しく靡かせたが、攻撃魔法のような被害をもたらす事はなかった。
こいつはなんというのかな。
竜巻のような激しさではなくて、ヘリコプターの巻き起こす小型台風並みの風ダウンストームのような感じだろうか。
もぎ取られた看板が吹き飛ぶような激しさではないのだが、看板がバタバタして煩いような感じかな。
強引に威力を上げようとすると、効力範囲が広がるだけで、特に攻撃的な風にはならない。
「うーん。
強い魔法なんだけど、その威力はたいした事はないわね。
むしろ、ある意味で非常に希少な魔法士であると言えるのかもしれないわ。
簡単に魔力も尽きないしね」
「それに、なんか意味ってあります?」
「さ、さあ。
もう魔力の測定はやっても無駄っぽいし、まともに役に立ちそうなのは取得済みの回復魔法くらいだと思うので、戻ってそっちの練習でもしましょうか」
「そうですね」
まあ大体想像していた通りの結果になったな。
自分で思っていたよりも魔力量が多かったみたいだけど。
「その前に、ちょっと試してみたい事があるの」
「へえ、何でしょう」
そして連れていってくれたのは、研究室というか工房というか、そういう物が混ざったような場所だった。
「ドクター・ペラミス。いらっしゃいます?」
「ああ、いるよー」
何か少しくぐもったような声がして、奥から木箱を二つ重ねて持ち、ふらふらしながら白衣のような物を着ている人が出てきた。
「あ、ドクター、危ないですよ。
一つお持ちしますから」
そして無事に木箱は降ろされ、彼……と思っていたら彼女だった人が挨拶してくれた。
なんとなく体形が男性っぽいので間違えてしまった。
髪の毛も短くしているし。
「いや諸君、失礼したね。
私は騎士団の回復薬科の専任ポーション主任のドクターこと、エマ・ペラミスだ。
ほお、回復魔法士の新入りかい。
ここではポーションとして、主に聖水を用いているんだ。
回復魔法士には定期的に協力してもらっているからよろしくな」
「聖水?」
「ああ、回復魔法を水に溶かし込んで保存し、服用ないし生体の上からかける事により回復魔法を再現するものだ。
聖水の性能は製造に関わる回復魔法士の能力によるな。
未だ最高の聖水を創り上げた魔法士は存在しないよ。
それを作らせるのが私の生涯の夢だ」
そう言って彼女は、アンプルサイズのガラスの小瓶を見せてくれた。
なんか、こっちの文字で書いてあるが例によって読めない。
「サヤ、あなたにも聖水作りをチャレンジしてもらうわ」
「へえ」
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私って魔法は結構不器用な感じなのですけど!?
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