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第一章 幸せの青い鳥?
1-21 団旗
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騎士団本部へ戻ったら、まだ皆でわいわいやっていた。
その様子を見て何かを察したものか、ベロニカさんは少し顔を顰めて、どうやら中座して外の空気を吸っていたらしきリュールさんに話しかけた。
「まだ団旗の飾りが終わっていないのですか?」
「ん、ああ。
ちょっと見栄えを考えたら微妙なんでな。
なんというか、デザイン的にかなり妥協しないと羽根の数が足りないというか。
これでも二十枚以上あるから十分過ぎてお釣りがくると思うのだがな。
なんというかその、また例によって団長が納得してくれんのだ。
相変わらず我儘で本当に困ったものだ。
まあ副団長としては、その気持ちもわからんでもないのだが」
「また、あの人が原因なんですか」
なんかベロニカさんが、そのようなうんざりした声を出しているので、どうやら騎士団長という人は、リュールさん以上に彼女の手を煩わせるタイプらしい。
なんとなく想像がつくな。
そして、その現場へ皆で行くと、ちょっと会話には大き過ぎる、迫力ある声が響き渡った。
「だから、サリタスよ。
それでは見栄えが悪いと何度言ったらわかるのだ!」
すると、相手も負けずに声を張り上げた。
「バルカム団長、あんたねえ。
たった一枚でも貴重過ぎる幻の七色ガルーダの羽根が、なんと二十二枚もあるんだぞ。
もう十分過ぎてお釣りが来るわっ!
もうこれじゃ、いつまで経っても飾り付けが決められないじゃないですか。
もういっそ、旗先に二~三枚飾って終いにしましょうよ」
「なんだと、この大馬鹿者が。
これだけの本数の羽根があるのだぞ。
卑しくも団旗をそんな寂しい飾りつけで済ませられるものか!」
何かまだ若そうだが、かなりしっかりした感じの騎士さんと、ごっつい、それはもう全身がごつくて、耳から口の周りから顎周りに至るまで見事な髭で彩られた厳つい男性が口論していた。
これが件の騎士団長さんなのだろう。
若い騎士さんは、たぶんこの騎士団でナンバー3くらいの人なんだろうなあ。
他の騎士達は腕組みをして、彼らを遠巻きに見ていた。
まあその反応は大方ベロニカさんと似たようなものだった。
まあ、なんとなく騎士団長はこういうタイプなんだろうとわかっていましたが。
副騎士団長さんが、あのような貴公子風の感じなので、団を束ねるボスはやっぱりこういう感じなんですよね。
出した羽根の枚数が半端だったのか。
適当に出して、これくらいあればいいかなと渡しただけなので。
よく考えたら、羽根で飾る旗の大きさすらまったく聞いていなかった。
机の上に置かれた重厚そうな、黒地の背景に茶色を主体にして黄色・緋色・金色などで彩られた、騎士団のシンボルらしき絵を描かれた、かなり大きなサイズの旗があった。
それに黄色というか金色のような房が全周に付けられており、そこの周りにガルさんの羽根が適当な間隔で並べられていた。
このままいくと、まったく話が進展しないようだったので、業を煮やした私がその場に進み出た。
「こうすればいいじゃないですか。
こんな風に斜めにつけなくて、ぶすっと旗へ直角に並べて。
枚数が少ないのなら増やせばいいんです。
ほれほれ、これくらいあったならどうです?」
私はそう言いながら、およそ百枚以上の羽根を追加して、傍の周りにズラっと羽根を並べてやった。
「おお、これなら十分見栄えがよいな。
よし、これで決まりだ」
「これで決まりだじゃないでしょ、団長!
こ、これだけの羽根の対価が幾らすると思っているんですかー。
というか、今気が付きましたが、ここまでの羽根の対価をうちの財政で払えていたのです⁉」
「さあ、どうかな。
おお、ベロニカよ、帰って来たか。
そのあたりはどうなのだ」
アカン、この人かなりアカン。
見たところ、精強な騎士団を率いるには申し分ない容姿や実力のある方のようなのだが、私のような小娘から見てもマネジメントに関してはあまり向いた方ではない。
そのあたりは、リュールさんとベロニカさんが受け持っているのだろう。
サリタスさんも、なかなかしっかり者のようだ。
あの団長さんを諫める事も出来る人のようなので。
「ご心配なく、サリタスさん。
そのあたりは、リュールさんとしっかり話がついていますから」
彼は初対面である私からの、いきなり過ぎる申し出に驚いたようだったが、顔を向けたリュールさんと隣にいたベロニカさんの両方に頷かれたので首を竦めた。
「ところで君は誰⁇」
ああ、あなたも私がここにいる事をかなり場違いだと認識してらっしゃるわけですね。
まあ、その認識は正確無比といえるのですが。
もっとも、団長さんの方は私の事など一向に気になさっておられないようだった。
まあ彼が信頼しているだろうリュールさんやベロニカさんと一緒にいますので、別に怪しい人物ではないだろうという認識なんでしょうね。
大人物系か!
「ああ、サリタス。
彼女はサヤ、その羽根の提供者だ。
対価の件は案ずるな。
それらの対価として、彼女の事は当分の間うちで世話をする事になったので、その件はお前も承知しておいてもらいたい」
「へえ、そうなんですか。
それにしても実に気前のいいことだ。
俺はサリタス・クルス・フォルス。
一応は侯爵家の三男です。
もっぱら、そこにいる豪胆なだけが取り柄の、うちのバルカム騎士団長の補佐役ですね。
副団長は外回りを見ておられる事が多いので」
なるほどなあ。
公爵家の跡取りという事で外部に顔が利くというか。
あるいは牽制したり、また王家なんかにも顔が利いたりするという事か。
それは騎士団に受け入れられもするはずだ。
リュールさんは、しっかりしている人だからなあ。
ちょっと残念なところは垣間見てしまったが、異常事態だったんだから、あれはもう仕方がないか。
でも団長さんのキャラも結構好き。
動物にしたら、熊さんか何かみたいな感じなのかな?
その様子を見て何かを察したものか、ベロニカさんは少し顔を顰めて、どうやら中座して外の空気を吸っていたらしきリュールさんに話しかけた。
「まだ団旗の飾りが終わっていないのですか?」
「ん、ああ。
ちょっと見栄えを考えたら微妙なんでな。
なんというか、デザイン的にかなり妥協しないと羽根の数が足りないというか。
これでも二十枚以上あるから十分過ぎてお釣りがくると思うのだがな。
なんというかその、また例によって団長が納得してくれんのだ。
相変わらず我儘で本当に困ったものだ。
まあ副団長としては、その気持ちもわからんでもないのだが」
「また、あの人が原因なんですか」
なんかベロニカさんが、そのようなうんざりした声を出しているので、どうやら騎士団長という人は、リュールさん以上に彼女の手を煩わせるタイプらしい。
なんとなく想像がつくな。
そして、その現場へ皆で行くと、ちょっと会話には大き過ぎる、迫力ある声が響き渡った。
「だから、サリタスよ。
それでは見栄えが悪いと何度言ったらわかるのだ!」
すると、相手も負けずに声を張り上げた。
「バルカム団長、あんたねえ。
たった一枚でも貴重過ぎる幻の七色ガルーダの羽根が、なんと二十二枚もあるんだぞ。
もう十分過ぎてお釣りが来るわっ!
もうこれじゃ、いつまで経っても飾り付けが決められないじゃないですか。
もういっそ、旗先に二~三枚飾って終いにしましょうよ」
「なんだと、この大馬鹿者が。
これだけの本数の羽根があるのだぞ。
卑しくも団旗をそんな寂しい飾りつけで済ませられるものか!」
何かまだ若そうだが、かなりしっかりした感じの騎士さんと、ごっつい、それはもう全身がごつくて、耳から口の周りから顎周りに至るまで見事な髭で彩られた厳つい男性が口論していた。
これが件の騎士団長さんなのだろう。
若い騎士さんは、たぶんこの騎士団でナンバー3くらいの人なんだろうなあ。
他の騎士達は腕組みをして、彼らを遠巻きに見ていた。
まあその反応は大方ベロニカさんと似たようなものだった。
まあ、なんとなく騎士団長はこういうタイプなんだろうとわかっていましたが。
副騎士団長さんが、あのような貴公子風の感じなので、団を束ねるボスはやっぱりこういう感じなんですよね。
出した羽根の枚数が半端だったのか。
適当に出して、これくらいあればいいかなと渡しただけなので。
よく考えたら、羽根で飾る旗の大きさすらまったく聞いていなかった。
机の上に置かれた重厚そうな、黒地の背景に茶色を主体にして黄色・緋色・金色などで彩られた、騎士団のシンボルらしき絵を描かれた、かなり大きなサイズの旗があった。
それに黄色というか金色のような房が全周に付けられており、そこの周りにガルさんの羽根が適当な間隔で並べられていた。
このままいくと、まったく話が進展しないようだったので、業を煮やした私がその場に進み出た。
「こうすればいいじゃないですか。
こんな風に斜めにつけなくて、ぶすっと旗へ直角に並べて。
枚数が少ないのなら増やせばいいんです。
ほれほれ、これくらいあったならどうです?」
私はそう言いながら、およそ百枚以上の羽根を追加して、傍の周りにズラっと羽根を並べてやった。
「おお、これなら十分見栄えがよいな。
よし、これで決まりだ」
「これで決まりだじゃないでしょ、団長!
こ、これだけの羽根の対価が幾らすると思っているんですかー。
というか、今気が付きましたが、ここまでの羽根の対価をうちの財政で払えていたのです⁉」
「さあ、どうかな。
おお、ベロニカよ、帰って来たか。
そのあたりはどうなのだ」
アカン、この人かなりアカン。
見たところ、精強な騎士団を率いるには申し分ない容姿や実力のある方のようなのだが、私のような小娘から見てもマネジメントに関してはあまり向いた方ではない。
そのあたりは、リュールさんとベロニカさんが受け持っているのだろう。
サリタスさんも、なかなかしっかり者のようだ。
あの団長さんを諫める事も出来る人のようなので。
「ご心配なく、サリタスさん。
そのあたりは、リュールさんとしっかり話がついていますから」
彼は初対面である私からの、いきなり過ぎる申し出に驚いたようだったが、顔を向けたリュールさんと隣にいたベロニカさんの両方に頷かれたので首を竦めた。
「ところで君は誰⁇」
ああ、あなたも私がここにいる事をかなり場違いだと認識してらっしゃるわけですね。
まあ、その認識は正確無比といえるのですが。
もっとも、団長さんの方は私の事など一向に気になさっておられないようだった。
まあ彼が信頼しているだろうリュールさんやベロニカさんと一緒にいますので、別に怪しい人物ではないだろうという認識なんでしょうね。
大人物系か!
「ああ、サリタス。
彼女はサヤ、その羽根の提供者だ。
対価の件は案ずるな。
それらの対価として、彼女の事は当分の間うちで世話をする事になったので、その件はお前も承知しておいてもらいたい」
「へえ、そうなんですか。
それにしても実に気前のいいことだ。
俺はサリタス・クルス・フォルス。
一応は侯爵家の三男です。
もっぱら、そこにいる豪胆なだけが取り柄の、うちのバルカム騎士団長の補佐役ですね。
副団長は外回りを見ておられる事が多いので」
なるほどなあ。
公爵家の跡取りという事で外部に顔が利くというか。
あるいは牽制したり、また王家なんかにも顔が利いたりするという事か。
それは騎士団に受け入れられもするはずだ。
リュールさんは、しっかりしている人だからなあ。
ちょっと残念なところは垣間見てしまったが、異常事態だったんだから、あれはもう仕方がないか。
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