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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-40 本日の教官はこの方
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「という訳で、本日は俺からのスキル授与の儀式だ」
そんな事を言っているビーストベアーのお兄さんがそこにいた。
今は朝の散歩の時間だったと思うのだが⁇
「あれっ?
今日はダンジョンへ行くんじゃなかったのか⁉
まだ朝飯前だぞ」
ここは祈りの塔と言う名の、神官達のための試練鍛練の塔である。
まあ、なんだかんだ言って、朝の散歩と称して毎日登っているんだけど。
主に階段の壁部分を走ってね。
あそこだけはいつでも空いているから。
「まあ、魔法だけで邪神に立ち向かえると思ったら大甘なのである。
体技も覚えておけ」
「ねえ、マロウス。
何かこう、俺が絶対に邪神と対決しなくちゃいけない流れになってきてない?
というか、その流れをマロウスが強引に作ろうとしていない?」
「まあ、とりあえず覚えておくだけ覚えておいて損はない。
ではまず、これから行くぞ。
垂直大ジャンプ」
「おい、そこ大事なところだから無視していくなよ」
だがそれは彼の耳に届く前に彼の姿はもうそこにはなく、行ってしまったようだった。
マロウスは最上階まで一息に飛んでいった。
ビーストベアーってあんな芸当が出来たんだ。
余裕たっぷりって感じだね。
百五十メートル級の垂直ジャンプか。
きっと天井がなかったら、もっと行けたのかもしれない。
「ねえ、あれって絶対にスキルじゃないよね」
昨日から、ずっと出現しっぱなしの精霊さんから辛口の批評が入った。
「でも【冒険者金融】の能力を使えば、マロウスの力も借りられるんだけどな。
そいつは奴は一人で迷い込んだ時には扉の中では使えないかもだけど」
前の時は使えなかったんだよなあ。
「そんなの、風の精霊たるうちが力を貸してあげたら飛べるよ」
「そうなんだけどな。
あれはキック力もあるから捨て難い。
あ、何故か発動していなかったはずなのに何故か俺のスキルがあれを覚えている。
【ビースト・ジャンプ】だってさ。
使ったら、スキルとして獲得できるみたい」
「嘘」
「まあ試しに跳んでみるか」
ブースト抜きでスキルを発動したところ、俺は一っ飛びでマロウスの隣まで飛んでいた。
「お、来たか、リクルよ。
では次だ」
そう言いながらマロウスは屋上まで階段を登っていく。
「うわ、こいつはなんだか、ちょっと嫌な予感がしてきたな」
「あはは、リクル頑張れ~」
「まあ、いざとなったら風の精霊のうちが助けてあげるからさー」
「本当にー?」
「たぶん」
「たぶんなのかよっ」
だが、行かない訳にもいかんのでマロウスの後をついていったら、彼は言った。
「これが我らビースト族の得意技、飛び降りだ」
「それはスキルじゃない!
そのまんまじゃねえかあああ」
だが、俺の叫びなどは無視して彼は飛び降りていき、多くの人々は祈りの塔の屋上からそれをガン見していた。
「畜生、非常に飛び降りづらい状況なのだが、もうスキルになっちゃっているみたいだから仕方がない。
スキル【飛び降り】発動」
俺はもう諦めて、叫びながら助走付きの見事な飛び降りを演じてみせた。
両手両足を広げてやると、格好もいいし落下速度も多少は緩やかになる事まで発見する余裕があった。
マロウスは、ちゃんと待ってくれていて、次にある事をやった。
「これが大地割りだ」
一撃で二十メートル以上にも渡る地割れが完成していた。
いいのかよ、ここ石畳なのに。
「う、これやってしまっていいのだろうか」
これを『大地への攻撃』と見做すと、俺の場合は凄まじい補正がかかり、そこに見えている塔が倒壊しかねないのだから。
俺は仕方なく、スキルを纏わせた指先でチョンっと突いてみた。
それだけだったにも関わらず、思わず足元が大きく揺らいで、本家よりも強力そうだったので驚いた。
塔の方でも結構騒いでいたし。誰か中の巨大螺旋階段から落ちたりしていないだろうな。
通路には手摺があるから大方は大丈夫だと思うけど、手掛かりも碌にないコースで垂直登りをする奴がいるから気になる。
屋上からは落ちた奴はいなそうだった。
「よかった、本気でやらなくて。
大勢人死にが出ていたら、今度は怒られるくらいじゃ済みそうもない」
更に彼は『空気の叩き方』を教えてくれたし、さらには『空気の蹴り方』を教えてくれた。
俺はスキルを唱えると、空中を駆け、謎の透明人間を相手に手の甲でパシっと音を立てて突っ込みを入れられる不思議人間に進化した。
まあ面白かったからいいんだけど。
「何故だろう。
邪神と戦うのとは別の方向へ向かっているような気がしないだろうか」
「リクルよ、男があまり細かい事を言っていてはいけない。
あと、忘れずにこれを授けておこう」
「今度はなんだい」
すると、彼は『不思議な踊り』を踊った。
なんというか、今まで見た事のないような奇妙な踊りだった。
これもスキルで覚えられた。
いろいろなパターンがあるようだったが、マロウスが踊ってくれたものは全部覚えられた。
「これ、何に使うの?」
「なんというかな、動物とか魔物なんかと仲良くできる素晴らしい舞踏だ」
仲間として認識されるという事なのか?
それって、果たしてビースト族以外の人族に使えるようなものなのだろうか⁇
「本当かよ、怪しいな」
「それはリクルよ、貴様がまだまだ未熟だからだ。
まあ、スキルとしてはこんなものだな。
後はすべて鍛練次第だ」
「えーと、ありがとうございました?」
なんだかよくわからないが、彼からは普通に体捌きや体術なんかを習った方が有意義なんだけど。
スキル授与式、朝御飯前で終わっちゃったし。
でも【スキル不思議な踊り】は、うちのアイドルグループには受けていて、連中が俺の頭の上で一生懸命に練習していた。
お前らは俺と違って、そのスキルを特に覚える能力はないよね?
そんな事を言っているビーストベアーのお兄さんがそこにいた。
今は朝の散歩の時間だったと思うのだが⁇
「あれっ?
今日はダンジョンへ行くんじゃなかったのか⁉
まだ朝飯前だぞ」
ここは祈りの塔と言う名の、神官達のための試練鍛練の塔である。
まあ、なんだかんだ言って、朝の散歩と称して毎日登っているんだけど。
主に階段の壁部分を走ってね。
あそこだけはいつでも空いているから。
「まあ、魔法だけで邪神に立ち向かえると思ったら大甘なのである。
体技も覚えておけ」
「ねえ、マロウス。
何かこう、俺が絶対に邪神と対決しなくちゃいけない流れになってきてない?
というか、その流れをマロウスが強引に作ろうとしていない?」
「まあ、とりあえず覚えておくだけ覚えておいて損はない。
ではまず、これから行くぞ。
垂直大ジャンプ」
「おい、そこ大事なところだから無視していくなよ」
だがそれは彼の耳に届く前に彼の姿はもうそこにはなく、行ってしまったようだった。
マロウスは最上階まで一息に飛んでいった。
ビーストベアーってあんな芸当が出来たんだ。
余裕たっぷりって感じだね。
百五十メートル級の垂直ジャンプか。
きっと天井がなかったら、もっと行けたのかもしれない。
「ねえ、あれって絶対にスキルじゃないよね」
昨日から、ずっと出現しっぱなしの精霊さんから辛口の批評が入った。
「でも【冒険者金融】の能力を使えば、マロウスの力も借りられるんだけどな。
そいつは奴は一人で迷い込んだ時には扉の中では使えないかもだけど」
前の時は使えなかったんだよなあ。
「そんなの、風の精霊たるうちが力を貸してあげたら飛べるよ」
「そうなんだけどな。
あれはキック力もあるから捨て難い。
あ、何故か発動していなかったはずなのに何故か俺のスキルがあれを覚えている。
【ビースト・ジャンプ】だってさ。
使ったら、スキルとして獲得できるみたい」
「嘘」
「まあ試しに跳んでみるか」
ブースト抜きでスキルを発動したところ、俺は一っ飛びでマロウスの隣まで飛んでいた。
「お、来たか、リクルよ。
では次だ」
そう言いながらマロウスは屋上まで階段を登っていく。
「うわ、こいつはなんだか、ちょっと嫌な予感がしてきたな」
「あはは、リクル頑張れ~」
「まあ、いざとなったら風の精霊のうちが助けてあげるからさー」
「本当にー?」
「たぶん」
「たぶんなのかよっ」
だが、行かない訳にもいかんのでマロウスの後をついていったら、彼は言った。
「これが我らビースト族の得意技、飛び降りだ」
「それはスキルじゃない!
そのまんまじゃねえかあああ」
だが、俺の叫びなどは無視して彼は飛び降りていき、多くの人々は祈りの塔の屋上からそれをガン見していた。
「畜生、非常に飛び降りづらい状況なのだが、もうスキルになっちゃっているみたいだから仕方がない。
スキル【飛び降り】発動」
俺はもう諦めて、叫びながら助走付きの見事な飛び降りを演じてみせた。
両手両足を広げてやると、格好もいいし落下速度も多少は緩やかになる事まで発見する余裕があった。
マロウスは、ちゃんと待ってくれていて、次にある事をやった。
「これが大地割りだ」
一撃で二十メートル以上にも渡る地割れが完成していた。
いいのかよ、ここ石畳なのに。
「う、これやってしまっていいのだろうか」
これを『大地への攻撃』と見做すと、俺の場合は凄まじい補正がかかり、そこに見えている塔が倒壊しかねないのだから。
俺は仕方なく、スキルを纏わせた指先でチョンっと突いてみた。
それだけだったにも関わらず、思わず足元が大きく揺らいで、本家よりも強力そうだったので驚いた。
塔の方でも結構騒いでいたし。誰か中の巨大螺旋階段から落ちたりしていないだろうな。
通路には手摺があるから大方は大丈夫だと思うけど、手掛かりも碌にないコースで垂直登りをする奴がいるから気になる。
屋上からは落ちた奴はいなそうだった。
「よかった、本気でやらなくて。
大勢人死にが出ていたら、今度は怒られるくらいじゃ済みそうもない」
更に彼は『空気の叩き方』を教えてくれたし、さらには『空気の蹴り方』を教えてくれた。
俺はスキルを唱えると、空中を駆け、謎の透明人間を相手に手の甲でパシっと音を立てて突っ込みを入れられる不思議人間に進化した。
まあ面白かったからいいんだけど。
「何故だろう。
邪神と戦うのとは別の方向へ向かっているような気がしないだろうか」
「リクルよ、男があまり細かい事を言っていてはいけない。
あと、忘れずにこれを授けておこう」
「今度はなんだい」
すると、彼は『不思議な踊り』を踊った。
なんというか、今まで見た事のないような奇妙な踊りだった。
これもスキルで覚えられた。
いろいろなパターンがあるようだったが、マロウスが踊ってくれたものは全部覚えられた。
「これ、何に使うの?」
「なんというかな、動物とか魔物なんかと仲良くできる素晴らしい舞踏だ」
仲間として認識されるという事なのか?
それって、果たしてビースト族以外の人族に使えるようなものなのだろうか⁇
「本当かよ、怪しいな」
「それはリクルよ、貴様がまだまだ未熟だからだ。
まあ、スキルとしてはこんなものだな。
後はすべて鍛練次第だ」
「えーと、ありがとうございました?」
なんだかよくわからないが、彼からは普通に体捌きや体術なんかを習った方が有意義なんだけど。
スキル授与式、朝御飯前で終わっちゃったし。
でも【スキル不思議な踊り】は、うちのアイドルグループには受けていて、連中が俺の頭の上で一生懸命に練習していた。
お前らは俺と違って、そのスキルを特に覚える能力はないよね?
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