外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-57 夕食前のお楽しみ

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 俺がもうゲートスの街の活気というか熱気に当てられて目を回していたので、姐御も散策を切り上げる事にしたようだ。

 宿に向かいながら、周りのラビワン・ダンジョン中層の熱砂の砂漠並みに尽きない熱気と、花街特有の喧騒を浴びつつ姐御と会話しながら歩いた。

「どうだ、冒険者修行の毎日から抜け出して新しい物事に触れてみる気分は。
 街に溢れていた連中もなあ、多くは時には明日も知れぬ冒険者稼業なのだ。

 ああやって生きている事を実感したいのだろう。
 まあそのあたりは兵隊なんかと概ね一緒だな」

「はあ、まだそういうのはよくわかりませんね」

「はは。
 お前、そんな事を言っていると一生童貞のまま終わるぞ」

「ぶふう」

「お前は特殊な奴だから、そう簡単にはくたばらんのだろうが、ヒヨッコなんぞいつ死んでしまうかわからんからな。

 マネージャーの中には、最初にダンジョンに連れて行く前に新人を娼館に連れていく者もいる」

「へえ。
 うちは、そういうサービスはありませんでしたね。
 パーティの同期は女の子でしたし、ブライアンは『女遊びなんて一人前に食えるようになってからでいい』と」

 今年ブライアンのところへ入った見習いの新人どもは可哀想になあ。合掌!

「はっはっは。
 そいつは、いかにもあのブライアンらしいな」

「実際に、そういう方面で遊びまくって身を持ち崩した冒険者の話も聞きますし」

「ああ、酒や博打と合わせて、犯罪者落ちする三大要因だからな。
 お前、博打は?」

 さすがの俺もその質問には苦笑して答えた。

「自分のスキルに、ヤバ過ぎて普段は封印してあるサイコロと普段使いのルーレットがありますので、もうお腹一杯ですわ。
 いつもベットするのは自分の命ですしねー」

「はっはっはっは。
 やっぱり、お前は面白い奴だ」

 英雄姫様に大層お喜びいただけて実に光栄な事だ。
 宿に戻ってから姐御がこんな事を言ってくれた。

「そろそろ夕食の時間が迫ってきた。
 お前も湯浴みでもしてきたらどうだ。

 ここの浴場は実に素晴らしいぞ。
 私も夕食前に一っ風呂浴びてくるとしよう」

「わ、まさかのお風呂付きの宿?」

「ああ、ここは裕福な商人の街だからな。
 今夜の宿は大浴場になっている。
 他では王都までいかんと風呂付きの宿は難しいだろう」

「うーん、ここで暮らす選択肢さえありかな。
 俺の足なら、ここからラビワンへも通えそう」

「はは、お前は女よりも風呂か。
  後は女付きの風呂屋もあるそうだぞ」

「ええっ、とりあえずそういうのは遠慮させていただきます。
 でも、お風呂いいっすよ。

 自慢じゃないですが、そんな贅沢した事ないす。
 村じゃ川で洗ってましたし、ラビワンじゃお湯で拭いてました。

 まあ浄化もありますけど、お湯で拭かないと、なんか気持ち悪いですよね」

「そうだな、風呂はいい。
 私が泊まっているラビワンの常宿には風呂がついているぞ」

「マジっすか」
 あのラビワンにそのような宿があったなんて!

「その代わり一泊の料金は一人金貨一枚だがな」

「うわあ、うちの実家の生活費一ヶ月分が、宿代一日で消える~」

「はは、頑張って稼ぐがよい。
 というか、お前はこの前にたくさん稼いだろう。
 あの魔物は凄い買い取り価格になっているはずだが。
 自分の取り分は要らぬとはクレジネスの奴も気前のいい事だ」

「あの先輩、それ以外に取り柄が一つもないです。
 あれはまだ査定も買取も済んでないので一文も入っていないですから。
 ブライアンは『今手元にある金以外は自分の物と思うな』って」

「確かにな。
 お前の師匠はいろいろと正しい。
 いい師匠を持ったな」

「あれで追い出されていなかったら最高だったんですが。
 これからがいいところだったのに。
 それに彼らのパーティは全滅してしまったそうです。
 例の怪物にやられて」

「なんと! あのブライアンがか。
 まあそれも含めてよくある話だ。

 些細な巡り合わせ一つで、人の一生は吉にも凶にも常に水面の波紋の如くに揺れ動く。
 ではリクル、また後でな。
 風呂は楽しむがよい」

 ああ、姐御もそういう風に言うんだなあ。
 そのような巡り合わせなど、エルフの永き人生においては珍しくもいという事か。

 なんて厳しい世の中なのだろう。

 まあ、それは別として俺は浮かれていた。
 憧れのお風呂、普通は貴族様くらいしか入れないものなのだと思っていた。

 あの俺が生まれた村では、お風呂の存在なんて妖精さんの登場する御伽噺に等しい代物だった。

 無理やりに薪を沸かしたお風呂を作ろうとしていた人がいたが、『贅沢だ』と言って村長から没収されてしまっていた。

 薪だって売り物になる物なのだし、まあ仕方がないのかなあ。
 その後、作りかけだったお風呂は、あろう事か堆肥を入れる場所として活用されていた。

 本当に無残で酷い話だった。
 作っていた人は泣いていたが、実はそれが俺の叔父さんだったのさ。

 そうだ、いつか村にお風呂を作ろう。
 魔導式にしてやれば薪が勿体ないとは言われまい。

 魔石なんか生の物でいいなら自分で集められるもんね。
 実は生魔石を使うストーブなんかもあるのだ。

 野営のあるような、長めのダンジョン遠征に行くときは折り畳み式の軽量ストーブを持っていったりする。

 邪魔になる雑魚魔物のチビ魔石なんかは炉で燃やしてしまう。
 大物素材優先だから、どうせ大抵の場合は荷が溢れるので後で捨てるものなのだし。

 俺は自分の何気ない夢想にウキウキとしながらお風呂へ向かった。

 宿の中では無粋に帯剣したりはしない。
 風呂場でミスリル剣を盗られてもなんだし、大浴場の中に剣などを持ち込むのもなんだ。

 貴重品は他の面子に預けてある。
 一緒に風呂に誘ったのだが、獣人やドワーフはお風呂が好きではないらしい。

「勿体ないな。
 せっかく宿代に込みの料金なのにさ。
 さあ人生初お風呂だあ」

 そして籠に、まず宿で用意してくれていたラフなガウンを脱いで放り込み、続けて下着を脱いで風呂場へ向かった。

 屋根のついた露天風呂となっており、湯気が濛々と立っていて贅沢な事この上ない。

「おおお、感激の初風呂だ、いざ!」

「待ちな、君。
 ケツも洗わずにお風呂に入る気かい。
 それに身体も洗わないと、どうせ埃塗れなんだろう。
 さあ最初に浄化をかけてから」

「あ、すいません。
 なにせ人生初風呂だったもんで興奮しちゃって」

「ふふ、俺も興奮しちゃってるよ、探していた君にこんなところで偶然に会えたんだからね。
 ほら俺の股間を見てごらん」

「え?」
 何か聞き覚えのある声だったし、しかもこの変態風味な会話の中身は。

 俺は青ざめて、首を背後に回して、その声の主に視線を巡らせた。

「やあ、随分とご活躍のようじゃないか、レバレッジ君」

「うわわわわわわ。
 せ、先輩~⁉」

 俺の人生初風呂は、俺に向かって狂気の笑顔を浮かべながら股間の物を屹立させている変態のせいで台無しになってしまった。
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