外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
上 下
94 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-7 ダンジョン入場

しおりを挟む
 バニッシュはダンジョン探索に未練そうな顔を置き土産に、俺達の見送りだけしてから馬車で大神殿へ戻っていった。

 遺跡の入り口にも男性の神官さんが二人立っていたが、その出で立ちはマイアに準じるものだった。

 この事態においても、彼らはさすがに弛緩していない様子だった。
 彼女は知り合いらしき彼らに声をかけていた。

「やあ、バルバディアの兄弟達よ。
 景気はどうだい、レスター」

「マイアか。
 これが景気よく見えたのなら、目に効くようにたっぷりと回復魔法をかけた方がいいな。

 御覧の通りの閑古鳥状態さ」

「おや、そちらにいらっしゃるのは聖女様じゃないですか。
 ようこそ、バルバディア・モンサラント遺跡ダンジョンへ」

 そして二人は居住まいを正して、聖女様に対して深い礼を示した。

「ああいい、そうかしこまるな」

 バルバディア・モンサラント遺跡ダンジョンか。
 俺は興味深く訊いてみた。

「それが、ここのダンジョンの正式な名称なのですか?」

「ええ、まあ。
 皆は遺跡ダンジョンとしかいいませんが。

 元々は昔の鉱山跡がダンジョンで、モンサラント鉱山と呼ばれていましたので。
 まあ中ではどちらも繋がっていますのでね」

「もし、向こう側の出口からお出になりましたら、帰りがけにでもよろしいので、こちらへご一報をお願いいたします」

「なるほど、ありがとう」

 俺達は彼らに見送られて、そのまるで城の入り口のような石のアーチで組まれた中へと入っていった。

 そこも何かこう寺院のような感じになっているのだ。

 ずっと思っていたのだが、ここの聖教国の建物はいわゆる寺院といった方がいいようなスタイルになっている場合が多い。

 他の都市とは異なり、神殿さえもがそうなのだ。
 エルフがそれを好むからというのが理由らしい。

 この街は、その佇まいを聖女様方の好みに合わせているのだ。

 まるで、それさえもが邪神を封じる一助になるとでもいうように。

 そのくせ、そこにいる人間はプリーストではなく神官なのだから面白い。

 そういうのも、縄張りというか、お金の関係というか政治的な話というかあれこれと絡んでいるのだろう。

 姐御の話だと、このバルバディア聖教国は主神の神殿とも関係が深いらしい。

 一部はそちらからも人が回ってきているのかもしれない。

「ここは、いくつも結界が張られていて、万が一魔物が上へ上がってきてもこれが遮断してくれます。

 入り口の建物なども、そういう効果を持つ物が設置してあるのです」

「へえ、こういう物はラビワンにもあるのかな」

「さあ特に聞いた事がないが。
 あそこから魔物が逃げ出した話も聞かないな」

「上の方は魔物も少ないしね。
 一階なんか魔物が出ない、ただのエントランスだからなあ」

「魔物は地上の陽光を嫌う物も多いしの。外に出て生き延びる魔物も少ないし、また弱体化してしまう。

 外界は魔素が少ないというのも、魔物が外に出るのを嫌がる一因じゃ」

「へえ、それは知らなかったな。

 そういやスライムなんかは上の方の階にいるけど、入り口の比較的外に近い場所にはあまりいないしね。

 陽光を嫌うのは知っていたけど。
 そういや、外に出た魔物は弱体化するんだっけ」

「あら、リクル。
 そういう事も協会で教えるはずなんだけど。
 あんた、講習での成績は優秀だったんでしょ」

「でも最近は、実務に関係あるような話を重点的に載せる方が多いから、講習用の教科書が簡便化されている部分もあって、そういう細かい事は教えないよ。
 逆に、そこの先輩みたいな奴に関する注意なんかは詳しく載っているんだけど」

 俺はチラっと横目で先輩を見たが、奴は優雅に中を眺め回している。

 一応、例のミスリルの大剣は二振り持たせてあるのだが、背嚢にくくりつけたままだ。

 まあいいけどね。
 このイカれた強さの先輩が、その辺の魔物に苦戦する姿など想像もつかない。

 あのオークや狼との一方的な蹂躙劇、いや粉砕劇しか思い浮かばないわ。

「まあ、それも正しい方向性なのかもね。
 あれはただの業務前の座学教育ですもの。
 マイア、どっちへ向かうの」

 だが彼女は、ニコっと笑うとこのような事を言うのであった。

「お好きな方へ」

「あれ、あなたが案内してくれるのじゃないの?」

「例の扉は気ままでしてね。
 ラビワンの扉のように深い場所に現れるわけではないのです。
 酷い時は、さっきの入り口の隣あたりに出現した時もあります」

「へえ、そいつはまた」

 それを聞いた俺は一応、見回してみたが特に何も異変はない。

「その扉って、どんな感じなのです?」
「まあ、いわゆるただの扉のような物ですよ」

「はあ?」

「だから、その辺にある普通の扉と同じ物が壁などに存在するのです。

 本来は、そのような物はこのダンジョンにはございません。

 初級の冒険者などはそういう事もよく知らず、うっかりと探索のつもりで入ってしまい、それっきりですね」

「うわ、それってただの初心者殺しのトラップじゃん」

「はは、その点においては何処も変わらずか。
 ラビワンの最奥部だと、扉自体が魔物というかミミックという物もあったな。

 そして誰かが触るとすかさずパクっといくのだ。
 あれがまた狡猾な上に出鱈目に強い」

「マジで?」

「しかも、更に狡猾な奴になると逃がさないように最初からパクっといかずに、扉自体が口になっていて、知らずに普通に中に入るといつの間にか胃袋へ直行という感じかな。

 いつの間にか退路を断たれた上に消化液の雨が降ってくるぞ」

 うわあ、そいつは勘弁だな。
 その口ぶりだと、きっと先輩は引っかかった事があるんだな。

 消化されかかって、例のスキルで中から刻みまくってやって、強引に外へ出てきたんだろう。

「そのミミックは何がもらえるの?」

「特に何も。
 ただのくたびれ儲けだった。
 あれは何故か一旦出だすと大量に湧いてなあ。

 あれは必ずしも深層にだけ湧く物じゃない。
 生きてダンジョンの壁の中を移動しているからな。

 まあ滅多に深層以外ではお目にかかれないがな。

 そういや、そういう扉もあったか。
 まあ、あれは扉でもなんでもない、ただの魔物なのだが」

「そんな物、いらねーっ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

異世界にクラス転移したら全員ハズレスキルを持たされた

アタラクシア
ファンタジー
 人生で数度もない貴重なイベントである修学旅行。この風鈴高校に通う二年二組の生徒たちも、長い間待ち望んでいた修学旅行に胸を躍らせていた。  はしゃぐバスの中――突然周りが黒く染まり、生徒たちは下へ下へと落下してしまう。  目が覚め、見えた景色は――現実の法則が意味をなさない、まさに『異世界』であった。  クラス全員ハズレスキル!?前代未聞の異世界転移に少年少女らは立ち向かう。 ――根源に至る『四騎士』 ――世界征服を企む『ナイトメア』 ――新世界を作ろうとする『ネビュラ教』  異世界の様々な情勢に振り回されながらも奔走する。目指すは「クラスメイト全員の合流」と「元世界への帰還」。  はたして彼らは全員合流し、元の世界へと帰れるのか。  長くも奇妙な修学旅行が今始まる――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...