異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

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第一章 幸せの青い鳥?

1-31 回復魔法

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「そうか、回復魔法士として働く事にしたか。
 ではよろしくな、サヤ」

「はい、改めてよろしくお願いいたします」

 そういう事で、自分が預かりにされている上司ふくだんちょうに挨拶をしてから、仕事場へ向かう事になった。

「じゃあ、サヤ。
 この神官服に着替えてちょうだい」

「わかりましたー」

 これは地球で言えば、ナース服みたいなものか。

「ねえ、ベロニカさん」

「ん? なんだ」

「この神官服なんだけど、神官ではない私なんかが着ていてもいいの?」

「まあ神官服を着ているが、騎士団に本物の神官は一人もいないから安心しろ。

 回復魔法を使う者は神殿の管轄とか神殿が勝手に言っているから、軋轢を避けるためだけに一応着ているだけだ」

「なあんだ、よかった。
 神官服を着ている集団で、一人だけ不信心者が混じっているのは気が引けていましたので」

 でも神官服なのですよ。
 ラノベなんかでは、よくこれを着ているヒロインとかがいるじゃない。

 ちょっと憧れはあったのだ。
 コスプレに走るほどオタクではなかっただけで。

 何せ、モフモフ系だったものでして。
 姿見の大きな鏡に映したら、我ながらなかなか似合っていた。

 その手のイベントならば、このまま紛れ込んでも通用するかもしれない。

 これはもし日本へ帰れる事があったのなら、是非御土産に持って帰って試すとしましょう。

 しばらく、鏡の前でくるくると踊ってから、マリエールさんのところへ戻った。

「あら、結構似合うじゃない。
 なかなか可愛いわよ。
 じゃあ、こっちで魔力の測定をしてみましょうか」

 おお、こいつは定番の行事ですね。
 ガルさんは、私の魔力はたくさんあると言っていましたが、実際にはいかなるレベルにあるものか。

 浄化の魔法は日常使いしていますが、その他はサボっていますね。

 もし、騎士団の野外演習にでもついていくのであれば、水作りや火起こしなどは役に立つはずですので、また精進しておきましょうかね。

「あなた、他に魔法は使える?」

「えーと、浄化の魔法と水出し魔法と、火起こしというか竈代わりに使える持続性の高い火魔法ですね。

 後はエアバレットの出来損ないのような物を。
 詳しい人に言わせると、インテリ系の能力なので、あまり攻撃魔法とかは上手く使えないらしいです」

「上等、上等。
 回復魔法士なんて、大体そんなものだから。
 回復魔法の他に日常魔法が使えれば重宝するわ」

「それはよかったです。
 どうやら私って新しい魔法を覚えるのが苦手なようで、日常魔法を覚えるのにもかなり苦労したんです」

「そう。まあ、今ある物でも十分じゃないのかな。
 じゃあ、いろいろテストしてみますね」

 とりあえず、測定器のような物を出してきてくれた。
 少し平たい金属製の箱型をしたものだった。

 上部に測定用のパッドのような物が据えられていて、手の平マークが描かれているので、どうやらそこに手を翳せば自動で測定してくれるものらしい。

 マリエールさんも、笑顔でそこに手を載せるように指し示した。

「では遠慮なく」

 そして、マリエールさんの表情が緊迫した。
 前にもこういうパターンがあったような。

 ああ、冒険者ギルドの時だ。
 マズイ、また何かやってしまったのか、私。

「どうした、マリエール」

「ああいえ、この子って一瞬にして魔力測定器のメーターを振り切ってしまったので。
 今までこんな事は一度もなかったんだけど」

 ベロニカさんは測定器の型式を見ていたようだった。
 う、身分証を見た時も思ったのだが、私ってここの字が読めない。

 会話は『スキル・ミスドリトル』のお蔭で問題なく出来ているけど、字はさすがに無理だった。

 ここの文字はアルファベットのような物で、象形文字や漢字のようなトンデモ文字でなくてまだ助かったのだが。

 ミミズのたくり文字でもなくて、文書は一字一字が独立して書かれている英語のような形式だからまだいいようなものの。

 十進法の数字だけはもう覚えた。
 文字は全部で三十個くらいだと思うけど、今覚えている最中だ。

 英語はそこそこいける方なので、なんとか取得は出来そうなのだけれど、結構時間はかかりそう。

 せめて自分の名前だけは、早急に読み書きできるようにしておこう。

「そうか。
 マリエール、実はな。
 こいつは、いわゆる稀人という奴だ。

 魔力は高いはずだとは思っていたが、メーターを振り切ってしまったか。
 ああ、そういう話は騎士団長も副騎士団長も知っているから心配しなくていい。

 私がこの子の御世話係なんだ。
 しばらく、様子を見に通うとしよう」

「そうだったの⁉
 へえ、じゃあ一回実地で魔法を見せてもらった方がいいかな」

「その方がいいかもしれんな」
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