フェンリル転生 神の子に転生しましたが残念な事に魔法が使えません、魔道具と物理で頑張ります

緋色優希

文字の大きさ
上 下
48 / 107
第一章 荒神転生

1-48 王太子の儀

しおりを挟む
「というわけで、国王様。野外ステージの設営許可を願います。場所はそうですね。王宮テラス前の、我々が初めて対峙したスペースで。

 ああ、『全ての関係者』を集めてくださいな。ルナ王女とアルス王子の養子としての行先である国の、大使あるいはそれに相当する人物も忘れないでくださいな」

 彼は、俺のその言い草にすべてを悟ったようだった。
「心得ました。ロキの息子よ」

「すべては神(ロキ)の知ろしめすままに」
 まあ、父ロキはこんな些細な事は、いちいち知った事じゃないのだがね~。そこは息子が代理という事で!

 さあて、DIYで、ちゃっちゃとステージを作っていきますか。俺は膨大な資材をアポックスで召喚しまくった。

 こんな真似を人間がやったら、神官がいったい何千人死んでしまう事やら。そう思ってほくそ笑みつつ、俺は資材を揃えていく。

 本当はすり鉢状に作るといいのだが、穴を掘ってしまうわけにもいかないので、パイプを組んで段差を作り、王宮全面に多数の人が座れるようにしてやった。

 自衛隊の公開日なんかに特別観覧席として作るような奴だ。もはやピケ足場の世界である。そういう物を召喚したのだ。

 電動ドライバーなどの出番だ。ガッチガチに止めていくんだぜ。ちょっと見本を見せて、後は脳筋の騎士団と眷属どもにやらせる。

 狼のくせに、コードレス電動工具を持ってピケ足場を組んでいるのも何か変だよなあ。

「さてと、観客席はあれでいいとして、お次はステージステージと」
 もう面倒くさいので、本物の野外ステージを丸ごとちょうだいした。

 潰れてしまったテーマパークで、そういう物だけまだ綺麗な状態で残っているものがあるのだ。そんな物が根こそぎ無くなっているのを見つけた管理人は仰天するかもしれないのだが。

 それと引き換えに与えられた加護はどのような効果を発揮するものだろうか。さすがにうらぶれたステージ一枚の対価では、テーマパーク再開とはいかないだろうな。一応、基本的に対価の量は等価交換とさせていただいております。

 ルナ王女たちも起き上がってきて大はしゃぎだ。
「ねえ、スサノオ。何ができるのー」
「ねえねえねえ」

 第四王女も、さすが父親から『少し大きなルナ姫』と言われるだけはあるな。もう俺をお友達認定してくれているみたいだし。どうやら人間のお友達増量には成功したみたいだ。

「ふふ、いいものさー。特にルナ姫。お前さんと弟のアルス王子にとってはなー」
「ええー、何かなあ」
「知りたーい」

「ふふ。まあ見てなさいって」
 ステージは少々汚れているのだが、設置した後に、俺は召喚したスチームクリーナーとガソリン発電機をコードで繋ぎ、発電機を動かしてクリーナーを動かした。

 薄汚れていたステージも十分な美しさを取り戻した。あちこち欠けている部分はあるのだが、それがいかにもこの世界らしさを醸し出して、却っていい味を出してくれている。

 もうあらかた不要な作業なのだが、自分でやりたがって、しきりにお強請りしてくるチビ王女たち。

 あまりに小煩いので、仕方がないので一緒に持ってやらせてやる。そこまでピカピカにしたって、しょうがないのだがなあ。

「これ楽しい~」
「わあ、何か凄く綺麗になっていくよ、すごーい」

 先ほどまで母親に抱かれながら、自分達の騎士団が作業しているピケ足場現場を熱心に見学していたアルス王子も、あうあう言いながら、こちらを見ていた。どうやらやりたいらしい。

「それじゃあ、アルス殿下もお試しになりますか?」
「あうー」
 ああ、喜んでる、喜んでる。
 
 母親に両脇を持たれ、姉達がホースを持ってくれている機械のスイッチをポチっと可愛らしいお手手で自ら押す赤ん坊王子。

 その瞬間に唸る機械に大喜びで万歳して両手両足をバタバタさせている、本来なら世継ぎの王太子である赤ん坊。

 そして、姉達と一緒にホースに触れて、その異世界の機械から迸る振動に身を委ね大興奮のご様子だ。

 もう一通り作業は終了しているので機械を仕舞おうとすると、怒って手足をバタバタさせる。そしてまた持たせてやると大変にご満悦なご様子だった。

「あうあうあうあう、あうーっ」
 そういう事は使用人のメイドや下男の仕事になるはずなのだが。

 まあ『王太子たるもの』は今からそういう下々のするお仕事にも関心を持っておいた方が『将来いい王になれる』よな。

 とにかく、すっかりアルス王子の御用達となってしまったスチームクリーナーは、水を更に二回補給するくらい周回を重ね、見事なくらいピカピカになったのであった。

 ふと視線を感じてテラスを見上げると、テラスにもたれかかって楽しそうに見ていたらしい国王様が、子供達に笑顔を向けていた。

「ステージは楽しみにしているよ、神の息子よ」
「ああ、任せといくれよ、王様。一世一代のお芝居を見せてやろうと思っている」

 そして、うちの手下どもは汗を流して、電動工具の音を響かせてピケ足場を組んで野外観覧席の構築に勤しむのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...