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第一章 幸せの青い鳥?
1-26 夕食
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風呂から上がると、なんとメイドさんが待っていてくれて、タオルやガウンを渡してくれた。
メイドさんはアメリさんというらしいのだが、なんと私専属で面倒を見ていただけるらしい。
この屋敷のメイド服は、その筋のマニアが鑑定したって九十五点は貰えそうなくり可愛い。
もしかすると、これも稀人お姉様の作である可能性も捨てがたい。
それに下着もすこぶる上等な物を出してくれた。
素材がよくわからないが、まるで絹のような手触りで、しかも遙かに丈夫そうだった。
もしかして、何かの魔物糸か何かで出来ているのかもしれない。
きっと普通に買ったら凄く値段は高いのに違いない。
「凄いなあ、なんかこう王侯貴族みたいな待遇だ」
「少なくとも、あなたはそれに値するような仕事をちゃんとしたのだから、遠慮なく堪能しなさいな。
さすがに、あの七色ガルーダの羽根三昧には笑ったけどね。
まったく、うちの宿六団長と来た日にはもう」
「まあ、そうなんですけどね。
なんかこう慣れないもので」
「すぐ慣れるわよ。
放っておいてもやってくれちゃうから、嫌でも慣れるしかないわね。
私も最初は戸惑ったけど、今ではもう慣れたわ。
どうせ、ここには来ずにはいられないのだし」
やっぱり、あのリュールさんはベロニカさんに御世話をかけっ放しなのだなあ。
それから自分の部屋へ行って、届けられていた服に着替えた。
魔法なのか道具なのか知らないが、ピシっと皺一つなく整えられていた。
異世界、凄い。
いや、この家が凄いのか。
そしてメイドのアメリさんが呼びに来てくれたので食堂へ行ったのだが、そこもまたなんとも瀟洒な佇まいで、ホエーっと間抜けな声を出して感嘆してしまった。
ここは、おそらく家族だけで使う物で、大きな食堂ないしパーティ会場のような物はまた別にあるのだろう。
案内された、豪華なテーブルの席に座ると公爵夫人から挨拶があった。
「ふふ、今日はあなたの歓迎会よ。
まあ、そう特別な事をするわけではないのだけれど」
「まあ慰労会といった感じではあるなあ。
いや、サヤよ。本当によくやってくれた」
「いえいえ、たまたまの巡り合わせですから」
だがベロニカさんは首を振った。
「もし直接リュールと出会わなくても、いずれ縁はあったはずよ。
なんでかというと、冒険者ギルドに七色ガルーダの羽根集めの依頼は出ていたし、商業ギルドや大手商会などにも手配が行っていたから。
結局、副団長のリュールの出番が来るというわけね」
「そして、ベロニカさんの出番もね」
「という訳で、結局こうなるのよ。
何せ、あれだけの羽根を無償提供なのだもの。
騎士団にあなたへの対価が払えるはずもないし、結局あなたの言った望みを叶えようと思ったら、ここに来る事になった訳で」
「まあまあ、今日の良き出会いを祝して」
公爵夫人がそう言って、メイドさんがお酒を注いでくれようとしたが慌てて断った。
「ああ、すいません。
私、お酒は飲めないもので。自分の国の法律では、お酒を飲んでいいのは二十歳からですね。
同盟国のアメリカなんかでも二十一歳からでして」
「そうなの。
じゃあ、アメリ。
果実水を注いであげて」
「はい、奥様」
「カンパーイ」
そして、ワゴンからオードブルが目の前に取り分けられた。
これは何だろうな。
鳥がメインの冷製っぽい。
付け合わせにスープで煮込んだらしき野菜と、何かのフルーツが切って形を整えられて出されていた。
西洋版の煮しめの煮物みたいな感じか。
いい匂いがするな。
なかなか美味しそう。
そして思わず笑ってしまった。
「おや、何か不都合な事でもあったのかしら」
「ああいえ、すみません。
そうじゃないんです。
この世界へ来て初めて食べた食事を思い出して。
それは魔獣さんが出してくれた御飯だから、もう全然味がついていなくて。
野菜も洗ってないし」
「まあ、それは大変だったわね」
「ええ、その代わりに水出しの魔法や浄化の魔法、それに火魔法なんかを教えてもらったんですよ。
それで野菜を洗って、自分で肉を焙って食べろって。
いやあ、今までの人生で一番ワイルドな食事だったなあ。
後でお塩を加えたので、結構良い御馳走になりましたよ」
「おっほっほっほ。
うちの家族なんて、外でそういうメニューを普通に食べていそうねー」
「そうかもしれないですね。
じゃあ、いただきます」
「召し上がれ」
「あ、美味しい。
上品でくどくない味付けだなあ」
日本人には向いている味わいだ。
フランス料理みたいに、妙にくどかったりするとキツイけど、これなら大丈夫。
「そう、口に合ったなら良かったわ。
外国の人だと、そういうところが問題になる事もあってね」
それから、彼女は気が付いたようだ。
「そういえば、さっきこの世界へ来て初めてとか言ってらしたわね。
稀人だとも言っていたし」
「あ、そうです」
「まあまあ、それは素敵。
よかったら、また何か向こうの世界のお話でもしてくださらない事?」
「あ、喜んで~」
そして、何か良さげな食事時に相応しいような話を適当にしつつ、美味しい食事を頂いたのだった。
メイドさんはアメリさんというらしいのだが、なんと私専属で面倒を見ていただけるらしい。
この屋敷のメイド服は、その筋のマニアが鑑定したって九十五点は貰えそうなくり可愛い。
もしかすると、これも稀人お姉様の作である可能性も捨てがたい。
それに下着もすこぶる上等な物を出してくれた。
素材がよくわからないが、まるで絹のような手触りで、しかも遙かに丈夫そうだった。
もしかして、何かの魔物糸か何かで出来ているのかもしれない。
きっと普通に買ったら凄く値段は高いのに違いない。
「凄いなあ、なんかこう王侯貴族みたいな待遇だ」
「少なくとも、あなたはそれに値するような仕事をちゃんとしたのだから、遠慮なく堪能しなさいな。
さすがに、あの七色ガルーダの羽根三昧には笑ったけどね。
まったく、うちの宿六団長と来た日にはもう」
「まあ、そうなんですけどね。
なんかこう慣れないもので」
「すぐ慣れるわよ。
放っておいてもやってくれちゃうから、嫌でも慣れるしかないわね。
私も最初は戸惑ったけど、今ではもう慣れたわ。
どうせ、ここには来ずにはいられないのだし」
やっぱり、あのリュールさんはベロニカさんに御世話をかけっ放しなのだなあ。
それから自分の部屋へ行って、届けられていた服に着替えた。
魔法なのか道具なのか知らないが、ピシっと皺一つなく整えられていた。
異世界、凄い。
いや、この家が凄いのか。
そしてメイドのアメリさんが呼びに来てくれたので食堂へ行ったのだが、そこもまたなんとも瀟洒な佇まいで、ホエーっと間抜けな声を出して感嘆してしまった。
ここは、おそらく家族だけで使う物で、大きな食堂ないしパーティ会場のような物はまた別にあるのだろう。
案内された、豪華なテーブルの席に座ると公爵夫人から挨拶があった。
「ふふ、今日はあなたの歓迎会よ。
まあ、そう特別な事をするわけではないのだけれど」
「まあ慰労会といった感じではあるなあ。
いや、サヤよ。本当によくやってくれた」
「いえいえ、たまたまの巡り合わせですから」
だがベロニカさんは首を振った。
「もし直接リュールと出会わなくても、いずれ縁はあったはずよ。
なんでかというと、冒険者ギルドに七色ガルーダの羽根集めの依頼は出ていたし、商業ギルドや大手商会などにも手配が行っていたから。
結局、副団長のリュールの出番が来るというわけね」
「そして、ベロニカさんの出番もね」
「という訳で、結局こうなるのよ。
何せ、あれだけの羽根を無償提供なのだもの。
騎士団にあなたへの対価が払えるはずもないし、結局あなたの言った望みを叶えようと思ったら、ここに来る事になった訳で」
「まあまあ、今日の良き出会いを祝して」
公爵夫人がそう言って、メイドさんがお酒を注いでくれようとしたが慌てて断った。
「ああ、すいません。
私、お酒は飲めないもので。自分の国の法律では、お酒を飲んでいいのは二十歳からですね。
同盟国のアメリカなんかでも二十一歳からでして」
「そうなの。
じゃあ、アメリ。
果実水を注いであげて」
「はい、奥様」
「カンパーイ」
そして、ワゴンからオードブルが目の前に取り分けられた。
これは何だろうな。
鳥がメインの冷製っぽい。
付け合わせにスープで煮込んだらしき野菜と、何かのフルーツが切って形を整えられて出されていた。
西洋版の煮しめの煮物みたいな感じか。
いい匂いがするな。
なかなか美味しそう。
そして思わず笑ってしまった。
「おや、何か不都合な事でもあったのかしら」
「ああいえ、すみません。
そうじゃないんです。
この世界へ来て初めて食べた食事を思い出して。
それは魔獣さんが出してくれた御飯だから、もう全然味がついていなくて。
野菜も洗ってないし」
「まあ、それは大変だったわね」
「ええ、その代わりに水出しの魔法や浄化の魔法、それに火魔法なんかを教えてもらったんですよ。
それで野菜を洗って、自分で肉を焙って食べろって。
いやあ、今までの人生で一番ワイルドな食事だったなあ。
後でお塩を加えたので、結構良い御馳走になりましたよ」
「おっほっほっほ。
うちの家族なんて、外でそういうメニューを普通に食べていそうねー」
「そうかもしれないですね。
じゃあ、いただきます」
「召し上がれ」
「あ、美味しい。
上品でくどくない味付けだなあ」
日本人には向いている味わいだ。
フランス料理みたいに、妙にくどかったりするとキツイけど、これなら大丈夫。
「そう、口に合ったなら良かったわ。
外国の人だと、そういうところが問題になる事もあってね」
それから、彼女は気が付いたようだ。
「そういえば、さっきこの世界へ来て初めてとか言ってらしたわね。
稀人だとも言っていたし」
「あ、そうです」
「まあまあ、それは素敵。
よかったら、また何か向こうの世界のお話でもしてくださらない事?」
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