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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-50 篝火の夜
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キャラバンの休憩所には、それからもここで野営をする予定の、ラビワン以前の街からやってきた五個のキャラバンが合流し、大変に賑やかな集団となった。
彼らは宿代節約のために自力でキャラバンを防衛し、野営をする人達だそうだが、今日の話を聞いて全員が震えあがった。
もし、ベーゼルのキャラバンが自分達よりも遅れてきていたら、今晩襲われていたのは自分達なのだから。
彼らも真剣に考えを改めようかどうしようか相談していた。
俺はちゃんと宿に泊まった方がいいと思うんだけどね。
安物買いの銭失いではないのだが、命あっての物種という諺は、俺達冒険者よりも彼ら商人の方がよく知っているはずだ。
まあ待ち伏せされて襲撃されたら、後は冒険者の能力次第なのだが、中には護衛すら雇っていない貧乏なキャラバンもいた。
俺達はまず休息を取った。
さすがに今すぐ野営の支度などに動く気になれない。
やがて一刻も過ぎる頃には気温も下がり、あちこちから夕餉のための煙が立ち上っていた。
夕暮れ近い休憩所には、赤々と灼光の篝火が焚かれ、各キャラバンから見張りが立っていた。
歩哨に立たなくていい契約をしている冒険者の中にも、自主的に歩哨を建てたり見回りをしたりしている者達も大勢いた。
俺達のような上級冒険者パーティがボロボロにされた有様を見ても警戒心を抱かないほど感覚が鈍いのなら、もう冒険者を辞めてもいいくらいだ。
そんな間抜けは、この荒野を渡るキャラバンの護衛には、さすがに一人もいないようだったが。
皆、きびきびと自分達がやるべき事をこなしている。
見ているだけでも実に頼もしい。
俺達のパーティは討伐功労者なので見張りなどは出されなかったが、俺は一人でうちのパーティの雑用をしていた。
テント張りに馬の世話、そして火起こしと食事の支度など。
雑用なら俺にお任せの新人冒険者リクル様だ。
「済まんな、リクル。
お前も慣れない激しい戦闘で疲れているだろうに」
「いえ、若いですから。
それに俺、ブースト無しでも体力や回復力も人の七倍あるんですよ」
正確には、今7.5倍だけどね。
「はは、羨ましい限りだ。
私の歳ではさすがに追いつかんよ」
一体、このお姉様って御幾つでいらっしゃるのかしら。
エルフの女性に歳を聞くなんて恐ろしくてできませんわ。
きっとこの先も、俺なんかよりも圧倒的に長生きされるのに違いない。
「まあ、結構スキル頼みなんですがね、あははは」
そうこうしていると、うちのキャラバン隊の人達が差し入れを持ってきてくれた。
「冒険者さん達、今日は本当にありがとう様。
これ、うちで作った肉料理だよ。
干し肉煮込みだけど、結構いけるから」
「こっちは、野菜と肉の炒め物を挟んだパンだよ。
いやあ、あの爆炎には驚いたねえ。
地獄って言うのは、ああいう物を言うのかと思ってしまったよ」
あははは、俺がその地獄の使者です。
魔力を練って発動する魔法ではなく、ただのスキルなので何回でも撃てたけど、さすがにもう一発追加する気にはならなかったなあ。
だからスキルっていうものは恐ろしくて、そして尊いのだ。
「ありがとうございます、皆さん。
助かります」
「いやいや、あんたらみたいな人のお蔭で街道の平和は守られているんだから」
それからも酒の差し入れや、他のキャラバンの人達からも料理の差し入れがあった。
バニッシュは酒を食らって見事に酔い潰れていた。
マロウスは嗜む程度にいただいていた。
通常ならば、護衛の仕事中にそのような醜態は許されないので、セラシアも咎めるのだろうが、今日は何も言わないつもりらしい。
エルフの彼女は、普段あまり酒を飲まないらしいのだが、今日は自分が飲みたいくらいの気分なのだろう。
彼女は魔法で周囲を警戒しているので決して飲んでいなかったが。
本来は宿に泊まる予定なので、昼食分以外の新鮮な食材はそう持っておらず、こういう予期しない野営用の保存食や日持ち野菜くらいしかないはずなのだが、皆上手に料理してあり感心した。
冒険者なんかだと、中層下層なんかへ行く時には干し肉に干し野菜や豆、そして堅パンと水だからな。
まあそれでも別に死にはせんのだが、あの先輩じゃないんだから、せめてもう少し美味い物を食いたいものだ。
探索中は持ち物には限界があるので、そいつばかりは仕方がない。
ピクニックに行くわけではないのだ。
たまに、ダンジョンの中で【行商】をしている強者がいる。
あれは俺もやってみようかと考えたのだが、命が幾つあっても足りないので止めた。
あれはかなりの強者にしか務まらない。
上級冒険者で、仲間がもうみんな引退してしまったが、それでもまだ冒険者でやっていきたいような方がおやりになられる『強職』なのだから。
また、地上に比べてぼったくり価格だから嫌われるし、メインで商売をする場所が、出現する魔物が怪物揃いの下層なのだからな。
でも、俺ならソロだから中層あたりでも買ってもいいけど。
あれも、なかなか決まったところにいてくれないので、必要な時に捕まえるのが一苦労なのだ。
ああいう仕事をしている人は昔取った杵柄で、割と下の方にいたがるしな。
『上級冒険者としての救援義務』を発揮されておられる方もいる。
それもう完全に趣味の世界だ。
案外と、そういう方々が先輩みたいな人を支えているのかもしれない。
今の俺なら中層限定ならば可能な商売かもしれない。
その他にパーティへのブーストスキル付きの臨時助っ人稼業もありだ。
こんな野営は俺には初めての体験だったので、その雰囲気を大いに楽しんだ。
この旅には本来野営の予定はなく、もうこんな夜は旅程の中では二度とないはずだ。
早々、このような命懸けのアクシデントがあっては堪らないがね。
篝火を絶やさずに更けていくキャラバンの夜を、各種の雑用をこなしながら俺は楽しんでいた。
彼らは宿代節約のために自力でキャラバンを防衛し、野営をする人達だそうだが、今日の話を聞いて全員が震えあがった。
もし、ベーゼルのキャラバンが自分達よりも遅れてきていたら、今晩襲われていたのは自分達なのだから。
彼らも真剣に考えを改めようかどうしようか相談していた。
俺はちゃんと宿に泊まった方がいいと思うんだけどね。
安物買いの銭失いではないのだが、命あっての物種という諺は、俺達冒険者よりも彼ら商人の方がよく知っているはずだ。
まあ待ち伏せされて襲撃されたら、後は冒険者の能力次第なのだが、中には護衛すら雇っていない貧乏なキャラバンもいた。
俺達はまず休息を取った。
さすがに今すぐ野営の支度などに動く気になれない。
やがて一刻も過ぎる頃には気温も下がり、あちこちから夕餉のための煙が立ち上っていた。
夕暮れ近い休憩所には、赤々と灼光の篝火が焚かれ、各キャラバンから見張りが立っていた。
歩哨に立たなくていい契約をしている冒険者の中にも、自主的に歩哨を建てたり見回りをしたりしている者達も大勢いた。
俺達のような上級冒険者パーティがボロボロにされた有様を見ても警戒心を抱かないほど感覚が鈍いのなら、もう冒険者を辞めてもいいくらいだ。
そんな間抜けは、この荒野を渡るキャラバンの護衛には、さすがに一人もいないようだったが。
皆、きびきびと自分達がやるべき事をこなしている。
見ているだけでも実に頼もしい。
俺達のパーティは討伐功労者なので見張りなどは出されなかったが、俺は一人でうちのパーティの雑用をしていた。
テント張りに馬の世話、そして火起こしと食事の支度など。
雑用なら俺にお任せの新人冒険者リクル様だ。
「済まんな、リクル。
お前も慣れない激しい戦闘で疲れているだろうに」
「いえ、若いですから。
それに俺、ブースト無しでも体力や回復力も人の七倍あるんですよ」
正確には、今7.5倍だけどね。
「はは、羨ましい限りだ。
私の歳ではさすがに追いつかんよ」
一体、このお姉様って御幾つでいらっしゃるのかしら。
エルフの女性に歳を聞くなんて恐ろしくてできませんわ。
きっとこの先も、俺なんかよりも圧倒的に長生きされるのに違いない。
「まあ、結構スキル頼みなんですがね、あははは」
そうこうしていると、うちのキャラバン隊の人達が差し入れを持ってきてくれた。
「冒険者さん達、今日は本当にありがとう様。
これ、うちで作った肉料理だよ。
干し肉煮込みだけど、結構いけるから」
「こっちは、野菜と肉の炒め物を挟んだパンだよ。
いやあ、あの爆炎には驚いたねえ。
地獄って言うのは、ああいう物を言うのかと思ってしまったよ」
あははは、俺がその地獄の使者です。
魔力を練って発動する魔法ではなく、ただのスキルなので何回でも撃てたけど、さすがにもう一発追加する気にはならなかったなあ。
だからスキルっていうものは恐ろしくて、そして尊いのだ。
「ありがとうございます、皆さん。
助かります」
「いやいや、あんたらみたいな人のお蔭で街道の平和は守られているんだから」
それからも酒の差し入れや、他のキャラバンの人達からも料理の差し入れがあった。
バニッシュは酒を食らって見事に酔い潰れていた。
マロウスは嗜む程度にいただいていた。
通常ならば、護衛の仕事中にそのような醜態は許されないので、セラシアも咎めるのだろうが、今日は何も言わないつもりらしい。
エルフの彼女は、普段あまり酒を飲まないらしいのだが、今日は自分が飲みたいくらいの気分なのだろう。
彼女は魔法で周囲を警戒しているので決して飲んでいなかったが。
本来は宿に泊まる予定なので、昼食分以外の新鮮な食材はそう持っておらず、こういう予期しない野営用の保存食や日持ち野菜くらいしかないはずなのだが、皆上手に料理してあり感心した。
冒険者なんかだと、中層下層なんかへ行く時には干し肉に干し野菜や豆、そして堅パンと水だからな。
まあそれでも別に死にはせんのだが、あの先輩じゃないんだから、せめてもう少し美味い物を食いたいものだ。
探索中は持ち物には限界があるので、そいつばかりは仕方がない。
ピクニックに行くわけではないのだ。
たまに、ダンジョンの中で【行商】をしている強者がいる。
あれは俺もやってみようかと考えたのだが、命が幾つあっても足りないので止めた。
あれはかなりの強者にしか務まらない。
上級冒険者で、仲間がもうみんな引退してしまったが、それでもまだ冒険者でやっていきたいような方がおやりになられる『強職』なのだから。
また、地上に比べてぼったくり価格だから嫌われるし、メインで商売をする場所が、出現する魔物が怪物揃いの下層なのだからな。
でも、俺ならソロだから中層あたりでも買ってもいいけど。
あれも、なかなか決まったところにいてくれないので、必要な時に捕まえるのが一苦労なのだ。
ああいう仕事をしている人は昔取った杵柄で、割と下の方にいたがるしな。
『上級冒険者としての救援義務』を発揮されておられる方もいる。
それもう完全に趣味の世界だ。
案外と、そういう方々が先輩みたいな人を支えているのかもしれない。
今の俺なら中層限定ならば可能な商売かもしれない。
その他にパーティへのブーストスキル付きの臨時助っ人稼業もありだ。
こんな野営は俺には初めての体験だったので、その雰囲気を大いに楽しんだ。
この旅には本来野営の予定はなく、もうこんな夜は旅程の中では二度とないはずだ。
早々、このような命懸けのアクシデントがあっては堪らないがね。
篝火を絶やさずに更けていくキャラバンの夜を、各種の雑用をこなしながら俺は楽しんでいた。
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