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第二章 探索者フェンリル
2-4 旅は道連れ
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俺は御機嫌で馬車と一緒に走っていた。馬車とは名ばかりで、こいつはグリーが引いていた鳥車だった。
奴らも御機嫌で、目一杯走ってやがったので、時速三十キロくらい出ていたのではないだろうか。この分ならダンジョンの塔まで、そうはかかるまい。
『よお、随分と御機嫌だな、お前ら』
『おや、狼の旦那。グリーの間では評判ですぜ。なんていうか、凶悪なすさまじい悪魔なんですって~?』
それを聞いて、がっくりきた俺。
『すでに悪評が広まっていたか。まあ、お前らは別に気にしないよな。そんなタマじゃねえんだしよ』
『くわっはっは。そりゃあ、あんた。そんな物を気にしていたら、今日日グリーなんてやっていられませんて』
『まあそうだろうな。お前らグリーって世界一ヤバイ橋を渡っている魔物なんじゃねえ?』
それを聞いて高笑いする四匹のグリー。ちゃんと冒険者の数だけいるんだな。用途が想像できて笑えるわ。
『なあ、お前らも塔の中に入るんだよな』
『そりゃあ、もう。お嬢達だけには任せておれませんわ。ことにミルの姐御はね』
『ほお~』
それは多分、あのファイヤーボールを俺にぶっ放した奴の事だな。
愛されているねえ。俺も、あいつにはそう悪い気持ちは持たない。むしろ、ルナ姫に近い気持ちを思い起こさせる不思議な奴なのだ。
俺はそのまま楽しく鳥どもと並走していた。まあ本当に車に乗っていたって、今の自前の足で走っていたって、蠅が止まるというか、時折スピードに負けずに強引に這いあがってくる蟻を追い払うのが面倒くさいというか。そのようなレベルの行軍であったのだが。
みるみるうちに近づいてきた塔は、その迫力を一完歩ごとに俺の脳裏に伝え込んできた。
「こりゃあ、たまげた。でかいな、これ。こいつはまた半端じゃねえ」
『そりゃあ、そうさ、旦那。このあたりじゃあ、他に比べるべくもない大迷宮なんだから』
『う、うーん。こりゃあ、雲の上にまで突き抜けてはいるが、その先は成層圏にまで突き抜けているんじゃないのか⁇』
『成層圏?』
『ああいや、この世界の果て、天の果てみたいなところさ。少なくとも、神様だっていやしないようなところだ』
神様は地上に住んでいらっしゃるものでなあ。だから人間も皆、お賽銭を持って直接神の社にお祈りに行くんだぜ。
『そいつはたまげたもんだ。神の子の口から聞くと、改めて驚きだねえ』
そして、俺達はその根元についたが、そこは。まるで『世界樹の根元の街』のような様相を示していた。
『ユグドラシル』
こいつは、そう呼んでもおかしくないような代物だった。
世界樹の葉の下で。そのように表現したくなるほどの盛況、一つの国と言ってもいいような賑わいがそこにはあった。それを求めて、また人が集まる。
軽い気持ちで来ちまったのだが、とんでもないな。
「あはは、どうしたの。どう? 凄いでしょう。この塔、ユグドラシルは。かつて世界のどこかにあると言われる世界樹にちなんで名づけられたのよ」
「本当にそう呼ばれていたのか」
だが、そこにはそう呼ばれても、おかしくはないような繁栄が霊験あらたかに息づいていた。
行きかう馬車や荷馬車。遠目に見ても明らかな人の営みの群れ。そして、感じられるエネルギー。その象徴とも言える塔は、凄まじい耀きに満ちて聳え立っていた。
本来ならば、地下に向かって突き進んだだろう力が天空に向かって、細く高くと吹き上がったものなのだ。
ありえないもの。戦闘機が、あらん限りの力で垂直上昇に、その機体の持つ力の全ての能力をつぎ込んだと言わんばかりの真っ直ぐな、蒼天を貫き、雲海を貫き、星の世界へ届けよと言わんばかりの圧倒的な意思。
このダンジョンの元になった奴というのは、相当な頑固者と言えるだろう。もし何らかの意思を持ってこれを為したのだというのであれば、おそるべきという他はあるまい。
やれやれ。ここにも頑固者がいたのだな。いいだろう。挑戦してやろうではないか。
俺は、人の子をして『笑っている』というような表情を作っていたものらしい。
「あんた、何ニヤニヤしているの? 装備なんかを整えに行くわよ」
女っていうものは、いつだって現実しか見ないものなのだな。
俺は溜息を吐いて彼女達についていった。女の買い物は長いからな。まあ入用な物があるなら揃えておくに越した事はない。
そう言いながら、買い物に一番嵌っていたのが実は俺だった。
「いやあ、この土産物のネタっぷりときたら、一体なんなんだ。王子や王女どもが大喜びしそうな物ばかりじゃあないか。なんだ、このネタの宝庫は。
塔か、塔からの産出品なんだな。これはもう、あの塔は徹底的に攻めるしかないではないか。それに、こっちの珍味の数々。そして、またこの塔の産出品から作られた珍製品の数々と来た日には。絶対に眷属のために持ち帰らねば!」
それを見て呆れたようなミルが言った。
「おい、狼。いい加減にしろよ! 狼の買い物は本当に長えなあ」
「そんな事を言っても、お前。あ、こいつは是非セメダルに買っていかないとな。おお、そっちの眼帯なんかギルマスにぜひとも装備させてやりたいわ」
俺の尽きない露店探索に、女四人組は呆れかえって溜息を吐くのであった。
奴らも御機嫌で、目一杯走ってやがったので、時速三十キロくらい出ていたのではないだろうか。この分ならダンジョンの塔まで、そうはかかるまい。
『よお、随分と御機嫌だな、お前ら』
『おや、狼の旦那。グリーの間では評判ですぜ。なんていうか、凶悪なすさまじい悪魔なんですって~?』
それを聞いて、がっくりきた俺。
『すでに悪評が広まっていたか。まあ、お前らは別に気にしないよな。そんなタマじゃねえんだしよ』
『くわっはっは。そりゃあ、あんた。そんな物を気にしていたら、今日日グリーなんてやっていられませんて』
『まあそうだろうな。お前らグリーって世界一ヤバイ橋を渡っている魔物なんじゃねえ?』
それを聞いて高笑いする四匹のグリー。ちゃんと冒険者の数だけいるんだな。用途が想像できて笑えるわ。
『なあ、お前らも塔の中に入るんだよな』
『そりゃあ、もう。お嬢達だけには任せておれませんわ。ことにミルの姐御はね』
『ほお~』
それは多分、あのファイヤーボールを俺にぶっ放した奴の事だな。
愛されているねえ。俺も、あいつにはそう悪い気持ちは持たない。むしろ、ルナ姫に近い気持ちを思い起こさせる不思議な奴なのだ。
俺はそのまま楽しく鳥どもと並走していた。まあ本当に車に乗っていたって、今の自前の足で走っていたって、蠅が止まるというか、時折スピードに負けずに強引に這いあがってくる蟻を追い払うのが面倒くさいというか。そのようなレベルの行軍であったのだが。
みるみるうちに近づいてきた塔は、その迫力を一完歩ごとに俺の脳裏に伝え込んできた。
「こりゃあ、たまげた。でかいな、これ。こいつはまた半端じゃねえ」
『そりゃあ、そうさ、旦那。このあたりじゃあ、他に比べるべくもない大迷宮なんだから』
『う、うーん。こりゃあ、雲の上にまで突き抜けてはいるが、その先は成層圏にまで突き抜けているんじゃないのか⁇』
『成層圏?』
『ああいや、この世界の果て、天の果てみたいなところさ。少なくとも、神様だっていやしないようなところだ』
神様は地上に住んでいらっしゃるものでなあ。だから人間も皆、お賽銭を持って直接神の社にお祈りに行くんだぜ。
『そいつはたまげたもんだ。神の子の口から聞くと、改めて驚きだねえ』
そして、俺達はその根元についたが、そこは。まるで『世界樹の根元の街』のような様相を示していた。
『ユグドラシル』
こいつは、そう呼んでもおかしくないような代物だった。
世界樹の葉の下で。そのように表現したくなるほどの盛況、一つの国と言ってもいいような賑わいがそこにはあった。それを求めて、また人が集まる。
軽い気持ちで来ちまったのだが、とんでもないな。
「あはは、どうしたの。どう? 凄いでしょう。この塔、ユグドラシルは。かつて世界のどこかにあると言われる世界樹にちなんで名づけられたのよ」
「本当にそう呼ばれていたのか」
だが、そこにはそう呼ばれても、おかしくはないような繁栄が霊験あらたかに息づいていた。
行きかう馬車や荷馬車。遠目に見ても明らかな人の営みの群れ。そして、感じられるエネルギー。その象徴とも言える塔は、凄まじい耀きに満ちて聳え立っていた。
本来ならば、地下に向かって突き進んだだろう力が天空に向かって、細く高くと吹き上がったものなのだ。
ありえないもの。戦闘機が、あらん限りの力で垂直上昇に、その機体の持つ力の全ての能力をつぎ込んだと言わんばかりの真っ直ぐな、蒼天を貫き、雲海を貫き、星の世界へ届けよと言わんばかりの圧倒的な意思。
このダンジョンの元になった奴というのは、相当な頑固者と言えるだろう。もし何らかの意思を持ってこれを為したのだというのであれば、おそるべきという他はあるまい。
やれやれ。ここにも頑固者がいたのだな。いいだろう。挑戦してやろうではないか。
俺は、人の子をして『笑っている』というような表情を作っていたものらしい。
「あんた、何ニヤニヤしているの? 装備なんかを整えに行くわよ」
女っていうものは、いつだって現実しか見ないものなのだな。
俺は溜息を吐いて彼女達についていった。女の買い物は長いからな。まあ入用な物があるなら揃えておくに越した事はない。
そう言いながら、買い物に一番嵌っていたのが実は俺だった。
「いやあ、この土産物のネタっぷりときたら、一体なんなんだ。王子や王女どもが大喜びしそうな物ばかりじゃあないか。なんだ、このネタの宝庫は。
塔か、塔からの産出品なんだな。これはもう、あの塔は徹底的に攻めるしかないではないか。それに、こっちの珍味の数々。そして、またこの塔の産出品から作られた珍製品の数々と来た日には。絶対に眷属のために持ち帰らねば!」
それを見て呆れたようなミルが言った。
「おい、狼。いい加減にしろよ! 狼の買い物は本当に長えなあ」
「そんな事を言っても、お前。あ、こいつは是非セメダルに買っていかないとな。おお、そっちの眼帯なんかギルマスにぜひとも装備させてやりたいわ」
俺の尽きない露店探索に、女四人組は呆れかえって溜息を吐くのであった。
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