15 / 104
第一章 幸せの青い鳥?
1-15 大物
しおりを挟む
「おい、起きなさい」
誰かが肩を揺すっていた。
「う、お願い。あと五分寝かせて~」
何故か、どっと笑い声が聞こえてくる。
誰だー、私を嗤っている奴は。
またカラスどもか。
あいつら、本当に性質が悪いんだから。
なまじ人間の言葉が通じる事もあるだけに余計に性質が悪いわー。
「副騎士団長、大物っすねー、その子」
「あ、ああ。
いろいろ訳ありっぽいのだが、こんなに寝起きが悪いとは。
それにしてもよく寝ているものだ」
「それにしても、おめでとうございます。
これで、団長やあなたも肩の荷が下りますね」
「まったくだ」
う、あれ? 今何をやっていたんだっけ。
き、記憶が飛んでるー。
「は! こ、ここは!?」
「王国騎士団本部へようこそ、お嬢さん。
よくお休みでしたね」
「あわわわわ、す、すいません。
春なもんで、ついー」
しまったー、やってしまった。
なんと騎士団の他の人と初対面で、のっけからこれか。
まあ笑われている分には親しみを持ってもらえていいくらいのものだけど、さすがにちょっと恥ずかしいー。
おっと、ちょっと涎の後が付いてるー。
それを慌てて擦っていると、イケメンな副騎士団長閣下が叫んでいらした。
「ベロニカ、ベロニカはいるか」
すると、建物の奥から白い上下のピシっとした礼装のような服を着込んで帯剣した美女が現れた。
アメリカなんかでも最近は少ないと言われる純ブロンド。
その宝石のエメラルドのような感じで、深みのあるグリーンの瞳が映える。
リュールさんが同じような金髪と、綺麗な青い目だから二人並ぶと凄い。
目の覚めるような美女とは、まさにこの人の事だ。
異世界すげえ。
「何でしょう、副団長」
「お前に、この子の世話を頼みたい」
「は? その子を⁇」
まあそういう反応が返るのは無理もない。
その副騎士団長閣下にも、先程散々言われてしまったほど頼りない女なのだ。
ここにいるのは場違いにもほどがある。
「その子は、うちで住居や仕事の世話をする事になった。
この子は我が騎士団の恩人だ。
丁重に扱え。
名はサヤ・アド。
サヤ、これが例の、うちの紅一点の女騎士だ。
ベロニカ、しばらくその子の警護につけ」
「はあ、よろしいですが、いつまで?
私も自分の仕事がありますので」
「お前の判断に任せる。
その子が一人歩き出来るようになるまでだ。
お前の仕事は手伝わせてやってもいい。
その子に仕事を紹介してやらないといけないのでな。
それまでは騎士団から仕事を与えよう」
彼女は私を無遠慮に眺めつつ、しばし考えていたようだったが、ふと気になったらしくて上官に訊ねた。
「リュール副団長。
この子はどこに住んでいるのです?」
「ああ、今日王都へ来たばかりだから、住むところもない。
とりあえず、うちの宿舎の空いた部屋にでも入れようかと」
だが、次の瞬間に彼女は猛烈に怒り出した。
「副団長、あんたはアホですかあ。
こんな女の子を、男臭い騎士団宿舎の中に放り込む馬鹿がどこにいますかーっ」
うはっ、彼の頭の中ではそういう予定になっていたのねー!
それは、さすがにキツイわ。
のんびり屋の私も思わず顔が引き攣った。
一応は花の女子高生なのですが、ここにはこの素敵なブレザーとチェックのスカートの意味を知る人間すら一人もいない。
「わ、わかったわかった。
そう怒るな。
では、この子は我が家の屋敷に住まわせよう」
「当り前です。この子は、あなたが拾ってきたんでしょうにー。
最初っからそうしなさい」
それから、彼女は私に向かってこう言った。
「いいですか?
うちの副団長は真面目で融通が利かない頑固者で、見目麗しいだけではなく大変骨のある男なので尊敬はしていますが、万事がこういう感じなので、あなたも気を付けなさい。
油断していると、さっきみたいな酷い事になりますから」
「あ、はい。
よくわかりました。
あまり気が利かないっていうか、気が回らないっていうか、天然っていうか。
そういう感じの人なんですよね」
それを聞いて、満足そうな感じで「どうよ」と言わんばかりに、かなりサイズがありそうな胸を張って副団長様に向かってドヤ顔を放ち、彼から苦笑されていた。
いいな、この人。
凄く気に入った。
いっぱい仲良くしておこうっと。
それから、副団長様はベロニカさんの耳元に囁いていた。
「その子は収納持ちで、高価な物品も持ち歩いているようだ。
連れ歩くときは気を付けてやってくれ。
本人はまだあまり自覚がないようだ」
彼女は少し眉を寄せたが、そのまま頷いた。
「わかりました。
そのように取り計らいます」
「後で事務の方へ連れていってくれ。
その子の身分証を作らせておく」
それから、副団長様は団旗の飾り付けがあるらしくて、かなり忙しそうに立ち働いていた。
それをボーっとして見送っていたが、ベロニカさんから声をかけられた。
「さて、どうしようか。
あなたって、何が得意なのかな」
「主に動物の相手ですね。
もっぱら、彼らと一緒に遊ぶ方ですが」
「あーと、働く方面の話だったのですが」
「えー、そう特技はないのですが、多少の算術とか、あと多少の回復魔法は使えます」
「へえ、回復魔法か。
凄いじゃない。
それなら騎士団なんかでも引っ張りだこよ。
どこで習ったの?」
「ナナさんから」
「へえ、どこの人なの」
「私のような、このあたりの地理に不案内な外国人にはよくわからないところに住んでいらっしゃる七色ガルーダのナナさんです。
そこで、たくさん彼らの羽根を御土産にいただいてきました」
思わず沈黙した彼女。
あれ、あまり正直に言ってはまずかっただろうか。
「えーと、じゃあどこに行きたいのかな。
今日王都へ来たばっかりなんだよね」
「ああ、素材の買い取りをしてもらいたくて。
あと、お金が出来たら服を買いたいです。
それと、魔物や魔獣に詳しい場所へ行きたいです」
「わかったわ。
じゃあ、そっちの方面から行きましょうか」
誰かが肩を揺すっていた。
「う、お願い。あと五分寝かせて~」
何故か、どっと笑い声が聞こえてくる。
誰だー、私を嗤っている奴は。
またカラスどもか。
あいつら、本当に性質が悪いんだから。
なまじ人間の言葉が通じる事もあるだけに余計に性質が悪いわー。
「副騎士団長、大物っすねー、その子」
「あ、ああ。
いろいろ訳ありっぽいのだが、こんなに寝起きが悪いとは。
それにしてもよく寝ているものだ」
「それにしても、おめでとうございます。
これで、団長やあなたも肩の荷が下りますね」
「まったくだ」
う、あれ? 今何をやっていたんだっけ。
き、記憶が飛んでるー。
「は! こ、ここは!?」
「王国騎士団本部へようこそ、お嬢さん。
よくお休みでしたね」
「あわわわわ、す、すいません。
春なもんで、ついー」
しまったー、やってしまった。
なんと騎士団の他の人と初対面で、のっけからこれか。
まあ笑われている分には親しみを持ってもらえていいくらいのものだけど、さすがにちょっと恥ずかしいー。
おっと、ちょっと涎の後が付いてるー。
それを慌てて擦っていると、イケメンな副騎士団長閣下が叫んでいらした。
「ベロニカ、ベロニカはいるか」
すると、建物の奥から白い上下のピシっとした礼装のような服を着込んで帯剣した美女が現れた。
アメリカなんかでも最近は少ないと言われる純ブロンド。
その宝石のエメラルドのような感じで、深みのあるグリーンの瞳が映える。
リュールさんが同じような金髪と、綺麗な青い目だから二人並ぶと凄い。
目の覚めるような美女とは、まさにこの人の事だ。
異世界すげえ。
「何でしょう、副団長」
「お前に、この子の世話を頼みたい」
「は? その子を⁇」
まあそういう反応が返るのは無理もない。
その副騎士団長閣下にも、先程散々言われてしまったほど頼りない女なのだ。
ここにいるのは場違いにもほどがある。
「その子は、うちで住居や仕事の世話をする事になった。
この子は我が騎士団の恩人だ。
丁重に扱え。
名はサヤ・アド。
サヤ、これが例の、うちの紅一点の女騎士だ。
ベロニカ、しばらくその子の警護につけ」
「はあ、よろしいですが、いつまで?
私も自分の仕事がありますので」
「お前の判断に任せる。
その子が一人歩き出来るようになるまでだ。
お前の仕事は手伝わせてやってもいい。
その子に仕事を紹介してやらないといけないのでな。
それまでは騎士団から仕事を与えよう」
彼女は私を無遠慮に眺めつつ、しばし考えていたようだったが、ふと気になったらしくて上官に訊ねた。
「リュール副団長。
この子はどこに住んでいるのです?」
「ああ、今日王都へ来たばかりだから、住むところもない。
とりあえず、うちの宿舎の空いた部屋にでも入れようかと」
だが、次の瞬間に彼女は猛烈に怒り出した。
「副団長、あんたはアホですかあ。
こんな女の子を、男臭い騎士団宿舎の中に放り込む馬鹿がどこにいますかーっ」
うはっ、彼の頭の中ではそういう予定になっていたのねー!
それは、さすがにキツイわ。
のんびり屋の私も思わず顔が引き攣った。
一応は花の女子高生なのですが、ここにはこの素敵なブレザーとチェックのスカートの意味を知る人間すら一人もいない。
「わ、わかったわかった。
そう怒るな。
では、この子は我が家の屋敷に住まわせよう」
「当り前です。この子は、あなたが拾ってきたんでしょうにー。
最初っからそうしなさい」
それから、彼女は私に向かってこう言った。
「いいですか?
うちの副団長は真面目で融通が利かない頑固者で、見目麗しいだけではなく大変骨のある男なので尊敬はしていますが、万事がこういう感じなので、あなたも気を付けなさい。
油断していると、さっきみたいな酷い事になりますから」
「あ、はい。
よくわかりました。
あまり気が利かないっていうか、気が回らないっていうか、天然っていうか。
そういう感じの人なんですよね」
それを聞いて、満足そうな感じで「どうよ」と言わんばかりに、かなりサイズがありそうな胸を張って副団長様に向かってドヤ顔を放ち、彼から苦笑されていた。
いいな、この人。
凄く気に入った。
いっぱい仲良くしておこうっと。
それから、副団長様はベロニカさんの耳元に囁いていた。
「その子は収納持ちで、高価な物品も持ち歩いているようだ。
連れ歩くときは気を付けてやってくれ。
本人はまだあまり自覚がないようだ」
彼女は少し眉を寄せたが、そのまま頷いた。
「わかりました。
そのように取り計らいます」
「後で事務の方へ連れていってくれ。
その子の身分証を作らせておく」
それから、副団長様は団旗の飾り付けがあるらしくて、かなり忙しそうに立ち働いていた。
それをボーっとして見送っていたが、ベロニカさんから声をかけられた。
「さて、どうしようか。
あなたって、何が得意なのかな」
「主に動物の相手ですね。
もっぱら、彼らと一緒に遊ぶ方ですが」
「あーと、働く方面の話だったのですが」
「えー、そう特技はないのですが、多少の算術とか、あと多少の回復魔法は使えます」
「へえ、回復魔法か。
凄いじゃない。
それなら騎士団なんかでも引っ張りだこよ。
どこで習ったの?」
「ナナさんから」
「へえ、どこの人なの」
「私のような、このあたりの地理に不案内な外国人にはよくわからないところに住んでいらっしゃる七色ガルーダのナナさんです。
そこで、たくさん彼らの羽根を御土産にいただいてきました」
思わず沈黙した彼女。
あれ、あまり正直に言ってはまずかっただろうか。
「えーと、じゃあどこに行きたいのかな。
今日王都へ来たばっかりなんだよね」
「ああ、素材の買い取りをしてもらいたくて。
あと、お金が出来たら服を買いたいです。
それと、魔物や魔獣に詳しい場所へ行きたいです」
「わかったわ。
じゃあ、そっちの方面から行きましょうか」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは


「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

最後に報われるのは誰でしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。
「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。
限界なのはリリアの方だったからだ。
なので彼女は、ある提案をする。
「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。
リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。
「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」
リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。
だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。
そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。


【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる