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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-82 聖都バルバディア大神殿
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「なあ、マロウス」
「なんだ、勇者リクル」
「もう。
俺って、もしかして協会長から聖女様パーティに配属されていたわけ?」
「別に特にそういう訳じゃないのさ。
だが歴代の聖女様と共に戦った勇者は皆そういう風に勝手に育ち、何故か極自然に聖女の元に集う。
まあそういう事なのだろう。
お前のスキルの発現具合を見ていると、そのように思えるな。
そもそも、どう見たって普通じゃないだろう、お前のスキルって」
「う!」
確かにそうなのだがなあ。
パッと見には、どう見ても外れスキルにしか見えなかったのだし。
俺達は神官の長(大司祭?)であるらしいマルコスの案内に従って、この聖都バルバディアの中枢、大神殿へと向かっていた。
面白い事に、それは街の中央ではなく、王都側つまり街の南に存在した。
だから今も馬車は神官が世話をしてくれており、徒歩でそこへ向かっている。
その理由は聖なる山が街の北側にあり、街の中心から北部は遺跡と元魔法金属採掘場である鉱山跡のダンジョンになっているからだ。
その街の下には邪神と共に聖女様が眠っていらっしゃるのだ。
この一種の独立市国ともいえる街は、それを封印し続け、また封印を護るためだけに存在するのだから。
俺は、一応の『勇者』として、その特殊極まる街の、石を基調とした街並みを眺めていた。
だが、今俺の関心事は一にも二にも先輩にあった。
彼の目には明らかに期待に満ちた狂気が呪われた炎の如くに宿り始めていたからだ。
神官達の中にもその様子を気にして、彼にそっと目線を走らせる者もいた。
そいつは無理もないわ。
これは聖女様のパーティなのに、このように異端な人格破綻者が混ざっていたらな。
せっかく、ここのところ収まっていたみたいな殺戮衝動とか戦闘衝動のような物が疼いてしまっていたらしい。
しまった。
先輩にもドラゴンを残しておいてやったほうがよかったのか。
だが、さっさと片付けないと俺のスキルの最大の弱点であるタイムリミットが来ちまうから、もたもたしていてブレスを吐かせまくると、また街に被害が及んだことだろう。
そして、うちの強面教官達に出番を提供する羽目になって俺は落第だ。
そんな事になった日には、ドラゴン顔負けに目から火を噴く勢いの姐御に怒られちまうよ。
それに「お前が全部片づけてこい」と教官が全員一致で申し付けてきたのだし、先輩も敢えてそれに異は唱えていなかった。
あの修行の成果で俺がどれだけ美味しく(強く)なったのか見たかったものらしい。
だが、強者を求めて退屈している狂気の落胤王子を、さっきの俺のドラゴン退治が刺激しちまったらしいので。
これだから、この先輩って扱い辛いのだが。
まさか俺を食う日を夢見て、また股間を大きく膨らませているんじゃないだろうな。
こいつのズボンって割合とダブっとしているので、よくわからないんだけど。
いくらなんでも、この聖都の大神殿ではそういう行為は控えてくださいね、先輩。
いくら落胤のやる事とはいえ、王家の品位が地に落ちるぜ。
ここも一応は、あんたの父上が治める国の中にあるのだからな。
なんかこう、野郎がさっきからチラチラチラチラと俺の方ばかり見ているのだ。
いっそ、早いうちにさっさと【邪神】とやらを生贄として先輩にくれてやった方がいいのかもしれない。
その場合は、俺がメインイベンターとしてその後始末をしないといけなくなりそうなので鬱なのだが。
今鮮やかに蘇る、あのダンジョン管理魔物の悪夢。
そして目の前に聳え壮大な雄姿を見せつける白亜の宮。
その後ろにもっと聳え立っている白亜の塔があるので、存在感的にはそれすら前座でしかないと言えない事もないのだが。
「なあ、なんであんな物凄い塔を建てたの?」
こいつはまた近くで見ると雄大な建築物で維持費がかかりそうだなあ。
建設にどれくらいの時間と金がかかったものか。
世界中から金や人工が集まったのではなかろうか。
もしかして清掃は見習い神官の仕事なのか。
あるいは信者さんのご奉仕?
勇者たる者の最初の仕事として「頑張って一人で塔のお掃除」などというものがプログラムに入っていたら、さすがの俺も泣く。
そいつは鍛錬代わりにいいかもとか、うちの鬼教官達なら平気で言い、乗りそうなので。
「はは、あれはまた別名『祈りの塔』とも呼ばれ、それは一種のシンボルのような物にございます。
世界中が力を合わせてこの塔を建設し、再び邪神が現れるような事になった日はまた共に戦おうと言う誓いのために立てられました。
また、そのための信仰を忘れないように今日もきちんと整備されておるのでございます」
「うわあ、結構重大な意味があったのですね~」
「当り前だ。
さもなければ、ここまで金食い虫の建築物を今日まで建てたままにはしておらんよ。
あれから千年も経つのだからな。
定期補修にも莫大な手間と金がかかっておる。
お前に高みから聖都見物をさせるための物では決してないのだがな。
まあどうしても登りたければ、話の後で勝手に登ってこい」
やった、姐御から登頂の許可が下りたぞ。
頂上まで走って何分で行けるか、タイムアタックするとしよう。
記録は毎回縮めてみせるぜ。ここで時計が手に入らないかな。
こんな事なら王都で買ってくればよかったぜ。
数を数えながらだと、せっかくの登頂があまり楽しくない。
バージョン上昇補正×4のスキルもついているし、ここの上り下りだけでバージョンが上がりそうな気がする。
10.8から11.0までが、またなかなか上がらないんだよね。
例の地下遺跡あたりに入るのならもう一つくらいバージョンを上げておいた方がいいんだし。
まさか、いくらなんでもいきなり邪神が待ち構えている事はないと思うのだが。
「なんだ、勇者リクル」
「もう。
俺って、もしかして協会長から聖女様パーティに配属されていたわけ?」
「別に特にそういう訳じゃないのさ。
だが歴代の聖女様と共に戦った勇者は皆そういう風に勝手に育ち、何故か極自然に聖女の元に集う。
まあそういう事なのだろう。
お前のスキルの発現具合を見ていると、そのように思えるな。
そもそも、どう見たって普通じゃないだろう、お前のスキルって」
「う!」
確かにそうなのだがなあ。
パッと見には、どう見ても外れスキルにしか見えなかったのだし。
俺達は神官の長(大司祭?)であるらしいマルコスの案内に従って、この聖都バルバディアの中枢、大神殿へと向かっていた。
面白い事に、それは街の中央ではなく、王都側つまり街の南に存在した。
だから今も馬車は神官が世話をしてくれており、徒歩でそこへ向かっている。
その理由は聖なる山が街の北側にあり、街の中心から北部は遺跡と元魔法金属採掘場である鉱山跡のダンジョンになっているからだ。
その街の下には邪神と共に聖女様が眠っていらっしゃるのだ。
この一種の独立市国ともいえる街は、それを封印し続け、また封印を護るためだけに存在するのだから。
俺は、一応の『勇者』として、その特殊極まる街の、石を基調とした街並みを眺めていた。
だが、今俺の関心事は一にも二にも先輩にあった。
彼の目には明らかに期待に満ちた狂気が呪われた炎の如くに宿り始めていたからだ。
神官達の中にもその様子を気にして、彼にそっと目線を走らせる者もいた。
そいつは無理もないわ。
これは聖女様のパーティなのに、このように異端な人格破綻者が混ざっていたらな。
せっかく、ここのところ収まっていたみたいな殺戮衝動とか戦闘衝動のような物が疼いてしまっていたらしい。
しまった。
先輩にもドラゴンを残しておいてやったほうがよかったのか。
だが、さっさと片付けないと俺のスキルの最大の弱点であるタイムリミットが来ちまうから、もたもたしていてブレスを吐かせまくると、また街に被害が及んだことだろう。
そして、うちの強面教官達に出番を提供する羽目になって俺は落第だ。
そんな事になった日には、ドラゴン顔負けに目から火を噴く勢いの姐御に怒られちまうよ。
それに「お前が全部片づけてこい」と教官が全員一致で申し付けてきたのだし、先輩も敢えてそれに異は唱えていなかった。
あの修行の成果で俺がどれだけ美味しく(強く)なったのか見たかったものらしい。
だが、強者を求めて退屈している狂気の落胤王子を、さっきの俺のドラゴン退治が刺激しちまったらしいので。
これだから、この先輩って扱い辛いのだが。
まさか俺を食う日を夢見て、また股間を大きく膨らませているんじゃないだろうな。
こいつのズボンって割合とダブっとしているので、よくわからないんだけど。
いくらなんでも、この聖都の大神殿ではそういう行為は控えてくださいね、先輩。
いくら落胤のやる事とはいえ、王家の品位が地に落ちるぜ。
ここも一応は、あんたの父上が治める国の中にあるのだからな。
なんかこう、野郎がさっきからチラチラチラチラと俺の方ばかり見ているのだ。
いっそ、早いうちにさっさと【邪神】とやらを生贄として先輩にくれてやった方がいいのかもしれない。
その場合は、俺がメインイベンターとしてその後始末をしないといけなくなりそうなので鬱なのだが。
今鮮やかに蘇る、あのダンジョン管理魔物の悪夢。
そして目の前に聳え壮大な雄姿を見せつける白亜の宮。
その後ろにもっと聳え立っている白亜の塔があるので、存在感的にはそれすら前座でしかないと言えない事もないのだが。
「なあ、なんであんな物凄い塔を建てたの?」
こいつはまた近くで見ると雄大な建築物で維持費がかかりそうだなあ。
建設にどれくらいの時間と金がかかったものか。
世界中から金や人工が集まったのではなかろうか。
もしかして清掃は見習い神官の仕事なのか。
あるいは信者さんのご奉仕?
勇者たる者の最初の仕事として「頑張って一人で塔のお掃除」などというものがプログラムに入っていたら、さすがの俺も泣く。
そいつは鍛錬代わりにいいかもとか、うちの鬼教官達なら平気で言い、乗りそうなので。
「はは、あれはまた別名『祈りの塔』とも呼ばれ、それは一種のシンボルのような物にございます。
世界中が力を合わせてこの塔を建設し、再び邪神が現れるような事になった日はまた共に戦おうと言う誓いのために立てられました。
また、そのための信仰を忘れないように今日もきちんと整備されておるのでございます」
「うわあ、結構重大な意味があったのですね~」
「当り前だ。
さもなければ、ここまで金食い虫の建築物を今日まで建てたままにはしておらんよ。
あれから千年も経つのだからな。
定期補修にも莫大な手間と金がかかっておる。
お前に高みから聖都見物をさせるための物では決してないのだがな。
まあどうしても登りたければ、話の後で勝手に登ってこい」
やった、姐御から登頂の許可が下りたぞ。
頂上まで走って何分で行けるか、タイムアタックするとしよう。
記録は毎回縮めてみせるぜ。ここで時計が手に入らないかな。
こんな事なら王都で買ってくればよかったぜ。
数を数えながらだと、せっかくの登頂があまり楽しくない。
バージョン上昇補正×4のスキルもついているし、ここの上り下りだけでバージョンが上がりそうな気がする。
10.8から11.0までが、またなかなか上がらないんだよね。
例の地下遺跡あたりに入るのならもう一つくらいバージョンを上げておいた方がいいんだし。
まさか、いくらなんでもいきなり邪神が待ち構えている事はないと思うのだが。
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