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第一章 燃え尽きた先に

1-4 護衛隊

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 俺はゆっくりとドアを開け、両手を上げて敵意がない事を示しながら、外へ出ながら彼女達に向かってにっこりと笑いかけた。

 さすがに、いきなり弓で撃たれちゃ敵わないし。
 こういう時には行き違いってものが発生しやすいのだ。

 相手が降伏勧告をしてくれたって俺にはわかりゃあしないのだし。

「こんにちは」
 もちろん言葉は通じていないのだが、挨拶をしているのはわかってもらえると思うし、敵意がないのは多分わかってくれるはずだ。

 少女も降りてきて、先頭にいた一際眼光の鋭い金髪の女に抱き着いていき、俺の事をぎこちなく笑顔で指差した。

 俺が彼女達を助けた事を説明してくれているのだろう。
 まださっきの衝撃から立ち直れていない様子だったが。

 だがその途端にキャセルというらしい、その女の眉が跳ねた。

「あれ、もしかしてなんかよくない兆候⁉ なんで~」

 俺は少女を助けてあげたのに。
 むしろ、俺の方が巻き込まれていたと言うか。

 そして女はズカズカと俺の前まで来て、俺を指差して何かを怒鳴っているような感じだった。

 人を指差しちゃ駄目って言う教えはこの世界にはないものか。
 ここは、おそらく俺が元居た世界じゃないのだろう。

 別の世界に行きたいとは常々思っていたのだが、こんな殺伐とした厄介なところへ来たいなんて、これっぽっちも思ってはいないのだが。

 しかし、やはり女の言っている言葉がさっぱりわからない。

「なあ、それ何語なんだい。
 さっぱりわからないよ」

 今度は女が違う言葉で話しかけてきたようだが、やっぱりわからん。

「ハロー、ボンジュール、えーとニイハオは絶対に違うだろうなあ」

 どうにもコミュニェーションが取れないので、女は肩を竦めて諦めると、俺に馬車へ戻るようにジェスチャーをして、自分は矢で射られた女性の体を端にずらして丁寧に壁寄りに寄せかけてから自分が御者席に収まった。

 そして、もう一人の女性が馬車の中に乗り込んできた。
 少女の護衛としてなのだろう。

 そして残りの四名の女性は警戒のために、歩兵として馬車に随伴するようだ。

 要人を中に乗せて敵地を抜ける戦車かよ。
 なんて物騒な。

 この子達は命懸けでVIPの救出に来た英雄部隊なのか?

 同乗の女性兵士は俺には特に話しかけてこない。
 パッと見た感じでは、彼女も西洋人っぽい感じだろうか。

 目や髪の色は様々であるようだ。
 この人は見事なオレンジ・ヘアーと青い瞳だな。

 メンバーは金髪茶髪に紫にオレンジに銀髪と、なかなか目立ちそうな感じだった。

 相手の襲撃してきた男どもは全員顔が見えなかったので、わかったのは体付きがよかった事くらいで、風体はよくわからなかった。

 だが、どうやらこの界隈に銃は無さそうなので助かった。
 これで地球の武装勢力のようだったら堪らない。

 逃げても砲撃がありそうだし、馬車が地雷や仕掛けられた爆薬で吹き飛ばされたなんていった日には目も当てられない。

 こんな馬車なんか携帯式ロケット砲で一発だわ。
 航空爆弾を利用した特殊地雷に引っかかったなんていった日には!
 跡形も残らないだろう。

 森林公園のような地帯を抜けて、街へ続く大通りのような場所を少し小走りといった感じの速度で進んでいたが、今のところ特に襲撃はなかった。

 そして、俺は警戒して外を睨んでいたが、少女がじっと俺を観察しているのが感じられた。

 俺は振り向いて、にこっと笑ってあげたのだが、彼女は慌てて向こうを向いてしまった。

「あらー、あまり馴れ馴れしくしちゃあ駄目だったのかな。
 なんか、お嬢様っぽいし。
 さっきのキャセルとかいう女の態度もそういう事なのかもな」

 俺は頭をかいて、いつでも電撃を撃てる態勢で襲撃を待っていた。

 そして気が付くと前方から馬がやってきていた。
 
 いや、これは一頭じゃない、これは何十頭もいる感じの蹄鉄の音だった。

 何というか、精鋭揃いであるような感じが、空気の粒子を介して伝わってくる。

 俺も妙に敏感になっているな。
 いや、これは帯電した空気がなにがしかの情報を伝達してくれている可能性すらある。

 俺も何かこう色々な物に敏感になってしまっているようだ。

「げ! これはちょっとまずくないか⁉」

 だが、同乗の女性は平然としているし、馬車もゆったりと足を止めた。

 やがて馬というか騎馬隊が止まり、馬車の周りを取り囲んだ。

 それは何というか、馬車を包囲するという感じではなく、いかにも護衛するという感じで外向きに。

 また装備が騎兵隊っぽい感じだしね。
 それに、まるでアメリカ南北戦争の騎兵隊のような感じの帽子を被っている。

 それの色は白を基調として、もっと派手な赤や黄を基調としたものだけれど。

 やはり彼らも銃は持っていないのだが。

 なんというか、この人達は一般兵士っぽくない。
 近衛兵とでもいうのだろうか。

 少し華やかで高価そうな服装をしている。
 白を基調として、服には飾り紐なども施されている。
 剣の鞘にも立派な装飾が付いているようだ。

 先頭の男の肩には色鮮やかなストライプが何本も主張をしていた。

 帽子も色違いの一際立派な物を被り、それには他の人間とは異なる金輪が施されている。

「ふう、味方だったのかよ。
 脅かしやがって。
 さすがに手練れの敵さんの三連発はきついぜ。
 それにまた数が多すぎるし。
 騎馬の機動力も勘弁してほしいな。
 重量のある馬車では絶対に逃げられやしないよ」

 俺がいかにもほっとしたように息を吐いて右手を下ろしたので、それを見ていた少女がくすっと笑った。

 そして、その先頭の隊長らしき男性が馬車の扉を開けたので、俺はそいつと目が合ってしまった。

 ちょっと強面そうなタイプで、茶色の髪が隊長帽らしき物からはみ出した面長な顔に埋め込まれた、青く鋭い瞳と口髭が厳めしい。

 俺は少々ビビってしまった。
 日本にゃあ、ちょっといないタイプだった。

 彼は何か言ったが、当然俺にはその意味がわからない。

 そいつはまた俺を怒鳴りつけた。
 俺が困っていると、少女がそいつに声をかけてくれた。

 すると、そいつは脇に寄り、俺に外へ出るように言い(たぶん)、ジェスチャーで差し示した。

 俺がそろーっとその指示に従うと、その徽章をたくさん肩に張り付けた隊長さん? が恭しくエスコートして少女を馬車から降ろした。

 あのキャセルとかいう女がまた、隊長に恭しく接していたので、どうやら彼はかなり偉い人のようだった。

 しばらくすると後方から馬車が回されてきたが、これまた立派な四頭立ての豪華馬車だった。

 いや、これが本来この少女が乗るべき馬車なのだろう。
 という事は、やはりただのお嬢さんではないのだな。

 そして、少女はまたキャセルにエスコートされてそれに乗り込み、俺はそのまま置いていかれそうになった。
 おいおい。

 だが少女が隊長に何か言ってくれて、彼は少し忌々しそうにしながらも俺を乗せてくれた。

 ふう、よかった。こんな知らないところに一人で置いていかれたら困ってしまうよ。
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