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第二章 探索者フェンリル
2-2 冒険者ギルドの捕獲者
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俺はフィアのナビで冒険者ギルドへと向かった。一応、ダンジョンに入るのに事前申請が必要なのだ。
アクエリアの国は湖が多く、この王都も巨大な湖の畔に建てられている。水害などはあまりないらしい。少し高台に建てられているしな。
アクエリアというか、アクアエリアといったところか。他にも近郊には湖が点在しており、都市からの排水も魔法で浄化されているため、湖は非常に綺麗なのだ。
排水に関しては厳しい条例もあり、罰則も非常に厳しい。立小便すら禁止である。
この巨大なクイーン・アクエリア湖は見事に青い澄んだ湖なのだが、周辺には地球のカナダにある湖のようなエメラルドグリーンの湖もあり、それらは王宮の塔から見られるのだ。王都の街並みと共に、実に素晴らしい景色だった。
塔のダンジョンは近くにあり、それ自体も素晴らしい造形だった。結構お気に入りだったのだが、馬鹿でかい建造物のようなあれは何だろうとずっと思っていた。
まさか、あれが塔型のダンジョンだったとは。その成り立ちは地底のダンジョンと同じ物だそうだが、それが地底に伸びずに天空へ登って行ったものが『塔』と呼ばれているダンジョンなのだ。
だから人口の建築物とは違い、巨大で材質も岩でできている。その重量は想像を絶するものだが、見事に塔を支え、天空に向かって伸びている。
その先は果てが見えず、まだ制覇したものはいないそうだ。へたをすると、この塔はまだ成長中なのかもしれない。
その塔から見る、この美しい王都と湖の景色を見てみたいのだ。また俺の縄張りとしてマーキングしておくのもいいな。
冒険者ギルドの中へ堂々とお邪魔したら、またギルドを出ようとした冒険者達にギョっとされた。
入り口自体は大きいので悠々と出入りできるのだが、突然に俺は持ち上げられた。え、嘘だろう。俺の体重は一トンを超えるのだが。
「あらっ、これはまた可愛いワンちゃんだ事。でも、おいたは駄目よー。飼い主さんと一緒にいらっしゃいねー」
そう言ってニコニコと笑って、軽々と片手で担いだ俺を摘まみだそうとする女がいる。サリーほどゴツイ感じはしない。
どちらかというと、痩せているとさえ言える。出ているところは出ているのだが、ややボサボサ気味の髪は後ろにざっと纏められ、厚手の眼鏡をかけているので妙におばさん臭いイメージがあるが、それはわざとそうしているのだろう。その体はエネルギッシュで、非常にパワーに満ちていた。
「あのう」
「あら、喋るワンちゃんは珍しいわね。あなた、うちのギルドで標本にならない事?」
「謹んでご遠慮させていただきます。というか、いいから放せよ。俺はここへ用があって来たんだから」
「あなた従魔のようね。飼い主抜きでうろうろしてるんじゃないわよ。飼い主を呼び出して、罰金を払わせるわよ」
うわあ、そんな厳しいルールがあったのか。俺を片手で肩に担いで、彼女は軽く俺を睨みつけた。
「いや、ちょっと塔に上りたかったんで、許可をもらいに来ただけなんだがな」
「塔に? ダンジョンへ入りたいなら、飼い主を呼んできなさいな」
「うちの主は第五王女のルナ王女だ。簡単に外出はできないさ」
「ルナ王女?」
何か少し不穏な響きに聞こえたようだ。彼女が思案している隙に、俺は彼女の拘束を解いて床へと飛び降りた。拘束と言うか、軽く持ち上げていただけなのだが。
「王女様はダンジョンには入らねえよ。というか、おいていかなきゃならないのに本人が入りたがって困るんだが。ああ、俺はこういうもんだ」
そう言って、俺は首輪を起動させてロキの紋章を見せた。
「ははあ、あんたが巷を騒がせていたフェンリルなわけね。通りで大きな狼だと思ったわ。それでダンジョンへの入門許可を寄越せと?
いいけど、問題を起こさないでよ。あんたでしょ、この前のでかい怪物。ここからでも見えたわよ。あれほど美しい湖と王宮にそぐわない存在もまたないわね」
「うお、気にしている事を立て板に水の例えのように、あっさり言いやがって。神の子も恐れぬ不届きものとは、まさにお前の事。祟ってやるう」
だが、そいつは神の子である俺を鼻で笑いやがった。
「はんっ! ちょっとでかい狼風情が怖くて冒険者ギルドのギルマスが務まるもんですか。まあいい、こっち来なさい。手続きしてあげるから」
ギルマスだと? こいつがか。俺を降ろしてから、ぱっと扮装を解いたので、その姿は一変した。髪の毛はかつらだったのか。
今までの野暮なおばさんっぽい雰囲気は鳴りを潜め、一気に若い活動的な雰囲気に早変わりした。何故そうしているのかは不明だが、おそらくは趣味なのだろう。訳がわからん。
御洒落と言うよりは野趣あふれる感じであるスタイルのショートパンツの足元からスラリっと伸びた足フェチなら目が吸い付きそうな見事な美脚、その上にはホットパンツと同じような感じに仕上げられたビキニ(アーマーではない)の上から半そでの短めの上着を羽織っているだけという軽装だ。
見事なおへそ出しルックなのだが、きっとこのままダンジョンとかへ行ってしまう奴なのに違いない。見事なまでにサリーと対称な奴だ。
長く伸ばしたポニテはかつらの下にあったためか、少し汗ばんで蒸れていたが浄化の魔法できらきらと馬の尻尾の如くに跳ねた。しかも、なんとピンク色だし。一目見てわかる。染めたのではなく、これが地毛だ。
『ピンキー』
そしてこっそりと、そいつに仇名をつけてやったのである。
アクエリアの国は湖が多く、この王都も巨大な湖の畔に建てられている。水害などはあまりないらしい。少し高台に建てられているしな。
アクエリアというか、アクアエリアといったところか。他にも近郊には湖が点在しており、都市からの排水も魔法で浄化されているため、湖は非常に綺麗なのだ。
排水に関しては厳しい条例もあり、罰則も非常に厳しい。立小便すら禁止である。
この巨大なクイーン・アクエリア湖は見事に青い澄んだ湖なのだが、周辺には地球のカナダにある湖のようなエメラルドグリーンの湖もあり、それらは王宮の塔から見られるのだ。王都の街並みと共に、実に素晴らしい景色だった。
塔のダンジョンは近くにあり、それ自体も素晴らしい造形だった。結構お気に入りだったのだが、馬鹿でかい建造物のようなあれは何だろうとずっと思っていた。
まさか、あれが塔型のダンジョンだったとは。その成り立ちは地底のダンジョンと同じ物だそうだが、それが地底に伸びずに天空へ登って行ったものが『塔』と呼ばれているダンジョンなのだ。
だから人口の建築物とは違い、巨大で材質も岩でできている。その重量は想像を絶するものだが、見事に塔を支え、天空に向かって伸びている。
その先は果てが見えず、まだ制覇したものはいないそうだ。へたをすると、この塔はまだ成長中なのかもしれない。
その塔から見る、この美しい王都と湖の景色を見てみたいのだ。また俺の縄張りとしてマーキングしておくのもいいな。
冒険者ギルドの中へ堂々とお邪魔したら、またギルドを出ようとした冒険者達にギョっとされた。
入り口自体は大きいので悠々と出入りできるのだが、突然に俺は持ち上げられた。え、嘘だろう。俺の体重は一トンを超えるのだが。
「あらっ、これはまた可愛いワンちゃんだ事。でも、おいたは駄目よー。飼い主さんと一緒にいらっしゃいねー」
そう言ってニコニコと笑って、軽々と片手で担いだ俺を摘まみだそうとする女がいる。サリーほどゴツイ感じはしない。
どちらかというと、痩せているとさえ言える。出ているところは出ているのだが、ややボサボサ気味の髪は後ろにざっと纏められ、厚手の眼鏡をかけているので妙におばさん臭いイメージがあるが、それはわざとそうしているのだろう。その体はエネルギッシュで、非常にパワーに満ちていた。
「あのう」
「あら、喋るワンちゃんは珍しいわね。あなた、うちのギルドで標本にならない事?」
「謹んでご遠慮させていただきます。というか、いいから放せよ。俺はここへ用があって来たんだから」
「あなた従魔のようね。飼い主抜きでうろうろしてるんじゃないわよ。飼い主を呼び出して、罰金を払わせるわよ」
うわあ、そんな厳しいルールがあったのか。俺を片手で肩に担いで、彼女は軽く俺を睨みつけた。
「いや、ちょっと塔に上りたかったんで、許可をもらいに来ただけなんだがな」
「塔に? ダンジョンへ入りたいなら、飼い主を呼んできなさいな」
「うちの主は第五王女のルナ王女だ。簡単に外出はできないさ」
「ルナ王女?」
何か少し不穏な響きに聞こえたようだ。彼女が思案している隙に、俺は彼女の拘束を解いて床へと飛び降りた。拘束と言うか、軽く持ち上げていただけなのだが。
「王女様はダンジョンには入らねえよ。というか、おいていかなきゃならないのに本人が入りたがって困るんだが。ああ、俺はこういうもんだ」
そう言って、俺は首輪を起動させてロキの紋章を見せた。
「ははあ、あんたが巷を騒がせていたフェンリルなわけね。通りで大きな狼だと思ったわ。それでダンジョンへの入門許可を寄越せと?
いいけど、問題を起こさないでよ。あんたでしょ、この前のでかい怪物。ここからでも見えたわよ。あれほど美しい湖と王宮にそぐわない存在もまたないわね」
「うお、気にしている事を立て板に水の例えのように、あっさり言いやがって。神の子も恐れぬ不届きものとは、まさにお前の事。祟ってやるう」
だが、そいつは神の子である俺を鼻で笑いやがった。
「はんっ! ちょっとでかい狼風情が怖くて冒険者ギルドのギルマスが務まるもんですか。まあいい、こっち来なさい。手続きしてあげるから」
ギルマスだと? こいつがか。俺を降ろしてから、ぱっと扮装を解いたので、その姿は一変した。髪の毛はかつらだったのか。
今までの野暮なおばさんっぽい雰囲気は鳴りを潜め、一気に若い活動的な雰囲気に早変わりした。何故そうしているのかは不明だが、おそらくは趣味なのだろう。訳がわからん。
御洒落と言うよりは野趣あふれる感じであるスタイルのショートパンツの足元からスラリっと伸びた足フェチなら目が吸い付きそうな見事な美脚、その上にはホットパンツと同じような感じに仕上げられたビキニ(アーマーではない)の上から半そでの短めの上着を羽織っているだけという軽装だ。
見事なおへそ出しルックなのだが、きっとこのままダンジョンとかへ行ってしまう奴なのに違いない。見事なまでにサリーと対称な奴だ。
長く伸ばしたポニテはかつらの下にあったためか、少し汗ばんで蒸れていたが浄化の魔法できらきらと馬の尻尾の如くに跳ねた。しかも、なんとピンク色だし。一目見てわかる。染めたのではなく、これが地毛だ。
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