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黒ずくめの男達が、暴力団藤神会の本部である江藤竜一郎の自宅に集まっていた。藤神会の舎弟頭の出所祝いで、百人ほどの極道達が集結しており、その光景はまるでカラスがひしめき合っている様だった。
その中に一羽の白いカラス。目を惹く美丈夫の男がタバコを燻らせていた。細身で肌が白く日本人離れした中性的な顔立ち。その出立ちは、極道とは程遠い様にも見える。
その隣には上背のある男。黒髪でガタイも良く、右の瞼の上から頬にかけて一筋の傷のあった。
「なんだ、あの若造。片割れは随分と場違いだな」
「ああ、ありゃ、江藤組んとこの若頭だ。会長の孫だよ」
「へえ、あれが噂の。さすが会長の孫だな。二六歳で江藤組の若頭張るだけあって、いい面構えしてやがる」
男は横目で二人を見ると、もう一人の男は苦笑した。
「そうか? どう見たって極道に見えねえけどな、俺は。モデルとか役者やった方がいいと思うけど」
男はその言葉にギョッとする。
「え? 会長の孫ってあの黒髪の方じゃねえのかよ⁉︎」
「ちげーな。あのブロンド髪の細っこい方が会長の孫、江藤竜臣だよ。もう一人は竜臣の兄弟分で九條龍聖って言ったか……おっ、江藤組組長の江藤竜太だ」
そんな会話をしていると、竜臣と龍聖の前にオールバックの髪型にスリーピースのスーツを着込んだ長身の男が現れた。
「竜臣、龍聖、行くぞ」
竜臣と龍聖は江藤竜太の後ろに着くと、周囲からの好奇の目など臆することなく、極道の輪の中に溶け込むように歩いて行った。
江藤竜臣、二六歳。祖父、竜一郎は暴力団藤神会会長であり、父の竜生はそのNO.二である若頭。後々、藤神会の跡目に決まっている。そして息子である竜臣は、現在は二次団体にあたる叔父の江藤竜太が組長を務める江藤組で、若干二五歳で若頭を襲名していた。
竜臣は、何の疑問も持たずこの極道の世界に身を置いた。極道の家に生まれ、自分は極道の道に進む事が幼い頃から当然の事だと思っていた。
そして、後々自分も父の跡を継いで、この藤神会のトップに立つのだ。自分が会長の孫で若頭の息子だからと特別扱いされているなどと思われたくはない。上納金も他所より多く納めていた。自分の実力でトップにのし上がるのだ。この隣にいる龍聖と共に。
そう考えを巡らせ、隣の龍聖を見つめた。龍聖は竜臣の視線を感じたのかこちらに目を向ける。切れ長で鋭い目元。黒い瞳の奥からはギラリとした眼光が光る。その鋭い眼光の中に色気すら感じ、ゾクリと竜臣の背中が疼いた。
いつの間に、こんな目をするようになったのか。余程自分より極道らしいその立ち振る舞いを羨ましいと思う気持ちと、自分がこの男をそうさせたのだと思うと、何とも言えない高揚感を覚えた。
竜臣と龍聖の出会いは十年前に遡る。二人はまだ、高校一年だった。
竜臣は龍聖を拾ったその日、家族になりそして、大人の真似事で盃を交わし義兄弟になった。
その中に一羽の白いカラス。目を惹く美丈夫の男がタバコを燻らせていた。細身で肌が白く日本人離れした中性的な顔立ち。その出立ちは、極道とは程遠い様にも見える。
その隣には上背のある男。黒髪でガタイも良く、右の瞼の上から頬にかけて一筋の傷のあった。
「なんだ、あの若造。片割れは随分と場違いだな」
「ああ、ありゃ、江藤組んとこの若頭だ。会長の孫だよ」
「へえ、あれが噂の。さすが会長の孫だな。二六歳で江藤組の若頭張るだけあって、いい面構えしてやがる」
男は横目で二人を見ると、もう一人の男は苦笑した。
「そうか? どう見たって極道に見えねえけどな、俺は。モデルとか役者やった方がいいと思うけど」
男はその言葉にギョッとする。
「え? 会長の孫ってあの黒髪の方じゃねえのかよ⁉︎」
「ちげーな。あのブロンド髪の細っこい方が会長の孫、江藤竜臣だよ。もう一人は竜臣の兄弟分で九條龍聖って言ったか……おっ、江藤組組長の江藤竜太だ」
そんな会話をしていると、竜臣と龍聖の前にオールバックの髪型にスリーピースのスーツを着込んだ長身の男が現れた。
「竜臣、龍聖、行くぞ」
竜臣と龍聖は江藤竜太の後ろに着くと、周囲からの好奇の目など臆することなく、極道の輪の中に溶け込むように歩いて行った。
江藤竜臣、二六歳。祖父、竜一郎は暴力団藤神会会長であり、父の竜生はそのNO.二である若頭。後々、藤神会の跡目に決まっている。そして息子である竜臣は、現在は二次団体にあたる叔父の江藤竜太が組長を務める江藤組で、若干二五歳で若頭を襲名していた。
竜臣は、何の疑問も持たずこの極道の世界に身を置いた。極道の家に生まれ、自分は極道の道に進む事が幼い頃から当然の事だと思っていた。
そして、後々自分も父の跡を継いで、この藤神会のトップに立つのだ。自分が会長の孫で若頭の息子だからと特別扱いされているなどと思われたくはない。上納金も他所より多く納めていた。自分の実力でトップにのし上がるのだ。この隣にいる龍聖と共に。
そう考えを巡らせ、隣の龍聖を見つめた。龍聖は竜臣の視線を感じたのかこちらに目を向ける。切れ長で鋭い目元。黒い瞳の奥からはギラリとした眼光が光る。その鋭い眼光の中に色気すら感じ、ゾクリと竜臣の背中が疼いた。
いつの間に、こんな目をするようになったのか。余程自分より極道らしいその立ち振る舞いを羨ましいと思う気持ちと、自分がこの男をそうさせたのだと思うと、何とも言えない高揚感を覚えた。
竜臣と龍聖の出会いは十年前に遡る。二人はまだ、高校一年だった。
竜臣は龍聖を拾ったその日、家族になりそして、大人の真似事で盃を交わし義兄弟になった。
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