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「じゃあムゥちゃん、また明日もよろしくおねがしいまーす」そう言ってルチアは帰っていった。

ルチアしゃまに、お願いされたにゃ♪ふんふん♪
ルチアと一緒にお使いをした、ムゥはとてもご機嫌だった。
しっぽをゆらゆらと楽し気に揺らして・・・

「ふぎゃぁ!!!」ミシェリーに殺気を当てられて、ボワッとなった。
「にゃぎゃあああ!へ、陛下ぁ~なっなっなっ、何を・・・・」もうブルブルである。
ボワッとなったしっぽを抱きしめて泣いた!

迷宮での事。ルチア達を初めて見たからと気にかけていた、先輩見習い君達が数人、親切で声をかけようとしていたのを、ムゥが察知して邪魔をしつつ地上に戻った。ルチアは何も気が付いていなかったが。

怪我こそさせていないが、巧妙にそれぞれを誘導して戻ってきた。その事で師匠はお怒りである。このままでは、ルチアの評判に関わるだけでなく、友人が知人が全くできなくなってしまう。
かつて孤独だった元女王様は、ルチアに沢山の友人に囲まれて欲しいと思っている。
親友のお嬢さんはとてもいい子だけど、そういう掛け替えのない子があと数人くらい居てもいいと考えていた。

しこたま怒られて二度としないように、反省してなさいと店の隅で一晩、正座をさせられていた。

ムゥの葛藤は続く・・・「あ、ぁんな無用なオスを姫に近づけたくないにゃ・・・」ずびずびと泣きながら葛藤した。
反省は当分、無理そうな気配である。「と、ともだ・・・知り合い・・くらいなら・・・ずびずび・・・」
 
正座のお仕置きは、実は初めてではない。これはルチアが知らないお話。



師匠の店を出て宿に顔を出したら、食堂に泊まりのお客さんが何人かまだいて
わたしに気が付いてくれた。

「お、お帰り~今日、初迷宮って聞いたぞーおつかれさん」
「無事でよかった。お帰り~」
ココさんとローロさんも居て、声をかけてくれた。
おばあちゃんからでも聞いたのかな、なんか大げさ迎えられてちょっと恥ずかしいね。

「うん。ただいまーっ大変だったけど、楽しかったよ!!」
ついそのまま話し込みそうになったら、おばあちゃんが、家で心配してウロウロしてる鬱陶しいのがいるから早く行ってお上げだって!!

そうね~いたわね~うちに・・・ベアみたいなのが。
みんなに、家に戻るね、またね!って手を振りあった。

「ただいま」なんとなく、声を潜めて入り口の扉を少し開けた。途端に、がばっと開かれて引っ張られたわたしは転びそうになってしまった。すぐに抱き留められはしたけど、胸がバクバクいってるよ!!!ひぃ驚いた!この犯人はーやっぱり!見上げれば、泣きそうになってるベア・・・げふげふっ、お父さんだったわ!うん。こうなりそうな予感はしていた!なるって知ってた!!!

どこも怪我をしてないけどね。そう言ってもちゃんと確認しないと安心できないんだって!!
何時まで続くのかなって思ったけど、すぐお母さんが助けにきてくれて、今はみんなでお茶を飲んでる。

わたしが作ったって、とってもとっても大感激してくれてる人が一人いますけども・・・
しかも飲むの、これが初めてってわけじゃないよね!もう何度目かなんだよお?

わたしが混ぜたお茶!! ただ用意された材料を、ざっぱざっぱ大きめの籠に入れ、ぶんぶん振っただけって言えないよね~あそこまで感激されちゃうと、味はとても美味しいけど、それは師匠のレシピですし~とほほ。

そうして、迷宮であった事をたのしく話した。

話の流れで畑のウサギさんの事になったけど・・・その、そういう事かぁ~、あーうそうかぁ美味しく食べちゃってたねぇぇ・・・わたしは可愛かった♪って言いたかっただけなんだけどね。そうか、絶品スープのあの肉も、ウマウマ食べたあの美味しい串焼きも・・・あの子かぁぁぁ

今度はお母さんの何かが切り替わったようだよ!!
なんだろ?そのワクワクして嬉しそうな顔は。目がキラキラだよ!
可愛いっていったら、うんうんって頷いてくれてたから同意してくれたと思っていたのに!!

「まるまると太って、コロコロして狩りやすい!しかも迷宮産は柔らかくて美味!」って何を言い始めたの?!!!
お母さんも子供の頃、がっしがっし狩ってたんだってさ!向かうところ敵なしで、誰と狩猟数を競っても無敗だったとかね・・・やんちゃ?お母さん、やんちゃだったの?!!
もう、その身振り手振りいらないからねっ。

えっわたしに狩り方教えるとか言わなくていいから!まだ心の中で可愛いと美味しいと可哀そうがせめぎあっているから!困るからぁ~!今日ですら、ムゥちゃんの話を聞いて自分は無理だなーって思っていたのに!!
なぜか、迷宮内の話にお父さんは空気だし!!微妙な顔してるぐらいなら、お母さんの武勇伝止めてちょうだい!!

えっ?外のウサギは可愛くないの?ギィギィ鳴いて襲ってくるの?捌くと血まみれとか・・うえっ

おばあちゃんが、夕飯の支度をするからって首根っこ引っ掴んでいなくなるまで狩りの話は続いた。
ルチアは無理するなって、ぼそっと言ってくれたけど二人きりになってからじゃく、さっき助けて欲しかったよ。


結論として、私の中では「美味しいは正義」で決着しました。
ついでに、お母さんが巷では「閃光」とか呼ばれてる二つ名持ちの冒険者と、初めて知りました。







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