異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

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第一章 幸せの青い鳥?

1-18 皺寄せの青い鳥

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「そうそう。
 あと、なんかここで聞きたい事があったんじゃなかったっけ」

「ああ、そうだった。
 ねえ、青い鳥の話って聞いた事がないですか?」

「青い鳥⁉」
「まさか!」

「あれ……?」

 また何か聞いてはいけない事だったのだろうか。
 でも聞かない訳にもなー。

「あのう、サヤ。
 君って、もしかして違う世界から来た人間っていう事はないよね?」

「な、何故それを。
 ガルさんは私の事を稀人だって言っていましたよ」

「あっちゃあ、君はそういう者だったのか」

「あー、なんとなくわかりますね。
 なんというかもう、アレな感じが。
 なるほど、納得出来ました」

「皆さんっ、ちょっと何気に失礼じゃないですか⁉」

 だが、その苦悩する二人は、やがてとんでもない事を話してくれたのだった。

『青い鳥の伝説』

 それは地球で言うような、幸せをもたらすようなメルヘンな存在ではないらしい。

 青い鳥、それは世界を越える者。

 そして彼らが選んで世界を越えさせる者、それはまた大概碌でもない存在なのだった。

 その鳥の正体は精霊であるとも、特殊な魔獣であるとも、あるいは何らかの神の一種とも言われている。

 そのような人士をこの世界に連れてくる目的もさまざまであるという。

 ある時は世界を救う救世主であったり、またある時は何らかの思惑により、世界に災いをもたらしたりするのだと。

 あるいは時には単なる気まぐれ、時には悪戯のような事で異世界から人を連れてくるのだと伝わっている。

「とにかく、彼らが連れてくるものは、勇者・聖女・魔王・救世主エトセトラ、そして時にそれらに該当しないハズレ者などですね」

 その最後の『ハズレ者』の部分にいやに力が入っていたような気がするのは気のせい⁉

 私は彼女達をじっと見ながら訊いてみた。

「率直に聞いてみたいのですが、私はその中のどれだと思います!?」

 そして、さっと二人に目を逸らされた。
 くそっ、私ってハズレ女郎だと思われてる⁉

 まあ、どう見たって私って勇者や救世主には、そして聖女や魔王にも見えませんけどね。

 勇者説はガルさんにも一笑に付されましたし。
 それらに該当するチートな能力もないのだし。

「もうっ、二人とも。
 私だって好きでこの世界に来たんじゃないんですからね!」

「まあまあ。
 とりあえず、マズイ騒動になりそうだった七色ガルーダの羽根は届けていただいた事だし。
 ここはそのタイミングの良さに免じて救世主説に一票を入れておくという事で」

「そうそう、本当にありがたい事ですよ」

「まあ、お互いの心の平穏のために、今はそういう事にしておきますか……」

 くそう、あの青い鳥め。
 ちょっと可愛いと思って図に乗りおって。

 そういや、やけに思わせぶりに私を誘っていたっけ。
 もしかして、私の動物好きなところに前から目を付けられていたとか。

 おのれ、今度会ったら焼き鳥にしてくれる。

 いや、とっ捕まえて、向こうの世界へ連れて帰らせればいいのか。

 この小夜様の、極悪カラスで鍛えた『鳥尋問スキル』を舐めたらあかんぜよ。

「ふう、じゃあ今度は服を買いに行きたいです」

「ああ、ちょっと待って今カードを作ってあげるから」

 しばし待つ間、ベロニカさんは私をじーっと観察していた。

「なんです?」

「ああ、いや。
 こうして改めて稀人という観点で眺めてみても君って本当にただの普通の女の子にしか思えない。

 やっぱり、そう御大層な人物には見えないなと。
 その癖、かなり騒動のネタになりそうな感じだし。

 当分、私の仕事はあなたのお世話というか監視なのかしらね」

「う、そう言われても否定しづらいのが非常に業腹です」

 そりゃあ、ちょっと動物好きなだけの女子高生ですもの。

 たとえば、いきなり魔王軍の魔物に玉座に祭り上げられて『魔王様万歳』とか言われても困るのですが。

 なまじ、魔物の言葉もわかりそうだから、そういう事があってもおかしくないしなあ。

 青い鳥が連れて来た人間なんて魔物にバレたら、そういう事があったっておかしくはない。
 ただの神輿シンボルという事で。

「ねえ、ちなみに魔王軍みたいな物ってあるのです?」

「とりあえず無いけど、昔はあったみたいよ。
 青い鳥が魔王となる人物を連れてきたら、また魔王軍が誕生するのかもね」

「やめてくださいな」

 あ、少し魔王説を疑われているな。
 確かに可愛い魔物の連中ばっかりに懐かれたら、思わず心がぐらついてしまいそうだけど。
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