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第二章 探索者フェンリル
2-20 俺の分
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そして、なんというか、ズズズズズという感じに地面からせりあがってきているそいつ。まるで魔法陣から現れようとしている魔王であるかの如くだ。
とんでもねえ化け物が湧こうとしているのだ。このダンジョンの床の厚さよりもでかそうだな。出現するのに、えらく時間がかかっているし。
まるで「ただいま3Dプリント中です。しばらくお待ちください」みたいな感じだねえ。
「なんだ、こりゃあ」
「あわわわわわ」
ミルの奴も顔色を失ってしまっている。他の奴らも同様だ。
「なんだ、どうした」
「馬鹿馬鹿馬鹿、これは間違いなく伝説に聞くメガロホーン。災害級の魔物よ。どうしよう。早く宿に知らせないと。こいつはあたし達の手には負えないわ。へたすると強引に他の階層まで向かって、ダンジョン中に大被害をもたらすのよ」
ほう? やっと俺に相応しい相手がやってきたようだな。そして俺は待った。奴が蝉の幼虫のように表に這い出し終えるその瞬間を。
俺の分の肉を確保しなくちゃあな。みるみるうちに姿を現してきた、その猛牛を見てミル達の顔色もさらに白くなった。
「ほう、これはまた見事なもんだ。食い出がありそうだな」
「この期に及んでそう来るか、狼よ」
「うちは食い扶持が大変でな。美味い肉は持って帰らねえと」
そして直後に、ついにそのタイミングがやってきた。
「貰ったー!」
そして、まだ足の先が出現しきらずに身動きできない格好の野郎の額のど真ん中にぶちこんだのだ。
ロキ十本槍を次々と。そして綺麗に十本とも脳天を突き抜けて蒼穹を鮮血と脳味噌の欠片で彩ってみせた。
返り血が天井まで飛んだんじゃねえかというほどの勢いで、ホースから吹いたように飛び出している。
しかも直後に奴が元の地面の中に消えちまわないように、草薙で飛び込んで足を切った。全長五十メートルほどあった、そいつは見事に俺の収納に収まった。
「あんた……」
「ちょっと、お前。いくらなんでも常識を知らなさ過ぎるんじゃないのか。あれは伝説級の怪物なんだけど」
「肉はわけてちょうだいね」
ぶれないシンディ。いいけど、お前のとっかえっこだぜ。
だが、一人冷静なアマンダが言った。
「あんな倒し方をしてダンジョンが納得するのかしら。ちょっと心配だわね。今までのあんたのやってきた事を考えると」
「おや、そいつは奇遇だね。俺もそう思ってたところさ」
「あんた達……」
そして、さらに先ほどとは比べ物にならないような大きな揺れが来て女の子たちは経っていられなくなったようだ。
「きゃっ」
「これは」
「複数の」
「出現ね。お肉がいっぱいよ」
そう言い切ったシンディがこちらを睨んだ。
「わかってるって」
『来ます、スサノオ様。これはさっきよりもでかいサイズの奴が四体も!』
『そうか。じゃあ変身するしかないな。お前は退避していろ。いやあ楽しみだなあ』
もっぱら女の子たちの反応がな。
あれよあれよという間に姿を露わにしていく『真四天王』の御面々。怒りの形相に鼻息荒く、毛並みも和牛というよりはヤクとかバッファローのように厳つい物になってしまっている。
あの角は見事だな。王都冒険者ギルドの玄関口に飾っておいたなら映えるだろうか。あるいは唐揚げ騎士団の新団舎前でもいいか。
女の子達から文句が出るといけないので一応聞いておいた。
「なあ、一応、『人数分』いるみたいだけど、どうする~」
「アホですか、あれの相手を人間ができるわけないでしょ。さっさと獲ってきなさいよ、この駄犬!」
「あっはっはっは。じゃあ、お言葉に甘えて。フェーンリール!」
俺はいつもの変身ポーズを取り、二本足で右前足を天に突き上げて変身した。おどろおどろしく変身していく俺を見て、彼女達も口をあんぐりと開けている。
何かこう、いつもよりも力が漲るな。ここがダンジョンのせいなのか、相手が今までにない強敵だから心が高ぶっているからなのか。あるいは、あの肉の味に舌と胃袋が高揚するものなのか。
おれは新記録に挑戦し、見事に天井すれすれの百メートルサイズへと巨大化した。
「おっと失敗、これは動きづらいな。ジャンプとかできねえわ。それなら」
俺は腰だめになって、奴らを待ち受けた。
「ちょっとちょっとちょっとー、あんた達みたいな怪獣が暴れるにはここは狭すぎるわよー!」
「退避ー、全員退避ー」
大急ぎで、今日は連れてきていたグリーに跨る四人。情勢が悪ければ、このまま脱出をと考えているのかもしれない。
「おーい、宿で待っているから早くお肉持ってきてよー」
シンディの欲望一直線な叫びを耳にして、ずっこける俺や魔物達。いい根性してやがるなあ。まあ信頼には答えようか。
とんでもねえ化け物が湧こうとしているのだ。このダンジョンの床の厚さよりもでかそうだな。出現するのに、えらく時間がかかっているし。
まるで「ただいま3Dプリント中です。しばらくお待ちください」みたいな感じだねえ。
「なんだ、こりゃあ」
「あわわわわわ」
ミルの奴も顔色を失ってしまっている。他の奴らも同様だ。
「なんだ、どうした」
「馬鹿馬鹿馬鹿、これは間違いなく伝説に聞くメガロホーン。災害級の魔物よ。どうしよう。早く宿に知らせないと。こいつはあたし達の手には負えないわ。へたすると強引に他の階層まで向かって、ダンジョン中に大被害をもたらすのよ」
ほう? やっと俺に相応しい相手がやってきたようだな。そして俺は待った。奴が蝉の幼虫のように表に這い出し終えるその瞬間を。
俺の分の肉を確保しなくちゃあな。みるみるうちに姿を現してきた、その猛牛を見てミル達の顔色もさらに白くなった。
「ほう、これはまた見事なもんだ。食い出がありそうだな」
「この期に及んでそう来るか、狼よ」
「うちは食い扶持が大変でな。美味い肉は持って帰らねえと」
そして直後に、ついにそのタイミングがやってきた。
「貰ったー!」
そして、まだ足の先が出現しきらずに身動きできない格好の野郎の額のど真ん中にぶちこんだのだ。
ロキ十本槍を次々と。そして綺麗に十本とも脳天を突き抜けて蒼穹を鮮血と脳味噌の欠片で彩ってみせた。
返り血が天井まで飛んだんじゃねえかというほどの勢いで、ホースから吹いたように飛び出している。
しかも直後に奴が元の地面の中に消えちまわないように、草薙で飛び込んで足を切った。全長五十メートルほどあった、そいつは見事に俺の収納に収まった。
「あんた……」
「ちょっと、お前。いくらなんでも常識を知らなさ過ぎるんじゃないのか。あれは伝説級の怪物なんだけど」
「肉はわけてちょうだいね」
ぶれないシンディ。いいけど、お前のとっかえっこだぜ。
だが、一人冷静なアマンダが言った。
「あんな倒し方をしてダンジョンが納得するのかしら。ちょっと心配だわね。今までのあんたのやってきた事を考えると」
「おや、そいつは奇遇だね。俺もそう思ってたところさ」
「あんた達……」
そして、さらに先ほどとは比べ物にならないような大きな揺れが来て女の子たちは経っていられなくなったようだ。
「きゃっ」
「これは」
「複数の」
「出現ね。お肉がいっぱいよ」
そう言い切ったシンディがこちらを睨んだ。
「わかってるって」
『来ます、スサノオ様。これはさっきよりもでかいサイズの奴が四体も!』
『そうか。じゃあ変身するしかないな。お前は退避していろ。いやあ楽しみだなあ』
もっぱら女の子たちの反応がな。
あれよあれよという間に姿を露わにしていく『真四天王』の御面々。怒りの形相に鼻息荒く、毛並みも和牛というよりはヤクとかバッファローのように厳つい物になってしまっている。
あの角は見事だな。王都冒険者ギルドの玄関口に飾っておいたなら映えるだろうか。あるいは唐揚げ騎士団の新団舎前でもいいか。
女の子達から文句が出るといけないので一応聞いておいた。
「なあ、一応、『人数分』いるみたいだけど、どうする~」
「アホですか、あれの相手を人間ができるわけないでしょ。さっさと獲ってきなさいよ、この駄犬!」
「あっはっはっは。じゃあ、お言葉に甘えて。フェーンリール!」
俺はいつもの変身ポーズを取り、二本足で右前足を天に突き上げて変身した。おどろおどろしく変身していく俺を見て、彼女達も口をあんぐりと開けている。
何かこう、いつもよりも力が漲るな。ここがダンジョンのせいなのか、相手が今までにない強敵だから心が高ぶっているからなのか。あるいは、あの肉の味に舌と胃袋が高揚するものなのか。
おれは新記録に挑戦し、見事に天井すれすれの百メートルサイズへと巨大化した。
「おっと失敗、これは動きづらいな。ジャンプとかできねえわ。それなら」
俺は腰だめになって、奴らを待ち受けた。
「ちょっとちょっとちょっとー、あんた達みたいな怪獣が暴れるにはここは狭すぎるわよー!」
「退避ー、全員退避ー」
大急ぎで、今日は連れてきていたグリーに跨る四人。情勢が悪ければ、このまま脱出をと考えているのかもしれない。
「おーい、宿で待っているから早くお肉持ってきてよー」
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