外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-69 狂人の境地

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 こうやって国王や子供達と一緒に粘土細工している光景を見ると、一見すると真面そうに見えるのであるが、やはりどこかおかしい。

 この先輩も国王の落胤という時点で、もうすでに人生捨て鉢なのかもしれない。

 そのくせ、嬉々として父親相手にこんな趣味の遊びをしているみたいだし。

 もしかしたら、この作品群は自分を王の落胤などという立場に産み落とした父親への何かの思いを込めたメッセージなのかもしれないが、それを日常的に平然と受け止めている父親がいる。

 なんて恐ろしい親子なんだ。

 もしこの世に闇黒芸術というジャンルが存在したのならば、これはそれに相当する存在なのだろう。

 あの邪神を崇めるような頭のおかしい連中がいるそうだが、連中ならば是非欲しいという逸品なのかもしれない。

 なんというか、こうして見ているだけで激しく呪われそうな代物なのだ。

 誰かが知らずに見れば、呪術の道具か何かだと思われるかもしれない。

 ただ、なんというか出来そのものは大変いいのが、また負の方向へと心に響く。

 もし俺がこういう物を作ったとしたら、粗雑で何を表しているのかわからないような得体の知れない物体ができるだけだろう。

 よし、本日の作業はこれの対極を攻めてみるか。

「ありがとう、先輩。
 おかげで今日の俺のテーマが決まったわ」

「リクル、それは一体何の話だ」

「いいから、先輩は自分の作品に邁進していろよ。
 大体、その出来た作品群はどうしているんだよ」

 そいつの行先が気になるよな。
 変なところで捌いていないだろうな。

「基本的に全部、王都の屋敷に飾ってあるぞ。
 俺はそこに居ついてはいないが。
 ほぼ、あそこは俺の焼き物作品倉庫と化している」

「うわあああ」
 考えただけで恐ろしい。

 屋敷の管理をしている人間はもう既に発狂しているのではないだろうか。
 いや、あるいは邪神派へ転向してしまったかもしれない。

「他には領地の代官にも贈ってある」

 うはあ!
 な、なんという事を。

 それは、ほぼ脅迫レベルの話だぞ。

 そんな物を贈られて赤字になどにした日には、領地そのものが呪われそうだ。

 それは大幅黒字になる訳だ。
 この男、無意識の内に、領地を経営する貴族の領主としてはある意味で成功しているのか!

 俺は、さっそく粘土選びから始めた。
 一口に土といってもいろいろある。

 いろいろと成分が異なるのだ。

 農地で使われる水はけがよく植物が根を張りやすい隙間があった方がいい土とは違い、これは重い粘土だ。

 畑の土のようにさらさらではなく粘る土だ。

 俺はまず軽やかさを表現してみせるために、並んでいる材料の中から軽いタイプの粘土を選んだ。

 作る物は何か心が洗われるようなオブジェにしようと思ったのだ。

 神々しい形をした山のような。

 だがセントマウンテンのような、どちらかといえば尖った感じの、塔に近いような形の山ではない。

「親父さん、この焼き物は後でどのように処理するんだい」

「そうだな、乾燥させてからまず一度焼いて素焼きにする。

 部屋にそのまま飾るのであれば素焼きのままでもいいが、まあ基本はそれに色付けしてから釉薬という上薬を塗ってから焼く。

 まあ他にも色々なやり方があるのだが、今日は普通に焼くから、そう拘らなくてもいいよ」

「そうですか、じゃあ今日はその乾燥前の元になる形を作ればいいんですね」

「ああ、あまり複雑な形や細かい形の物を作ると、乾燥や焼いた時に割れやすい。

 本来なら空気を抜くためにかなりの時間手で練らないといかんのだが、ここに置いた粘土はそういう工程をうちの職人にやらせてあるので、そのまま使えるよ」

「なるほど、もう材料の時点で素人には扱えないものなんですね」

「はは、君はよくわかっとるね。
 まあ今日一日、ゆっくりと楽しんでくれたまえ」

「ありがとうございます」
 だが、生憎と俺は御遊びをするつもりなど毛頭ない。

 さあ、先輩。あんたと勝負だぜ。

 あの呪われたオブジェ群を俺の聖なるオブジェで相殺、いや粉砕してくれる。

 もちろん、普通にやって俺にそんな真似が出来る筈がない。
 ここは当然、スキルを使ってインチキするのに決まっているのだ。

 今日は戦闘じゃないからな。
 クールタイム中はデザインを考えたり休憩したりしながら頑張るぜ!
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