151 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-63 聖山デート
しおりを挟む
「へえ、お小遣い出たんだ。
よかったじゃない。
あんた、あれだけいたドラゴンも全部寄付しちゃったんでしょ」
「まあね。
なんていうのかな、値打ち物なんかも、あまり一度に出し過ぎても買い手がつかなくなって価格の暴落を招きかねないからね。
宝箱を開け過ぎて、神殿でも希少アイテムの在庫がだぶついてきているんだ。
中にはもう全然希少じゃなくなってしまった物まであるし」
そういう理由で宝箱探索も一旦中止になったのだ。
「ぜ、ぜーたくな話だなあ」
「まさにそれな。
俺も行きたいところなんかはあるんだけどな」
「へー、どこ?」
「まず、ラビワンのダンジョンなんだけど無理。
王様が管理魔物のコアを欲しがっているみたいなんだけどさ、先輩と一緒じゃないとあそこに潜るのは駄目って言われてるから。
あの人も今は王の勅命扱いだから、勝手に聖教国を離れられないんだ」
もっと強くなったらラビワンにソロで潜るお許しが出るかも。
でも行くのなら眷属勢揃いで!
それなら大概の下層魔物相手だって大楽勝のはず(最後の番人や管理魔物除く)。
先輩みたいな経験の深いガイドは是非欲しいのですけれど。
「他は?」
「俺の家かな。
御土産を持って遊びに行きたいんだけど、北の異変が片付かないと長く留守にしたくないし。
それに」
「それに?」
「今行くと畑の種撒きの季節だから、農作業の手伝いをしにいくようなもんだ。
どうせなら収穫の時期に行きたいな。
正確には収穫の後のお祭りの時期にね」
まあ別に今行ったっていいんだけど、なかなか姐御からお許しが出ないんじゃないかと。
「じゃあ、聖山に行かない?
あそこなら近いしさ」
「聖山?」
そういや、そんな物もあったな。
というか、自分の国の国名の由来でもあるのだが、聖地巡礼なんて生まれてこの方考えた事もない。
生まれはただの農民だし、冒険者なのだから聖都ではダンジョンの方にどうしても目が向く。
「あそこは巡礼のコースになっているから、ほとんど観光地みたいなものよ。
結構景色はいいらしいし。
リクルって、高いところ好きでしょ」
なんとかと煙とはよく言われるものだが、とにかく俺は高いところは好き。
だって、なんといっても景色が最高じゃないか。
「へー、そいつはいいな。
じゃあ、ちょっとだけ行ってみるかあ。
聖山まで行ってきていいか、姐御に聞いてくる」
「あ、一緒に行くよ。
すぐそこだしさ。
その方が手間も省けるし」
「じゃ、一緒に行こう」
こうして俺とリナは、碌にやる事ないコンビとして聖山への登山デートを目指す事になった。
「姐御、いる~?」
「なんだ、リクルか。
どうした」
姐御は聖女の執務室で手紙を書いていたようだ。
ちゃんと、こんな部屋まであるんだな。
既に何通も書いた物が机の上に置いてあった。
聖女ともなると、そういう仕事も必要なものらしい。
今は特にドラゴン被害に関しての支援要請がまだ要るのだろう。
偉い人は大変だなあ。
俺達がかき集めた金目のものはなるべく聖教国の運営費に回しているのだ。
ダンジョンからの収益が目減りしていて、先の見通しが立たないからな。
潜りっぱなしの奴らも、ちっとも帰ってこないらしいし。
あいつら、どうなっているんだろう。
あれだけの数の冒険者が全員死んだとは、とても思えないのだが。
冒険者なんてみんな、結構命汚いからな。
もちろん、その中に俺も含まれているのだが。
「ああ、今から聖山に遊びに行きたいのだけど、行ってきてもいい?
リナと二人で」
「聖山か、まあいいぞ。
てっきりダンジョンに行きたいとかいうのかと思ったが」
「行きたいのはやまやまだけど、行きたいのはラビワンのダンジョンに先輩と一緒にだからなあ」
「そうだな。
例のコアの話なのだろう?」
「ああ、まあ今は仕方がないしね。
先輩は親から頼まれているだろうから行きたいのかもな」
そうしたら、姐御がこんな事を言い出した。
「そうだ。
聖山まで行くのなら、ちょっとお使いを頼みたい」
「お使い?」
「ああ、聖山の入り口に、管理事務所があってな。
そこで、そっちに異変がないか確認してきてくれ。
うっかり、その可能性を考えていなくてな。
今、お前に聖山と言われて思い出したところだ。
マロウスに頼もうと思ったのだが、彼も自分の用足しに行っていて。
エラヴィスにも別の用事を頼んであるのだ」
よかったじゃない。
あんた、あれだけいたドラゴンも全部寄付しちゃったんでしょ」
「まあね。
なんていうのかな、値打ち物なんかも、あまり一度に出し過ぎても買い手がつかなくなって価格の暴落を招きかねないからね。
宝箱を開け過ぎて、神殿でも希少アイテムの在庫がだぶついてきているんだ。
中にはもう全然希少じゃなくなってしまった物まであるし」
そういう理由で宝箱探索も一旦中止になったのだ。
「ぜ、ぜーたくな話だなあ」
「まさにそれな。
俺も行きたいところなんかはあるんだけどな」
「へー、どこ?」
「まず、ラビワンのダンジョンなんだけど無理。
王様が管理魔物のコアを欲しがっているみたいなんだけどさ、先輩と一緒じゃないとあそこに潜るのは駄目って言われてるから。
あの人も今は王の勅命扱いだから、勝手に聖教国を離れられないんだ」
もっと強くなったらラビワンにソロで潜るお許しが出るかも。
でも行くのなら眷属勢揃いで!
それなら大概の下層魔物相手だって大楽勝のはず(最後の番人や管理魔物除く)。
先輩みたいな経験の深いガイドは是非欲しいのですけれど。
「他は?」
「俺の家かな。
御土産を持って遊びに行きたいんだけど、北の異変が片付かないと長く留守にしたくないし。
それに」
「それに?」
「今行くと畑の種撒きの季節だから、農作業の手伝いをしにいくようなもんだ。
どうせなら収穫の時期に行きたいな。
正確には収穫の後のお祭りの時期にね」
まあ別に今行ったっていいんだけど、なかなか姐御からお許しが出ないんじゃないかと。
「じゃあ、聖山に行かない?
あそこなら近いしさ」
「聖山?」
そういや、そんな物もあったな。
というか、自分の国の国名の由来でもあるのだが、聖地巡礼なんて生まれてこの方考えた事もない。
生まれはただの農民だし、冒険者なのだから聖都ではダンジョンの方にどうしても目が向く。
「あそこは巡礼のコースになっているから、ほとんど観光地みたいなものよ。
結構景色はいいらしいし。
リクルって、高いところ好きでしょ」
なんとかと煙とはよく言われるものだが、とにかく俺は高いところは好き。
だって、なんといっても景色が最高じゃないか。
「へー、そいつはいいな。
じゃあ、ちょっとだけ行ってみるかあ。
聖山まで行ってきていいか、姐御に聞いてくる」
「あ、一緒に行くよ。
すぐそこだしさ。
その方が手間も省けるし」
「じゃ、一緒に行こう」
こうして俺とリナは、碌にやる事ないコンビとして聖山への登山デートを目指す事になった。
「姐御、いる~?」
「なんだ、リクルか。
どうした」
姐御は聖女の執務室で手紙を書いていたようだ。
ちゃんと、こんな部屋まであるんだな。
既に何通も書いた物が机の上に置いてあった。
聖女ともなると、そういう仕事も必要なものらしい。
今は特にドラゴン被害に関しての支援要請がまだ要るのだろう。
偉い人は大変だなあ。
俺達がかき集めた金目のものはなるべく聖教国の運営費に回しているのだ。
ダンジョンからの収益が目減りしていて、先の見通しが立たないからな。
潜りっぱなしの奴らも、ちっとも帰ってこないらしいし。
あいつら、どうなっているんだろう。
あれだけの数の冒険者が全員死んだとは、とても思えないのだが。
冒険者なんてみんな、結構命汚いからな。
もちろん、その中に俺も含まれているのだが。
「ああ、今から聖山に遊びに行きたいのだけど、行ってきてもいい?
リナと二人で」
「聖山か、まあいいぞ。
てっきりダンジョンに行きたいとかいうのかと思ったが」
「行きたいのはやまやまだけど、行きたいのはラビワンのダンジョンに先輩と一緒にだからなあ」
「そうだな。
例のコアの話なのだろう?」
「ああ、まあ今は仕方がないしね。
先輩は親から頼まれているだろうから行きたいのかもな」
そうしたら、姐御がこんな事を言い出した。
「そうだ。
聖山まで行くのなら、ちょっとお使いを頼みたい」
「お使い?」
「ああ、聖山の入り口に、管理事務所があってな。
そこで、そっちに異変がないか確認してきてくれ。
うっかり、その可能性を考えていなくてな。
今、お前に聖山と言われて思い出したところだ。
マロウスに頼もうと思ったのだが、彼も自分の用足しに行っていて。
エラヴィスにも別の用事を頼んであるのだ」
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
異世界にクラス転移したら全員ハズレスキルを持たされた
アタラクシア
ファンタジー
人生で数度もない貴重なイベントである修学旅行。この風鈴高校に通う二年二組の生徒たちも、長い間待ち望んでいた修学旅行に胸を躍らせていた。
はしゃぐバスの中――突然周りが黒く染まり、生徒たちは下へ下へと落下してしまう。
目が覚め、見えた景色は――現実の法則が意味をなさない、まさに『異世界』であった。
クラス全員ハズレスキル!?前代未聞の異世界転移に少年少女らは立ち向かう。
――根源に至る『四騎士』
――世界征服を企む『ナイトメア』
――新世界を作ろうとする『ネビュラ教』
異世界の様々な情勢に振り回されながらも奔走する。目指すは「クラスメイト全員の合流」と「元世界への帰還」。
はたして彼らは全員合流し、元の世界へと帰れるのか。
長くも奇妙な修学旅行が今始まる――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-
一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。
ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。
基本ゆったり進行で話が進みます。
四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる