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第一章 荒神転生
1-30 忠義なる者
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俺は宿の夜番の人間に一言断って、宿を後にした。そして、軽やかに疾走し、夜の街を駆ける。ところどころ灯りは散見するが、さすがに日本の都会のようにはいかない。
だが、その暗い街路も、夜目の利く狼の視力、ましてやフェンリルの能力においては真昼も同然だ。俺は日本の知識を元に精密に焦点を合わせて行くので、視力に関しては鷹やハヤブサのような特別な鳥の神か魔物でもない限り、他者に劣る事などありえないのではないだろうか。
ナビゲーターを務める背中にしがみついている乗客の案内で、俺はその場所へ辿り着いた。ふざけやがって、盗賊団め。こんな街中に堂々と拠点を持ってやがるのか。
灯台元暗しとはよく言ったものだ。まあ、ここなら美味い物食って、綺麗なベッドでいい女も抱き放題なのだろうが。
『お前、名は?』
『ございません。よろしければ、あなた様が名付けを』
『よいのか? それは神の子の眷属になるという事に他ならぬのだが』
『構いませぬ。もとより、あなた様に救われた命。この命ある限り、お傍で眷属としてお仕えする所存でございます』
『では、お前は忠義なる者、我が魂の故郷にあるロイヤルティーという忠義を意味する言葉から取り、ロイと呼ぼう。ああ、お前って男の子と女の子と、どっちだ?』
『雄にございます』
『じゃあ、お前の名前はロイで決まりだな。では我が眷属ロイ、どこから入る』
彼、ロイには名付けと共に俺の眷属としての力が体中に満ち満ちていったようだ。一瞬の光と共に、大いなる力にその身を震わせた。
そして、彼は注意深く羽音を押さえつつ、入り口の隙間から内部を伺った。
『こちらより入れますが、連中は用心深いので、どの道すぐバレますが、いかがいたしましょう』
だが、俺は優しく鼻面を寄せてやり笑った。
「はは、俺は神の子フェンリルだぞ。隠蔽などという、こそこそしたスキルなど持ち合わせなどないな。堂々といこうではないか。何、中にいる値打ち物のベルバードに手など出しはすまい。お前は俺の背中にでも隠れておれ。では、ゆくぞ。心構えはよいかな」
『はは』
『では参ろうか』
俺は遠慮なく扉をぶち破った。ただの木の扉なので、前足で軽く一撃するだけで十分だった。けたたましい破壊音が響き渡り、扉は見事に木っ端となり果てた。
軽やかに侵入するも罠に対する用心は怠らない。だが、すぐに俺を失望させた。中にはトラップの類はなかったのだ。
結構わくわくしていたので、魔力探査などは行ってこなかったというのに。なんというか、ハリウッド映画のキッズ向け、アドベンチャー的な洞窟探索風の展開を期待していたのだが。
そして目的地の場所まで狼まっしぐらという感じで駆けたが、いきなりドアを開けて大斧を持った男が飛び出してきた。
隠密的なスキルは持ち合わせがないとみえて、部屋に入る前に『丸聞こえ』だった。俺は通りすがりに、本来ならありえない技である、狼の前足によるアッパーカットを食らわせて、そいつの頭を木の板でできた天井に丸々ぶち込んだ。いやあ、悪党をぶちのめすと胸がすくね。
そのまま駆け抜け、その部屋に入ったが見張りの男がいた。いたのだが、寝ていたので遠慮なく張り倒して、睡眠時間に延長の魔法をかけておいた。
さらに騒ぎを聞いて、手に手に得物を持った男達がやってきたが、そこにいるはずのない狼がいるのを見て一様に驚いた。
「なんだ、この狼は。どこから入ってきたんだ」
「また誰かが拾ってきたんじゃないだろうな。毎回毎回、誰かが猫拾ってきやがって。猫は駄目だって言ったから拗ねちまった動物好きなアンソルあたりが、わざわざ探して拾ってきたのか⁉」
「いや、お前ら。馬鹿言っているんじゃねえ。こんな大きな狼が街中で拾われてたまるか。入り込んだ何かの魔物だ。畜生、早く片付けろ。こんな夜中に大きな音を立てると住人に通報されて、街の衛兵が来ちまうぞ」
うーん、お前ら。盗賊団が猫を拾いまくりって。なんだか、憎めなくなってきたな。とはいえ見逃すわけにもいかんのだが。
「それで、お前らのボスって誰?」
「うお、この狼め、喋ったぞ。まさか、魔獣!?」
「怯むな、やっちまえ。ただし、静かにな」
そうか。じゃあ、派手に行くか。
『ロイ』
『はい、フェンリル様』
『俺の名はスサノオだ。今から凄い音を立てるから、音を聞こえなくするようにできるか?』
『私たちは音に関わる魔物でございますので。おい、みんな。今から神の子フェンリル様が大きな音を鳴らすから注意。各自でサイレントを張れ』
『ラジャー』
『ようそろ』
『助けを呼んできてくれたんだね~』
『『『準備オッケー』』』
『お願いします、スサノオ様』
『よっしゃあ、行くでえ!』
そして、俺はそいつを使用した。
【ウウーウーっ、ウウウウウウーっ、ウウーウー】
なんていうのかなあ。空襲警報というか、災害警報というか、消防署のあれというか、緊急自動車のサイレンというか。まあ、ああいう奴よ。
最近じゃ『ミサイル警報』なんかがトレンドなのかな。サイレンの機械と、超大型のバッテリーとを召喚してみました。いやあ、部屋の中だから響くねえ。狼の俺にはブーメランになる攻撃だったか。
「うわわわわ、なんだこれは~」
「やめさせろー、真夜中になんて音を立てやがる。聞きつけて衛兵が来るぞ」
「そ、そいつを破壊しろ」
だが、あっさりと俺の前足の下敷きになった盗賊ども。続けて飛び込んでくる盗賊どもも、前足で叩いて落とし、ガムテープで縛り上げていく。
こいつって意外と強度があって自力でほどけないんだよな。そして、次々と部屋を襲撃して、部屋にいた奴らを前足とガムテのコンボで捕縛していった。
サイレンは衛兵が来るまで鳴りっぱなしだな。俺は御機嫌に尻尾を振りながら、耳はペタンと降ろして、伏せの姿勢で衛兵がやってくるのを待っていた。
だが、その暗い街路も、夜目の利く狼の視力、ましてやフェンリルの能力においては真昼も同然だ。俺は日本の知識を元に精密に焦点を合わせて行くので、視力に関しては鷹やハヤブサのような特別な鳥の神か魔物でもない限り、他者に劣る事などありえないのではないだろうか。
ナビゲーターを務める背中にしがみついている乗客の案内で、俺はその場所へ辿り着いた。ふざけやがって、盗賊団め。こんな街中に堂々と拠点を持ってやがるのか。
灯台元暗しとはよく言ったものだ。まあ、ここなら美味い物食って、綺麗なベッドでいい女も抱き放題なのだろうが。
『お前、名は?』
『ございません。よろしければ、あなた様が名付けを』
『よいのか? それは神の子の眷属になるという事に他ならぬのだが』
『構いませぬ。もとより、あなた様に救われた命。この命ある限り、お傍で眷属としてお仕えする所存でございます』
『では、お前は忠義なる者、我が魂の故郷にあるロイヤルティーという忠義を意味する言葉から取り、ロイと呼ぼう。ああ、お前って男の子と女の子と、どっちだ?』
『雄にございます』
『じゃあ、お前の名前はロイで決まりだな。では我が眷属ロイ、どこから入る』
彼、ロイには名付けと共に俺の眷属としての力が体中に満ち満ちていったようだ。一瞬の光と共に、大いなる力にその身を震わせた。
そして、彼は注意深く羽音を押さえつつ、入り口の隙間から内部を伺った。
『こちらより入れますが、連中は用心深いので、どの道すぐバレますが、いかがいたしましょう』
だが、俺は優しく鼻面を寄せてやり笑った。
「はは、俺は神の子フェンリルだぞ。隠蔽などという、こそこそしたスキルなど持ち合わせなどないな。堂々といこうではないか。何、中にいる値打ち物のベルバードに手など出しはすまい。お前は俺の背中にでも隠れておれ。では、ゆくぞ。心構えはよいかな」
『はは』
『では参ろうか』
俺は遠慮なく扉をぶち破った。ただの木の扉なので、前足で軽く一撃するだけで十分だった。けたたましい破壊音が響き渡り、扉は見事に木っ端となり果てた。
軽やかに侵入するも罠に対する用心は怠らない。だが、すぐに俺を失望させた。中にはトラップの類はなかったのだ。
結構わくわくしていたので、魔力探査などは行ってこなかったというのに。なんというか、ハリウッド映画のキッズ向け、アドベンチャー的な洞窟探索風の展開を期待していたのだが。
そして目的地の場所まで狼まっしぐらという感じで駆けたが、いきなりドアを開けて大斧を持った男が飛び出してきた。
隠密的なスキルは持ち合わせがないとみえて、部屋に入る前に『丸聞こえ』だった。俺は通りすがりに、本来ならありえない技である、狼の前足によるアッパーカットを食らわせて、そいつの頭を木の板でできた天井に丸々ぶち込んだ。いやあ、悪党をぶちのめすと胸がすくね。
そのまま駆け抜け、その部屋に入ったが見張りの男がいた。いたのだが、寝ていたので遠慮なく張り倒して、睡眠時間に延長の魔法をかけておいた。
さらに騒ぎを聞いて、手に手に得物を持った男達がやってきたが、そこにいるはずのない狼がいるのを見て一様に驚いた。
「なんだ、この狼は。どこから入ってきたんだ」
「また誰かが拾ってきたんじゃないだろうな。毎回毎回、誰かが猫拾ってきやがって。猫は駄目だって言ったから拗ねちまった動物好きなアンソルあたりが、わざわざ探して拾ってきたのか⁉」
「いや、お前ら。馬鹿言っているんじゃねえ。こんな大きな狼が街中で拾われてたまるか。入り込んだ何かの魔物だ。畜生、早く片付けろ。こんな夜中に大きな音を立てると住人に通報されて、街の衛兵が来ちまうぞ」
うーん、お前ら。盗賊団が猫を拾いまくりって。なんだか、憎めなくなってきたな。とはいえ見逃すわけにもいかんのだが。
「それで、お前らのボスって誰?」
「うお、この狼め、喋ったぞ。まさか、魔獣!?」
「怯むな、やっちまえ。ただし、静かにな」
そうか。じゃあ、派手に行くか。
『ロイ』
『はい、フェンリル様』
『俺の名はスサノオだ。今から凄い音を立てるから、音を聞こえなくするようにできるか?』
『私たちは音に関わる魔物でございますので。おい、みんな。今から神の子フェンリル様が大きな音を鳴らすから注意。各自でサイレントを張れ』
『ラジャー』
『ようそろ』
『助けを呼んできてくれたんだね~』
『『『準備オッケー』』』
『お願いします、スサノオ様』
『よっしゃあ、行くでえ!』
そして、俺はそいつを使用した。
【ウウーウーっ、ウウウウウウーっ、ウウーウー】
なんていうのかなあ。空襲警報というか、災害警報というか、消防署のあれというか、緊急自動車のサイレンというか。まあ、ああいう奴よ。
最近じゃ『ミサイル警報』なんかがトレンドなのかな。サイレンの機械と、超大型のバッテリーとを召喚してみました。いやあ、部屋の中だから響くねえ。狼の俺にはブーメランになる攻撃だったか。
「うわわわわ、なんだこれは~」
「やめさせろー、真夜中になんて音を立てやがる。聞きつけて衛兵が来るぞ」
「そ、そいつを破壊しろ」
だが、あっさりと俺の前足の下敷きになった盗賊ども。続けて飛び込んでくる盗賊どもも、前足で叩いて落とし、ガムテープで縛り上げていく。
こいつって意外と強度があって自力でほどけないんだよな。そして、次々と部屋を襲撃して、部屋にいた奴らを前足とガムテのコンボで捕縛していった。
サイレンは衛兵が来るまで鳴りっぱなしだな。俺は御機嫌に尻尾を振りながら、耳はペタンと降ろして、伏せの姿勢で衛兵がやってくるのを待っていた。
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