外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-26 運否天賦パーティ

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「どう? リクル。
 あたしのオートマタは。

 あたしと息もピッタリで絶好調よ。
 なんといっても、あのデザインが最高なんだから」

 そうかなあ。

 主従してドヤ顔のコンビを尻目に、それをうちの狼達は少し離れたところから遠巻きに見守るような感じに微妙な顔をして見ていた。

 彼らは出遅れたというよりは、ナタリーの濃さに少し引いていたのだ。

 何気に動物って、相手の外観に気押されるようなところがあるし、どうやら霊獣もその例外ではなかったようだ。

 何よりも、彼らの主であるこの俺自身がナタリーに対して引いている。

 何しろ、あの異様に濃い代物をスキルで呼びだしてしまったのは、この俺なのだからな。

 北方の古代遺跡、案外と濃い。
 なんかこう俺とリナで、見事に対象的な主従になってしまった。

「リクル、宝箱ー」

「よっしゃ、一丁景気よく行くかあ」

 先輩にも何か御土産を持って行ってやるか。
 あの人、まだふて寝をしているのかな。

 そして、俺は今回も六×六の絶好調コンボを叩き出した。
 これにトイボックスのスキルが重ねられていく。

 こういう前向きというか、イケイケな相棒がいると、得てしてこういう事になりやすい。

 博打に弱気は禁物さ。
 所詮はスキル、俺の気分次第でどうにでも転ぶのだ。

 俺達はしゃがんで宝箱の出現を待った。
 今度の宝箱は三つだ。

 ナタリーを三つに割ったくらいの物が出てくるのかね。

 出目半分で六個の、十二で割ったくらいの場合でも凄い収納アイテムが出たが、あれは残りが皆ハズレだったからな。

 まあ、ハズレのあれだって結構レアで高く売れる品だと思うのだが。

 わくわくする俺とリナはお互いに両端から攻める事にした。

 リナに先に選ばせてやる。
 そして、互いの従者が護ってくれる態勢の中、せいので開けてみた。

「やったぜ、無限収納だ」
「あっちゃあ、普通の収納だった~」

「いいじゃん、それでも容量が馬車サイズの収納アイテムがお姉さんに一つ回るんだから。

 真ん中の宝箱はお前にやるよ。
 普通サイズの箱だから、少なくともオートマタじゃあないだろうけど」

「十分よ、リクルありがとう。
 では、行きまーす」

 そして中から出てきたのは……はて。
 パッと見に何なのかよくわからない。

「おい、何が出たんだ?」
「さあ、少なくともミミックじゃない事は確かね」

 リタが箱から取り出してみると、それはなんというか、いわゆる箱であった。

 人間の顔くらいのサイズで、長方形をしたやや薄めの、真っ黒なケースだ。

「なんか書類入れみたいなケース?」

「宝石入れとかにしては地味な箱ねえ。
 もしかしたら、お土産用のミミックだったりして」

 馬鹿な。
 いるのか、そんな物が!

 家に帰って、のんびりと酒でもやりながら箱を開けたらミミックだったとか勘弁してほしいよな。

「いやいや、今のスキルは俺の最高の出目だった。
 そいつは絶対に外れアイテムじゃないよ」

「そっかあ、じゃあ持って帰る」
「しかし、珍しい物が出たなあ」

「うん、こんな話は聞いた事がないよ」
「あとで、ここの冒険者協会で見てもらえよ」

「わかった。
 じゃあ次行こう」

 この強運はどこまで続くのか。
 外れれば、即デスパレードが始まりそうなのが怖い。

 何しろ、戦闘中はそういう事態を警戒して極力使わないようにしているスキルなんだからなあ。

「いいけど、外れが出たら即終了にしようぜ」
「外れが出ると、どうなるの?」

「まずそいつ自体が碌でもない上に、たぶんそこからずっと外れ続ける。
 今日は強気で攻めていて、しかもいい当たりを引いているから、その反動が来たらと思うと怖いぜ」

「まあ、そうかもねー。
 あたしもよくやるわー」

 自覚があるけど、自分じゃ止められないのか。
 こいつめ、相当重症なギャンブラーだな。

「やっぱりそうなのかよ。
 きっと六が出続けた後は、必ず目が一まで落ちると思う。
 そうなったら、その場で始末をつけて終了の上でトンズラだあ」

「了解~」

 そして、次も六×六の出目だった。

「ヤベエなあ。本
 気で反動が心配になってきたぜ。
 俺のサイコロやルーレットは、四五六賽どころか、何かのスキルで強制的に六六賽になっていないか?」

 もう運が尽きたらそれまでっていう感じで、幸運の大盤振る舞いなのだが。

「まだまだイケるってー!」

 こいつ、絶対に博打で身を持ち崩すタイプだよな。

 こういう御遊びだから俺も付き合えるんだけどさ。

 さあて、何が出るのかなあ。
 だが、次に現れた宝箱は巨大な物だった。

「おい、この土饅頭がどんどん膨らんでいって止まらないんだけど」

 もうそれは俺が見上げるほどの巨大さになってしまった。

「あんた、一体何を呼びだしたのよ」
「ま、またオートマタか何かじゃないのかな」

 だがナタリーが野太い声で解説を入れてくれた。

「お嬢様、これはオートマタではありません」

「じゃあ、何?」
「アンノウン」

「そうか、まあ勝手に歩き出さないだけでも儲けものだな」

「あ、宝箱の成長が止まった。
 あたし、あれ要らないから、あんたが開けなさいよ」

「え、マジで?
 中にいい物が入っているかもしれないよ。
 出目はいいんだからさ」

「いや、ちょっとこの大きさはいくらなんでも微妙過ぎるわ」
「しょうがないなあ」

 二人でこいつの権利を押し付け合っていたのだが、結局この物体の呼びだし主である俺が引き取る事になった。

 そのコントのようなやり取りを見て、ワンコ達は伏せの姿勢で楽しそうにしている。

 その様子を見ただけでも、少なくとも特大のミミックでない事は確かだろう。

「じゃあ、いっくぞー」

 俺は土饅頭の全面にある開閉部分を押した。
 パカンと割れた宝箱の中にあった物は。

「これまた、なんだか微妙な物が出たな」

「あたしの、あの黒い箱より微妙な気がしない?」

「だって、こっちはあの箱三個分のパワーなんだものな」

 何が出たかというと、大型の機械のような、あるいはオブジェのような訳のわからない代物だった。

 何かの据え付けられた機械のような、それでいて太くて巨大な筒が一つ斜めに上を向いている。

 高さは俺の背より高くニメートル以上もあるか。
 全長はおよそ五メートルといったところだ。

 筒の口は塞がっているようだし、何の用途なのかも不明だ。

 車輪などが付いている訳ではないから、移動のための物ではない。

 やはり、固定して使う何かの機械なのか。
 そして、やはり黒い。

 あの箱と似たような材質の物だろうか。
 触ってみても手触りは微妙で、金属なのか石なのかもよくわからない。

 やっぱり、よくわからない物だな。

「はい、これも鑑定案件。
 へたをすると、俺の方は古代の兵器か何かかもしれない。
 もしそうだったら、切り札に持っておいてもいいしな」

「兵器ねえ。どうなのかしらね」

 彼女は俺の唱えた古代兵器説に懐疑的なようだった。
 まあ俺だって自分でも信じてはいないけどさ。

 それに、もし危ないような兵器だったら没収されそうだ。

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