62 / 107
第二章 探索者フェンリル
2-11 酒池肉林
しおりを挟む
そして大きめの風呂で一っ風呂浴びて食事になった時に、誰かがふっと漏らした。
「肉だ」
そしてまた誰かがそれに呼応する。
「肉だね」
だが、肉体派というか、神官とは名ばかりである格闘家のシンディは言った。
「わーい、肉だ」
「えー、これから当分肉ばっかりなんだぜ」
そう、ここではやはり手に入る食材が魔物肉メインとなるため、当然食生活は肉がメインとなるのだ。
今もズラリっと食卓に並んでいるのは各種の肉料理ばかり。豪勢といえば豪勢なのだが、ずっとその生活はさすがに飽きるだろう。シンディの奴の感覚がちょっとおかしいのだ。
「はあ、下界が懐かしいぜ」
「えー、今日、上に来たばっかりじゃないの」
「お前はいいよな。狼なんだから肉ばっかりでも。しかも仕事で毎回来ているあたしらとは違って、物見遊山なんだからよ」
「まあまあ、お肉もおいしゅうございますよ」
俺は目の前に並べられた肉料理を盛った皿の群れに向かって、お座りのポーズで前足を合わせた。
「いただきまーす」
そして俺がガツガツと肉を食っているのを見て、三人は口元を押さえる。
「うっぷ。なんて食いっぷりだよ」
「見ているだけで胸やけがするな」
「よーし、あたしも負けてられないわ」
「シンディ、お前は本当に肉が好きだよな」
そして、なんだかんだ言って彼女達は飯をかっこむのだった。冒険者は体が基本だからな。
俺の隣では、お気に入りの鳥の餌をついばんでいるロイがいた。フィアはいつものように俺の料理をあれこれとつまみ食いしている。これが今の俺のパーティなのだ。それをじっと見ていたミルが言った。
「いいなあ、ベルバード。うちも欲しいんだけど、なかなか手に入らなくてさ。この前も凄く品薄だったし」
「ああ、品薄はもう解消したんじゃないか。ちなみに、この子は俺の眷属だ。いい声で歌うんだぜ」
「へー、食後に一曲歌ってよ」
そして肉を平らげ、ロイも十分食べたので、歌ってくれた。本日は涼やかな声のソプラノだ。彼らはいろいろな声で歌える万能歌手なのだ。さらに眷属となったせいなのか、それに磨きをかけているのだ。
「ああ、いい歌だったわ、ありがとうロイ」
「うん、いい具合に眠くなってきた」
「じゃあ、狼。明日は夜明けに起床だぜ」
「あいよ」
翌朝、ロイの清々しい目覚ましで俺は爽やかな目覚めを迎えた。
『おはよう、ロイ』
『おはようございます、スサノオ様』
そして当然のように起きないフィア。まあ俺の頭がベッドなので、そのまま載せていくだけだ。
「おっす、狼。今日は朝から討伐三昧だぜ。一緒に行くだろ」
「ああ、もちろん。できれば肉の上手い奴を狩りたいな」
むろん、唐揚げの材料として。あれは口を開けて待っている奴も多いからな。たくさん狩っていくぜ。俺は狩りの本能に体をぶるっと震わせた。
「ああ、ここはそういうのも結構いる。上の階層の方が値打ち物は多いんだがな」
「そういうのもあって、ここは肉料理が多いんだ。なあ、ミル。次回は河岸変えて上まで遠征に行かないか」
戦士のベルミがそう溢した。こいつが体格的に一番肉に執着しそうな印象があるのだが。
「駄目だ、一つ上は毒魔物が多いし、その上は一度に数が多く出過ぎる。その上になると手強くなってくるからな。あれこれ考えると、この五階層が一番安全に狩れて実入りもいい狩場なんだ」
「わかったよ、ミル。悪かったって。そうむきになるな。ちょっと言ってみただけさ」
何か訳でもあるのか? やけに安全に拘るな。まあ安全第一である事には賛成だけどな。
「狩りかあ、わくわくするな」
もとより狼というものは群れで狩りをする生き物なのだ。一頭で圧倒的な力を発揮するフェンリルが特別な存在なのだ。その正体は巨人族なのだしな。
久しぶりにロキの鎧の出番が来るかもと、俺はワクワクしながら期待と共に尻尾を揺らめかせていた。
「肉だ」
そしてまた誰かがそれに呼応する。
「肉だね」
だが、肉体派というか、神官とは名ばかりである格闘家のシンディは言った。
「わーい、肉だ」
「えー、これから当分肉ばっかりなんだぜ」
そう、ここではやはり手に入る食材が魔物肉メインとなるため、当然食生活は肉がメインとなるのだ。
今もズラリっと食卓に並んでいるのは各種の肉料理ばかり。豪勢といえば豪勢なのだが、ずっとその生活はさすがに飽きるだろう。シンディの奴の感覚がちょっとおかしいのだ。
「はあ、下界が懐かしいぜ」
「えー、今日、上に来たばっかりじゃないの」
「お前はいいよな。狼なんだから肉ばっかりでも。しかも仕事で毎回来ているあたしらとは違って、物見遊山なんだからよ」
「まあまあ、お肉もおいしゅうございますよ」
俺は目の前に並べられた肉料理を盛った皿の群れに向かって、お座りのポーズで前足を合わせた。
「いただきまーす」
そして俺がガツガツと肉を食っているのを見て、三人は口元を押さえる。
「うっぷ。なんて食いっぷりだよ」
「見ているだけで胸やけがするな」
「よーし、あたしも負けてられないわ」
「シンディ、お前は本当に肉が好きだよな」
そして、なんだかんだ言って彼女達は飯をかっこむのだった。冒険者は体が基本だからな。
俺の隣では、お気に入りの鳥の餌をついばんでいるロイがいた。フィアはいつものように俺の料理をあれこれとつまみ食いしている。これが今の俺のパーティなのだ。それをじっと見ていたミルが言った。
「いいなあ、ベルバード。うちも欲しいんだけど、なかなか手に入らなくてさ。この前も凄く品薄だったし」
「ああ、品薄はもう解消したんじゃないか。ちなみに、この子は俺の眷属だ。いい声で歌うんだぜ」
「へー、食後に一曲歌ってよ」
そして肉を平らげ、ロイも十分食べたので、歌ってくれた。本日は涼やかな声のソプラノだ。彼らはいろいろな声で歌える万能歌手なのだ。さらに眷属となったせいなのか、それに磨きをかけているのだ。
「ああ、いい歌だったわ、ありがとうロイ」
「うん、いい具合に眠くなってきた」
「じゃあ、狼。明日は夜明けに起床だぜ」
「あいよ」
翌朝、ロイの清々しい目覚ましで俺は爽やかな目覚めを迎えた。
『おはよう、ロイ』
『おはようございます、スサノオ様』
そして当然のように起きないフィア。まあ俺の頭がベッドなので、そのまま載せていくだけだ。
「おっす、狼。今日は朝から討伐三昧だぜ。一緒に行くだろ」
「ああ、もちろん。できれば肉の上手い奴を狩りたいな」
むろん、唐揚げの材料として。あれは口を開けて待っている奴も多いからな。たくさん狩っていくぜ。俺は狩りの本能に体をぶるっと震わせた。
「ああ、ここはそういうのも結構いる。上の階層の方が値打ち物は多いんだがな」
「そういうのもあって、ここは肉料理が多いんだ。なあ、ミル。次回は河岸変えて上まで遠征に行かないか」
戦士のベルミがそう溢した。こいつが体格的に一番肉に執着しそうな印象があるのだが。
「駄目だ、一つ上は毒魔物が多いし、その上は一度に数が多く出過ぎる。その上になると手強くなってくるからな。あれこれ考えると、この五階層が一番安全に狩れて実入りもいい狩場なんだ」
「わかったよ、ミル。悪かったって。そうむきになるな。ちょっと言ってみただけさ」
何か訳でもあるのか? やけに安全に拘るな。まあ安全第一である事には賛成だけどな。
「狩りかあ、わくわくするな」
もとより狼というものは群れで狩りをする生き物なのだ。一頭で圧倒的な力を発揮するフェンリルが特別な存在なのだ。その正体は巨人族なのだしな。
久しぶりにロキの鎧の出番が来るかもと、俺はワクワクしながら期待と共に尻尾を揺らめかせていた。
0
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
俺とシロ
マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました)
俺とシロの異世界物語
『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』
ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。
シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる