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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-44 御昼下がりの一幕
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一応、セラシアが魔法で周辺を走査して特に異常を確認できなかったので、キャラバンは先に進んだ。
まだまだ先は長い。
俺にとっては生まれて初めての馬車の旅、しかも人生最長の旅になるのだから。
揺れる馬車から眺める車窓越しの景色は、かつてない新鮮な世界を俺に知らしめてくれていた。
「ねえ、そういや盗賊どもはどうしたんです」
「奴らの骸は片付けない。
新しい骸があると、盗賊はそこを危険と見做し、そこは一旦安全になる」
「うわあ、あれですか。
なんというか畑を荒らすカラスを吊るす見せしめみたいな感じに?」
「そうだ」
世の中の厳しさをまた一つ教わった気持ちだった。
俺は絶対にああはなりたくないもんだ。
北のダンジョンでしっかりと、生涯食いっぱぐれないような技術を更に磨いて頑張ろう。
「まあそういう顔をするな。
こういう大都市の周辺では結構盗賊も頻発する。
食い詰めた者も奪った物資などを捌かねばならんし、金を持っていても街にいなくては連中とて面白くなかろう。
だが剽賊どもにも大きなリスクがあるというわけだ」
「この周辺には腕のいい冒険者も多いのになあ」
「まあその分、ダンジョン都市のラビワンは実入りがいい街だから盗賊にとっても魅力的さ。
世の中でリスクと成果を天秤にかけているのは、お前だけじゃないってことさ。
逆に、その冒険者も賊徒の供給源になりうるのだから」
う、そういやそうだったなあ。
そうか、世の中どこへ行っても、どんな立場になってもそうなんだな。
「さしあたって、次の休憩所まで他にも襲撃のポイントはあるが我々がいれば、どうという事もなかろう。
我々のような上級冒険者が露払いをしていけば後続のキャラバンも結構安全なのだ。
ああみえて、ベーゼルはなかなかの漢だぞ」
み、自らの商隊で匪賊白浪どもを蹴散らして後の者に道を開くのか。
自分の金を大枚使って、危険を顧みず。
漢過ぎる。
そういや、キャラバンの人達は戦闘の際に、各々武器を持って自分の馬車を守っていたな。
それが出来ない連中には、この腕の立つ上級冒険者による護衛付きのキャラバンに参加できないルールなのかもしれない。
ははあ、だから格安でセラシア達も仕事を受けるのだな。
金は十分に持っていそうだし。
よく考えて、本来ならこのクラスのパーティがこんな護衛の仕事を受ける必要はないんだよな。
うちの姐御も、いい漢っぷりだなあ。
きっと定期的にあちこちの周辺街道を、先頭切って巡回しているのに違いない。
他にも、そういう上級冒険者のチームがいそうだ。
そして、そういう事が各ダンジョンへの有力な冒険者の循環をも促すのだろう。
その後、第二休憩所へ到達するまでは何事もなかったのだが、昼食後の弛緩タイムに少し油断気味に進行するキャラバン。
だが逆に俺は最大限に警戒していた。
何故ならそこは【俺ならここを狙う】ような、地形的に大変危険な場所だからだ。
そこは木が生い茂り周囲が少し見えにくく、また道がカーブしてブラインドになっている。
少し上り坂なのもポイントだ。
馬車も登りでは馬力が必要なので、その他の方面での機動力が落ちる場所だ。
そして木の枝葉の中に潜んだ奴が飛び降りて、あっという間に馬車に乗り移れる。
先頭馬車を止められたら、そのキャラバンは一瞬にして詰む。
他のメンバーも、俺が警戒する様子を見ていてくれていたようなので当然のように言ってみた。
「案の定ですね」
「うむ、一回襲撃撃退をこなしたから、お前も敏感になってきただろう」
「はい。
だけど、やけに規模がでかい感じがしますね。
なんだろう。
こいつは普通じゃない感じがする。
こんな、特に街のすぐ近くでもない場所なのに、何故これほどの数が。
補給を考えると割に合わないのでは」
奪った物資だけで多人数が野営で暮らせるわけがない。
金目の物が目当てなのだろうから。
「さあな。
そして更に、向こうに魔法使いが混じっている気配がするぞ。
しかも複数の手練れだ。
通常なら有り得ないが、私の魔法使いとしての感覚は疑いようもない」
えー、マジかよ。
魔法使いの盗賊は少し洒落にならない。
しかも複数の手練れだと⁇
「どうします?」
「今のうちにエラヴィスが手早く偵察、敵かどうか確認しろ。
万が一、どこかの軍勢だったりしたら、いきなり攻撃するのはマズイ。
他の二名はいつでも戦闘にかかれるように待機。
エラヴィスが確認して戻ったら私が魔法で攻撃する。
小僧、お前は私に【ついてこい】」
「イエスマム」
要はブーストをかけて、姐御の魔法をコピーして追撃せよと。
敵に魔法使いが多数いるのなら油断はできないからな。
これで軍隊じゃないのだったら目を剥くところだ。
どこかの軍勢だとしたら、その所属がまた問題となるのだが。
正式な軍事交流などの訪問ならば宿に泊まるだろうに。
どっちみち怪しいわ。
エラヴィスは素早く飛び出していく。
彼女は隠蔽の技術を持っているらしくて、直に目で追えなくなった。
うわあ、あのスキルはヤバイな。
俺はスキル発動を準備して待った。
まだまだ先は長い。
俺にとっては生まれて初めての馬車の旅、しかも人生最長の旅になるのだから。
揺れる馬車から眺める車窓越しの景色は、かつてない新鮮な世界を俺に知らしめてくれていた。
「ねえ、そういや盗賊どもはどうしたんです」
「奴らの骸は片付けない。
新しい骸があると、盗賊はそこを危険と見做し、そこは一旦安全になる」
「うわあ、あれですか。
なんというか畑を荒らすカラスを吊るす見せしめみたいな感じに?」
「そうだ」
世の中の厳しさをまた一つ教わった気持ちだった。
俺は絶対にああはなりたくないもんだ。
北のダンジョンでしっかりと、生涯食いっぱぐれないような技術を更に磨いて頑張ろう。
「まあそういう顔をするな。
こういう大都市の周辺では結構盗賊も頻発する。
食い詰めた者も奪った物資などを捌かねばならんし、金を持っていても街にいなくては連中とて面白くなかろう。
だが剽賊どもにも大きなリスクがあるというわけだ」
「この周辺には腕のいい冒険者も多いのになあ」
「まあその分、ダンジョン都市のラビワンは実入りがいい街だから盗賊にとっても魅力的さ。
世の中でリスクと成果を天秤にかけているのは、お前だけじゃないってことさ。
逆に、その冒険者も賊徒の供給源になりうるのだから」
う、そういやそうだったなあ。
そうか、世の中どこへ行っても、どんな立場になってもそうなんだな。
「さしあたって、次の休憩所まで他にも襲撃のポイントはあるが我々がいれば、どうという事もなかろう。
我々のような上級冒険者が露払いをしていけば後続のキャラバンも結構安全なのだ。
ああみえて、ベーゼルはなかなかの漢だぞ」
み、自らの商隊で匪賊白浪どもを蹴散らして後の者に道を開くのか。
自分の金を大枚使って、危険を顧みず。
漢過ぎる。
そういや、キャラバンの人達は戦闘の際に、各々武器を持って自分の馬車を守っていたな。
それが出来ない連中には、この腕の立つ上級冒険者による護衛付きのキャラバンに参加できないルールなのかもしれない。
ははあ、だから格安でセラシア達も仕事を受けるのだな。
金は十分に持っていそうだし。
よく考えて、本来ならこのクラスのパーティがこんな護衛の仕事を受ける必要はないんだよな。
うちの姐御も、いい漢っぷりだなあ。
きっと定期的にあちこちの周辺街道を、先頭切って巡回しているのに違いない。
他にも、そういう上級冒険者のチームがいそうだ。
そして、そういう事が各ダンジョンへの有力な冒険者の循環をも促すのだろう。
その後、第二休憩所へ到達するまでは何事もなかったのだが、昼食後の弛緩タイムに少し油断気味に進行するキャラバン。
だが逆に俺は最大限に警戒していた。
何故ならそこは【俺ならここを狙う】ような、地形的に大変危険な場所だからだ。
そこは木が生い茂り周囲が少し見えにくく、また道がカーブしてブラインドになっている。
少し上り坂なのもポイントだ。
馬車も登りでは馬力が必要なので、その他の方面での機動力が落ちる場所だ。
そして木の枝葉の中に潜んだ奴が飛び降りて、あっという間に馬車に乗り移れる。
先頭馬車を止められたら、そのキャラバンは一瞬にして詰む。
他のメンバーも、俺が警戒する様子を見ていてくれていたようなので当然のように言ってみた。
「案の定ですね」
「うむ、一回襲撃撃退をこなしたから、お前も敏感になってきただろう」
「はい。
だけど、やけに規模がでかい感じがしますね。
なんだろう。
こいつは普通じゃない感じがする。
こんな、特に街のすぐ近くでもない場所なのに、何故これほどの数が。
補給を考えると割に合わないのでは」
奪った物資だけで多人数が野営で暮らせるわけがない。
金目の物が目当てなのだろうから。
「さあな。
そして更に、向こうに魔法使いが混じっている気配がするぞ。
しかも複数の手練れだ。
通常なら有り得ないが、私の魔法使いとしての感覚は疑いようもない」
えー、マジかよ。
魔法使いの盗賊は少し洒落にならない。
しかも複数の手練れだと⁇
「どうします?」
「今のうちにエラヴィスが手早く偵察、敵かどうか確認しろ。
万が一、どこかの軍勢だったりしたら、いきなり攻撃するのはマズイ。
他の二名はいつでも戦闘にかかれるように待機。
エラヴィスが確認して戻ったら私が魔法で攻撃する。
小僧、お前は私に【ついてこい】」
「イエスマム」
要はブーストをかけて、姐御の魔法をコピーして追撃せよと。
敵に魔法使いが多数いるのなら油断はできないからな。
これで軍隊じゃないのだったら目を剥くところだ。
どこかの軍勢だとしたら、その所属がまた問題となるのだが。
正式な軍事交流などの訪問ならば宿に泊まるだろうに。
どっちみち怪しいわ。
エラヴィスは素早く飛び出していく。
彼女は隠蔽の技術を持っているらしくて、直に目で追えなくなった。
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俺はスキル発動を準備して待った。
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