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第672話 力を持つ者7

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第672話 力を持つ者7

俺は、加盟国を新たに加えるか、と言う会議を開いている。

本当なら、もう加盟国を増やす必要はないけど、しかも、こんな離れた国に。

しかし、有耶無耶のうちに貴族になってしまったので、この国にも責任が生じてしまう。

この国に所属する貴族としての責任。

だから、俺はしょうがなく、会議を開いている。

あまり乗り気ではないが、この国を切っ掛けで多くの国を加盟させるか?

いや、そんなことをしたら、大変なことになるじゃないか。

俺の頭の中で、増やした方が良いと言う意見や、もういらないと言う考えが、渦巻く。

俺を取り入れようと思う国の思惑にのるのも、厄介ごとが増えるばかりだ。

一つの国が、上手くやると、次も同じ手で来る可能性もあるから、用心する必要がある。

もう魔物が出たって、その現場に行って、討伐して、さっさと帰る、これが一番だ。

もう、国のトップに話すことなく、知らん顔して帰るのが一番だ。

でも、そんなことをしたら、俺たちって貴族だから、あとで何、言われるかわかったもんじゃない。

知らないうちにだったら、いいけど、俺たちの仕業だと、その国の人が知ってたら、ちょっとまずいんだよね。

別に軍隊を動かしている訳じゃないけど、少数でも、俺たちの侵入を察知されると良いことをしたのに、難癖をつける奴がいる可能性がある。

手配がでることだってないとは言えない。

勇者が指名手配されるなんて、やめて欲しい。

そんな国を助ける義理もない。

しかし、放置すると人の命に係わる。

しかし、国を増やされても、俺たちは、人数が限られている。

もし世界中で異変が起きれば、そこに駆けつけなければならないが、メンバーの人数には限りがある。

奴なら、俺たちを分散して減らすことくらい考えるだろう。

そんなことが起きる可能性があるから、俺はメンバーを分けるのは、反対だ。

第一に駆けつけるのが加盟国、その次が、他の国になるのは、当然だけど、そこに孤児が多く出てしまうことは望ましくない。

普通でも、農家をしている人や、冒険者をしている人などが魔物に襲われることは、普段でも起きている。

一度、魔物が出てくれば、お金を出し合って冒険者ギルドまで依頼を出すだけでも数日はかかる。

そして依頼を冒険者が受けてくれなければ、魔物を倒す冒険者は来ない。

もちろん金額が多ければ、受ける冒険者は多いと思うが、魔物の数が多いとか、厄介な魔物とかだったら、冒険者も依頼を受ける奴がいないし、ランクが問題になる。

ギルドも、みすみすやられるような冒険者を出すことはない。

この時代にもランクがあるんだが、一般の冒険者はFランクがスタートだけど、貴族は小さいころから専門家による英才教育を受けているから、強さに応じてランクが決まる。

そういえば、俺たちは、冒険者なのに、普通の魔物狩りやダンジョンに潜っていない。

ダンジョンに潜ると、結構な日にちがかかってしまうこともあるから。

でも俺だって、ソフィア、イザベラ、コリンに声をかけるときは、Fランクだった。

もう、ずいぶん、昔のような気がする。

しかし、5年前だ。

ソフィアたちも、いくら俺から声をかけられたからと言って、良くパーティーに入れてくれたもんだ。

ギルドも時間が遅かったとはいえ、ソフィアたちしかいなかったのは事実だ。

俺が女性ばかりのパーティーに話をかける勇気なんて、持ち合わせていない。

周辺に人がいなかったから、薬草採取の仕事しかなかったから、少しでも上の依頼を受けるためには、しょうがなく勇気を振り絞って声をかけた。

数回は聞こえなかったのか、無視されたけど……あの時は、心のダメージが大きかったな。

女性に話かけて、無視されるってことを村を出て初めて経験した。

村では同年代の女の子ってアリシアしかいなかったから。

どちらかと言うとアリシアから声をかけてきて、遊んでいたから。

俺が家にいて、いつもアリシアから、遊びに誘われた。

俺が昔のことを考えてアリシアの方をチラッとみると、アリシアはミーアたちと楽しそうに話している。

アリシアの楽しそうな顔を見ながら、俺は空想にふける。

今は新規加盟の国が、他の国に質問をしているところ。

俺が話すよりも、そちらの方が、実際のところを聞ける。

話をチラッと聞いていると、俺の加盟国になった方が、割安だとか、メリットがある事ばかり言っている。

まざ、俺たちの勢力があった方が、いざという時に、役に立つとか。

騎士や兵士を育てても、俺たちほど役にたたないと言うことまで言う王もいる。

まぁ、ここは正式な場ではないから、いいけど、そんな話が表に出るとまずいよ。

新たに加盟する国の人の目の色が違う。

そして俺の扱いだが、俺は領地を必要としないからお金で納めることを免除されている。

貴族が行う領地経営は、その領地からの収入で、国にお金を納めている。

しかし、貴族も国から一定の割合のお金をもらっているが、割合的には俺たちに払うお金の方が、まだましだと言う意見もある。

しかし、俺たちがあまりに出張でばってしまうと、兵士や騎士たちの底上げにはならない。

俺は、あらかた魔物をかたずけたあとは、その国に後始末を頼んでいる。

そしてメンバーを分散して常駐してもらうのは、どうかと言う話になった。

いま、俺たちは、俺とアリシア、ソフィア、イザベラ、コリン、セラフィーナ、シャーロット、神獣たちのジャネット、ロゼッタ、パトリシア、アレク、アデル、アイリス、エイミー、リアム、エマだ。

16人いるから、メンバーを分けて常駐してもらう案がでたが、俺が真っ先に反対した。

どうして反対したのか、自分でもしっかりとした理由がわかっている訳じゃない。

俺たちだって魔力切れは起こしにくいと言うだけで、魔力切れになることもあるだろう。

そんな時に仲間の存在は大きくなる、もし非常時に数千、数万の敵に周りを取り囲まれれば、人は普段の力を引き出すことはできなくなる。

一人対、数千の魔族

一人対、数万の魔物

これが、どんなことになるか? そう恐怖でしかない、緊張、焦りで頭がパニックになる。

心の余裕がなくなり、周りが見えなくなり、ただ魔力を消耗するだけになってしまい、魔法をぶっ放すことしかできなくなり、魔力切れを起こして消耗してしまう。

俺が前世のアルベルトの時の経験だ。

俺が実際にアルベルトのときに経験したから、嫌な思いでしかない。

俺は、断固として反対の立場を取った。

それでも、チームを分散させることになれば、

「今までにもしてきたことですが、仲間を分散して戦ったことはあります。その時には、敵の能力を測って分身体をつけることをしています。」

「おおっ、それは、君が数人に別れることなのか? 本を読んでいても、いまいち理解できないんだが」

「そうですね、特殊なことですが、分身体は話ができないんですよ。今は察知した敵に魔法を放つしかできません。」

「今はと言うのは?」

「最近は分身体を作っていないので、確かなことではありませんが、今は、もっと高性能な分身体を作る事ができます。

「高性能と言うと?」

「俺の思考と連動することができると思いますので、まったく俺と同じものを作れると言うことです。

「と言うことは?」

「まったく、俺と同じものができると言うことです」

「最近のことを鑑かんがみて、分裂思考をもっと実践的にしているところです」

そこに聞き耳を立てていたミーアが「それはクリス様に負担が大きくないんですか?」

「そうだね、よく気が付いたね」と言って横に来たミーアの頭を撫でてあげた。

ミーアの嬉しそうな顔を見て「負担になるから、俺は、動けなくなるんだ」

アリシアが「と言うことは現場に出ることはできない?」

「うん、そういうことになる」

ソフィアが「じゃ、前もやったように、現場にいないで、私たちに指揮を与えることに集中してくれるって言うこと?」

「うん、そうだね、もちろん緊急事態が起きれば、俺も現場にいくよ。それ以上に俺が、分裂思考でも負担にならないような方法を考え中だけど、」

「それは?」

「例えば同じ本じゃなく、違う種類の4冊の本を広げて読んでいく………本の内容が違うから、読んでいくスピードも違う、………これが分裂思考だけど」

「えっ、そんなことできるの?」
「本当だよ、それは、もうクリスが数人、いるようなものじゃない」

「一か所ずつ、目で見ていくなら分裂思考とは言えない」

「まぁ、そうだね」

「でも、俺の頭の中で、同時処理ができれば、本当に俺が現場に行かなくても、俺が、そこに行っているのと同じことができるんだ、だから分身とも違うし、普通は分身体と言うのは影が普通、早く動いて多くいるように見せることが分身の術だよ。しかし、それじゃ分身体とは言えない」

「そうだね、分身した実態がない幻影だね」

「うん、その通り、先将来には、俺も戦いながら、分身体にも思考を分けて、自分で判断することができれば、と思っている」

「難しいね」

「うん、難しいけど、昔は使えなかったこともできるようになっているだろう?」

「そうだけど………」

「じゃ、それが可能になるように、俺も努力しなければと、思ってね」

とここまで話したが、メンバー以外の王たちの目の色が違う。

オーリス王が「勇者と言うのは、そんなことまで考えるのかね?」

「そうですね、単純にドラゴンを倒せば、危険がなくなって平和に暮らせるから、と言うのが、普通の勇者でしょうが」と言ってロゼッタを見る。

「わ、わしは、この勇者と戦いたくないぞ」
「うん、そうだね、敵対することも難しいし、一発でやられそう」とパトリシア
「そうですね、ご主人さまほど、いつも研究熱心で、心が穏やかな勇者はいません。いつの時代も能力があるものは、精神が崩れているか、つけあがっていますね」とジャネット
「うん、そうだね、昔の勇者は、碌ろくな奴じゃなかったね。酒におぼれたり、女性におぼれたり、守銭奴になったり、力を誇示したり、暴力的だったり、力が大きいと不安定だから精神が壊れていくこともあったね」とアクレ
アクレが突然、ミーアの耳をふさいで「あげくの果ての私にまで手を出そうとするんだよ」と言い終えると手を離した。

耳をふさがれたミーアは聞こえなかったみたいで、アレクの方を見て、「えっ?」って言っている。

ジャネットが「大きな力を持っているのも、ご主人様が他を大きく引きはがしています。それも、比べ物にならないほどに。
それほど、ご主人さまの存在が、この時代が必要としたと思われます。ご主人さまの存在自体が大きいと言わざる負えません。
たぶん、この星に生まれた歴代の勇者では、無理でしょう。
転移も使えなかった勇者もいれば、剣に魔力をまとわせて魔剣だと言って、魔物を倒していた勇者………それも魔物、一匹を相手にですから。
数年に一度、たまは数百年に一度、生まれる勇者は、神の名のもとに生まれています。」

つまり神が勇者を必要としている時に、生まれる………

しかし、どんな勇者が生まれるかは、神の知らない?

そこまで関与することができないのか、その辺は、自然に任せているのか?

この国で行った勇者召喚も関与しているんだったら、あんな危険な奴が、召喚される訳ない。

仲間が増えることはいいことだが、それで揉めるような仲間ならいらない。

それは、さも知っているように自然と口からでて、言葉をつないだが、それも、どうしてかわからないが、なぜか、知っているような気がしている。
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