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大人は懲りない。
直視したくない問題があっても、そこをするりと抜けてくるだけの狡猾さはある。

子供のもつ狡さは、ズルい大人と合流すると都合の良い事があると学習する。

「きゃあーーーーー水ぅぅ!大きい水ーーっ」
「違う!ルチア、これは海だ!ちょっと偽物だけど、これが海だ!!」
『ちょっと偽物』とは?そこに引っかからないでもなかったがルチアは目の前の光景に大感激していた。
そして、またやらかしている気がしなくもない。ちらっとよぎった思いは触れない事にして・・・




シャキッと体調が回復してすぐ、お互いの予定を確認してルチアは念願のサリーのドールハウスを見に出かけた。

「いらっしゃい、ルチ」
今日もかわいいサリーがわたしを出迎えてくる。青色のワンピースがとても似合っている。

「いらっしゃいませ!」
サリーの妹のエリーちゃんもわたしを出迎えてくれた?可愛い♪

なんだか、胸を張って得意げに出迎えてくれた後は、すぐに子守りの使用人さんと何処かに行ってしまった。

「ごめんね、ルチ。あの子ねお客様を出迎えて『いらっしゃいませ』って声をかけるのが、今一番のお気に入りなものだから。この後のお勉強のはかどり方が全く違うぐらい、ご機嫌になるみたいでね・・・」

「ええっ?!あんなに小さいのにもう勉強始めてるの?あれ、エリーちゃんて『覚醒の儀』はまだしていないくらい小さかったよね?」
「ええ。あの子はまだ5才だけど、両親の家ではそれが普通だったみたいでね。一応、私も5才から教育をうけていたのよ。うふふ」
「それは凄いね・・・とても字が綺麗なわけだよ。あ、お手紙ありがとう!!とっても嬉しかったの。本当に嬉しくってね、次の日から元気になったぐらい感激したの!ブーケも可愛くって勿体ないから、師匠に相談して保存の魔法をかけてもらって、お部屋に飾ってるよ!!あ、後これはお見舞いのお礼なの」
「そんなに喜んでもらえたなんて!私の方こそありがとう。このブーケ可愛いわ。私もお部屋に飾るわ!」
商会の人で保存の魔法を使える人がいるらしい。

そんなやり取りをしながら案内されて、サリーの部屋についた。
ここではサリーも私も、ラグに座って話したりしない。ちゃんと椅子に座るのだけど、以前に来た時とは明らかに違う圧倒的な存在感に驚いた。

「えーとドールハウスって、こんなに・・・大きい? あたしでもすっぽり入るわ・・・」
「そうなのよぉ~組み立てる前はここまでとは思わなかったわ。いとこが小さいときに遊んだって聞いて、もっと慎ましいものだと思ってたのよねぇ。やっぱり貴族の持ち物って凄いんだわって思ったのぉ。」

「ん?サリーのいとこって貴族?さ、ま、なの?」
「そうなのよね。これをくれた方は、時々貴族だって忘れちゃうぐらい気さくなお姉さんなんだけどねぇ。」

このドールハウスは、サリーのお母さんもそのまたお母さんも遊んだ由緒ある物だって。それが、破壊しかねない男の子しかいないお家に置いておきたくないと、いとこさんから相談されたらしい。それでサリーのお母さんが引き取る事になったんだって!そしてサリーのお母さんの実家は子爵家っていうんだって。

サリーがハウスの屋根に取り付けられた魔石に魔力を流すと、ゆっくりと建物が開いて、中のシャンデリアや他の明かりに光が灯った。小物たちもよく手入れをされていて光を受けてキラキラと輝いていた。

「おおおーっキラキラだぁ。す、すごいねぇ・・・あっ、音も沢山きこえて、おおっ厨房でお鍋の蓋がぱかぱかしてる!!あっ、猫ちゃん・・あくびしてるよ!可愛いねぇ!」

各場所に配置された小物には、様々な仕掛けが程これされているらしく見ていて飽きない。

「後は、お待たせのこれよー」
サリーが、人形をホールに乗せると、正装した人形がダンスを踊りだした。くるくる回るだけの単調な動きだけど、これが『舞踏会』なのかもしれないとルチアは感激した。僅かながら、音楽も流れているし誰かが本当にここで暮らしているような気持ちになった。

「凄いねこれ。夢のようだね~。お姫様の暮らしってこんな感じなのかな~はわぁ~」
「貴族の家って感じね。こんなに楽しいのに、エリーはこの動いてたり、音が出るのを怖がってしまって、連れてくると泣いちゃうのよね~」
「そうなんだ~。まだ小さいからかなぁ?とても楽しいのに・・・あれっ窓の風景が変わってきたよ」

「そうなのよ。このハウスはその為に大きな窓が取り付けてあるみたい。時間で朝から夜に変化するらしいわ」

普段はめったに長時間開けてないので、変化を見るのは久しぶりらしい。

「そういえば、背景も何種類かあるはずよ」
サリーがそう言って、屋根に付いてる風見鶏風の飾りをクルリと回した途端、窓から見える景色が森から変化した。
ルチアは見た事がなかった。

「わぁ~これは本で見た、お姫様のお城の畔の湖っなのかなっ?大きいもんね。川は細長いんだよね?」
風景が変わり、経過時間も最初に戻ったようで、朝日が差し込んで明るさが増した。

「んんーんー?あ、遠くに帆船が見えるから、海ね。」
覗き込んでいたサリーが指をさした場所に、船が浮かんでいた。

「海??でもこの船って、ちっちゃいよ?」
「遠くにいるように見せかけるために小さく描かれてるんだわ。岸に近づけば、とっても大きな船に見えるでしょうねぇ。」
そういう物なんだと、聞いていたがルチアには別の疑問がある。

「海って湖と違うの?」

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