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第一章 荒神転生
1-35 唐揚げ会議
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「ふむ、唐揚げは何度食っても美味いな」
「ふふ、騎士団長閣下よ。今日の唐揚げは、またスパイシーで特別に美味なのですよ」
馬車の中で唐揚げ騎士団が『本日の唐揚げ』について議論していた。どうでもいいのだが、このバリスタ用の鎧をなんとかでっちあげねばならん。
さすがに騎士団長たるものが、このバーバリアンっぽいスタイルでは舐められる。できれば、黒小人に作らせて仕立てたいのだが。
呼び出す方法はあるんだがなあ。ちょっと難があって少し迷っているのだ。そこへ、アレンがグリーを操り近寄ってきて話しかけてくる。
「いや、しかし旦那よう」
「なんだ、アレン」
「まさか、あの頑固者のバリスタがこちら側へ寝返るとはな」
「寝返りの大先輩であるお前らに言われるとは、奴も心外だろうなあ」
「やかましい。まあお蔭で戦力は強化できたわけだ。もう王都へは半分ほどまで来たな」
「いや、遠いよな、王都は」
「まあ辺境から行くんだ。馬車の速度に合わせてたら、さすがにな。あんただけなら俺達が昼寝している間に着いちまいそうだが」
「俺だけ先に行ったって、揉めるだけさ」
そして、俺は二足歩行しながら馬車に片手をついて窓から覗き込み、絶賛唐揚げ試食中のバリスタに訊いてみた。
「なあ、連中は次にどんな手で来ると思う?」
「ああ、最初は待ち伏せの狙撃。お次は数を頼みの物量で、切り札的なマルーク兄弟まで投入。そして次は比較的精鋭ばかりを集めて攻めたわけだが、何故か絶対に寝返らないはずの頑固者ばかりが裏切って、逆にこっちの戦力を強化されてしまっている。次は絶対に搦め手でくるだろうな」
「確かな情報か? 何か根拠があるのかい」
奴は次の唐揚げを一口で噛みしだいて飲み込むと言った。
「この作戦自体は、元々狡猾なバルモン伯爵本人が総指揮を執っている。それが本来の作戦なのだが、たぶん第一王妃、あるいはバックについているロマーノ王国あたりが小煩いから物量作戦をとっていたのだろう。そして、こうなっちまったから伯爵もようやく自分の本領に戻れるというわけだ。
ここからが本番といったところかな。何しろ、王都に近づくに従って重要な家臣の治める領地へと入っていくんだ。当然、一番勢力の大きな第一王妃の力も強い場所が多くなる。
しかも暗躍となると、今まで大人しかった第二王妃の勢力も攻めてくるかもしれん。ここから先は俺やマルーク兄弟みたいに真っ当な人種は出てこないだろうから覚悟しておきな。
あんたが額に青筋を立てて、口から咆哮どころかブレスを吹いちまうくらい卑劣な手段が待っているのじゃないか」
「そいつはまた嬉しくないな。あんたの働きに期待するとしようか」
相変わらず脳筋なメンバーばかりが増えていく。増やしているのは俺なのだが。俺ってネットゲームでパーティなんかを組んでいても、いつの間にかこういう組み合わせになってしまうんだよねえ。
そして今回の道中は何事もなく、次の街へとついた。
「やっと旅程が半分切ったなあ」
「ここはグラナスの街、辺境の街道筋と王都の中間地帯にある街で、ここで折り返す商隊も多いので、東西の双方からやってくる商隊で賑わう大きめの街なのです」
御車台にいるヘルマスからの解説を聞きながら、街へと入った。ここは従魔も多く来るとみえて、尻尾を振ってお愛敬を振りまく俺も衛兵からチラ見されるだけで済んだ。
「なあ、ここならさすがに襲撃を食らう事はないんじゃないの」
だが、バリスタはチッチッと指を振って俺の無知を笑った。
「旦那、あめえなあ。ここの太守は第一王妃に忠実な男として有名なんだぜ。先祖がロマーノ王国から来たって話だ。まあ、ロマーノ王国だって別に敵対している国なんかじゃない。だから、そこから王女がお嫁にきて、こんな風に揉める事もあるっていうだけの事さ。
あの第一王妃様がさっさと世継ぎの王子を生んでくれていたらなあ。まあ、そればかりは言ったってねえ。だから第三王妃までいるんだからな」
そういうものか。国が乱れるから、こういう争いを国民も歓迎してないかもしれないなあ。
強引に自分の子供である王女に後を継がせようとしている第一王妃と、ずっと日陰者として生きてきたのに一人だけ国王の寵愛を受け続けて、今更のように王子を産んでしまって国内外に風波を立てる第三王妃の、どちらを国民は疎んでいるのだろうか。
考えるだけで頭が痛くなりそうだったので、俺は収納から唐揚げを空中に放り出してパクっとやった。脳に栄養が行き渡らないと頭の働きが鈍る。
『ロイも唐揚げを食うか?』
『いえ、ちょっと小鳥の胃にはもたれそうだし。それに……そいつの材料は鳥ですよね』
『グリーどもは、鶏肉なんか全然気にしていないがな』
『あ、あの方達は超猛禽で骨太な地上肉食種ですから』
『まあ、でかい鳥って小さい鳥とか平気で食っちゃうよな』
地球の鷲とか鷹の類は「お前、いくらなんでもそいつは大物過ぎるだろう」という相手を平気で襲うからな。
まあ持っていけなくても、その場で食べればいいわけだが、他の大きな肉食獣が横取りに来る。それに巣に戻れば腹を空かせた雛が待っているのだし。
とりあえずは警戒を緩めないようにしていこうか。
「ふふ、騎士団長閣下よ。今日の唐揚げは、またスパイシーで特別に美味なのですよ」
馬車の中で唐揚げ騎士団が『本日の唐揚げ』について議論していた。どうでもいいのだが、このバリスタ用の鎧をなんとかでっちあげねばならん。
さすがに騎士団長たるものが、このバーバリアンっぽいスタイルでは舐められる。できれば、黒小人に作らせて仕立てたいのだが。
呼び出す方法はあるんだがなあ。ちょっと難があって少し迷っているのだ。そこへ、アレンがグリーを操り近寄ってきて話しかけてくる。
「いや、しかし旦那よう」
「なんだ、アレン」
「まさか、あの頑固者のバリスタがこちら側へ寝返るとはな」
「寝返りの大先輩であるお前らに言われるとは、奴も心外だろうなあ」
「やかましい。まあお蔭で戦力は強化できたわけだ。もう王都へは半分ほどまで来たな」
「いや、遠いよな、王都は」
「まあ辺境から行くんだ。馬車の速度に合わせてたら、さすがにな。あんただけなら俺達が昼寝している間に着いちまいそうだが」
「俺だけ先に行ったって、揉めるだけさ」
そして、俺は二足歩行しながら馬車に片手をついて窓から覗き込み、絶賛唐揚げ試食中のバリスタに訊いてみた。
「なあ、連中は次にどんな手で来ると思う?」
「ああ、最初は待ち伏せの狙撃。お次は数を頼みの物量で、切り札的なマルーク兄弟まで投入。そして次は比較的精鋭ばかりを集めて攻めたわけだが、何故か絶対に寝返らないはずの頑固者ばかりが裏切って、逆にこっちの戦力を強化されてしまっている。次は絶対に搦め手でくるだろうな」
「確かな情報か? 何か根拠があるのかい」
奴は次の唐揚げを一口で噛みしだいて飲み込むと言った。
「この作戦自体は、元々狡猾なバルモン伯爵本人が総指揮を執っている。それが本来の作戦なのだが、たぶん第一王妃、あるいはバックについているロマーノ王国あたりが小煩いから物量作戦をとっていたのだろう。そして、こうなっちまったから伯爵もようやく自分の本領に戻れるというわけだ。
ここからが本番といったところかな。何しろ、王都に近づくに従って重要な家臣の治める領地へと入っていくんだ。当然、一番勢力の大きな第一王妃の力も強い場所が多くなる。
しかも暗躍となると、今まで大人しかった第二王妃の勢力も攻めてくるかもしれん。ここから先は俺やマルーク兄弟みたいに真っ当な人種は出てこないだろうから覚悟しておきな。
あんたが額に青筋を立てて、口から咆哮どころかブレスを吹いちまうくらい卑劣な手段が待っているのじゃないか」
「そいつはまた嬉しくないな。あんたの働きに期待するとしようか」
相変わらず脳筋なメンバーばかりが増えていく。増やしているのは俺なのだが。俺ってネットゲームでパーティなんかを組んでいても、いつの間にかこういう組み合わせになってしまうんだよねえ。
そして今回の道中は何事もなく、次の街へとついた。
「やっと旅程が半分切ったなあ」
「ここはグラナスの街、辺境の街道筋と王都の中間地帯にある街で、ここで折り返す商隊も多いので、東西の双方からやってくる商隊で賑わう大きめの街なのです」
御車台にいるヘルマスからの解説を聞きながら、街へと入った。ここは従魔も多く来るとみえて、尻尾を振ってお愛敬を振りまく俺も衛兵からチラ見されるだけで済んだ。
「なあ、ここならさすがに襲撃を食らう事はないんじゃないの」
だが、バリスタはチッチッと指を振って俺の無知を笑った。
「旦那、あめえなあ。ここの太守は第一王妃に忠実な男として有名なんだぜ。先祖がロマーノ王国から来たって話だ。まあ、ロマーノ王国だって別に敵対している国なんかじゃない。だから、そこから王女がお嫁にきて、こんな風に揉める事もあるっていうだけの事さ。
あの第一王妃様がさっさと世継ぎの王子を生んでくれていたらなあ。まあ、そればかりは言ったってねえ。だから第三王妃までいるんだからな」
そういうものか。国が乱れるから、こういう争いを国民も歓迎してないかもしれないなあ。
強引に自分の子供である王女に後を継がせようとしている第一王妃と、ずっと日陰者として生きてきたのに一人だけ国王の寵愛を受け続けて、今更のように王子を産んでしまって国内外に風波を立てる第三王妃の、どちらを国民は疎んでいるのだろうか。
考えるだけで頭が痛くなりそうだったので、俺は収納から唐揚げを空中に放り出してパクっとやった。脳に栄養が行き渡らないと頭の働きが鈍る。
『ロイも唐揚げを食うか?』
『いえ、ちょっと小鳥の胃にはもたれそうだし。それに……そいつの材料は鳥ですよね』
『グリーどもは、鶏肉なんか全然気にしていないがな』
『あ、あの方達は超猛禽で骨太な地上肉食種ですから』
『まあ、でかい鳥って小さい鳥とか平気で食っちゃうよな』
地球の鷲とか鷹の類は「お前、いくらなんでもそいつは大物過ぎるだろう」という相手を平気で襲うからな。
まあ持っていけなくても、その場で食べればいいわけだが、他の大きな肉食獣が横取りに来る。それに巣に戻れば腹を空かせた雛が待っているのだし。
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