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第一章 幸せの青い鳥?
1-5 岩塩
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とりあえず彼に連れられて、彼が塩分を補給するための、地上に露出したピンク色っぽい感じの大きな岩塩に案内してもらった。
うん、ホームセンターなんかでよく見かける定番の奴だ。
これなら、あれが出来るかもしれない。
「わあ、岩塩っていうだけあって固そうだなあ」
「なに、こうすればよい」
そう言うや、彼はその鉤爪のついた強力な腕でそれを砕いた。
それをさらに手で握り潰し、手頃な大きさにしてくれた。
たくさん用意してもらったので、収納に大切に仕舞い込んでおいた。
これの使い方も習ったのだ。
七色ガルーダって、見かけの美しさだけでなく持っている魔法やスキルも凄い。
「これで塩味の肉やサラダが食べられる~」
「さて、では行くとするか」
「待って、御飯が先だよ。
お腹が空いていたら、ちゃんと交渉出来ないし」
「そうか。
それでは仕方がない、我も食事にするか」
そして私は久々に味付きのご飯にありついたのだが、彼の食事は豪快だった。
骨付きで皮付きの生肉を片手で持って豪快に齧っていた。
う、口の周りが血塗れだー。
「焼いて食おうとは思わないの。
火魔法を使えるくせに」
だが彼は妙な顔をしてみせた。
「我らは昔から、このようにして食ってきたのだが」
「ちょっと思い付いたんだけど、ちょっと料理してみない?
なんていうかさ、人間の場合は女の子を口説く時に美味しい物を御馳走したりするんだよ。
その方が幸せに感じるでしょう。
ガルーダは違うの?」
だが、彼は間髪入れずに答えた。
「無論、美味しい獲物を取ってくるのは雄として当然の役割りだ」
駄目だ。
全然話が噛み合っていない。
種族誕生以来、ずっと肉の生食をメインにしてきたろう方に、お料理の話をしても駄目だったか。
「でもさー、それで口説けていないんでしょう?
だったら、新しい要素を付け加えてみたらどうかっていう話よ。
どうせ、駄目元企画なんだし。
正直に言って、私が普通に話したって、せいぜい彼女の退屈凌ぎになるくらいのもので、この話に何の進展もないと思うの」
「そう言われてしまえば返す言葉もないのだが……」
「物は試しで、簡単にお料理してみない?」
「まあ、やってみてもよいのだが、そんな事はやった事がない」
「とりあえず、とっても簡単な奴ね。
そこにちょうど岩塩があるじゃない。
それをあなた達が食べる肉を置けるくらいのサイズの板状に何枚か切り出してみて。
厚さはこれくらいで均一に、綺麗に平たい板の形にしてね」
私は女の子の指二本分くらいの厚さを指定した。
要は岩塩焼きのステーキにしようと思ったのだけれど、焼く肉が大きいので火力が強くて爆ぜて割れてしまわないように岩塩のプレートは厚くしてみた。
あれは火加減が難しい。
網があるといいんだけど、ここでは岩のプレートで代用してみるか。
「ほお、それはこんな感じかな」
彼は何かをやって、岩塩が見事にスライスされていった。
「凄い、今何をやったの⁉」
「ん? ただの魔法で、風の刃というものだが。
これも覚えてみるか?」
「是非とも!」
彼が何回か岩塩を切り出すために使ってくれたので、やり方はなんとなくわかった。
でも結局、私はそいつを習得できなかった。
なんというかな、魔法の形にはなるのだが、鋭く収束されないというか。
刃物で言うと完全に鈍らというか、刃引きされたような感じだろうか。
強い風自体は起きるので、木なんかに当てると、パーっと葉っぱは散ったりするのだが。
そういう攻撃魔法のような強い魔法は使えないものらしい。
練習すると使えるかもしれないのだが。
いわゆるエアバレットみたいな敵を吹っ飛ばす程度のスキルくらいなら編み出せるかもしれない。
「はっはっは、お前さんはインテリジェンスな能力に力を寄せておるみたいなので、そういう物の習得にはあまり向かないようだな」
「ふああ、無理だったー。
ちぇ、せっかくだから格好いい魔法を覚えてみたかったのに」
「そういう奴は回復魔法なんかを覚えやすいタイプだと思うのだが」
「そうですか、精進します……」
それから今度は竈として使う岩を板状に切り出し、それを載せるための竈に使う四点支柱のパーツも切り出してもらった。
空中に浮かべる魔法の火を使うので、こんな感じで十分だろう。
うまく火力が岩塩プレートに伝わらないようならば、下の岩板に穴を空けてみてもいい。
「あとねえ、塩窯焼きも試してみたいから、塩の粉末をたくさん作ってくれる?
さっき岩塩プレートを作った時の余りがあったよね」
「なんだか知らぬが承った」
こいつは魚でやるべき料理なんだけど、川にこれ向きの美味しい魚とかあるものか。
まあ、とりあえず肉で試してみてもいいけれど。
後は、あるかどうか知らないけれど。
「ねえ、このあたりに香りのいい草みたいな物はないの。
そういうもので風味付けをすると、なんとなく料理っぽくなるのだけれど」
「香り草か。
無い事もない。
何種類かあったような気がするから集めよう」
「私も一緒に行くよ。
あなただけを行かせると何か不安。
そういや、あなたって名前ないの」
「我が名は******」
「わ、わからない。
じゃあ暫定でガルさん!」
「まあ、仇名のようなものという事でよいか。
お前も、そういう特殊な発音の種族固有名みたいな物は苦手なのだな。
そういえば、お前の名も聞いておらんかったな」
「愛土小夜、こちら風に言えば多分サヤ・アドだよ。
サヤでいい」
「そうか。
ではお前の事はサヤと呼ぶ事にしよう」
そして、なんとか草集めを完了して、あれこれと試す事とした。
岩塩が割れてしまうかもしれないので、補充用の入手も兼ねて岩塩の近くでやる事にした。
うん、ホームセンターなんかでよく見かける定番の奴だ。
これなら、あれが出来るかもしれない。
「わあ、岩塩っていうだけあって固そうだなあ」
「なに、こうすればよい」
そう言うや、彼はその鉤爪のついた強力な腕でそれを砕いた。
それをさらに手で握り潰し、手頃な大きさにしてくれた。
たくさん用意してもらったので、収納に大切に仕舞い込んでおいた。
これの使い方も習ったのだ。
七色ガルーダって、見かけの美しさだけでなく持っている魔法やスキルも凄い。
「これで塩味の肉やサラダが食べられる~」
「さて、では行くとするか」
「待って、御飯が先だよ。
お腹が空いていたら、ちゃんと交渉出来ないし」
「そうか。
それでは仕方がない、我も食事にするか」
そして私は久々に味付きのご飯にありついたのだが、彼の食事は豪快だった。
骨付きで皮付きの生肉を片手で持って豪快に齧っていた。
う、口の周りが血塗れだー。
「焼いて食おうとは思わないの。
火魔法を使えるくせに」
だが彼は妙な顔をしてみせた。
「我らは昔から、このようにして食ってきたのだが」
「ちょっと思い付いたんだけど、ちょっと料理してみない?
なんていうかさ、人間の場合は女の子を口説く時に美味しい物を御馳走したりするんだよ。
その方が幸せに感じるでしょう。
ガルーダは違うの?」
だが、彼は間髪入れずに答えた。
「無論、美味しい獲物を取ってくるのは雄として当然の役割りだ」
駄目だ。
全然話が噛み合っていない。
種族誕生以来、ずっと肉の生食をメインにしてきたろう方に、お料理の話をしても駄目だったか。
「でもさー、それで口説けていないんでしょう?
だったら、新しい要素を付け加えてみたらどうかっていう話よ。
どうせ、駄目元企画なんだし。
正直に言って、私が普通に話したって、せいぜい彼女の退屈凌ぎになるくらいのもので、この話に何の進展もないと思うの」
「そう言われてしまえば返す言葉もないのだが……」
「物は試しで、簡単にお料理してみない?」
「まあ、やってみてもよいのだが、そんな事はやった事がない」
「とりあえず、とっても簡単な奴ね。
そこにちょうど岩塩があるじゃない。
それをあなた達が食べる肉を置けるくらいのサイズの板状に何枚か切り出してみて。
厚さはこれくらいで均一に、綺麗に平たい板の形にしてね」
私は女の子の指二本分くらいの厚さを指定した。
要は岩塩焼きのステーキにしようと思ったのだけれど、焼く肉が大きいので火力が強くて爆ぜて割れてしまわないように岩塩のプレートは厚くしてみた。
あれは火加減が難しい。
網があるといいんだけど、ここでは岩のプレートで代用してみるか。
「ほお、それはこんな感じかな」
彼は何かをやって、岩塩が見事にスライスされていった。
「凄い、今何をやったの⁉」
「ん? ただの魔法で、風の刃というものだが。
これも覚えてみるか?」
「是非とも!」
彼が何回か岩塩を切り出すために使ってくれたので、やり方はなんとなくわかった。
でも結局、私はそいつを習得できなかった。
なんというかな、魔法の形にはなるのだが、鋭く収束されないというか。
刃物で言うと完全に鈍らというか、刃引きされたような感じだろうか。
強い風自体は起きるので、木なんかに当てると、パーっと葉っぱは散ったりするのだが。
そういう攻撃魔法のような強い魔法は使えないものらしい。
練習すると使えるかもしれないのだが。
いわゆるエアバレットみたいな敵を吹っ飛ばす程度のスキルくらいなら編み出せるかもしれない。
「はっはっは、お前さんはインテリジェンスな能力に力を寄せておるみたいなので、そういう物の習得にはあまり向かないようだな」
「ふああ、無理だったー。
ちぇ、せっかくだから格好いい魔法を覚えてみたかったのに」
「そういう奴は回復魔法なんかを覚えやすいタイプだと思うのだが」
「そうですか、精進します……」
それから今度は竈として使う岩を板状に切り出し、それを載せるための竈に使う四点支柱のパーツも切り出してもらった。
空中に浮かべる魔法の火を使うので、こんな感じで十分だろう。
うまく火力が岩塩プレートに伝わらないようならば、下の岩板に穴を空けてみてもいい。
「あとねえ、塩窯焼きも試してみたいから、塩の粉末をたくさん作ってくれる?
さっき岩塩プレートを作った時の余りがあったよね」
「なんだか知らぬが承った」
こいつは魚でやるべき料理なんだけど、川にこれ向きの美味しい魚とかあるものか。
まあ、とりあえず肉で試してみてもいいけれど。
後は、あるかどうか知らないけれど。
「ねえ、このあたりに香りのいい草みたいな物はないの。
そういうもので風味付けをすると、なんとなく料理っぽくなるのだけれど」
「香り草か。
無い事もない。
何種類かあったような気がするから集めよう」
「私も一緒に行くよ。
あなただけを行かせると何か不安。
そういや、あなたって名前ないの」
「我が名は******」
「わ、わからない。
じゃあ暫定でガルさん!」
「まあ、仇名のようなものという事でよいか。
お前も、そういう特殊な発音の種族固有名みたいな物は苦手なのだな。
そういえば、お前の名も聞いておらんかったな」
「愛土小夜、こちら風に言えば多分サヤ・アドだよ。
サヤでいい」
「そうか。
ではお前の事はサヤと呼ぶ事にしよう」
そして、なんとか草集めを完了して、あれこれと試す事とした。
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