フェンリル転生 神の子に転生しましたが残念な事に魔法が使えません、魔道具と物理で頑張ります

緋色優希

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第一章 荒神転生

1-48 王太子の儀

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「というわけで、国王様。野外ステージの設営許可を願います。場所はそうですね。王宮テラス前の、我々が初めて対峙したスペースで。

 ああ、『全ての関係者』を集めてくださいな。ルナ王女とアルス王子の養子としての行先である国の、大使あるいはそれに相当する人物も忘れないでくださいな」

 彼は、俺のその言い草にすべてを悟ったようだった。
「心得ました。ロキの息子よ」

「すべては神(ロキ)の知ろしめすままに」
 まあ、父ロキはこんな些細な事は、いちいち知った事じゃないのだがね~。そこは息子が代理という事で!

 さあて、DIYで、ちゃっちゃとステージを作っていきますか。俺は膨大な資材をアポックスで召喚しまくった。

 こんな真似を人間がやったら、神官がいったい何千人死んでしまう事やら。そう思ってほくそ笑みつつ、俺は資材を揃えていく。

 本当はすり鉢状に作るといいのだが、穴を掘ってしまうわけにもいかないので、パイプを組んで段差を作り、王宮全面に多数の人が座れるようにしてやった。

 自衛隊の公開日なんかに特別観覧席として作るような奴だ。もはやピケ足場の世界である。そういう物を召喚したのだ。

 電動ドライバーなどの出番だ。ガッチガチに止めていくんだぜ。ちょっと見本を見せて、後は脳筋の騎士団と眷属どもにやらせる。

 狼のくせに、コードレス電動工具を持ってピケ足場を組んでいるのも何か変だよなあ。

「さてと、観客席はあれでいいとして、お次はステージステージと」
 もう面倒くさいので、本物の野外ステージを丸ごとちょうだいした。

 潰れてしまったテーマパークで、そういう物だけまだ綺麗な状態で残っているものがあるのだ。そんな物が根こそぎ無くなっているのを見つけた管理人は仰天するかもしれないのだが。

 それと引き換えに与えられた加護はどのような効果を発揮するものだろうか。さすがにうらぶれたステージ一枚の対価では、テーマパーク再開とはいかないだろうな。一応、基本的に対価の量は等価交換とさせていただいております。

 ルナ王女たちも起き上がってきて大はしゃぎだ。
「ねえ、スサノオ。何ができるのー」
「ねえねえねえ」

 第四王女も、さすが父親から『少し大きなルナ姫』と言われるだけはあるな。もう俺をお友達認定してくれているみたいだし。どうやら人間のお友達増量には成功したみたいだ。

「ふふ、いいものさー。特にルナ姫。お前さんと弟のアルス王子にとってはなー」
「ええー、何かなあ」
「知りたーい」

「ふふ。まあ見てなさいって」
 ステージは少々汚れているのだが、設置した後に、俺は召喚したスチームクリーナーとガソリン発電機をコードで繋ぎ、発電機を動かしてクリーナーを動かした。

 薄汚れていたステージも十分な美しさを取り戻した。あちこち欠けている部分はあるのだが、それがいかにもこの世界らしさを醸し出して、却っていい味を出してくれている。

 もうあらかた不要な作業なのだが、自分でやりたがって、しきりにお強請りしてくるチビ王女たち。

 あまりに小煩いので、仕方がないので一緒に持ってやらせてやる。そこまでピカピカにしたって、しょうがないのだがなあ。

「これ楽しい~」
「わあ、何か凄く綺麗になっていくよ、すごーい」

 先ほどまで母親に抱かれながら、自分達の騎士団が作業しているピケ足場現場を熱心に見学していたアルス王子も、あうあう言いながら、こちらを見ていた。どうやらやりたいらしい。

「それじゃあ、アルス殿下もお試しになりますか?」
「あうー」
 ああ、喜んでる、喜んでる。
 
 母親に両脇を持たれ、姉達がホースを持ってくれている機械のスイッチをポチっと可愛らしいお手手で自ら押す赤ん坊王子。

 その瞬間に唸る機械に大喜びで万歳して両手両足をバタバタさせている、本来なら世継ぎの王太子である赤ん坊。

 そして、姉達と一緒にホースに触れて、その異世界の機械から迸る振動に身を委ね大興奮のご様子だ。

 もう一通り作業は終了しているので機械を仕舞おうとすると、怒って手足をバタバタさせる。そしてまた持たせてやると大変にご満悦なご様子だった。

「あうあうあうあう、あうーっ」
 そういう事は使用人のメイドや下男の仕事になるはずなのだが。

 まあ『王太子たるもの』は今からそういう下々のするお仕事にも関心を持っておいた方が『将来いい王になれる』よな。

 とにかく、すっかりアルス王子の御用達となってしまったスチームクリーナーは、水を更に二回補給するくらい周回を重ね、見事なくらいピカピカになったのであった。

 ふと視線を感じてテラスを見上げると、テラスにもたれかかって楽しそうに見ていたらしい国王様が、子供達に笑顔を向けていた。

「ステージは楽しみにしているよ、神の息子よ」
「ああ、任せといくれよ、王様。一世一代のお芝居を見せてやろうと思っている」

 そして、うちの手下どもは汗を流して、電動工具の音を響かせてピケ足場を組んで野外観覧席の構築に勤しむのであった。
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