4 / 6
第一章 学園の秘密
第4話 校長室
しおりを挟む
木天蓼学園高等学校の校舎は、明治時代に建てられた石造りのモダンな建物であった。
広い校庭を見下ろす、一部3階建ての一室が、校長室であった。
赤い絨毯にヨーロッパ調の大きな机と椅子、何でも有名家具店に特注したものらしい?
仰々しいフリンジの付いた臙脂色の校旗、難しそうな本が並んだ大きな書棚。値段の高そうな花びん。
四方の壁の上部には、歴代校長の顔写真が、ずらりと並んでいた。狗尾草家の婿養子が世襲し、そろって長命なことから、思ったより数は少ない。
端に目をやると、陽の当たる出窓で、年老いた三毛猫がまどろんでいる。高級な羅紗の座布団で、時折ボールと戯れているのだ。
まるで、特等席の様に遠慮が無く、ごく自然に風景に溶け込んでいた。
「おばば様。ご機嫌、麗しゅうごさいます」
そう言って、校長の明は、猫に一礼した。
この猫の名は、タマと云う。いつも、校長室を住処にし、閉校した後の夜間の動向は、杳として知られていなかったが、一部の者だけは知っていた。
歴代校長に愛でられ続け、いや、敬われ続けている。
どの校長の写真にも、傍らに決まって似た様な柄の猫が写っている。
そっくりであることから、その猫の子孫だと、学園職員は、そう信じていた。
いつの間にか、日は暮れ、光増寺の隣りのお屋敷に舞台は、移っていた。
「グランマっ、こっちへおいで」
「みやお、おばば様に向かって、何と失礼不遜な態度をっ!」
「パパ、何を言ってるの?昔しから、みんな、グランマを大事にし過ぎるわ」
「おっほん、至極当然のことなり。お前も、ちゃんと、おばば様を敬いなさい」
「ねぇ、お祖母ちゃん。お祖父ちゃんまで、あんなことを言うのよ」
「お祖父様が、おっしゃることは、もっともでございます」
これが、みやおの悩みの種であった。物心ついた頃から、家と学校を行き来する老猫を神格化し、非常に大切にするのだ。
大親友のし乃にでさえ、家の恥と思い、ずっと打ち明けられずにいた。
家族全員が、「おばば様」と崇め奉るので、
みやおは、一人勝手に「グランマ」と呼んで、うさを晴らしていた。
この命名が、あながち間違いでなかったことを後になって知るのである。
「もう、いいっ。ご飯にして...」
「年頃の娘には、無理もないことじゃ。ましてや、自分の血に...。おっと、これは、不味かったかのう」
「いずれは、嫡子の私がきっちりと...」
広い校庭を見下ろす、一部3階建ての一室が、校長室であった。
赤い絨毯にヨーロッパ調の大きな机と椅子、何でも有名家具店に特注したものらしい?
仰々しいフリンジの付いた臙脂色の校旗、難しそうな本が並んだ大きな書棚。値段の高そうな花びん。
四方の壁の上部には、歴代校長の顔写真が、ずらりと並んでいた。狗尾草家の婿養子が世襲し、そろって長命なことから、思ったより数は少ない。
端に目をやると、陽の当たる出窓で、年老いた三毛猫がまどろんでいる。高級な羅紗の座布団で、時折ボールと戯れているのだ。
まるで、特等席の様に遠慮が無く、ごく自然に風景に溶け込んでいた。
「おばば様。ご機嫌、麗しゅうごさいます」
そう言って、校長の明は、猫に一礼した。
この猫の名は、タマと云う。いつも、校長室を住処にし、閉校した後の夜間の動向は、杳として知られていなかったが、一部の者だけは知っていた。
歴代校長に愛でられ続け、いや、敬われ続けている。
どの校長の写真にも、傍らに決まって似た様な柄の猫が写っている。
そっくりであることから、その猫の子孫だと、学園職員は、そう信じていた。
いつの間にか、日は暮れ、光増寺の隣りのお屋敷に舞台は、移っていた。
「グランマっ、こっちへおいで」
「みやお、おばば様に向かって、何と失礼不遜な態度をっ!」
「パパ、何を言ってるの?昔しから、みんな、グランマを大事にし過ぎるわ」
「おっほん、至極当然のことなり。お前も、ちゃんと、おばば様を敬いなさい」
「ねぇ、お祖母ちゃん。お祖父ちゃんまで、あんなことを言うのよ」
「お祖父様が、おっしゃることは、もっともでございます」
これが、みやおの悩みの種であった。物心ついた頃から、家と学校を行き来する老猫を神格化し、非常に大切にするのだ。
大親友のし乃にでさえ、家の恥と思い、ずっと打ち明けられずにいた。
家族全員が、「おばば様」と崇め奉るので、
みやおは、一人勝手に「グランマ」と呼んで、うさを晴らしていた。
この命名が、あながち間違いでなかったことを後になって知るのである。
「もう、いいっ。ご飯にして...」
「年頃の娘には、無理もないことじゃ。ましてや、自分の血に...。おっと、これは、不味かったかのう」
「いずれは、嫡子の私がきっちりと...」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
魔王復活!
大好き丸
ファンタジー
世界を恐怖に陥れた最悪の魔王ヴァルタゼア。
勇者一行は魔王城ヘルキャッスルの罠を掻い潜り、
遂に魔王との戦いの火蓋が切って落とされた。
長き戦いの末、辛くも勝利した勇者一行に魔王は言い放つ。
「この体が滅びようと我が魂は不滅!」
魔王は復活を誓い、人類に恐怖を与え消滅したのだった。
それから時は流れ―。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【白銀の黒帝 22】神に贖う者
八木恵
ファンタジー
俺シュン。「白銀の黒帝」とか「黒帝」とか恥ずかしい二つ名がある。 俺は、とある事件に巻き込まれて異世界へ召喚された。 その世界は、神の箱庭だ。
俺と一緒に召喚されたのは、俺の元弟子で、今は俺の住んでいる世界のうち、魔族しか住んでいない魔界の魔王であるシリルと俺の嫁であるリン。
俺のいる世界じゃ、俺は傍観者で、秩序が乱れた場合は調停者として排除するっていう役割を俺の住んでいる世界を作った創造神から言い渡されていたけど、この呼ばれた異世界じゃそんなのは意味しない。
これは、俺、シリル、リンが、異世界へ召喚され、くそったれの糞神の箱庭で贖う物語。
【白銀の黒帝】シリーズ 22作目です。
※誤字脱字が多いですがご了承ください。
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
秘密兵器猫壱号
津嶋朋靖(つしまともやす)
キャラ文芸
日本国内のとある研究施設で動物を知性化する研究が行われていた。
その研究施設で生み出された知性化猫のリアルは、他の知性化動物たちとともに政府の対テロ組織に入れられる。
そこでは南氷洋での捕鯨活動を妨害している環境テロリストをつぶす計画が進行中だった。リアル達もその計画に組み込まれたのだ。
計画は成功して環境テロリストたちはほとんど逮捕されるのだが、逮捕を免れたメンバーたちによって『日本政府は動物に非人道的な改造手術をして兵器として使用している』とネットに流された
世界中からの非難を恐れた政府は証拠隠滅のためにリアル達、知性化動物の処分を命令するのだが……
その前にリアルはトロンとサムと一緒に逃げ出す。しかし、リアルは途中仲間とはぐれてしまう。
仲間とはぐれたリアル町の中で行き倒れになっていたところを、女子中学生、美樹本瑠璃華に拾われる。そして……
注:途中で一人称と三人称が入れ替わるところがあります。
三人称のところでは冒頭に(三人称)と入ります。
一人称で進むところは、リアルの場合(リアル視点)瑠璃華の一人称部分では(瑠璃華視点)と表記してます。
なお、大半の部分は瑠璃華視点になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる