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第一章 荒神転生

1-47 陰謀の時間

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「いやー、スサノオ殿。唐揚げとは奥が深いものでございますなあ」
「普通は鳥の唐揚げがポピュラーなんだけどね」

「確かに。しかし、魚の唐揚げも実に美味い物ですなあ」
 唐揚げ騎士団の副騎士団長並びに騎士団長も大絶賛の唐揚げ大会だった。

 ただの試食のはずが、いきなり本番になってしまった。まあ、唐揚げ自体はそう難しい料理ではないわけだが。会社のお祭りで唐揚げ屋台に当たったりすれば、いきなりやらされちまう訳だし。

 第一王妃との緒戦は勝ったと言えない事もない。唐揚げの勝利は、唐揚げ騎士団の勝利でもある?

 この世界は聖書のような世界ではないので『うろこの無い肴』も普通に食うのかな。地球の西洋でも食う国はいくらでもあるわけだが。

 アジアでもキリスト教国のフィリピンなんかどうなんかね。あいつら肉ばかり食いたがるからな。しかしシーフードのあのカップ麺とか喜ぶらしいし。よくわからん。確かにあのカップ麺もロングセラー商品なのだが。

 ああ、ルナ姫様は長机の上にお布団を敷かれてお昼寝に入ってしまった。上のお姉様も二つ弱歳上なだけなので付き合っているようだ。

 いくら長机が万能だと言っても、お姫様達のお昼寝用のベッドに使うのはな。せっかく、具合の良いデイキャンプ用のお昼寝テントみたいな奴を用意してあったのに。まあいいんだけれども。

「ところで、第三王妃様。世継ぎに関してはどうなっておりますので」

「はい、うちの子達はもう外へ出す事が決まっていますので、後はあの第一王女に婿を選定するばかりとなっています。遅くとも、来週の終わりには決定されてしまうでしょう。その前に、うちの子は出さなくてはなりません。どんな危害を加えられるかわかったものではありませんので」

 そう言って彼女は俯き加減に、その美しい顔に暗い影を落とした。
「そうですか。じゃあ、もう早い方がいいのかな」

「え、何がでございますか?」
「ああ、ご心配なく。すべては、この神の子にお任せあれ。という事で、俺の眷属ども、あっちの隅っこに集合。ついでにフィアもな」

「ふああ、また禄でもない事を始めようっていうのね。まあいいんだけどさ。ああ、お腹いっぱいだー」
 そう言いつつ、俺の頭の上をベッドにしようと着陸する羽虫妖精。

「それで大将、一体どうするんで」
 グレンが尋ねてきた。なんとなく、話の流れ的に自分に出番が回ってきそうな予感がしているのだろう。

 総合的な直接戦闘は長兄、知的な事案や策謀などは自分の担当、肉体一本の案件はフィジカルに優れた弟と比較的仕事の棲み分けをしているようだ。

 お使いなら総合力に優れるアレンがぴったりなのだが、俺のうっしっしな腹黒い企みならば自分にお鉢が回ってきそうだと思っているのだろう。

「ああもう、ここは先手必勝で早々とアルス王子の王太子宣言をやってしまう他はない。後は舞台のお膳立てだな。国王と宰相、その他の国の重鎮や騎士ども、そういった連中を一堂に集められる、できれば『広い場所』での集まりがやりたい。俺にはステージという物が必要だ。何か考えろ、グレン。貴様に任せる」

 それを聞いて諦めがついた感じのグレン。よく話の筋が読めなかったものか、面食らった顔のウォーレンが訊き返してきた。

「えーと、何をやりなさるおつもりなので?」
「まさかと思うが、貴様」
 アレンは嫌そうな顔をしている。こいつはマルーク兄弟の頭だけあって、察しがいい奴なのだ。

「くく、どうせなら王国史に残るくらいにど派手にいこうぜ」

「ねえねえ、スサノオ様。僕は。僕の出番は?」
 俺の頭の上で、その美しい青い羽根を繕っていたロイが訊いてきた。

「そうだな。お前には歌ってもらおうか、俺達の勝利の凱歌を」

 ベルバードはまた美しい声で歌う事でも知られている。シーフバードの他に、シンギングバードの異名を取る小鳥なのだ。だから余計に大切にされるのである。

「任せてー。歌うよー、僕歌うよー」
 そう、それはまた奴らにとっては敗北を知らせる鐘の音でもあるのだから。まさにベルバードだ。楽しくなってきたなあ。

 グレンの奴は目を瞑って考えていたが、こう言った。
「それでは、我らが一行によるお芝居を見せるという事で、野外ステージの構築をいたしましょう。国王陛下の御許可を取ってください」

「なるほどな。そいつは面白い。一世一代のお芝居にしてみせようか」
 もちろん、その主役は間違いなく俺だ。

 ストーリー的には端役に当たるのだが、もうそんな話はどうでもいいのだから。第一王妃の頭の血管が切れちまわないといいがなあ。
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