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第二章 探索者フェンリル
2-40 唐揚げ談義
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ルナ姫の部屋へ行くと、すかさず彼女が駆け寄ってきた。もう今日のお勉強は終わりとみて、ラフなお部屋義に着替えている。俺が召喚してやった可愛い向日葵柄の子供ワンピだ。
「スサノオ、お母様の実家に行っていたの?」
「ああ、耳が早いな」
「だってー」
彼女はもどかしそうに両手を駆け足風に揃えて、そいつを同時に前後に動かしている。
お目当ては母親の実家の名産品か。前に納められたのは、この子の誕生日らしいからなあ。自分は食べられなかったよね。
「いやあ、ありゃあ難問だわ。見てきたけど簡単に食べられそうにない。お手上げなんで、今ベノムに頼んできたけど、なんとかなるものかねえ。まだメガロホーンの相手でもしていた方が簡単だわ」
「あれのお肉も美味しかったよね」
「ああ、あれの肉はまだまだあるけどな」
「わあい」
だんだん、この子もシンディみたいになってきたな。格闘神官じゃなくて魔法使いだけど。
「でも、お母様の実家の鳥さんも食べてみたいな」
「右に同じ」
「左も同じです」
耳元でいきなり声をかけられて驚いたので、つい飛び退ってしまった。
「うわあ、いたのかサリー」
「えーと、私は以前からルナ姫様の護衛騎士なのですがね」
そうだった。ずっとこいつが一人だけお世話係もやっていたのだった。
唐揚げを話題していたから、架空の匂いに釣られてテレポートをマスターしてやってきたのかと思ったぜ。
「新しい唐揚げの誕生が待ち遠しいですね」
「まあな」
鳥だから、唐揚げとは相性もいいと思うのだが。ダチョウみたいに淡泊なあっさりとした肉質だったらどうなんだろう。
あの唐揚げにしたら美味いバードザウルスが元なのだから、唐揚げでもいけると思うのだが。焼き鳥もいいなあ。バードザウルスも串焼きや焼き鳥にしてみて大変に美味しかったのだ。
そういや、よい音楽を聞かせてやると牛の乳は出がよくなり、鳥も卵をよく産むのじゃなかったかな。クラッシック音楽とかがよかったような。
ヒーリング系の音楽もいいかもしれない。今ではネットに押されて少なくなってしまった、それらのCDを召喚してみた。気休めくらいにはなるだろう。
ああ、ただ卵を産ませるんじゃなくて交尾させないと駄目なんだった。頑固で高貴な鳥さんが交尾しまくりたくなる音楽って何だろうな。
人間ならロックあたりだろうか。タンゴなんてどうかね。一応、そいつのCDも用意しておいた。
「スサノオ殿、なんだか唐揚げが食べたくなってきてしまいましたな」
「ルナもー」
「そう言われると、俺もなんだか唐揚げが食いたくなってきた」
まだ早い時間なので、今日は行列のできる唐揚げ屋さんから召喚してみた。チェーン店なのだが、これがまた主婦が並んで買う物なんだよね。
ついつい手が伸びてしまい、お替りを四回も召喚してしまった。一番食うのがサリーなんだがな。
「いやあ、新唐揚げが待ち遠しいですね」
「それだけ食ってまだ言うか」
ブレない奴とは、まさにこいつの事だ。貴族にして騎士とはとても思えないが、日々鍛錬を重ねていればこうなってしまうものか。
元々代々騎士の家系だから女性でも、少しがっちりした人が多いらしい。身内にデブはいないそうだ。
背が高くて太らずに容姿端麗、しかも身体能力抜群の一族となるとバレリーナに向きそうな気もするが、かなり肩幅が広めなのでやっぱりバレリーナには向かないかな。
でも今度余興に踊らせてみようか。騎士団としても、王宮のイベントで披露できる芸の一つも欲しい。
うちは中心人物に粗野な奴が多いので、その辺は紅一点に頑張っていただきたい。貴族の子供達の間でもバレーが流行るかもしれない。
第三王妃の舞踏会や茶会などでポールダンスをやらせるのもなんだしな。
金属製のトゥシューズを常に履いているような女だ。踊り自体はすぐにマスターしそうな気がするが、相方の男性バレリーナには不足しそうだ。
騎士団長のバリスタかアレン、あのあたりか。案外と細身のグレンの方が似合うかもしれないが、白髪頭で顔の半分を隠した陰気な男だからな。客がドン引きするかもしれない。
それに愛用の金属製トゥシューズは敵に蹴りを放った時のためにある気がするし。
「ふふ、みんな唐揚げが好きなのね」
「おお、アルカンタラ王妃様。実家の鳥さんを拝見しましたが、大変すばらしい連中ですな。あれでポコポコと卵を産んでくれる奴だったらよかったのですが。何か卵を産ませるヒントみたいな物はありませんかね」
彼女も考えるようだったが、しばし熟考してから口を開いた。
「そうねえ、言い伝えというか、口伝ではこう言われるわね。
『笹の花が咲く頃、デリバードの恋の季節がやってくる』と。
本当かどうかわからないのだけれど、我が家にあった文献にはその記録がつけられていて、確かに何年かに一度咲く笹の花が咲いた年は、デリバードも子が生まれたと言われているのだけれど。そ
れを手がかりに研究を進めたけれど、結果は芳しくなかったとも記されているわ」
笹の花か! そいつはまた難儀代物だな。だって、あれは地球でも六十年から百二十年に一度、一斉に咲くみたいな珍しい花じゃないの。
見られるのは一生に一度あるかないかという、ハレー彗星みたいな奴なのだ。いいヒントはもらったけどさ、あまり役には立ちそうにないな。
「スサノオ、お母様の実家に行っていたの?」
「ああ、耳が早いな」
「だってー」
彼女はもどかしそうに両手を駆け足風に揃えて、そいつを同時に前後に動かしている。
お目当ては母親の実家の名産品か。前に納められたのは、この子の誕生日らしいからなあ。自分は食べられなかったよね。
「いやあ、ありゃあ難問だわ。見てきたけど簡単に食べられそうにない。お手上げなんで、今ベノムに頼んできたけど、なんとかなるものかねえ。まだメガロホーンの相手でもしていた方が簡単だわ」
「あれのお肉も美味しかったよね」
「ああ、あれの肉はまだまだあるけどな」
「わあい」
だんだん、この子もシンディみたいになってきたな。格闘神官じゃなくて魔法使いだけど。
「でも、お母様の実家の鳥さんも食べてみたいな」
「右に同じ」
「左も同じです」
耳元でいきなり声をかけられて驚いたので、つい飛び退ってしまった。
「うわあ、いたのかサリー」
「えーと、私は以前からルナ姫様の護衛騎士なのですがね」
そうだった。ずっとこいつが一人だけお世話係もやっていたのだった。
唐揚げを話題していたから、架空の匂いに釣られてテレポートをマスターしてやってきたのかと思ったぜ。
「新しい唐揚げの誕生が待ち遠しいですね」
「まあな」
鳥だから、唐揚げとは相性もいいと思うのだが。ダチョウみたいに淡泊なあっさりとした肉質だったらどうなんだろう。
あの唐揚げにしたら美味いバードザウルスが元なのだから、唐揚げでもいけると思うのだが。焼き鳥もいいなあ。バードザウルスも串焼きや焼き鳥にしてみて大変に美味しかったのだ。
そういや、よい音楽を聞かせてやると牛の乳は出がよくなり、鳥も卵をよく産むのじゃなかったかな。クラッシック音楽とかがよかったような。
ヒーリング系の音楽もいいかもしれない。今ではネットに押されて少なくなってしまった、それらのCDを召喚してみた。気休めくらいにはなるだろう。
ああ、ただ卵を産ませるんじゃなくて交尾させないと駄目なんだった。頑固で高貴な鳥さんが交尾しまくりたくなる音楽って何だろうな。
人間ならロックあたりだろうか。タンゴなんてどうかね。一応、そいつのCDも用意しておいた。
「スサノオ殿、なんだか唐揚げが食べたくなってきてしまいましたな」
「ルナもー」
「そう言われると、俺もなんだか唐揚げが食いたくなってきた」
まだ早い時間なので、今日は行列のできる唐揚げ屋さんから召喚してみた。チェーン店なのだが、これがまた主婦が並んで買う物なんだよね。
ついつい手が伸びてしまい、お替りを四回も召喚してしまった。一番食うのがサリーなんだがな。
「いやあ、新唐揚げが待ち遠しいですね」
「それだけ食ってまだ言うか」
ブレない奴とは、まさにこいつの事だ。貴族にして騎士とはとても思えないが、日々鍛錬を重ねていればこうなってしまうものか。
元々代々騎士の家系だから女性でも、少しがっちりした人が多いらしい。身内にデブはいないそうだ。
背が高くて太らずに容姿端麗、しかも身体能力抜群の一族となるとバレリーナに向きそうな気もするが、かなり肩幅が広めなのでやっぱりバレリーナには向かないかな。
でも今度余興に踊らせてみようか。騎士団としても、王宮のイベントで披露できる芸の一つも欲しい。
うちは中心人物に粗野な奴が多いので、その辺は紅一点に頑張っていただきたい。貴族の子供達の間でもバレーが流行るかもしれない。
第三王妃の舞踏会や茶会などでポールダンスをやらせるのもなんだしな。
金属製のトゥシューズを常に履いているような女だ。踊り自体はすぐにマスターしそうな気がするが、相方の男性バレリーナには不足しそうだ。
騎士団長のバリスタかアレン、あのあたりか。案外と細身のグレンの方が似合うかもしれないが、白髪頭で顔の半分を隠した陰気な男だからな。客がドン引きするかもしれない。
それに愛用の金属製トゥシューズは敵に蹴りを放った時のためにある気がするし。
「ふふ、みんな唐揚げが好きなのね」
「おお、アルカンタラ王妃様。実家の鳥さんを拝見しましたが、大変すばらしい連中ですな。あれでポコポコと卵を産んでくれる奴だったらよかったのですが。何か卵を産ませるヒントみたいな物はありませんかね」
彼女も考えるようだったが、しばし熟考してから口を開いた。
「そうねえ、言い伝えというか、口伝ではこう言われるわね。
『笹の花が咲く頃、デリバードの恋の季節がやってくる』と。
本当かどうかわからないのだけれど、我が家にあった文献にはその記録がつけられていて、確かに何年かに一度咲く笹の花が咲いた年は、デリバードも子が生まれたと言われているのだけれど。そ
れを手がかりに研究を進めたけれど、結果は芳しくなかったとも記されているわ」
笹の花か! そいつはまた難儀代物だな。だって、あれは地球でも六十年から百二十年に一度、一斉に咲くみたいな珍しい花じゃないの。
見られるのは一生に一度あるかないかという、ハレー彗星みたいな奴なのだ。いいヒントはもらったけどさ、あまり役には立ちそうにないな。
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