15 / 15
15.
しおりを挟む
次の日、竜臣と顔を合わせてもいつも通りだった。それは何もなかったかのように。
竜臣にしてみれば、自分の玩具を横取りにされそうになり、横取りされる前に自分の物にしようと昨晩の行動に出てのかもしれない、龍聖はそう思った。
それでも竜臣の自分への執着心を感じ、執着しているのは自分だけではないのだと、安堵とした。
いつものように学校に行き、教室に入ると西沢と目が合った。向こうは顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を俯かせていたが、龍聖はなんの感情も湧かず、昨晩の竜臣を思い出す。余程、竜臣のが色っぽく綺麗だと思った。
その日の放課後、下校しようと竜臣を探した。いつもなら、真っ先に自分の所に来るのに姿がなかった。
(トイレか? )
教室を出ると、竜臣を探すべくトイレに向かった。その時、三階へ続く階段の踊り場に竜臣の姿が目に入った。
「たつ……」
竜臣の向かいに怯えた顔で竜臣を見る西沢がいた。竜臣が何か言っていて、西沢は恐怖からなのか涙をポロポロと零している。
龍聖は近付き聞き耳を立てた。
「龍聖、かっこよくなっちゃったもんね。好きになる気持ちもわかるよ。でも、あいつが苦しい時、おまえら何かしてやった? 臭い汚いって言って、敬遠してたよね? 西沢もその一人だったよね? なのに、龍聖がああなった途端、掌返したように色目使うのってどうなの? 調子良すぎだし、胸クソ悪い。マジ、ホント二度と近付くんじゃねーぞ、ブスが……!」
「ひっ!」
「龍聖に手出したら、あんたの家族ごと潰す。わかった? わかったら、二度と龍聖に近づかないでね」
そう竜臣に言い放たれると、腰を抜かしたように西沢はその場に蹲ってしまった。
竜臣が踵を返しこちらに顔を向けた。その顔は今まで龍聖も見た事がない、ぞっとするほど凶暴な顔をしていた。
(ああ、こいつはやっぱり極道になるんだな)
そんな思いが浮かんだ。
そして、自分は体も心も竜臣のものになったのだと悟った。自由がないある意味、束縛と言えるかもしれない。だが、それすらも龍聖にとって心地よく感じ、寧ろ幸福感すら感じた。
(俺はおまえのものだ。髪の先から爪の先まで、心も全て)
「あっ、龍聖。探しに来てくれたの?」
龍聖に気付いた竜臣は、先程の凶暴な表情から想像できない、美しい笑みを浮かべていた。そんな竜臣に龍聖は愛おしさを感じた。
「帰ろう、兄弟」
そう言って竜臣に手を差し伸べた。
龍聖は竜臣の手を取ると、その手を強く握った。
義兄弟という隠れ蓑で、この先死ぬまで竜臣の側にいられる理由がある。愛しい竜臣の為なら、死ぬ事すら厭わない。
(俺にとって竜臣は光だ。俺も竜臣の光になりたい)
この感情の名に気付くのはまだ少し先。
それが恋だと気付くまで──
竜臣にしてみれば、自分の玩具を横取りにされそうになり、横取りされる前に自分の物にしようと昨晩の行動に出てのかもしれない、龍聖はそう思った。
それでも竜臣の自分への執着心を感じ、執着しているのは自分だけではないのだと、安堵とした。
いつものように学校に行き、教室に入ると西沢と目が合った。向こうは顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を俯かせていたが、龍聖はなんの感情も湧かず、昨晩の竜臣を思い出す。余程、竜臣のが色っぽく綺麗だと思った。
その日の放課後、下校しようと竜臣を探した。いつもなら、真っ先に自分の所に来るのに姿がなかった。
(トイレか? )
教室を出ると、竜臣を探すべくトイレに向かった。その時、三階へ続く階段の踊り場に竜臣の姿が目に入った。
「たつ……」
竜臣の向かいに怯えた顔で竜臣を見る西沢がいた。竜臣が何か言っていて、西沢は恐怖からなのか涙をポロポロと零している。
龍聖は近付き聞き耳を立てた。
「龍聖、かっこよくなっちゃったもんね。好きになる気持ちもわかるよ。でも、あいつが苦しい時、おまえら何かしてやった? 臭い汚いって言って、敬遠してたよね? 西沢もその一人だったよね? なのに、龍聖がああなった途端、掌返したように色目使うのってどうなの? 調子良すぎだし、胸クソ悪い。マジ、ホント二度と近付くんじゃねーぞ、ブスが……!」
「ひっ!」
「龍聖に手出したら、あんたの家族ごと潰す。わかった? わかったら、二度と龍聖に近づかないでね」
そう竜臣に言い放たれると、腰を抜かしたように西沢はその場に蹲ってしまった。
竜臣が踵を返しこちらに顔を向けた。その顔は今まで龍聖も見た事がない、ぞっとするほど凶暴な顔をしていた。
(ああ、こいつはやっぱり極道になるんだな)
そんな思いが浮かんだ。
そして、自分は体も心も竜臣のものになったのだと悟った。自由がないある意味、束縛と言えるかもしれない。だが、それすらも龍聖にとって心地よく感じ、寧ろ幸福感すら感じた。
(俺はおまえのものだ。髪の先から爪の先まで、心も全て)
「あっ、龍聖。探しに来てくれたの?」
龍聖に気付いた竜臣は、先程の凶暴な表情から想像できない、美しい笑みを浮かべていた。そんな竜臣に龍聖は愛おしさを感じた。
「帰ろう、兄弟」
そう言って竜臣に手を差し伸べた。
龍聖は竜臣の手を取ると、その手を強く握った。
義兄弟という隠れ蓑で、この先死ぬまで竜臣の側にいられる理由がある。愛しい竜臣の為なら、死ぬ事すら厭わない。
(俺にとって竜臣は光だ。俺も竜臣の光になりたい)
この感情の名に気付くのはまだ少し先。
それが恋だと気付くまで──
0
お気に入りに追加
36
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
解放
papiko
BL
過去にCommandされ、名前を忘れた白銀の髪を持つ青年。年齢も分からず、前のDomさえ分からない。瞳は暗く影が落ち、黒ずんで何も映さない。
偶々、甘やかしたいタイプのアルベルに拾われ名前を貰った白銀の青年、ロイハルト。
アルベルが何十という数のDomに頼み込んで、ロイハルトをDropから救い出そうとした。
――――そして、アルベル苦渋の決断の末、選ばれたアルベルの唯一無二の親友ヴァイス。
これは、白銀の青年が解放される話。
〘本編完結済み〙
※ダイナミクスの設定を理解してる上で進めています。一応、説明じみたものはあります。
※ダイナミクスのオリジナル要素あります。
※3Pのつもりですが全くやってません。
※番外編、書けたら書こうと思います。
【リクエストがあれば執筆します。】
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
グッバイシンデレラ
かかし
BL
毎週水曜日に二次創作でワンドロライ主催してるんですが、その時間になるまでどこまで書けるかと挑戦したかった+自分が読みたい浮気攻めを書きたくてムラムラしたのでお菓子ムシャムシャしながら書いた作品です。
美形×平凡意識
浮気攻めというよりヤンデレめいてしまった
彼者誰時に溺れる
あこ
BL
外れない指輪。消えない所有印。買われた一生。
けれどもそのかわり、彼は男の唯一無二の愛を手に入れた。
✔︎ 四十路手前×ちょっと我儘未成年愛人
✔︎ 振り回され気味攻と実は健気な受
✔︎ 職業反社会的な攻めですが、BL作品で見かける?ようなヤクザです。(私はそう思って書いています)
✔︎ 攻めは個人サイトの読者様に『ツンギレ』と言われました。
✔︎ タグの『溺愛』や『甘々』はこの攻めを思えば『受けをとっても溺愛して甘々』という意味で、人によっては「え?溺愛?これ甘々?」かもしれません。
🔺ATTENTION🔺
攻めは女性に対する扱いが酷いキャラクターです。そうしたキャラクターに対して、不快になる可能性がある場合はご遠慮ください。
暴力的表現(いじめ描写も)が作中に登場しますが、それを推奨しているわけでは決してありません。しかし設定上所々にそうした描写がありますので、苦手な方はご留意ください。
性描写は匂わせる程度や触れ合っている程度です。いたしちゃったシーン(苦笑)はありません。
タイトル前に『!』がある場合、アルファポリスさんの『投稿ガイドライン』に当てはまるR指定(暴力/性表現)描写や、程度に関わらずイジメ描写が入ります。ご注意ください。
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 作品は『時系列順』ではなく『更新した順番』で並んでいます。
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はじめまして😄
楽しく読ませて頂いてます♪
はじめは辛いなぁ。って思ってましたが、
助けてくれるお友達がいてホッとしました!
ところで、6話と7話が一緒のお話になってますよぉ!
みー様
教えて頂きありがとうございます😭
話が飛んでいました💦
改めて7話を投稿し直しましたので、もう一度読んで頂けたらと思います🥲
感想もありがとうございました✨🙏