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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-21 同志よ
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だが、俺が背を向けた途端に、通路の方から男性の悲鳴が坑道ダンジョンに轟々と反響して轟いた。
「なんだ⁉」
俺は慌てて角の向こうまで出た。
こういう時も狼が先に立ち、安全を確認してくれている。
数人の冒険者が坑道の何もない壁の前で集まっている。
リナも一緒だ。
「どうした、リナ。
まさか、そこに」
「そのまさかよ。
お姉ちゃんの彼氏が扉の中に引っ張り込まれたみたい」
「マイケル、マイケル!」
「アレナ、俺は見たぞ。
緑色をした人型の奴があいつを凄い勢いで引っ張り込むのを」
「こんな現象は聞いた事がない」
「あっはっはっは」
俺の笑い声に、その場にいたメンバーの険しい顔が揃う。
そして詰問してきた。
いやあ、つい。
「貴様、何がおかしい!」
「ああ、すいません。
いやうちの先輩みたいに、この『混沌の扉』を捜していて扉を開けまくって間抜けにも中で捕まっている人もいれば、こんな感じに普通に『混沌の扉』へ連れ込まれちゃう人もいるんだなと思って。
さてはマイケルさんって強者なんだなあ」
少なくとも、アイツに見込まれる程度には『見所がある』人のはずなのだ。
おそらく、ここの中級冒険者らしい人達のリーダーなのだろう。
「何、『混沌の扉』だと⁉」
俺に半ば詰め寄っていた彼も困惑を隠せないようだった。
「中にいるのが『緑色をした人型の奴』ことドラゴナイトなら、そう心配ないと思うけどな。
それに、いくら外から心配したって中側から出てくるしかないよ。
その人、根性の方はどうです」
「は? 根性だと」
「ええ、根性を見せて頑張ると、こういういい物がもらえるかもよ」
俺はオリハルコンの槍を前に突き出して見せた。
皆の視線が、思わずその高性能なアイテムに集中した。
全員の視線が集中するのは、さすがに冒険者パーティだ。
「もし根性がなかったら?」
「すぐに手ぶらで出てくるんじゃないかと思います」
「そ、そうなの?」
そして、その直後に早くも彼は中から飛び出てきた。
「は、はやっ。
ええい、マイケルさんの根性無し~!」
「ええっ。誰だ、君は!」
いきなり見ず知らずの俺から根性無し呼ばわりされて驚く彼。
「よかった、無事で」
美人の恋人から、鎧越しに抱き着かれながらも彼は悔しさを滲ませた。
「クソウ、ショウヒンハ、スンゲエケンダッタノニ。
アレハ、ホシカッター」
「何故、ドラゴナイト風の喋り方!」
「君、どうしてそれを知っているんだ!
って、ああそうか。
いやあ、羨ましいな」
彼は俺の槍を羨望の眼差しで見つめた。
「ちなみに今日の競技は何でした?」
「鬼ごっこさ。
追いかけて捕まえたら勝ちだったんだけど、もう少しで周回遅れにされるところだったから慌ててギブアップ宣言したのさ」
中級冒険者とドラゴナイトの鬼ごっこか。
そりゃあ早い決着がつく訳だ。
足も速いのかよ。
無敵の怪物だな。
主にビースト族的な方向性を備えた。
「もし、捕まっていたら?」
「さあなあ、朝まであいつと鍛練だったかもしれないなあ。
あれはそういう奴だった」
「うわあ、次こそ無事賞品が取れるようにってか~!
親切なのか、単に自分の趣味に付き合わせたいだけなのか。
その手の鍛練なら間に合っているよ。
俺はなんとか勝ててよかったなあ」
俺と彼は苦笑いで友情を分かち合った。
彼らは臨時で遊びに来ているリナを加えて、総勢五人だった。
もうすぐ新人二名を加える予定だそうで、メンバー全員が中級になったお祝いにここで腕試しをしていたらしい。
骨休めの意味もあり、隣国から来たと言う。
「まあ、ここのダンジョンからはいい物も貰っちゃったしね。
あたしはホクホクよー」
「まあ、せっかくの聖都のダンジョンなんだ。
楽しんでいくさ」
みんな結構いい根性をしているな。
逃げ出す奴らも多いというのに。
まあこれくらいの根性がなかったら、本来冒険者なんてやっていけないのだがなあ。
「よかったら、君も一緒に探索するかい」
「ありがとう、そうしようかな。
遺跡探索がメインなんだけど、今日は他のメンバーが来ていないんで、一人でも大丈夫そうなこっち側にいるんだ」
「もしかして扉が目当てなのか?」
「正確に言えば、大神殿の神官さんと一緒に調査活動をしているのさ。
昨日なんか、酷かったぞ。
大神殿の壁に扉が湧いて、その中でパーティメンバーであるラビワン・ダンジョンの踏破者が中で強い魔物に捕まってしまっていたからな。
やっぱり、あの扉はヤバイ」
「踏破者がか⁉」
「おいおい、そいつは洒落にならねえな」
「それで、そいつはどうした」
「後で引っ張り込まれた間抜けな俺と二人で撃破したけど、しかもお宝無しのスカだった」
「うっわー、きっついなあ、それは」
「罰ゲームかよ」
「まあ、お陰様でそこの主の素材は手に入ったけどね。
あと、お宝の代わりがこの子達なんだ。
みんな、出ておいで」
再び、隠しておいた狼達を見えるようにしてやる。
「何それ、もしかして霊獣なの」
「うぇーい」
うちの子達は何故かリナのお姉ちゃんに集中して群がっていった。
何気に女の方に懐くのか?
まあ動物って、女子供によく懐くものだけど。
「可愛いわね」
「それにしてもいいなあ、リナのポーチ」
それを聞いて、腕組みして自慢そうなリナ。
「リナが持っているそいつはレアだから、なかなか出ないと思うぞ」
「なんだ⁉」
俺は慌てて角の向こうまで出た。
こういう時も狼が先に立ち、安全を確認してくれている。
数人の冒険者が坑道の何もない壁の前で集まっている。
リナも一緒だ。
「どうした、リナ。
まさか、そこに」
「そのまさかよ。
お姉ちゃんの彼氏が扉の中に引っ張り込まれたみたい」
「マイケル、マイケル!」
「アレナ、俺は見たぞ。
緑色をした人型の奴があいつを凄い勢いで引っ張り込むのを」
「こんな現象は聞いた事がない」
「あっはっはっは」
俺の笑い声に、その場にいたメンバーの険しい顔が揃う。
そして詰問してきた。
いやあ、つい。
「貴様、何がおかしい!」
「ああ、すいません。
いやうちの先輩みたいに、この『混沌の扉』を捜していて扉を開けまくって間抜けにも中で捕まっている人もいれば、こんな感じに普通に『混沌の扉』へ連れ込まれちゃう人もいるんだなと思って。
さてはマイケルさんって強者なんだなあ」
少なくとも、アイツに見込まれる程度には『見所がある』人のはずなのだ。
おそらく、ここの中級冒険者らしい人達のリーダーなのだろう。
「何、『混沌の扉』だと⁉」
俺に半ば詰め寄っていた彼も困惑を隠せないようだった。
「中にいるのが『緑色をした人型の奴』ことドラゴナイトなら、そう心配ないと思うけどな。
それに、いくら外から心配したって中側から出てくるしかないよ。
その人、根性の方はどうです」
「は? 根性だと」
「ええ、根性を見せて頑張ると、こういういい物がもらえるかもよ」
俺はオリハルコンの槍を前に突き出して見せた。
皆の視線が、思わずその高性能なアイテムに集中した。
全員の視線が集中するのは、さすがに冒険者パーティだ。
「もし根性がなかったら?」
「すぐに手ぶらで出てくるんじゃないかと思います」
「そ、そうなの?」
そして、その直後に早くも彼は中から飛び出てきた。
「は、はやっ。
ええい、マイケルさんの根性無し~!」
「ええっ。誰だ、君は!」
いきなり見ず知らずの俺から根性無し呼ばわりされて驚く彼。
「よかった、無事で」
美人の恋人から、鎧越しに抱き着かれながらも彼は悔しさを滲ませた。
「クソウ、ショウヒンハ、スンゲエケンダッタノニ。
アレハ、ホシカッター」
「何故、ドラゴナイト風の喋り方!」
「君、どうしてそれを知っているんだ!
って、ああそうか。
いやあ、羨ましいな」
彼は俺の槍を羨望の眼差しで見つめた。
「ちなみに今日の競技は何でした?」
「鬼ごっこさ。
追いかけて捕まえたら勝ちだったんだけど、もう少しで周回遅れにされるところだったから慌ててギブアップ宣言したのさ」
中級冒険者とドラゴナイトの鬼ごっこか。
そりゃあ早い決着がつく訳だ。
足も速いのかよ。
無敵の怪物だな。
主にビースト族的な方向性を備えた。
「もし、捕まっていたら?」
「さあなあ、朝まであいつと鍛練だったかもしれないなあ。
あれはそういう奴だった」
「うわあ、次こそ無事賞品が取れるようにってか~!
親切なのか、単に自分の趣味に付き合わせたいだけなのか。
その手の鍛練なら間に合っているよ。
俺はなんとか勝ててよかったなあ」
俺と彼は苦笑いで友情を分かち合った。
彼らは臨時で遊びに来ているリナを加えて、総勢五人だった。
もうすぐ新人二名を加える予定だそうで、メンバー全員が中級になったお祝いにここで腕試しをしていたらしい。
骨休めの意味もあり、隣国から来たと言う。
「まあ、ここのダンジョンからはいい物も貰っちゃったしね。
あたしはホクホクよー」
「まあ、せっかくの聖都のダンジョンなんだ。
楽しんでいくさ」
みんな結構いい根性をしているな。
逃げ出す奴らも多いというのに。
まあこれくらいの根性がなかったら、本来冒険者なんてやっていけないのだがなあ。
「よかったら、君も一緒に探索するかい」
「ありがとう、そうしようかな。
遺跡探索がメインなんだけど、今日は他のメンバーが来ていないんで、一人でも大丈夫そうなこっち側にいるんだ」
「もしかして扉が目当てなのか?」
「正確に言えば、大神殿の神官さんと一緒に調査活動をしているのさ。
昨日なんか、酷かったぞ。
大神殿の壁に扉が湧いて、その中でパーティメンバーであるラビワン・ダンジョンの踏破者が中で強い魔物に捕まってしまっていたからな。
やっぱり、あの扉はヤバイ」
「踏破者がか⁉」
「おいおい、そいつは洒落にならねえな」
「それで、そいつはどうした」
「後で引っ張り込まれた間抜けな俺と二人で撃破したけど、しかもお宝無しのスカだった」
「うっわー、きっついなあ、それは」
「罰ゲームかよ」
「まあ、お陰様でそこの主の素材は手に入ったけどね。
あと、お宝の代わりがこの子達なんだ。
みんな、出ておいで」
再び、隠しておいた狼達を見えるようにしてやる。
「何それ、もしかして霊獣なの」
「うぇーい」
うちの子達は何故かリナのお姉ちゃんに集中して群がっていった。
何気に女の方に懐くのか?
まあ動物って、女子供によく懐くものだけど。
「可愛いわね」
「それにしてもいいなあ、リナのポーチ」
それを聞いて、腕組みして自慢そうなリナ。
「リナが持っているそいつはレアだから、なかなか出ないと思うぞ」
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