外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-22 別口で御一人様ご案内

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 俺は、そこにある何故かいい塩梅の形をした岩に座って、生活魔法で出した水をコップで飲みながら考えていた。

 あの連中がそう簡単に諦めるだろうか。

 この凄い槍は、あいつらから見たって凄いお宝なんだろうからなあ。

 もう新人が二十人もチャレンジしたそうだから、きっと噂になっていたのだ。

 俺はブライアンの上級冒険者パーティにいたから、あんな店には出入りしていないので知らなかったのだ。

 俺はパーティの仕事で手いっぱいで、あまり他の新人と付き合いがなかった。

 襲撃してきた連中は、これを貰って出てくる奴がいないか張っていたんだろう。

 へたすると、探索魔法で槍本体が見張られていた可能性すらある。

 相手は中級冒険者だからなあ。
 それくらいの事はやりかねない。

 後は【情報屋】の仕業という可能性もある。
 俺がそいつに売られた可能性も否定できない。

 畜生、こんなダンジョン都市内で、中級冒険者ともあろうものが、新人相手にそんな強盗稼業に熱を上げやがって。

 恥ずかしくねえのかな。

「うーむ、水はあるが食い物がな。
 非常用の干し肉と堅パンだけか、節約しても三日が限度だなあ。

 あいつらって、ダンジョンに潜るのに非常用の食い物一つ持っていないんだから困った奴らだ。

 いよいよとなったらオークの肉か何かでも食うか。
 あれって食えるのかなあ」

 他の冒険者からダンジョン飯を購入するという手はあるな。

 今なら金には事欠かない。
 金の代わりに使える値打ち物の魔石もある。

 いざとなったら魔石のリュックや屑アイテムを入れた奪った背嚢は捨てて逃げよう。

 槍とミスリル関係と、それに金貨さえ残せば、最悪は後の荷物はいらない。
 むしろ逃走の邪魔になるだろう。

 命綱となる、必要な各種ポーション類は、しっかりと十分な数を身体に巻き付けている。

 あとちょっと粘ってせめて4.0になってから地上まで強行突破で逃げるとするか。

 連中も地上では猫を被っているはずだから、協会長のところまで逃げられたら俺の勝ちだ。

 俺のようなルーキー一人に中級冒険者十六パーティでかかって勝てませんでしたじゃ、連中も格好はつくまい。

 まあ恨みは買うのだろうが、襲ってきたそっちが悪いよね⁉

 外れ野郎の新人だと思って舐めてかかるから、こういう事になるのさ。

 あるいは、いっそこのまま下に潜りながらバージョン上げに挑むか。

 いや今の追われながら、しかもソロで支援の無い俺にとってそいつはリスクが高い。

 行商人のいる下層まではさすがに辿り着けないだろう。
 行き倒れるのが落ちだ。

 今の装備ならば、あの凡庸な連中相手に強行突破を試みた方が固いな。

 俺は重い腰を上げて、残りのバージョンアップを片付ける事にした。

 途中で出会ったオークを随時狩りながら、下の六階層まで走り抜けた。

 途中には他の冒険者パーティもいたが、彼らは初心者パーティが殆どだ。
 この階層には俺を狩る敵はいなかった。

 まだ俺が槍を手に入れて時間がそう経っていないからだろう。

 たまたま地上にいて情報を手にした連中が、急遽襲ってきているのだろうから。

 まだこの先、時間が経てば槍の情報を入手した敵が増える可能性はあるし、大人数で緊急組織として連合レイドパーティを組まれたり装備を補充されたりすると厄介だな。

 道中、槍は布で軽く包んでおいた。
 逆に高価な武器だと勘繰られたりするが、それでもミスリル丸出しのままよりはいい。

 オークなど連中から奪い取った棍棒で殴り倒し、そいつらの端金はしたがねにしかならない魔石なんぞには目もくれない。

 それに、初心者が俺にちょっかいをかけたところで実力差は歴然としている。

 俺なら素手でも初心者十人までなら一度に相手どれるだろう。
 およそツーチームを一挙に殲滅可能だ。

 魔法使いや厄介なスキル持ちがいると面倒なのだが、そういう連中はスカウトがかかるはずだから、こんな上階層にはいないはずだ。

 毒矢使いにだけは要注意だが。

 一応は対毒性にもレバレッジがかかっているし、常人の数倍の回復力持ちで、しかも今なら毒消しを含む各種ポーションも潤沢に保有している。

 そして下へ降りて早々に、いきなり狙っていた獲物と遭遇した。

 お、うまい感じに一体だな。
 こいつを一体倒せば俺は4.0にバージョンアップできるはず!

 そうしたら、こちらから一気に逆襲に出るぜ。

 今ならば、連中も俺が戻ってくるとは思っていないだろうから、強烈なカウンターで奇襲しながら蹴散らせるはずだ。

 今回は集団を相手どれるようないいスキル来い!

 そして俊足にて襲ってくる相手に向かって繰り出すミスリル槍。

 そして奴は、その種族特性から来る特徴的な足捌きを用いて巧みに避けるが、俺は見事なレバレッジのかかったフットワークで独楽のように立ち回り、ついにはそいつの脳天を槍で突き刺して見事に仕留めた。

 やはり軽くて威力のあるミスリル槍は、今の俺にとっては最高の武器だ。
 また、この程度の戦闘では刃毀れ一つしないので助かる。

 そんなミスリルを破損させるほど固い奴は、この上層階には、まずいないだろう。

 俺は上級冒険者パーティと一緒ならば、新人ながら下層まで遠征した経験が二桁回数あるのだ。

 たとえソロといえども、この程度がこなせないというのならば、本気で元のパーティメイトに笑われてしまうだろう。

「やった!」
 そいつは、グレーウルフ。

 全長ニメートルと犬族魔物にしてはやや大型の図体で、素早いので倒すのに槍がいるし、生半可な攻撃は魔力の籠った毛皮が弾くのだ。

 こいつは毛皮も金貨一枚程度と高く売れるし、魔石は銀貨二十枚と比較的高額買い取りだ。

 その代わり手強いし、気をつけないと数十頭の群れになる。

 そこまでいくと倒せても剥ぎ取りだけで一難儀だ。

 高価な毛皮も荷物になるから殆ど運べない。
 俺は魔石だけで我慢するしかないな。

 毛皮も一枚二枚なら持って帰れるかもしれない。
 今は追われているから、さすがに無理だけどね。

 俺が獲物を仕留めて、4.0へのバージョンアップの喜びに油断しきった時、そいつは一瞬にして現れて俺のバックを取った。

 俺は思わず背筋が凍るのを感じた。
 この襲撃者はいつからいた!?

 俺はそいつにずっと監視されていたのか?

 気配なんか微塵も感じられなかったのだが。
 俺は今そういう力にもレバレッジがかかっているにも関わらず。

 くそ、そいつの発する殺気に背中から射られて一歩も動けない!

 心臓を氷で掴まれたようなこの異様な感覚は、明らかにこの襲撃者が下層で俺が遭遇した魔物以上の強敵である事を示している。

 たぶん、こいつは俺を殺す気なのだ。
 やべえ、さっきの連中とは格が違う。

 こいつはまさか。

 駄目だ、この圧はさっきの奴らとは桁違いだ。
 やはり上級冒険者なのだ。

 しかも普通の冒険者とは違う『ヤバイ奴』なのらしい。
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