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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-5 外れスキル【レバレッジたったの1.1】
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わずか一階層しか下っていないため、些か普段と比べて賑わっていない入り口付近の場所からは僅か三分足らずで戻ってこれてしまった。
他の新人や顔見知りの連中に会いたくないので、道中は走ってきたのもある。
こう見えて伊達に新人レーティング一位ではなく、体力はある方で足だって決して遅くはない。
上級冒険者パーティにいれば、自然に追い立てられまくるので足は勝手に速くなる。
手際も物凄くいいので、お昼を回った頃にはもう籠の中はもうスライムで溢れる万斛の収穫であった。
ダンジョンの出口を出てすぐに設置されている、協会の買い取り窓口で籠ごとスライム素材を渡すと、顔馴染みの美人職員エリッサさんに訊かれてしまった。
彼女は獣人族で可愛らしいボンキュッボンな狐耳のお姉さんで、新人冒険者みんなのアイドルだ。
「リクル、今日は一人?
他の人はどうしたの。
スライムばっかりだなんて珍しいわね。
スライムは自分の取り分なのかしら。
あなたならソロでも、もっと下まで行けるはずだけど」
だが、隣の職員さんが慌てて彼女の裾を引っ張った。
どうやら遅番で昼から出て来たらしい彼女以外の職員はもう知っているのだろう。
彼女もそれには不審そうな顔をしたが、もう客対応に入ったので彼女はそれを振り払い、同僚の人は片手で顔を覆ってしまった。
「気を使わせてしまってすいませんね」という感じに、俺はその人に頭を下げた。
その人は顔の前で若干困ったように片手を振った。
俺が普段の明るい様子と異なり黙っているので、彼女は不審そうに見ていたが、後でさっきの同僚から話を聞くだろうから俺の口からは敢えて言わないようにした。
見習いの身ながら頑張っていた俺に比較的よくしてくれていた、職員一美人と評判の彼女からどんな目で見られるかと思うと、思わず膝が震えちまう。
どんなに俺の事を考えてくれていた人だろうが、あのスキルを外した事実を知れば手の平を返す。
このダンジョンの街では、スキルを外すという事はそれだけ重要な意味を持つのだ。
それは冒険者という命懸けの商売をしている俺達にとっては、スキルを外したという事実は、他の職業の人間よりも遥かに厳しいペナルティがある事を意味するのだ。
真面な冒険者などは、俺とパーティをまず組んでくれない。
それでもいいから組んでくれるというようなレベルの相手と組めば、逆に俺が足を引っ張られて寿命を縮める羽目になるだろう。
俺は、おそらくこの先もずっとソロでやっていくしかあるまい。
自分の磨いた技術に見合わない、新人がやるような上層表面の探索でスライムでも狩りながら、有用なスキル獲得に成功した他の人間の活躍を、指を咥えて見ながら生きていくしかないのだ。
そして、スライム五十匹分の代金である銀貨五十枚を受取ってから、書類にサインをした。
それはもう一年もやってきた仕事なので、些かボーっとしていても手が勝手に動くほど手慣れたものだった。
今日は狩場が空いていたお蔭で、スライムが大量にとれて助かった。
これで少しは手持ちの金で革袋が潤ったか。これからの身の振り方を考える間、明日もスライムを狩るとするかな。
「そうだ。
この金は協会に預けておいていいかな」
「ええ、わかったわ。
じゃあ、ここに金額とサインを」
協会は冒険者のためにお金の預かりサービスをしてくれる。
その分は冒険者が死んだら血縁に送金してくれるのだ。
俺の場合は四人いる兄弟姉妹を指定している。
あいつらは元気にしているだろうか。
まあ今日のところは、訳あって自分用の貯金だ。
見習いの間は貯金なんてとてもじゃないが出来なかった。
昼過ぎまでダンジョンで歩き回ったのだ。
金は心許なくとも腹は減る。
本日は一応の稼ぎはあったので、屋台でふかし芋を一つだけ買って塩味のみで食った。
金の無い新人冒険者がよくやる食事だ。
俺は立ったまま芋を食べながら、なんとはなしに自分のあのスキルの具合を見ていた。
スキルの具合というのは、なんというのか自然にわかる。
スキルというものは頭の中に浮かぶものだからだ。
たとえば、俺のスキルの具合は【レバレッジたったの1.0】という感じに頭の中に浮かぶものなのだ。
普通はそれが何なのかわかるらしいのだが、俺の物は不良スキルのせいなのか知らないがよくわからない。
そして今見ると、やはり【レバレッジたったの1.1】とある。
あれ?
「なんだ?
少しスキル名が変わっていないか?
確か【レバレッジたったの1.0】だったよな。
1.1?
まあ、1.0とそう変わるような内容じゃないのだが」
何なのだ。
中身だけでなく、スキル名まで外れているのかい。
やれやれ。
他の新人や顔見知りの連中に会いたくないので、道中は走ってきたのもある。
こう見えて伊達に新人レーティング一位ではなく、体力はある方で足だって決して遅くはない。
上級冒険者パーティにいれば、自然に追い立てられまくるので足は勝手に速くなる。
手際も物凄くいいので、お昼を回った頃にはもう籠の中はもうスライムで溢れる万斛の収穫であった。
ダンジョンの出口を出てすぐに設置されている、協会の買い取り窓口で籠ごとスライム素材を渡すと、顔馴染みの美人職員エリッサさんに訊かれてしまった。
彼女は獣人族で可愛らしいボンキュッボンな狐耳のお姉さんで、新人冒険者みんなのアイドルだ。
「リクル、今日は一人?
他の人はどうしたの。
スライムばっかりだなんて珍しいわね。
スライムは自分の取り分なのかしら。
あなたならソロでも、もっと下まで行けるはずだけど」
だが、隣の職員さんが慌てて彼女の裾を引っ張った。
どうやら遅番で昼から出て来たらしい彼女以外の職員はもう知っているのだろう。
彼女もそれには不審そうな顔をしたが、もう客対応に入ったので彼女はそれを振り払い、同僚の人は片手で顔を覆ってしまった。
「気を使わせてしまってすいませんね」という感じに、俺はその人に頭を下げた。
その人は顔の前で若干困ったように片手を振った。
俺が普段の明るい様子と異なり黙っているので、彼女は不審そうに見ていたが、後でさっきの同僚から話を聞くだろうから俺の口からは敢えて言わないようにした。
見習いの身ながら頑張っていた俺に比較的よくしてくれていた、職員一美人と評判の彼女からどんな目で見られるかと思うと、思わず膝が震えちまう。
どんなに俺の事を考えてくれていた人だろうが、あのスキルを外した事実を知れば手の平を返す。
このダンジョンの街では、スキルを外すという事はそれだけ重要な意味を持つのだ。
それは冒険者という命懸けの商売をしている俺達にとっては、スキルを外したという事実は、他の職業の人間よりも遥かに厳しいペナルティがある事を意味するのだ。
真面な冒険者などは、俺とパーティをまず組んでくれない。
それでもいいから組んでくれるというようなレベルの相手と組めば、逆に俺が足を引っ張られて寿命を縮める羽目になるだろう。
俺は、おそらくこの先もずっとソロでやっていくしかあるまい。
自分の磨いた技術に見合わない、新人がやるような上層表面の探索でスライムでも狩りながら、有用なスキル獲得に成功した他の人間の活躍を、指を咥えて見ながら生きていくしかないのだ。
そして、スライム五十匹分の代金である銀貨五十枚を受取ってから、書類にサインをした。
それはもう一年もやってきた仕事なので、些かボーっとしていても手が勝手に動くほど手慣れたものだった。
今日は狩場が空いていたお蔭で、スライムが大量にとれて助かった。
これで少しは手持ちの金で革袋が潤ったか。これからの身の振り方を考える間、明日もスライムを狩るとするかな。
「そうだ。
この金は協会に預けておいていいかな」
「ええ、わかったわ。
じゃあ、ここに金額とサインを」
協会は冒険者のためにお金の預かりサービスをしてくれる。
その分は冒険者が死んだら血縁に送金してくれるのだ。
俺の場合は四人いる兄弟姉妹を指定している。
あいつらは元気にしているだろうか。
まあ今日のところは、訳あって自分用の貯金だ。
見習いの間は貯金なんてとてもじゃないが出来なかった。
昼過ぎまでダンジョンで歩き回ったのだ。
金は心許なくとも腹は減る。
本日は一応の稼ぎはあったので、屋台でふかし芋を一つだけ買って塩味のみで食った。
金の無い新人冒険者がよくやる食事だ。
俺は立ったまま芋を食べながら、なんとはなしに自分のあのスキルの具合を見ていた。
スキルの具合というのは、なんというのか自然にわかる。
スキルというものは頭の中に浮かぶものだからだ。
たとえば、俺のスキルの具合は【レバレッジたったの1.0】という感じに頭の中に浮かぶものなのだ。
普通はそれが何なのかわかるらしいのだが、俺の物は不良スキルのせいなのか知らないがよくわからない。
そして今見ると、やはり【レバレッジたったの1.1】とある。
あれ?
「なんだ?
少しスキル名が変わっていないか?
確か【レバレッジたったの1.0】だったよな。
1.1?
まあ、1.0とそう変わるような内容じゃないのだが」
何なのだ。
中身だけでなく、スキル名まで外れているのかい。
やれやれ。
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