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第一章 荒神転生
1-42 あれこれとあって、結局はもふもふの時
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「やあ、初めまして。ルナの父です」
出ました、父アピール。
国王として名乗らないのね。娘を助けてくれてありがとう、か。ますます高感度が上がるね。思わずうちの脳筋チームに入れたいくらいだぜ。
「こんにちは。旅のフェンリルで名はスサノオです」
「これはまた。して貴公は何故旅を?」
「すると、国王陛下は私に父たるロキと日がな一日茶飲み話をして過ごせと? 他の兄弟姉妹もそういうのが嫌で誰一人として家に残ってはおりませんよ」
「はっはっは、そうでありましたか。神々もまた人間くさいものですな。まあ狭いところですが、中へどうぞ」
まあ、ただの言い回しなのだろうが、俺のサイズを考えると冗談に聞こえなかったりする。
「時に、うちの眷属と新騎士団長を連れてきても? あと、うちで雇っている馬とグリーがおるのですが。あとドラゴンはまだ用事がありますので、少し嵩張りますが置いておいていただけるとありがたいのですが」
「新騎士団長?」
「ええ、第三王妃様の騎士団なのか、ルナ王女の騎士団なのかよくわからんのですが。まあ王様一人で守るのにも限度があるかなと、途中で徴用いたしました。
道中もサリーが一人いるだけでしたしね。あの男は多分、絶対に裏切らないタイプだと思いますので。今支度させていますから後で紹介させますわ。あ、それとエルンストさんの亡骸を預かったままなのですが」
それを聞いて、驚いた第三王妃が身を乗り出した。
「エルンスト、エルンストは死んだのですか?」
「はあ、俺がルナ王女と会った時には、もう既にお亡くなりに」
「そうですか。可哀想な事をしました。あれは、私が幼少の頃より使えてくれていたもので、最後まで私の味方をしてくれました。ああ」
「お母様、元気を出して。ほ、ほら、スサノオ。お母様に肉球を早く!」
いや、肉球って、ルナ姫。
一生懸命に俺の前足を引っ張って母親に触らせようとするのだが、俺は彼女を抱きしめて、その時後ろから忍び寄ってきていた奴をヒラリっと躱した。
さっきからずっと隙を伺って、後ろでうろうろしていたんだよな、この方。
「あう」
狙いをはずされてよろける第二王妃ハンナ様。
「あんた、空気読みなさいよ。今はそういうシーンじゃないでしょうに」
まるで自分から誘っておいて、いざとなると何もさせない悪女のように、俺はそいつ、第二王妃ハンナ様を窘めた。
「あはは。ハンナは動物が好きだからな。エルンストと新騎士団長とやらについては、後ほどまた。今は少しばかりハンナの相手をしてやっておくれ」
そう笑って国王様は意味ありげにウインクしてくれた。この意気に仲良くなって、味方を増やしておきなさいという意味だな、ありゃあ。
腹芸も持ち合わせたタイプのイケメン脳筋なのか。まあいいや。今度は無事に母親に抱かれて可愛く手を振ってくれているルナ姫を見送ってから、おもむろに訊いてみた。
「では、ハンナさま。お腹からにいたしますか? それとも肉球?」
彼女はふるふると震えて、ワンコ座り状態の俺に飛び掛かってくると言い切った。
「もちろん全部じゃあ、思いっきり全身もふらせろー!」
ああ、こういう方でしたか。まあ、やりやすくて俺としたら相手しやすくていいのだけどね。
俺はそのまま彼女に見事にマウントされ、全面降伏の証であるお腹出しポーズでやられ放題だった。でもこの人、もふるのがとても上手だわ~。ワンコ冥利につきるね。
それからしばらくというか、かれこれ一時間ほど組み敷かれていたのだが、奴がやってきて声をかけた。
「坊、お楽しみのところ悪いのだがな。やつの鎧が仕上がった。ついでに残りの連中の分も余り物で、でっちあげておいた。しばらくここにおるのなら、あいつらも騎士団員というか、そういうものにするつもりなのじゃろう?」
いつの間にか、鎧を仕立てるために黒小人の姿に戻っているベノムがいた。
「ああ、じゃあ国王陛下のところに連れて行くとするか。ねえ、ハンナ様。そういう訳なんで、ちょっと降りてくださいな。いつまでやっているんですか」
「ふふ。この毛皮はいいものだ。へえ、あなた。伝説の龍ファフニールに坊なんて呼ばれているのか。なかなかのものね。まあ、神の息子なのだし。で、第三王妃に肩入れする気なの?」
おや、この王妃様も案外と油断がならないな。ドヴェルグの状態のベノムを見て、そうわかるものらしい。
「逆にあんたがどうなのか聞きたいもんだね。傍から見ると、あんたは特に跡目取りに執着していなそうなのだが」
「執着っていうかね。本来なら正妃に男子が生まれてしまった訳だから、アルス王子が後を継ぐのが国家としては正常なのよ。それに綾をつけた格好になるのは本当だったら非常にマズイわけで。
とはいえ第三王妃は立場が弱く、他の王妃がゴリ押しでというのはよくある事ね。どの道、第一王妃が幅を利かせていて、うちに王子がいるわけでもない間は、どう転んでも私のところには目が無いわけだし。
とは言いながら、激しく力の差がある『あれ』と積極的に喧嘩する気もないし、現状で露骨に第三王妃側につく気にもなれないわね。弱者連合を組むなんて冗談じゃないから。
正直、『うちを巻き込まないでちょうだい』って言う感じかしらね。陛下は私に間に入ってうまく収めてほしかったらしいんだけど、うちだって火の中の栗を拾いにいくのはゴメンだわ。
あの子、アルカンタラには悪いとは思っているんだけどね。それで陛下も諦めて、あの子達を隣国にやろうとしてルナ王女を派遣したわけなのだけれど。
よりによって、その道中で神の子なんて物を拾ってくるとはね。これも何かの思し召し、というか神ロキの思し召しなのか。まあ、あなたがきちんと事を収めるというのなら、私も協力してあげない事もなくてよ。ただ、わかっているんでしょうね」
この方ってば、そのように長い説明をしてくれる間にも、一時も手は緩めない。まるで、そのためにわざわざ長く話を引き延ばしているかのようだ。もう要求する見返りが何なのか丸わかりだ。
そして、そのような腹黒い取引の話を見下ろしていた奴らがいた。
「やれやれ、この王宮も思ったよりも難儀な事になっているんじゃないか」
だが、お前はここで『騎士団長』をやるんだぜ、バリスタ。唐揚げ騎士団をな。
「なあ、大将。眷属の立場として言わせてもらいたいのだがな。いつまでも主がそんな真似をしているのを見ていると、情けなくて泣けてくるんだが」
「さすが大将、攻めどころが違うな。その腹黒さ、俺は嫌いじゃないぜ」
どちらかというと、一番俺に性格が近いんじゃないかというグレンが妙な感心をしてくれていた。
「ところで、俺達にこんな格好までさせたんだ。早く騎士団の主様に紹介していただきたいもんだぜ」
ぷぷっ。スキンヘッド騎士誕生か。
バリスタの方は騎士団長という事でベノムも格好はつけてくれたのだが、こいつはまた『中世ヨーロッパ風味異世界の傾奇者』といった感じに仕上げてある。
ベノムも遊んでやがるなあ。肩のとげとげアーマーはないのだが、それを連想させるような感じのデザインで、現代日本人が見たらすぐわかる『モダンデザイン』っぽい感じのアーマーだ。
召喚したマンガ本などを参考にしてデザインをさせたイロモノで、貰い手がなかった奴だからね。
『世紀末騎士団』とでも名付けたい!
「まあ、変わったスタイルの騎士ねー。うちだったら絶対いらないかしら」
未だに俺をもふっている最中の第二王妃様にそう評されて、ズッコケる世紀末騎士団。
よし、楽しくなりそうだぜ。俺は思わず軽い遠吠えを上げたので、グリー達も笑い声を響かせてくれた。
出ました、父アピール。
国王として名乗らないのね。娘を助けてくれてありがとう、か。ますます高感度が上がるね。思わずうちの脳筋チームに入れたいくらいだぜ。
「こんにちは。旅のフェンリルで名はスサノオです」
「これはまた。して貴公は何故旅を?」
「すると、国王陛下は私に父たるロキと日がな一日茶飲み話をして過ごせと? 他の兄弟姉妹もそういうのが嫌で誰一人として家に残ってはおりませんよ」
「はっはっは、そうでありましたか。神々もまた人間くさいものですな。まあ狭いところですが、中へどうぞ」
まあ、ただの言い回しなのだろうが、俺のサイズを考えると冗談に聞こえなかったりする。
「時に、うちの眷属と新騎士団長を連れてきても? あと、うちで雇っている馬とグリーがおるのですが。あとドラゴンはまだ用事がありますので、少し嵩張りますが置いておいていただけるとありがたいのですが」
「新騎士団長?」
「ええ、第三王妃様の騎士団なのか、ルナ王女の騎士団なのかよくわからんのですが。まあ王様一人で守るのにも限度があるかなと、途中で徴用いたしました。
道中もサリーが一人いるだけでしたしね。あの男は多分、絶対に裏切らないタイプだと思いますので。今支度させていますから後で紹介させますわ。あ、それとエルンストさんの亡骸を預かったままなのですが」
それを聞いて、驚いた第三王妃が身を乗り出した。
「エルンスト、エルンストは死んだのですか?」
「はあ、俺がルナ王女と会った時には、もう既にお亡くなりに」
「そうですか。可哀想な事をしました。あれは、私が幼少の頃より使えてくれていたもので、最後まで私の味方をしてくれました。ああ」
「お母様、元気を出して。ほ、ほら、スサノオ。お母様に肉球を早く!」
いや、肉球って、ルナ姫。
一生懸命に俺の前足を引っ張って母親に触らせようとするのだが、俺は彼女を抱きしめて、その時後ろから忍び寄ってきていた奴をヒラリっと躱した。
さっきからずっと隙を伺って、後ろでうろうろしていたんだよな、この方。
「あう」
狙いをはずされてよろける第二王妃ハンナ様。
「あんた、空気読みなさいよ。今はそういうシーンじゃないでしょうに」
まるで自分から誘っておいて、いざとなると何もさせない悪女のように、俺はそいつ、第二王妃ハンナ様を窘めた。
「あはは。ハンナは動物が好きだからな。エルンストと新騎士団長とやらについては、後ほどまた。今は少しばかりハンナの相手をしてやっておくれ」
そう笑って国王様は意味ありげにウインクしてくれた。この意気に仲良くなって、味方を増やしておきなさいという意味だな、ありゃあ。
腹芸も持ち合わせたタイプのイケメン脳筋なのか。まあいいや。今度は無事に母親に抱かれて可愛く手を振ってくれているルナ姫を見送ってから、おもむろに訊いてみた。
「では、ハンナさま。お腹からにいたしますか? それとも肉球?」
彼女はふるふると震えて、ワンコ座り状態の俺に飛び掛かってくると言い切った。
「もちろん全部じゃあ、思いっきり全身もふらせろー!」
ああ、こういう方でしたか。まあ、やりやすくて俺としたら相手しやすくていいのだけどね。
俺はそのまま彼女に見事にマウントされ、全面降伏の証であるお腹出しポーズでやられ放題だった。でもこの人、もふるのがとても上手だわ~。ワンコ冥利につきるね。
それからしばらくというか、かれこれ一時間ほど組み敷かれていたのだが、奴がやってきて声をかけた。
「坊、お楽しみのところ悪いのだがな。やつの鎧が仕上がった。ついでに残りの連中の分も余り物で、でっちあげておいた。しばらくここにおるのなら、あいつらも騎士団員というか、そういうものにするつもりなのじゃろう?」
いつの間にか、鎧を仕立てるために黒小人の姿に戻っているベノムがいた。
「ああ、じゃあ国王陛下のところに連れて行くとするか。ねえ、ハンナ様。そういう訳なんで、ちょっと降りてくださいな。いつまでやっているんですか」
「ふふ。この毛皮はいいものだ。へえ、あなた。伝説の龍ファフニールに坊なんて呼ばれているのか。なかなかのものね。まあ、神の息子なのだし。で、第三王妃に肩入れする気なの?」
おや、この王妃様も案外と油断がならないな。ドヴェルグの状態のベノムを見て、そうわかるものらしい。
「逆にあんたがどうなのか聞きたいもんだね。傍から見ると、あんたは特に跡目取りに執着していなそうなのだが」
「執着っていうかね。本来なら正妃に男子が生まれてしまった訳だから、アルス王子が後を継ぐのが国家としては正常なのよ。それに綾をつけた格好になるのは本当だったら非常にマズイわけで。
とはいえ第三王妃は立場が弱く、他の王妃がゴリ押しでというのはよくある事ね。どの道、第一王妃が幅を利かせていて、うちに王子がいるわけでもない間は、どう転んでも私のところには目が無いわけだし。
とは言いながら、激しく力の差がある『あれ』と積極的に喧嘩する気もないし、現状で露骨に第三王妃側につく気にもなれないわね。弱者連合を組むなんて冗談じゃないから。
正直、『うちを巻き込まないでちょうだい』って言う感じかしらね。陛下は私に間に入ってうまく収めてほしかったらしいんだけど、うちだって火の中の栗を拾いにいくのはゴメンだわ。
あの子、アルカンタラには悪いとは思っているんだけどね。それで陛下も諦めて、あの子達を隣国にやろうとしてルナ王女を派遣したわけなのだけれど。
よりによって、その道中で神の子なんて物を拾ってくるとはね。これも何かの思し召し、というか神ロキの思し召しなのか。まあ、あなたがきちんと事を収めるというのなら、私も協力してあげない事もなくてよ。ただ、わかっているんでしょうね」
この方ってば、そのように長い説明をしてくれる間にも、一時も手は緩めない。まるで、そのためにわざわざ長く話を引き延ばしているかのようだ。もう要求する見返りが何なのか丸わかりだ。
そして、そのような腹黒い取引の話を見下ろしていた奴らがいた。
「やれやれ、この王宮も思ったよりも難儀な事になっているんじゃないか」
だが、お前はここで『騎士団長』をやるんだぜ、バリスタ。唐揚げ騎士団をな。
「なあ、大将。眷属の立場として言わせてもらいたいのだがな。いつまでも主がそんな真似をしているのを見ていると、情けなくて泣けてくるんだが」
「さすが大将、攻めどころが違うな。その腹黒さ、俺は嫌いじゃないぜ」
どちらかというと、一番俺に性格が近いんじゃないかというグレンが妙な感心をしてくれていた。
「ところで、俺達にこんな格好までさせたんだ。早く騎士団の主様に紹介していただきたいもんだぜ」
ぷぷっ。スキンヘッド騎士誕生か。
バリスタの方は騎士団長という事でベノムも格好はつけてくれたのだが、こいつはまた『中世ヨーロッパ風味異世界の傾奇者』といった感じに仕上げてある。
ベノムも遊んでやがるなあ。肩のとげとげアーマーはないのだが、それを連想させるような感じのデザインで、現代日本人が見たらすぐわかる『モダンデザイン』っぽい感じのアーマーだ。
召喚したマンガ本などを参考にしてデザインをさせたイロモノで、貰い手がなかった奴だからね。
『世紀末騎士団』とでも名付けたい!
「まあ、変わったスタイルの騎士ねー。うちだったら絶対いらないかしら」
未だに俺をもふっている最中の第二王妃様にそう評されて、ズッコケる世紀末騎士団。
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