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第二章 探索者フェンリル

2-13 今度は鶏肉です

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「ええい、馬鹿なんじゃないの、あんたは~」
「そうそう、なんであの大群を一人で撃退できるんだ。イカレてやがるな。しかも殴ってやっつけてるし」

「あたしの出番がなかったー」
 一人だけピントがずれているのは当然シンディだ。

「お前、収納を持っているのね」
 冷静に観察していたのは、黒髪の魔法剣士アマンダだ。この子が一番年下なのに一番理知的な感じがする。

「ああ、今日はグリーどもも来ていないからちょうどいいだろ。まあ、さすがにあいつらだって持ち切れやしないわけなのだが」

「まあそうなんだけど」
 大量に獲物をゲットしたにも関わらず御機嫌斜めのミル。俺は忍び寄って、ちょいっと顔を舐めてやった。

「ひゃっ、いきなり顔を舐めないでよ。あんまり犬に舐められるのは好きじゃないし」

 まあ、そんなお子様のような事を。世の中にはバター犬なるものもおりましてですね。まあ、俺にそういう趣味はないわけだが。

「今日の予定は終わっちまったな。どうするんだ?」

「じゃあ、明日の予定だった魔物を狩ろうか。鳥よ。今度は小さい奴だから安心して。その代わり数は獲るわよ」

「ウサギも数は獲ったが」
「ええい、普通は獲れないの。もう勝手に魔物を挑発したりしないでよ」

「へーい」
 鳥かあ。それこそ唐揚げにピッタリな材料なんじゃないのかな。

「なんて奴だっけ」
「バードザウルス」

 思わず沈黙した。それって、まさか。俺の脳裏に足に備えた鍵爪で、群れを成して獲物を狩る蜥蜴っぽい感じの奴が脳裏に浮かんだ。

「それって鳥なんだよな」
「ええ、『一応』そうよ」

「肉は美味いんだよな」
「もちろん」
 想像もつかない。どんな奴だ。小さいのか?

『あ、発見しました。というか、またしても大量に湧きまくって、こちらへ向かって押し寄せてきますが』

 カーン、第二ラウンド開始ってか。俺達の会話を聞いてリクエストに応えてるんじゃねえのか、このダンジョン。やってやろうじゃないか、受けて立つぜ。

「生意気な、今度はどうしてくれようか」

 鳥は皮が素材じゃないからな。いや皮も美味いとは思うのだが、穴とか開いても食えるしさ。さすがにビームで焼いてしまってはまずかろう。

 よし、これでいくか。俺は押し寄せてくる奴らを目視で確認した。なんじゃ、あれは。なんというか、小さなティラノザウルスみたいな奴で、なんというか全身羽毛塗れになっている近年の復元図の奴だ。

 確かに羽根のような物も生やしている。空を飛ぶようなものではないが。しかし、可愛いサイズだな。まるで鶏だ。

 だが、噛まれたら鶏に突かれたのとは違って痛そうだ。でも絶対にラプトルなんかよりマシ。

 あいつらなら群れで襲ってきてチームワークで足元切りつけてくるだろうからな。カマイタチと違って薬は塗ってくれないだろうし。

 俺はベノムに頼んで、合間に作ってもらった必殺のアイテムを放った。

『ロキのニードル』

 ベスマギルのニードルだ。ニードルといっても、縫い針なんかと違ってそれなりの大きさがある。

 こいつをロキ十本槍と同じように操るのだ。まあ細かい武器なので、たくさん放つ時は大雑把なコントロールになってしまうのだが、そこは数で勝負だ。

 それはもうボコボコと薄青く光る結晶のような、長さ三十センチ最大直径五ミリほどの最強の魔法金属の雨を降らしていった。

 次々と串刺しにされて倒れ伏していく『ティラノ』達。まるで二〇三高地のように悲惨な有様だ。まあ相手は食用の魔物なんだが。

 一旦敵を倒したニードルは一斉に回収して次の波状攻撃に入る。まるで太平洋戦争末期に、もはやボロボロになった日本の艦隊に物量作戦で雲霞の如く押し寄せる米軍の攻撃機のように『鳥』どもを倒していった。

 はっきり言って蜥蜴類なのだが。もっとはっきり言ってしまえば恐竜類と言うか。まあ肉の味は鳥とそう変わらないのじゃないかとか言われているよな。

 しばらく攻防は続いたが、押し寄せても押し寄せても唐揚げの材料が増えていくばかりだった。

「う、肉……」
 思わず口元を押さえるミル。ベルミも同様だ。

「わーい、お肉。って、また私の出番がないー」
 シンディはまたしても欲求不満なようだ。

「もうミルったら狼に当てられて、判断を誤ったわね。対ウサギ装備のままじゃないの。あれとやるなら槍の方がいいのに。まあ槍すら必要もない奴もいたけれど」

「あ、ごめん。あたし、ちょっと冷静さを欠いてたかも……」
「いいのよ、あなたは本当に立派なリーダーだわ」

 意味深な会話をしているな。やっぱり、なんか訳ありなのかねえ。ああ、俺も槍は持っているんだが、あれを使ったら鳥さんが粉々になってしまって、唐揚げ素材が残らないからなあ。
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