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次の日、竜臣と顔を合わせてもいつも通りだった。それは何もなかったかのように。
竜臣にしてみれば、自分の玩具を横取りにされそうになり、横取りされる前に自分の物にしようと昨晩の行動に出てのかもしれない、龍聖はそう思った。
それでも竜臣の自分への執着心を感じ、執着しているのは自分だけではないのだと、安堵とした。
いつものように学校に行き、教室に入ると西沢と目が合った。向こうは顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を俯かせていたが、龍聖はなんの感情も湧かず、昨晩の竜臣を思い出す。余程、竜臣のが色っぽく綺麗だと思った。
その日の放課後、下校しようと竜臣を探した。いつもなら、真っ先に自分の所に来るのに姿がなかった。
(トイレか? )
教室を出ると、竜臣を探すべくトイレに向かった。その時、三階へ続く階段の踊り場に竜臣の姿が目に入った。
「たつ……」
竜臣の向かいに怯えた顔で竜臣を見る西沢がいた。竜臣が何か言っていて、西沢は恐怖からなのか涙をポロポロと零している。
龍聖は近付き聞き耳を立てた。
「龍聖、かっこよくなっちゃったもんね。好きになる気持ちもわかるよ。でも、あいつが苦しい時、おまえら何かしてやった? 臭い汚いって言って、敬遠してたよね? 西沢もその一人だったよね? なのに、龍聖がああなった途端、掌返したように色目使うのってどうなの? 調子良すぎだし、胸クソ悪い。マジ、ホント二度と近付くんじゃねーぞ、ブスが……!」
「ひっ!」
「龍聖に手出したら、あんたの家族ごと潰す。わかった? わかったら、二度と龍聖に近づかないでね」
そう竜臣に言い放たれると、腰を抜かしたように西沢はその場に蹲ってしまった。
竜臣が踵を返しこちらに顔を向けた。その顔は今まで龍聖も見た事がない、ぞっとするほど凶暴な顔をしていた。
(ああ、こいつはやっぱり極道になるんだな)
そんな思いが浮かんだ。
そして、自分は体も心も竜臣のものになったのだと悟った。自由がないある意味、束縛と言えるかもしれない。だが、それすらも龍聖にとって心地よく感じ、寧ろ幸福感すら感じた。
(俺はおまえのものだ。髪の先から爪の先まで、心も全て)
「あっ、龍聖。探しに来てくれたの?」
龍聖に気付いた竜臣は、先程の凶暴な表情から想像できない、美しい笑みを浮かべていた。そんな竜臣に龍聖は愛おしさを感じた。
「帰ろう、兄弟」
そう言って竜臣に手を差し伸べた。
龍聖は竜臣の手を取ると、その手を強く握った。
義兄弟という隠れ蓑で、この先死ぬまで竜臣の側にいられる理由がある。愛しい竜臣の為なら、死ぬ事すら厭わない。
(俺にとって竜臣は光だ。俺も竜臣の光になりたい)
この感情の名に気付くのはまだ少し先。
それが恋だと気付くまで──
竜臣にしてみれば、自分の玩具を横取りにされそうになり、横取りされる前に自分の物にしようと昨晩の行動に出てのかもしれない、龍聖はそう思った。
それでも竜臣の自分への執着心を感じ、執着しているのは自分だけではないのだと、安堵とした。
いつものように学校に行き、教室に入ると西沢と目が合った。向こうは顔を赤らめ、恥ずかしそうに顔を俯かせていたが、龍聖はなんの感情も湧かず、昨晩の竜臣を思い出す。余程、竜臣のが色っぽく綺麗だと思った。
その日の放課後、下校しようと竜臣を探した。いつもなら、真っ先に自分の所に来るのに姿がなかった。
(トイレか? )
教室を出ると、竜臣を探すべくトイレに向かった。その時、三階へ続く階段の踊り場に竜臣の姿が目に入った。
「たつ……」
竜臣の向かいに怯えた顔で竜臣を見る西沢がいた。竜臣が何か言っていて、西沢は恐怖からなのか涙をポロポロと零している。
龍聖は近付き聞き耳を立てた。
「龍聖、かっこよくなっちゃったもんね。好きになる気持ちもわかるよ。でも、あいつが苦しい時、おまえら何かしてやった? 臭い汚いって言って、敬遠してたよね? 西沢もその一人だったよね? なのに、龍聖がああなった途端、掌返したように色目使うのってどうなの? 調子良すぎだし、胸クソ悪い。マジ、ホント二度と近付くんじゃねーぞ、ブスが……!」
「ひっ!」
「龍聖に手出したら、あんたの家族ごと潰す。わかった? わかったら、二度と龍聖に近づかないでね」
そう竜臣に言い放たれると、腰を抜かしたように西沢はその場に蹲ってしまった。
竜臣が踵を返しこちらに顔を向けた。その顔は今まで龍聖も見た事がない、ぞっとするほど凶暴な顔をしていた。
(ああ、こいつはやっぱり極道になるんだな)
そんな思いが浮かんだ。
そして、自分は体も心も竜臣のものになったのだと悟った。自由がないある意味、束縛と言えるかもしれない。だが、それすらも龍聖にとって心地よく感じ、寧ろ幸福感すら感じた。
(俺はおまえのものだ。髪の先から爪の先まで、心も全て)
「あっ、龍聖。探しに来てくれたの?」
龍聖に気付いた竜臣は、先程の凶暴な表情から想像できない、美しい笑みを浮かべていた。そんな竜臣に龍聖は愛おしさを感じた。
「帰ろう、兄弟」
そう言って竜臣に手を差し伸べた。
龍聖は竜臣の手を取ると、その手を強く握った。
義兄弟という隠れ蓑で、この先死ぬまで竜臣の側にいられる理由がある。愛しい竜臣の為なら、死ぬ事すら厭わない。
(俺にとって竜臣は光だ。俺も竜臣の光になりたい)
この感情の名に気付くのはまだ少し先。
それが恋だと気付くまで──
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