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前世のアルベルトの幼少期

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前世のアルベルト幼少期

父親が見ていないから、母親の話ではわかるが、ぜひ見てみたいということで再現することになった。

母親の説明が始まる‥‥‥

母親「私が見た時には、アルが、ここで転んだ音で気が付いたの」

「えっ、どうして転んでいたんだ?」

「そこは、わからないわ、わたしの気を引こうとしたんじゃないからしら。それでね、それでね、大きな音で振り向いたわけだけど、アルのもとに駆け寄ってアルを抱き上げて、どこか打っていないかと心配していたの」

「うん、それで‥‥‥」徐々に父親はワクワクしている。

話の先を聞きたくて、うずうずしている。

「私が、アルを抱きしめて、よしよしってしていたら、そうしたらね、いつの間にかアルがテーブルの上に置いてあるキツネを飛ばして自分の手に引き寄せたのよ」

実際にキツネが飛ぶところを見てもいないのに、見たようなことを言う母親。

「そんなことがあったのか?」

「ええ、これって魔法でしょう?」

「ああ、そうだな、俺も見てみたかったな」

「じゃ、アルにもう一度、やってもらう?」

「うん、それがいい、俺も、ぜひみたい」と母親は俺が持っているキツネのおもちゃを取り上げた。

俺はおもちゃを取り上げられて「キツネさん‥‥‥」と両手をあげて取り戻そうとしたんだけど、それを無視して母親はテーブルの上にキツネを置いた。

「ほら、アル、ここにキツネさんがあるぞ」と父親

「ほら、アル、これがほしいのでしょう」とテーブルの上に置いてあるキツネを差しながら2人して誘っている。

俺はせっかく遊んでいたキツネを取り上げられたので、もう興味がなくなってしまった。

「おかしいわね」

「本当に、キツネが飛んだんだろう?」と父親

「ええ、間違いないわ、私、見たもの」と見てもいないことを言う母親

「ほら、ほら、アル、こっちだぞ」

「ほらアルベルト、このキツネを魔法で飛ばしなさい」と母親

徐々に母親の言い方が荒くなっていく。

「何も起こらないぞ、本当にアルが魔法を使ったんだろうな」と父親

「ええ、間違いないんだったら、私の目の前で起きたことを信用できなの?」と母親が少々、怒り出す。

「い、いや、信じるけど、実際に見ていないし」

「私が言うんだから、間違いないの」と強引に言い切る母親。

「う、うん、わかったよ、じゃ、俺、仕事、行ってくるから」と言って逃げるように仕事に行こうとする父親が、家を出て行こうとした時‥‥‥

テーブルの上に置いてあったキツネのおもちゃがフワリを浮かび上がった。

浮かび上がるキツネのおもちゃに両親の目が釘付けになり、目を離すことができない‥‥‥

キツネのおもちゃを目で追いながら、たどり着いた先は、息子の手の中だった。

両親はお互いの顔を見つめあって「嘘じゃないよな」

「ええ、今、自分の目でも見たでしょう」

「そうだよな、やったんだ、俺たちの息子が、本当だったんだ」と父親

「やったわね、これでアルは大魔法使いになれる」

「うん、そうだな、うちの息子は大魔法使いだ」

「ええ、私の息子は有名になれるわ」

「やったな、これで畑仕事なんかしなくて、済むぞ」

「ええ、私も料理しなくても良い生活が送れるわ、豪邸に住んで、女中を雇って‥‥‥」

「ああ、俺たち金持ちになれるぞ」

「そうね、私は大金持ちだわ」

「こうしちゃ、居れないな、村の奴らに自慢してくる」

「あっ、私が先に行くわ」

「いいや、俺だ」と競うようにして家から出ていった。

2歳の俺だけを残して、しかも家の扉が開いたままになっている。

俺はキツネのおもちゃを持って立ち上がり、家の玄関に立った。

玄関からは綺麗な夕日の光が、家の中に入ってきている。

俺は夕日が、どこまで家の中に入ってきているのか、振り返ってみている。

その時のことを頭に焼き付けるように、親たちが帰ってくるまで、ただジッとみていた。

夕日を浴びてオレンジ色に輝く、椅子、テーブル、床………

家具や床はオレンジ色に光輝いて綺麗だった。

子供ながら「きれい‥‥‥」と呟いて外に出ようとした。

もっとオレンジ色の光を浴びるために‥‥‥

外に出て余計に夕陽が強くなって、子供の俺でも眩しくて手で覆ってしまった。

そこに両親が帰ってきて、キレイな夕日を塞いでしまった。

その日の夕食は、いつもと違っていたのに。

両親は村中に俺のことを吹聴した。

それも、満面の笑顔と自慢げに村中に話して回った。

両親は、笑顔で、会話も弾んでいたし、料理も、いつもと違って、ちょっと豪勢だった。

食べるときに、料理をこぼしても、いつもなら、すぐに何か小言を言う母親が何も言わない………

俺は、少し気味が悪かったのを覚えている。

だから、早く寝ることにした。



次の日は、俺は早く目が覚めた。

天気のいい日で、ニコニコ顔に両親と朝食をして、父親は畑仕事に行き、自慢げな母親と村を歩くと、いつもより多くの人に声をかけられた。

「おっ、魔法師のアルじゃないか、ほれ、リンゴをやろう」と村人

「今度、魔法を使うところ、見せてくれよ‥‥‥」とか、言われる。

小さな村だから魔法師なんかいないし、魔法を見たことがない人ばかりだったので、俺は一躍、村では有名になっていた。

しかし、二歳の俺には、そんなことは関係なかった。

でも、村の人が、嬉しそうに、俺や母親に声をかけるのが、俺自身も、嬉しかった。

たった数日だったけど本当にニコニコ笑顔の両親と過ごした、楽しかった思い出だ。



街では、しばらくは、俺の魔法の話で持ちきりだったが、それも収まるころ、異変が生じてくる。

それは、俺が魔法を使った話が嘘じゃないのか?と言うことだ。

と言うのも、村人は俺が魔法を使うところを見た人がいないと言う事実だ。

両親は、俺が、魔法を使ったところを見ているが、家族以外は、見た人がいない。

第一に、魔法使いだって魔法はいざと言う時にしか使用しないのに、しかし、そんなことを村の人は考える人はいない。

一般的に魔法を使うと魔力量の少ない人は、魔力切れを起こすから、何もない所で魔法を使う魔法師はいないが、そんなことを知る村人もいなかった。

だから魔法使いが村にいるなら、ぜひ見てみたいと思う村人ばかりで、待ち望んだが、俺が魔法を使うシーンを見ることはなかったからだ。

二歳の俺だって、キツネのおもちゃが欲しくて手を伸ばしたら魔法が偶然、発動したわけだから、魔法を使おうとする意図はなかった。

しかし、期待していた村の人たちの噂は、そんなことは度外視して、話がズレていく。

噂話が、ひそひそ話になるには、そんなに時間は長くなかった。

俺と母親が村を歩いていたり、父親が畑仕事をしている時にも、数人の村人は、こちらを見ながら、口を手で隠してひそひそ話をしたり、指をさしたりして、雰囲気は、だんだんと最悪になっていく。

両親は、徐々に、それを感じ取っていく。

時には、村人から聞かれることもあったが、最近は、俺も魔法を使っていないと言い訳ばかりしていた。

徐々に両親の笑顔がなくなっていき、家の中でも暗くなってきた。

そんな中、この状態を打破するために、村長が家にやってきた。

扉を開けると「あっ、村長」と父親

村長「ちょっと、お前さんたちに聞きたいことがあるんだが」

「はい、なんでしょうか?」と父親

「お前ら、本当に、その子供が魔法を使ったのか?」と父親の後ろにいた俺を指さす。

「確かにうちの息子のアルは、あそこのテーブルの上に置いていたキツネのおもちゃを、離れたテーブルから、自分の手元まで、ふわりと浮かして魔法を使ったんだ」

「そうよ、間違いないわ」

「それじゃ、あれ以来、随分経つが、魔法を使わないのは、どうしてだ?」

「そ、それは‥‥‥」

「そうよ、アルは確かに、あの時、魔法を使ったのよ、でも‥でも‥‥」

「その大魔法使い様が、どうして、また魔法を使わなくなったんだ?」と村長

「‥‥‥」両親とも黙ってしまった。

「チッ、嘘ばかり言いやがって。村が変な空気になってしまったじゃないか、どうしてくれるんだ?」

「そ、それは‥‥‥」と父親がうな垂れる。

「おまえらも、嘘ばかり言ってないで、しっかり村のために働けよ。今度、嘘を言ったら村から出て行ってもらうからな」

「‥‥‥」

「チッ、謝りもしねえのか?」と言ってドアを勢いよく閉めて、村長は帰って行った。


それ以来、村では両親の肩身が狭くなり、安らぐ場所がなくなってしまった。

村の人も期待していた話題だっただけに、失望が大きく、村の雰囲気は最悪。

人と会う場所を避けて歩いたり、ビクビクしながら歩くようになり昼間は出歩かなくなった。

人と会えば、指さされて、ヒソヒソ、ギャハハっと笑われるようになってしまい、引きこもりがちになっていった。

家では窓も閉められて、昼間でもローソクの火でほそぼそと生活していた。

両親は昼間は寝て、最低限の人付き合いをするようになった。

父親は夜に畑仕事をするようになり、母親も気分が悪いと言って塞ぎ込むようになった。

2人とも夜の仕事で疲れても、朝方近くにベットに入るが、寝つきが悪く、何回も目を覚ましたり、眠れなくなった。

時々、誰もいないのにブツブツ独り言をいうようになった。

「俺は悪くない‥‥‥」

「全部、アルのせいだわ‥‥」

そう両親は精神を病んできているのだった。

俺は、あれ以来、外に出ることもできなくなった。

どんなに天気の日でも外に出してもらえず、俺も床でゴロゴロしたり眠る日が多くなった。

暗がりの家の中で、腐敗臭がしてきた。

夕日でオレンジ色に染まって綺麗だった家は、今はない。

ジメジメしてきて、匂いも変な匂いがして、かび臭くなってきて、俺の体調も悪くなってきた。

顔色が悪くなり、下痢をすることもあった。

両親は、必要最低限にしか外出することもなく、農作物を取引する時だけ外出していた。

誰もいない夜に共同の井戸まで行き水を汲んできているが、入れる桶も汚れているが蝋燭一本のあかりじゃ気がつかない。

窓も空いていないのに、外から石を投げる奴まで出てきた。

音がするたびにビクッとして、余計に精神的なものが病んでいく。

両親は寝れない日々を過ごしていく事になる。

そんな中、俺の唯一の楽しみだったのが、この家は隙間が多く、いくら窓を塞いでもお日様の灯りが見えることだった。

やっと今が昼なのが、隙間から差し込む日の光でわかるが、日が差し込むと言うことは、そこから外がのぞけるかもしれないと言うことだ。

そんな期待を込めて、隙間を除いても、期待外れの場合が大きく見えることはなかったが、一か所だけ、見える場所を見つけた。

俺は陽が差し込まない時も、その隙間から外を見ている。

今日は何が見えるのか、と楽しみにしながら。

****

隙間からは、いつまでたっても誰も通らない日もあった。

人が通る時もあったが、速足で通り過ぎていく。

また二人くらいで家の前を通る人もいたが、扉や壁を足でけってくる人もいた。

そのたびに罵声を浴びせられた。

また、ひどい人は石を投げてきた。





心休まることがない生活が数ヶ月続いた。

その頃には、村の悪い噂も消えかかってきていた。

しかし、俺は、いまだに外に出ることを許されず、家の中にいるしかなかった。

唯一、外を見ることができる隙間から、同じ光景ばかりみていた。

雨の日も、晴れの日も、俺は同じ窓の隙間にいることが多かった。

誰が通るわけでもない隙間から外を見ることが俺の唯一の楽しみだった。

*****

数ヶ月が過ぎる頃には、噂話がしなくなって、俺は少しずつ、外に出ることを許された。

しかし、まだ、人の通りがない時間だったりしていたが、それでも外に出ることは嬉しい。

俺が魔法を使ってから2年の月日が経っていた。

俺は4歳になり、それでも魔法を使うことがない。

4歳になっても、外に出ることは許されていたが、家の前だけだった。

外で遊ぶことは許されず家の中で暮らすばかりで、体はヒョロヒョロでやせ細って肌の色も白かった。

家では、必要最低限の話しかしなくなり、暗い家は変わらずだった。*

*****

6歳になっても、普通なら畑仕事を手伝うこともあると思うけど、俺は、いまだに家の中で暮らしている。

「お父さん、外で遊びたい」と俺が言っても

父親は「‥‥‥」と一言も話すことはない。

俺はわけがわからずに泣き出す、でも、二人は、泣いている俺には知らん顔。

いまだに一度も魔法を使っていないので、両親も期待が薄れていくが、村人から向けられた視線は、まだ、ある。

いまだに俺は外に出ることを許されなかった。




俺が魔法を使ってから、さらに2年が経過して俺は8歳になった。

その頃には、家の雰囲気が少しずつ変化して、窓を塞ぐ雨戸を締めなくなり、天気の良い日には、窓も開けられた。

久しぶりに家の中に新鮮な空気が入ってきている。

入ってくるのは空気だけじゃなく、太陽の光も家の中を満たしてくれる。

天気の日に閉まったままのガラス窓から外をみていると、そこにたまたま、通りかかった女性と目があってしまった。

その女性は俺と同じ歳のような女の子供を抱っこしている。

この女性は、俺が隙間から覗いていた時に、時々、見た女性だと思う。

この女性は、俺と同年代の女の子を抱っこして通り過ぎようとしているけど、俺と目が合ってしまった。

そうすると、その女性は、俺に話しかけてきた。

「こんにちは、アルくんだっけ?」

「‥‥‥」俺は突然、話しかけられて視線をずらしてしまった。

「アルくん、こっち向いて」と女性が言うので、恥ずかしく思ったが女性に向き直った。

抱いている女の子を指さしながら「この子はね、リサっていうのよ」と抱っこしている女の子を俺に紹介した。

「今度、お母さんが許してくれたら、お外で一緒に遊びましょうね、じゃあね」と言って女性は行ってしまった。

*****

違う日に、また、俺が外をみていたら、女性が通りかかった。

「こんにちは、アルくん」

「‥‥‥」

「今日は天気がいいのに、家にいるの?」

「‥‥‥」

「もう、アルくんは、お口がないのかな?」

「‥‥‥」

そこで俺が女性が抱っこしている女の子に目をやると、女の子も俺をジッーとみていた。

女性が「この子はねリサっていうの。 リサ、この前、あったでしょう、この男の子はアルくんっていうんだよ」

「‥‥‥」リサ

リサは何も言わなかったが、突然、俺がいる窓に向けて手を伸ばしてきた。

女の子の手がガラスに触る。

俺はリサがあてた手をジッと見ている。

俺は手とリサの顔を交互に見ながら、どうしてかわからないけど、手を動かしてリサの手が当たっているガラスに触れた。

始めは冷たかったが、俺の手のぬくもりなのか、リサの手のぬくもりなのかわからないが、温かいなと思ったことを大きくなってからも、覚えている。

ガラス越しに初めて触れる女の子の手………

母親以外で始めて触れることができた異性の手の温かさ。

なにも会話はなかったが、リサと言う女の子………

俺の母親にリサの話を、ぼそぼそすると、母親は、また、窓を開けなくなって、雨戸も締めてしまった。

もう、外を見ることもできない。

***

こんな生活が俺の八歳の時に終わろうとしていた。

**

俺が二歳の時に、魔法を使って両親を喜ばせたが、それ以後、魔法を使うことがなく、嘘呼ばわりされた家族は、どん底に落ちてしまったが、それでも六年の歳月が、それを薄くしてくれた。

しかし、受けた衝撃は、無くなることもなかった。

俺の体は引きこもり生活で、すっかり軟弱になってしまった。

しかし、それよりも嬉しいのは、リサと遊ぶことができるようになったことだった。

しかもリサは、俺が住んでいる隣に住んでいた。

リサは活発な女の子で、村に近い年齢の子がいないせいもあって、よく俺と遊んでくれた。

村中を走り回ったり、時には、村から出て丘で遊んだり、近くの川で泳いだり、魚釣りをしたり、木に登ったりする遊びをした。

俺はと言うと、引きこもり生活で、すっかり軟弱なり、足は走れないし、ヨロヨロする。

全然、走ったこともないから、走ると足がよろけて倒れてしまうようなことがあり、リサから、アルってだめね~とよく言われた。

「もう、アルって、走るのも遅いし、なにやってもダメね」

「リサが、早すぎるんだよ」

「何言ってんのよ、アルって走るだけじゃなく、木にも登れないし」

「あんな高い木なんて、登るの怖いよ」

「なに言ってんのよ、もう本当にしょうがないわね」

本当に、リサは活発だから、隣に住んでいるせいで、引っ張り回された。

リサは、俺に色々な遊びを教えてくれたけど、リサについていくことさえ、6年間の引きこもり生活でも、俺は徐々に体が変わってきた。

長く歩いても息切れをしなくなり、少しずつ走れるようになってきたが、相変わらず木登りは苦手だった。


リサは、色黒で活発な子だから、俺とは違い、一人で木に登ったり、川で遊んだり、魚を取ったり、丘を走って競争したり、泥んこになって遊んだけど、いつも文句ばかり言っていた。

しかし、俺がリサと遊んだのも1年だけで、俺にとって、またもや大事件が起きる事になる。

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